悩む力 (集英社新書 444C)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 793
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087204445

作品紹介・あらすじ

情報ネットワークや市場経済圏の拡大にともなう猛烈な変化に対して、多くの人々がストレスを感じている。格差は広がり、自殺者も増加の一途を辿る中、自己肯定もできず、楽観的にもなれず、スピリチュアルな世界にも逃げ込めない人たちは、どう生きれば良いのだろうか?本書では、こうした苦しみを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。現代を代表する政治学者の学識と経験が生んだ珠玉の一冊。生まじめで不器用な心に宿る無限の可能性とは。

感想・レビュー・書評

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  • ●本書には、夏目漱石とマックス・ウェーバーを手がかりに、「悩む力こそ生きる意味への意思が宿っている」という事を中心に書かれています。
    ●読後の第一印象は、先人の言葉の羅列が多くて、心に響くものがあまりなかった事です。大学の先生の著作に多くみられるタイプの本です。引用が多く、趣旨を読み取りにくく、論点を掴めません。引き込まれる様な、説得力に欠けます。
    ●これは、私の読解力の無さです。いつか再読しようと思います。

  • 2008年発売の新書ということで今更読むには半端に遅いかもしれないと思いつつ、積読していたものの中で目が行ったので、ゆるゆると読んでみました。やはり「現代人」として描写されるものに若干の古さを感じて面白く思い(セカチュウに愛の流刑地)、約10年という月日が決して短くないことを実感すると共に、普遍的な教訓も含まれていて、どちらの意味においても今読むことは決して無駄ではありませんでした。
    まず、愛の話。愛は自分が幸せになるためのものではない、という言葉は実にその通りだと思ったし、つまるところキリストの示した愛に通じるのだと再確認しました。無償の愛というのは「有り難い」こととでも言えばいいのか。それだけで、それだけとは言っていけないほどの奇跡だということ。そんなものはなかなか与えられるものでもなければ受け取れるものでもないでしょう。とここまで書いてみて、やはり日本人の元来の価値観と愛という概念はぴたっとハマらない部分がありそうだと思ってしまったり。せめて、情け、情という言葉の方がしっくりくるような気がしたり。
    それから「横着者」になったらいいという痛快な一言に痺れました。悩むことは悪いことではないし、物事を考え続けることには必ず意味があります。それでも、一人間が一生のうちに辿りつけるところには「どうせ」限りがあります。悩みぬいた果てに「まあこんなもんでいいか」と適当に見切りをつけてもそんなに悪くはないはずです。そんな風に、自分なりにうまく妥協点を見出して、毎日を過ごしたいと思わされました。もとい、日々無意識にやっている部分が多いわけですが、「それでいいのだ」と言われた気分で今何とも心地が良いです。

  •  言わずと知れた、50万部突破の大ベストセラーである。仕事上の必要から読んだのだが、たいへんよい本だった。

     年間ベストセラー・リストに名を連ねるような大ベストセラーには、ときおり信じられないほどクダラナイものがある。最近の例でいうと、『女性の品格』や『鈍感力』がそうだった(私は仕事上の必要から2冊とも熟読したので、自信をもってクダラナイと評価できる)。

     しかし、これは違う。50万部売れたことに得心がいく、良質の人生論である。

     姜さんのささやくようなソフトな語り口同様に、読者に対して真摯にやさしく語りかけるような本。自説を声高に主張したり、上から見下したりする感じがまったくないところがよい。

     自身のこれまでの人生経験をふまえ、悩むことのポジティヴな意味合いを説く本。「何のために『働く』のか」「変わらぬ愛はあるか」など、普遍的な「悩み」にそれぞれ一章を割き、真正面から答えを探っている。
     もはや中年になった身にはいささか気恥ずかしく思えるフレーズも散見されるが、10代、20代の若者たちが読んだらずしりと心に響く本だと思う。

     本書の特長は、「悩む力」を説くにあたって、マックス・ウェーバーと夏目漱石の生涯・作品を手がかりとしている点。一見まったく異質に思える2人の中に、近代以降特有の苦悩を直視した人物という共通項を見出し、21世紀の我々が生きるヒントを、彼らの思索の軌跡の中に探っているのだ。

     姜さんがマックス・ウェーバーにくわしいのは当然だが(『マックス・ウェーバーと近代』という著書もある)、意外だったのは、漱石作品についての解釈もたいへん面白い点。
     たとえば、漱石の『それから』について、次のように指摘している。

    《この小説は三角関係の悲劇、あるいは純愛の悲劇のように説明されることが多いのですが、私は違うと思っています。私の読み方で言うと、「夢の世界に浮かんでいた青年が、この世の重力のようなものに引っ張られて、地上に落ちる話」です。幻想から現実に落ちたから、最後のところの代助は、ぐるぐると頭の中が回っている。あの「回る」感じはかなりの寓意だと思います(115ページ)》

     風変わりな夏目漱石論としても、一読に値する書。

  • はじめて新書を読みました。
    エッセイみたいで読みやすかった。

    脱色されて乾いた青春にならないように、しっかり悩んでおかなくては(o^^o)

  • いま漠然と人生に悩んでいます。
    筆者がいうには悩み続ける事が死の抑止になり自分の生に意味を持たせる事ができる、と。

    傷つくことを恐れて人との関わりを避けて来ましたが、結局は人と繋がることでしか人生を満たすことはできないのですね。。

  • 素晴らしい。悩みを解決してくれる本ではないが、悩むことを肯定してくれる。

    序章,1章 悩みの背景と解決策
     情報化社会やグローバリゼーションによって自他の境界が曖昧になり、アイデンティティが不安定なものになっている。
     便利になりすぎたせいで1人でも生きていけるようになり、これが孤立化に繋がっている(合理化の副作用)。
     結局のところこれらは他人との相互承認でしか解消することはできない。

    2〜4章 悩みのタネ(金、知性、青春)
     金:金はしゃーない、資本主義だから。金を蔑みながらも金なしでは生きてはいけない。
     知性:知性と合理化を混同していないか?科学は生活を豊かにするが、自分の生きるための知識はむしろ減っている。自分の身の回りのことはわからなくなる一方で、入ってくる情報には際限がない。生きる力をつけることと、入る情報を限定すること、が必要では?
     青春:青春とは答えのない問題に悩むこと。多くの大人は途中で考えることをやめてしまうが、この悩みを持ち続けることが大事だ。

    5〜7章 悩みを解決しうるもの(宗教、職、愛)
     宗教:宗教は元は「個人が信じるもの」ではなく「個人の属する共同体が信じているもの」だった。宗教が共同体と結びつくことで個人の相互承認を満たし、悩みに答えを与えることで悩みから守ってくれていた。宗教の力が弱まったことで人々は答えのない問いに悩むようになった。
     職:働くことの究極の意味は、他者からのアテンション、承認の眼差しを得ることにある。専門分化によってこの承認欲求が満たされなくなりつつある。
     愛:現代では、純愛とマゾ的性愛が求められ、その中間に消耗品的な愛が満ちている、しかしこれは不毛だ。昔は恋愛が不自由だったからこそ恋愛の意味が見えていたが、現代では自由だからこそ恋愛の意味が見えなくなって、極端な愛を求める声が強くなっている。愛とは相互の問いかけに応えていこうとする意欲のことであり、これがある限り愛のありようは変わろうともそれは愛だ。幸せになることが愛の目的ではない。相互承認。

    8章,終章 悩みの価値
     人は相当の苦悩にも耐えられるが、意味の喪失には耐えられない。その向かうところは死である。自由になりすぎ、慣習が死への抑止力となり得なくなりつつある今、悩み抜くことでしか生きる意味を見いだせない。そしてつながりを求め続けよ。できれば、悩み抜いた上で、悩みを受け入れて横着な心を持てると尚よし。






  • 昔のメモ、未整理ですが、心に響きました。


    苦悩は人間の本性
    まっとうに苦しむ=具体的な問題に具体的に真面目に応える
     ×苦悩すむために苦悩する自己愛
     ○何かのため、誰かのために
    私だけ不幸(ルサンチマン)

    唯一性→神からおくられた贈り物
    失敗か成功か、ではなく、精神性の高みに上る意味と絶望、の縦軸を取り戻す
    意味の喪失が空虚感
    実存的緊張
    欲望を満たすことが幸せ、見たくないものを見ることが悩むことになってしまわないように

    未来と砂時計
    過去は金庫、忘れがたい経験が詰まっている

    夜と霧
    引き当てた運命

  • 「悩む力」姜尚中著、集英社新書、2008.05.21
    190p ¥714 C0236 (2019.05.16読了)(2009.05.06購入)(2008.07.12/4刷)
    この本の中で出てくる本・映画
    ・『それから』夏目漱石
    ・『こころ』夏目漱石
    ・『坊っちゃん』夏目漱石
    ・『明暗』夏目漱石
    ・『吾輩は猫である』夏目漱石
    ・『行人』夏目漱石
    ・『道草』夏目漱石
    講演『道楽と職業』夏目漱石
    講演『現代日本の開化』夏目漱石
    ・『夢十夜』夏目漱石
    ・『三四郎』夏目漱石
    ・『門』夏目漱石
    『硝子戸の中』夏目漱石
    ・『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』マックス・ウェーバー
    ・『職業としての学問(科学)』マックス・ウェーバー
    『国富論』アダム・スミス
    『清貧の思想』中野孝次
    『賢者の贈り物』オー・ヘンリー
    『一杯のかけそば』栗良平
    ・『ファウスト』ゲーテ
    『神曲』ダンテ
    『人生論』トルストイ
    『純粋理性批判』イマヌエル・カント
    『実践理性批判』イマヌエル・カント
    『判断力批判』イマヌエル・カント
    『ヨーロッパ諸科学の危機と超越論的現象学』エドムント・フッサール
    ・『自由からの逃走』エーリッヒ・フロム
    『世界の中心で愛を叫ぶ』片山恭一
    『愛の流刑地』渡辺淳一
    ・『HOW TO SEX』奈良林祥
    ・映画『アラビアのロレンス』
    『国家』プラトン
    『アリランの歌』ニム・ウェールズ
    映画『イージー・ライダー』

    【目次】
    序章 「いまを生きる」悩み
    第一章 「私」とは何者か
    第二章 世の中すべて「金」なのか
    第三章 「知ってるつもり」じゃないか
    第四章 「青春」は美しいか
    第五章 「信じる者」は救われるか
    第六章 何のために「働く」のか
    第七章 「変わらぬ愛」はあるか
    第八章 なぜ死んではいけないか
    終章 老いて「最強」たれ
    関連年表
    引用文献一覧
    あとがき  2008年4月6日

    ☆関連図書(既読)
    「夏目漱石『こころ』」姜尚中著、NHK出版、2013.04.01
    (「BOOK」データベースより)amazon
    情報ネットワークや市場経済圏の拡大にともなう猛烈な変化に対して、多くの人々がストレスを感じている。格差は広がり、自殺者も増加の一途を辿る中、自己肯定もできず、楽観的にもなれず、スピリチュアルな世界にも逃げ込めない人たちは、どう生きれば良いのだろうか?本書では、こうした苦しみを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。現代を代表する政治学者の学識と経験が生んだ珠玉の一冊。生まじめで不器用な心に宿る無限の可能性とは。

  • 悩んでていいんだって思えた。

    『他人とは浅く無難につながり、できるだけリスクを抱え込まないやうにする、世の中で起きていることにはあまりとらわれず、何事にもこだわりのないように行動する、そんな「要領のいい」若さは、情念のようなものがあらかじめ切り落とされた、あるいは最初から脱色されている青春ではないでしょうか。』

  • 自我のあり方、他人との関係の中で生きていくこと、そのことについて悩み抜く事がテーマとなっており、これらに対して夏目漱石、マックスウェーバーの思想を中心に援用し、問いかけている。
    この本ももう発表されてから10年近く経ってしまった。この10年の間に世界の経済観を揺るがすリーマンショックや、日本人の価値観を問うきっかけとなった東日本大震災などが起こり、人のありよう変化しているようにも思う。しかし、この本で問われている問題はもっと根源的、普遍的なものであり、漱石やウェーバーの時代からちっとも古くなっていないと感じる。
    特に、青春の章や、なぜ働くのかを問いかけた章については結構グサッときた。
    とりあえず漱石読んでみようと思った。読んでなくても全然この本は読めるけど。

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著者プロフィール

1950年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。東京大学大学院教授、聖学院大学学長などを歴任。東京大学名誉教授。専攻は、政治学・政治思想史。主な著書に、『マックス・ウェーバーと近代』、『オリエンタリズムの彼方へ』、『母 -オモニ-』、『漱石のことば』ほか。

「2018年 『ナショナリズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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