悩む力 (集英社新書 444C)

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レビュー : 753
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087204445

作品紹介・あらすじ

情報ネットワークや市場経済圏の拡大にともなう猛烈な変化に対して、多くの人々がストレスを感じている。格差は広がり、自殺者も増加の一途を辿る中、自己肯定もできず、楽観的にもなれず、スピリチュアルな世界にも逃げ込めない人たちは、どう生きれば良いのだろうか?本書では、こうした苦しみを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。現代を代表する政治学者の学識と経験が生んだ珠玉の一冊。生まじめで不器用な心に宿る無限の可能性とは。

感想・レビュー・書評

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  • 2008年発売の新書ということで今更読むには半端に遅いかもしれないと思いつつ、積読していたものの中で目が行ったので、ゆるゆると読んでみました。やはり「現代人」として描写されるものに若干の古さを感じて面白く思い(セカチュウに愛の流刑地)、約10年という月日が決して短くないことを実感すると共に、普遍的な教訓も含まれていて、どちらの意味においても今読むことは決して無駄ではありませんでした。
    まず、愛の話。愛は自分が幸せになるためのものではない、という言葉は実にその通りだと思ったし、つまるところキリストの示した愛に通じるのだと再確認しました。無償の愛というのは「有り難い」こととでも言えばいいのか。それだけで、それだけとは言っていけないほどの奇跡だということ。そんなものはなかなか与えられるものでもなければ受け取れるものでもないでしょう。とここまで書いてみて、やはり日本人の元来の価値観と愛という概念はぴたっとハマらない部分がありそうだと思ってしまったり。せめて、情け、情という言葉の方がしっくりくるような気がしたり。
    それから「横着者」になったらいいという痛快な一言に痺れました。悩むことは悪いことではないし、物事を考え続けることには必ず意味があります。それでも、一人間が一生のうちに辿りつけるところには「どうせ」限りがあります。悩みぬいた果てに「まあこんなもんでいいか」と適当に見切りをつけてもそんなに悪くはないはずです。そんな風に、自分なりにうまく妥協点を見出して、毎日を過ごしたいと思わされました。もとい、日々無意識にやっている部分が多いわけですが、「それでいいのだ」と言われた気分で今何とも心地が良いです。

  •  言わずと知れた、50万部突破の大ベストセラーである。仕事上の必要から読んだのだが、たいへんよい本だった。

     年間ベストセラー・リストに名を連ねるような大ベストセラーには、ときおり信じられないほどクダラナイものがある。最近の例でいうと、『女性の品格』や『鈍感力』がそうだった(私は仕事上の必要から2冊とも熟読したので、自信をもってクダラナイと評価できる)。

     しかし、これは違う。50万部売れたことに得心がいく、良質の人生論である。

     姜さんのささやくようなソフトな語り口同様に、読者に対して真摯にやさしく語りかけるような本。自説を声高に主張したり、上から見下したりする感じがまったくないところがよい。

     自身のこれまでの人生経験をふまえ、悩むことのポジティヴな意味合いを説く本。「何のために『働く』のか」「変わらぬ愛はあるか」など、普遍的な「悩み」にそれぞれ一章を割き、真正面から答えを探っている。
     もはや中年になった身にはいささか気恥ずかしく思えるフレーズも散見されるが、10代、20代の若者たちが読んだらずしりと心に響く本だと思う。

     本書の特長は、「悩む力」を説くにあたって、マックス・ウェーバーと夏目漱石の生涯・作品を手がかりとしている点。一見まったく異質に思える2人の中に、近代以降特有の苦悩を直視した人物という共通項を見出し、21世紀の我々が生きるヒントを、彼らの思索の軌跡の中に探っているのだ。

     姜さんがマックス・ウェーバーにくわしいのは当然だが(『マックス・ウェーバーと近代』という著書もある)、意外だったのは、漱石作品についての解釈もたいへん面白い点。
     たとえば、漱石の『それから』について、次のように指摘している。

    《この小説は三角関係の悲劇、あるいは純愛の悲劇のように説明されることが多いのですが、私は違うと思っています。私の読み方で言うと、「夢の世界に浮かんでいた青年が、この世の重力のようなものに引っ張られて、地上に落ちる話」です。幻想から現実に落ちたから、最後のところの代助は、ぐるぐると頭の中が回っている。あの「回る」感じはかなりの寓意だと思います(115ページ)》

     風変わりな夏目漱石論としても、一読に値する書。

  • はじめて新書を読みました。
    エッセイみたいで読みやすかった。

    脱色されて乾いた青春にならないように、しっかり悩んでおかなくては(o^^o)

  • 悩んでていいんだって思えた。

    『他人とは浅く無難につながり、できるだけリスクを抱え込まないやうにする、世の中で起きていることにはあまりとらわれず、何事にもこだわりのないように行動する、そんな「要領のいい」若さは、情念のようなものがあらかじめ切り落とされた、あるいは最初から脱色されている青春ではないでしょうか。』

  • 自我のあり方、他人との関係の中で生きていくこと、そのことについて悩み抜く事がテーマとなっており、これらに対して夏目漱石、マックスウェーバーの思想を中心に援用し、問いかけている。
    この本ももう発表されてから10年近く経ってしまった。この10年の間に世界の経済観を揺るがすリーマンショックや、日本人の価値観を問うきっかけとなった東日本大震災などが起こり、人のありよう変化しているようにも思う。しかし、この本で問われている問題はもっと根源的、普遍的なものであり、漱石やウェーバーの時代からちっとも古くなっていないと感じる。
    特に、青春の章や、なぜ働くのかを問いかけた章については結構グサッときた。
    とりあえず漱石読んでみようと思った。読んでなくても全然この本は読めるけど。

  • 無味乾燥に生きる我々にとって、姜尚中氏の第二の人生における横着な生き方がどんなにまぶしいことか。
    マックス=ヴェーバーと夏目漱石の関連は興味深い。ヴェーバーと漱石はあまりに真面目すぎた。だからこそあれだけの傑作を残すことができたのだろう。情報が溢れる現代では悩む時間すらないが、少しだけでいいから自分を見つめる時間を取りたい。生きる意味を確信している人間は強いのだ。

  • 都立中学の適正検査問題に出題されていたこともあり読んでみた。問題としては抜粋で使用されているが、一冊を小学6年生が理解するのは相当困難だと思われ、都立中学の壁の高さを実感した。
    内容的には、夏目漱石とウェーバーの作品を参照しつつ、著者の考えを展開している。
    今の時代は、一人一人が真剣に悩むことこそ必要な時代であり、そのためには悩む力を身に付ける必要があると理解した。そして一人一人が自分自身を知り、それぞれが価値観を確立する必要があるのである。
    本書では、悩みの対象を、生きることから始まり、自我、お金、情報、宗教、仕事、愛などのテーマ毎に扱っているが、最終的に自分の生きる価値観に帰結すると思われる。
    自分もいつも悩んでばかりいて嫌だなあと思っていたが、悩むことこそに意味があると説かれたことで、これからも大いに悩み続けたいと思う。

  • 要は、夏目漱石とマックス・ウェーバーの解説の入門書です。

    ただ、読み応えはありませんでした。
    肩すかしをくらった気がします。
    「そりゃあそうだろう。それで?」と思ったところが多々ありました。

    それでも、夏目漱石とその著作についての考察は、それなりになされていたので、夏目漱石を読んでみよう、という気にはさせてくれました。
    それがあるから、かろうじて★★★☆☆ですね。

  • 読後、頭の中が少し整理された気がした。
    著者の文章は読みやすく、難解なテーマを柔らかく解説してくれた。

    以下要約である。

    著者では「悩む力」について述べられている。
    今の日本は自由が過ぎて立ち返るものがなく、昔に比べて不幸だということをマックスウェーバー、夏目漱石を引用して分かりやすく解説している。

    全体を通して見えることは
    人は一人では生きていけない、だからこそ他者と関わりを持ち、そして悩み続ける。
    これこそが生きているということに繋がるのだとしている。

  • 夏目漱石の考え抜く姿勢について述べている本

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著者プロフィール

姜尚中(かん さんじゅん)
1950年、熊本県熊本市生まれの政治学者。専攻は政治学・政治思想史で、専門はポストコロニアル研究。国際基督教大学準教授、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、聖学院大学教授、同学長を歴任。東京大学名誉教授。
主な著作に『マックス・ウェーバーと近代』、『反ナショナリズム』、『在日』、『母―オモニ』など。特に亡き息子との共作とも語る『悩む力』、そして震災や生死、亡き息子への思いをテーマにする『心』などが代表作。

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