不幸な国の幸福論 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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レビュー : 79
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087205220

作品紹介・あらすじ

経済は破綻し格差は拡大する一方、将来への希望を持つことが難しい日本にあって、「幸せ」は遠のくばかりと感じている人は多い。しかし、実は日本人は自ら不幸の種まきをし、幸福に背を向ける国民性を有しているのではないか-。精神科医、心理学者でもある作家が「幸せになれない日本人」の秘密を解き明かし、幸福になるための発想の転換法を伝授する。追い求めている間は決して手にいれることのできない「幸福」の真の意味を問う、不幸な時代に必読の書。

感想・レビュー・書評

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  • アーティストとして生きている中で、同時に心理カウンセラーを志して、心を扱う本をたくさん読みました。

    その中でも「不幸な国の幸福論」は、身にしみた本の一つです。

    7年前、アジア各国を巡っていた頃を思い出しました。

    第三章「幸福は「しなやか」な生に宿る」を読んでいた時です。

    以下、僕の体験です。

    アジアで見かける多くの外国人(僕を含めて)は、裕福だからこそ、その地に降りたって、ここぞとおいしいものを平らげていました。
    そのほとんどが、肥満体型で、現地の人のほとんどが普通かそれ以下にやせ細ってる。

    食べ物に困っている国の中にいて、その場所で、私たちはぶくぶくと太っていて、とてもいけないことをしているような・・・

    そんなことに気づいていきます

    食べ物と同じように、これで充分と思えば、充分幸せなのに、「もっともっと」と思ってしまう。欲求は絶え間ありません。
    そのことが本当に幸せなのか?

    「不幸な国の幸福論」を読んで改めて気づかされました。

    程よく、今日、食事にありつけたことで幸せを感じられる人もいる。

    反対に、「もっともっと」とおいしさ、高級感、食べる量にたいして、絶え間ない欲求を発っし続ける人もいる?
    (そのほとんどが先進国に人なんだけども・・・)

    今の自分を幸せと思えなければ、新たな欲求がやってきて、自分はその欲求に従う生き方をしてしまいそうです。
    自分がほしがればほしがるほど、弱者から結局は奪っているものもあると言うこと。

    とりわけ日本では、現状維持、今の自分に満足するという考え方が情けないことのように言われることもある。

    でも、この本を読んで、改めて思ったことが、

    今を幸せに思いたい

    ということでした。そして、新たな欲求に従わずに生きられることで、自分自身、なにに従うべきか、じっくり考えることができるのかと思います。

    一読者として、著者 加賀乙彦先生には、お礼を申し上げます。

    ありがとうございました。

  • なぜ幸せを感じられず心を病んでいくのか? の説明が的確で超納得。心の病気を扱う医師ゆえこうした説明も難解になりそうなものだが、とても端的でわかりやすく、すっと入ってきます。
    自分と向き合い考え抜く力の重要さを改めて強く感じました。
    「足るを知る=諦めるというのは単に断念することではなく、あきらかに見極めること」という文にも腹落ちでした。
    少し前に加島祥造氏の老子本を手に取ってみたものの、文体がどうも受け付けず挫折した私。加賀さんの現代訳本があったら嬉しいなぁと思ったり。

    フラットな視線で綴られた前半に比べ、老いと死についての章は温度がぐっと高くなる感じ。筆者自身の思い入れの強さが伝わってきます。
    そして特筆すべきは語り口の優しさ。経済発展の歴史に対する苦言すらソフトな味わい…加賀さんがまたちょっと好きになりました。

  • ・昨日よりも少しでも成長したいと願い、自分なりに努力を続ける。他人との比較ではなく
    ・他人が考えた幸福を鵜呑みにしない。それをやると、自分とのギャップを憂い落ち込む
    ・様々な環境・バックグランドの人間と付き合う。それぞれの場では評価されることが違う

  • 社会
    思索

  • "知り合いから紹介された本。日本の現状を様々なデータも交えながら、的確に言い得ている。知り合いの方も言っていたが、著者の加賀乙彦さんとほぼ同じ風に世の中を見ていたので、ある意味痛快だった。
    不幸な国とは、我が国日本。日本は社会、仕組み、共同体として不幸を生産している。そんな国に生きる人間の幸福とはなんなのか?という問いかけをしているのが本書である。刺激を受けた部分をメモしておく。

    第一章 幸福を阻む考え方・生き方
    「見られる自分」に対する意識の強さと「悩み抜く力」の欠如

    「悩み抜く力」の欠如=「考えずに受け入れる」ことが当たり前になった
    つまり、
    ・新しい技術で生み出された文明の利器をただ享受するだけになった
    ・テレビ、電卓、PCなど普及し、自分の頭で考え抜くことをしなくなった
    そして、
    ・自分にマイナスのレッテルを貼る=他者との比較でのみ自分の価値を見る(子供の自尊心)
    (長所、短所丸抱えで、ありのままの自分の現状を知った上で、
     今の自分より成長をしたいと願い努力するのが大人の自尊心)
     その原因は、過保護、過干渉で子供に過剰な期待をかける親の存在。
     子供が傷つかないよう、失敗しないように世話を焼き、あるがままを受け止めず誰かとの比較で○×をつける。
     社会も同様、「足の遅い子が傷つくから、平等に」などで、運動会で順位をつけるのをやめておきながら、偏差値という物差しだけで子供をはかり競争させる。

    「見られる自分」に対する意識の強さ=個を育てない教育(家庭~学校)
    つまり、
    ・幼いころから、子供の秘密を暴く親が多い(子供を異なる人格を持つ人間として認められない)
     →子供の自我確立を妨げる
    ・そして、人目を気にする国民ができあがる。(フランスは、人と同じことで悩む)

    第二章 「不幸増幅装置」ニッポンをつくったもの
    経済的疲弊が自殺に直結する国は日本のみ。
    GDPに占める社会保障の割合は、17.7%(OECD加盟国中23/29位)
    GDPに占める公共事業の割合は、1970年代初頭から最近まで先進国中トップ
    NY Times「日本の破産への道は公共事業によって舗装されている」1997.3.1
    流されやすい国民。
    1.好奇心旺盛、2.「個」を主張しにくい社会、3.「考えない」の習慣化

    第三章 幸福は「しなやか」な生に宿る
    1943年 ラインホールド・ニーバー牧師の言葉(マサチューセッツ州にて)
     神よ、私たちにお与え下さい。
     変えることのできないものを受け入れる冷静さと、
     変えることのできるものを変える勇気を。
     そして、2つを見分ける知恵を。

    第四章 幸せに生きるための「老い」と「死」
    死と向き合うことで、生を見つめ直し、老いを楽しむ。"

  •  秋葉原で起きた通り魔事件を引き合いに、現代日本の「不幸」を考察する。
     考えない習性や幸せに対する慣れ、他者を気にする日本人の国民性もあるらしい。
     高度成長期から、バブルがはじけた後も、豊かさの幻想を追い求めてしまった日本。リッチな国の不幸な国民。
     介護・医療の崩壊につながる制度誕生のきっかけとなる郵政選挙。当時の庶民心理は戦前・戦中にも似るとの指摘。
     幸福は身分や収入でなく、自分の考え方次第であり、高齢化の時代に、自分の生きる姿勢が幸福を作ると説く。

  • 人間には残念ながら、自分より下の存在をつくることで不安や焦りを解消する性向があります。自分に自信がなく、人と自分を比べて心のなかで優劣をつけている人ほど、いじめという行為に走ってしまう。しかし、他者との比較や競争、他者からの評価と無関係な「好き」を見つけられれば、それを核にして少しずつ他者を気にすることから解き放たれていきます。「自分は自分」と思えるようになり、健全な自尊心が育っていくのです。
    ─ 149ページ

     定年前後というのは、経済的な心配がなくても非常に揺らぎやすい時期です。初老にさしかかり、環境の変化に適応する能力が低下してくることもあり、うつ病になる人も多い。とくに、仕事人間で、これといった趣味のない人、仕事がらみの人間関係しかもっていない人が危ないようです。
     たとえ趣味があっても、会社の名前や肩書きに対するこだわりの強いタイプや、人との関係を上下の物差しではかりがちなタイプも脆い。
    ─ 177ページ

  • 2016.11.21
    当たり前のことが、今の気持ちにストンと落ちた。

    なんとなく感じる不幸は、誰かの役に立っているという充実感がないからだ。

    月始めに異動になって、何したらいいかわからない状態で、時間が過ぎることばかり考える毎日。
    休みの日に出かけたり、誰かと会ってもちっとも満足感が得られない。
    そんな日々の中で、この本を読んで、
    ただ嘆くだけでなくて、自分で変えていこうという気持ち、長いスパンで考える大切さなど、繰り返し言われていることだけど、改めて気付かされた。

  • 読了。

  • ■書名

    書名:不幸な国の幸福論
    著者:加賀 乙彦

    ■概要

    経済は破綻し格差は拡大する一方、将来への希望を持つことが難し
    い日本にあって、「幸せ」は遠のくばかりと感じている人は多い。
    しかし、実は日本人は自ら不幸の種まきをし、幸福に背を向ける国
    民性を有しているのではないか―。精神科医、心理学者でもある作
    家が「幸せになれない日本人」の秘密を解き明かし、幸福になるた
    めの発想の転換法を伝授する。追い求めている間は決して手にいれ
    ることのできない「幸福」の真の意味を問う、不幸な時代に必読の書。
    (From amazon)

    ■気になった点

    なし

  • 前半は様々な統計データ等により、現代の日本がいかに病んでいるか・・また将来どんな不幸が待ち受けているか・・ということが書かれている。
    後半はわりと精神論的な話だった。

    この本を読み、幸福って本当に主観的にしかはかれないものだなと思った。
    お金や名誉・地位などの客観的指標で幸福をはかりだしたらほとんどの人は不幸になってしまう。
    問題は、そのような客観的指標を主観にしてしまってる人が多いということではないだろうか、、。

    もう一つの問題として、自分の幸福を追い求める際に他人を不幸にしてないかという視点が要ると思う。
    (現時点の他人に限らず、将来の他人も含め。)

    そして最終的には、「自分は幸福」という結論ありきで過ごすということかなと思った。

  • 幸福の得方には疑問が残った。現代人が不幸な理由についてはなるほどと思った。特に悩み抜く力の欠如はひしひしと感じている。

  • 作家にして医師である加賀乙彦先生による警世の書。
    いきすぎた物質主義に対して、古今東西のデータでもって科学的に批判している。ところどころ首を傾げたが、全体的には納得できた。「常識的な」当世批判だ。
    とりわけ面白かったのが、老人の生き方についての部分だ。肉体が衰えていくなか、時間をいかに主体的に使うか。要は気の持ちようなのであるが、その例示が面白い。動けないなら眺めればよいではないか。など。

  • 世間一般の幸福論から
    日本人特有の考え方からとらえた幸福論。

    精神科医でありながら小説家でもある著者ならではの視線から見た、
    不幸な国日本。

  • だれがみても
    とても不幸な国の日本
    そこで、幸福を生むにはどうするか。
    吾唯知足(われただたるをしる)だとおもいます。

  • 読むの中断。正直、何処かで見聞きした論理展開で、筆者ならではの話が見えないので切り上げた。

  • 時代がどんなに暗かろうと、その人の置かれた状況がどれほどつらいものであろうと、自分なりの目的に向かって歩き続け、希望を抱き続けることで、人は幸せになれる。

  • 筆者の考えをひたすら書いてある。共感できるものだが、論は一般的なものだと思う。結局考え方次第というような結論に聞こえた。

  • p.114「幸福を定義してはいけない」
    この深い一言に尽きると思います。

  • 幸福とは何か?人類普遍のテーゼである幸福の在り処や人の生き方を描いたもの。著者の体験談や本の引用が各所に散見され、著者の考えに肉付けがなされ説得力のあるものになっているように思われました。
    現代社会に蔓延る「不幸」は、実は自分自身が招き寄せたものではないか?
    政治が上手く動かないのを政治家だけの責任にしていいのか?私達国民が「考える」ことを放棄したことが幸福を逃しているのではないか?
    幸福はしなやかな生に宿る。考え方を柔軟にすることで、私達は「快楽のトレッドミル」から降り、幸福を正しく捉え、死を怖れることなく悔いのない人生が送れるのだと、著者は言っています。
    単に幸福論を読みたい方にもおすすめですが、著者の読書経験の豊富さに圧倒された私は、次に読む本を探すうえで非常に参考になったため、幸福論やそれに関係する書物を探している人にも是非読んでいただきたいと考えています。

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著者プロフィール

加賀 乙彦(かが おとひこ)
1929年、東京都生まれ。東京大学医学部卒業後、精神科医として勤務のかたわら、小説の執筆を始める。『フランドルの冬』で芸術選奨文部大臣新人賞、『帰らざる夏』で谷崎潤一郎賞、『宣告』で日本文学大賞、『湿原』で大佛次郎賞、自伝的小説『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞、自伝的大河小説『雲の都』で毎日出版文化賞特別賞を受賞している。その他の著書に、『錨のない船』『不幸な国の幸福論』など多数ある。
近年は、殉教者を描く歴史小説『ザビエルとその弟子』、ペトロ岐部の生涯を描いた『殉教者』などを発表。

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