マルクスの逆襲 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087204940

感想・レビュー・書評

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  • グーロバル経済の時代になり、貧富の格差が拡大するなど、資本主義社会のほころびが顕著になりました。疎外が無く生きがいのある人生を実現するというマルクスの夢を再検討する時期にきているのです。
    https://www.honzuki.jp/book/33648/review/277809/

  •  本書で得られた知見。
    ・トランプの大貧民ゲームは「階級闘争」と呼ばれていた。
    ・鉄のカーテンが崩壊した遠因はイタリアのサッカー中継。

  • 著者は、大学に入学するや否や学生運動に巻き込まれてしまう主人公を描いた『僕って何』で知られています。本書では、おそらく当時の雰囲気を著者自身の体験を踏まえて語っているのだろうと思って読み始めたのですが、期待した内容とは少し違っていました。

    もちろん、学生運動の回顧も含まれてはいますが、第1章では、主に若い世代に向けてマルクスの思想の入門的な内容を解説しており、また第4章は、アメリカのサブプライム危機に始まるグローバル恐慌が吹き荒れる時代状況の中で、人間の「連帯」の可能性が語られています。

    扱われている範囲が広すぎて、全体としては内容が薄いように思われたのは残念です。はっきり言うと、マルクスの思想の概説やグローバル経済の諸問題などに関しては他の本に当たればよいので、著者には学生運動の体験について語ってほしかったように思います。

    上述の『僕って何』は、学生運動の渦中に投げ込まれた「主体」の「非主体性」を、まさに学生運動に参加する者の視点から描ききった作品でした。今でこそ、当時の学生たちの多くが多分に時代状況に流されて学生運動に参加したことは、ある程度共通認識となっていますが、当時運動の渦中にいた者の視点で、そのことを徹底して掘り下げた著者の感性はやはり非凡なものだったのだろうと思います。そうした「体験」をどこまでも掘り下げる作業がなされていれば、きっとおもしろい本になったはずだと思うのですが。

  • マルクスの目標は二つ。社会における貧富の格差の解消と、社会の中に自分を位置づけてそこに生きがいを感じさせる。ある思想や原理を100パーセント信じる人を原理主義者という。

    ベトナム戦争=北は社会主義、南は資本主義で、社会主義を世界に拡大しようとするソ連が、兵器を北に送り、さらに南の反体制ゲリラを支援。資本主義体制を守ろうとするアメリカが、南の政府軍を支援。

    1864 第一インターナショナルと呼ばれる労働者の国際組織

    小泉純一郎が構造改革と規制緩和を打ち出すまではマルクス主義国家だった。

    ロシア革命後、レーニンの提唱で結成された第三インターナショナルは共産インターナショナルと呼ばれる。略してコミンテルン。

    コミンテルンの指導によって日本に結成されたのが、日本共産党。

    アダムスミスの神の見えざる手は資本家の良識

    穀物の高騰によって世界の開発途上国で、貧しい人々が餓死という最悪の事態に直面している。

  • 本書冒頭に書かれている通り、マルクス主義の喧伝や解説でない。かつてマルクスに傾倒し、ときには法を超えてまでの血気盛んな活動をした、著者を含む団塊の世代。かれらが何を思って活動したのか、マルクス主義の何処にどう惹かれたのか。そんなテーマを、著者の主観と客観を織り交ぜて語っている。そのうえで資本主義の限界や綻びが見え始めた、現代社会に向けて「マルクスの逆襲」を物申している。

  • 日本とマルクス。
    全共闘のあとも、また復活する?
    トランプの「大富豪」は階級闘争そのもの。

  •  本書は全共闘世代の著者が、マルクスをわかりやすくひも解きながら、日本の1960年代以降の高度成長と社会改革運動のエッセンスを紹介し、ふたたび「マルクスの逆襲」という階級闘争の時代が到来したとする宣言の書であると思った。グローバル経済下の格差社会という時代状況を考えると、おもしろい書であると思った。 
     まず、著者は芥川賞も受賞している著名な作家で文章もうまく、読みやすかった。
     マルクスの時代背景についての項目は一般教養としてもおもしろく読める。イギリスの産業革命の光と影の中でマルクス主義が生まれた理由もわかりやすい。また、アメリカ南北戦争南部の黒人奴隷の解放が、北部工業の労働者を生み出すためだったとの視点もおもしろい。
     1960年代以降の全共闘運動の概略については、いろいろ異論もあるかもしれないが、大きな流れの紹介として興味深く読めた。
     そして高度成長をへての現在の「大貧民国家」への道である。本書では、グローバル経済のもとで資本主義の末路が到来したと宣言し、団結し新しいコミュニティーを作ろうと呼びかけている。
     星2つの評価にした理由は、やはり今後の社会をどのように変えていこうとするかの具体的内容が物足りないということにある。現状の否定のみでは、読んでみて不満が残った。ただ、いろいろと考えさせられる本だった。

  • 唯物史観のリポートに役に立つかなと読んでみた。
    噛み砕いて、体験をもとに(著者がこちこちのマルクス主義者だったわけじゃないが)書かれてるだけあって、読みやすいし中立的。
    八十年代後半生まれとしては、マルクスというだけでなんか怖いような、キワもののような気がしていたのだが、…そんな人間むけの本かも。
    タイトルはこんなだけど、「今こそマルクス!」という本ではない。今私たちができること・すべきこととして述べていることも、極めて穏健。
    面白かった。

  • この本は、意外にも「マルクス=共産主義」万歳ではない。
    資本主義の欠点を指摘するのだが、否定はしていない。

    さらに「マルクス≠共産主義」という式を提示している。
    資本主義の中にもマルクスの理念や理想は実現でき、
    資本主義が崩れた今、その理念なり理想なりで補填・修正していくべきであると言うのだ。
    つまり、社会主義国が崩れることによって供に沈んだマルクス主義が、
    資本主義の中で復活することが「逆襲」という言葉に変換されている。

    著者は、マルクスの逆襲する道として、地産地消による農業強化とコミュニティ形成を提示している。
    農業改革と同じような内容で新鮮味がないが、確かで、最もなことを述べている。

  • 社会主義は悪くないんだけど、政治に利用するなってこと。

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著者プロフィール

(みた・まさひろ)小説家、武蔵野大学名誉教授。1948年生まれ。1977年、「僕って何」で芥川賞受賞。主な作品に、『いちご同盟』、『釈迦と維摩 小説維摩経』『桓武天皇 平安の覇王』、『空海』、『日蓮』、『[新釈]罪と罰 スヴィドリガイロフの死』、『[新釈]白痴 書かれざる物語』、『[新釈]悪霊 神の姿をした人』、『親鸞』、『尼将軍』、『天海』などがある。日本文藝家協会副理事長、日本文藝著作権センター事務局長も務める。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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