荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087205954

作品紹介・あらすじ

荒木飛呂彦がこよなく愛するホラー作品の数々は、『ジョジョの奇妙な冒険』をはじめ、自身が描いた漫画作品へも大きな影響を与えている。本書では、自身の創作との関係も交えながら、時には作家、そして時には絵描きの視点から作品を分析し、独自のホラー映画論を展開する。巻頭には「荒木飛呂彦が選ぶホラー映画Best20」も収録。ホラー映画には一家言ある著者の、一九七〇年代以降のモダンホラー映画を題材とした偏愛的映画論。

感想・レビュー・書評

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  • 荒木飛呂彦さんの定義によると、ひたすら「観客を怖がらせるために作られた」映画がホラー映画ということです。さらにエンターテイメントでもあり、恐怖を通して人間の本質にまで踏み込んで描かれているような作品であれば、紛れもない傑作ということです。
    正直な話、ホラー映画はかなり苦手で積極的に観ようと思ったことはないのですが、上記の定義から、『ジョーズ』『ナインスゲート』といった自分好みの映画も含まれていたのには驚きました。(笑)このため、この定義には多少異議あり!なんですが・・・。(笑)また、「ホラー」というか、サイコサスペンスやオカルト系などは割と自分は好きな方なのですが、本書では『エクソシスト』や『オーメン』、ボーダラインに位置付けられている『羊たちの沈黙』や『セブン』も取り上げられていて、何だ自分も「怖いもの」が好きなのかなと。(笑)スリルとカタルシスを求めているんだ、とちょっと抵抗してみたりして。(笑)それも「ホラー」あってだろ!と言われてしまいそうですが・・・。
    しかし、これまでいわゆる純前たる「ホラー」と認識していた『13日の金曜日』や『エルム街の悪夢』『ソウ』などはやはり怖くて怖くて観れそうにありません。本書の紹介文を読んだだけで怖くて震えあがってしまったほどです。(笑)『エイリアン』『リング』『ミザリー』『アイ・アム・レジェンド』なども確かに面白くて名作だなと思いますが、あの恐ろしさを観てしまったからには再見の心境へはなかなか到達し難いなあ。(笑)『ゾンビ』を観て癒されるという著者の領域までにはまだまだ遠そうですね。(笑)
    「人間の本質」には確かにダークな面があり、こうした映画が作られ観る人がいるということは、やはり人には「恐怖」を見て、味わい、疑似体験したいという欲求があるのでしょう。ただ脳内麻薬を大量発生させたいマニアな方もいるのでしょうけど・・・。(マニアな方、失礼!)そうした「怖さ」を演出するには、かなり緻密な計算やアイデアが必要ということで、観客との「知恵比べ」は今後もますます高度化していくと思われ、これにはちょっと感心ものです。熱狂ファンではないだけに「楽しみ」です、とはなかなか言えないところではありますが。(笑)
    単なる猟奇的な部分の「怖さ」だけではなく、異質なものへの「恐怖」や見えないものへの「恐怖」、社会的「恐怖」など、多面的な「恐怖」のアプローチによる人間心理とその行動様式についての視点はなかなか鋭いですね。本書では荒木氏のホラー映画への限りない愛が感じられて、その深奥さにはただただ感銘します。(笑)

    • nejidonさん
      mkt99さん、こんにちは♪
      いつものことながら丁寧で素敵なレビューですね。
      お薦めしてよかった!と感心しながら読みました。
      特にラス...
      mkt99さん、こんにちは♪
      いつものことながら丁寧で素敵なレビューですね。
      お薦めしてよかった!と感心しながら読みました。
      特にラスト4行は↑↑、私も載せ切れなかった部分なので納得のレビューです。
      ホラーは怖いものとひとくくりにする私のような人間は、恐怖というものもひとくくりにしているのだなと、気づかされたところです。
      でもね、なかなかクリアできませんよね。
      楽天の勝利で相当数の商品が割り引かれている現在、荒木さんの画集も入手しようかと画策中です。
      2013/11/04
    • mkt99さん
      nejidonさん、こんにちわ!
      毎度、コメントありがとうございます。(^o^)/

      本当にお薦めいただきありがとうございました。怖さ...
      nejidonさん、こんにちわ!
      毎度、コメントありがとうございます。(^o^)/

      本当にお薦めいただきありがとうございました。怖さに震えながら読んだのですが(笑)、荒木さんのホラー映画に対する幅広い知識と愛情はとても楽しめました。
      読み始めたのは実はもっと前だったのですが、その前に読了した小川洋子ワールドに感動し感涙にむせんで余韻を引きずっているさ中に『ゾンビ』の話が始まって(笑)、その余りのギャップに耐え切れず(笑)、しばらく中断してしまいこの時期の読了となってしまいました。

      「恐怖」とはヒトの自己防衛本能のアンテナの一つだと思いますが、様々な局面の様々なレベルで感じる「恐怖」を人間は発展させて「娯楽」に変換できるようになってしまった。怖がりの自分には「楽しみ」の幅は思いっきり狭いのですが、特に猟奇系ネタは怖すぎてとても楽しむどころではありません。
      「田舎へ行ったら襲われた」系ホラーというカテゴライズは自分も吹き出してしまいましたが(笑)、まさにこの領域は猟奇的に襲われてなんぼの話なので、自分にとってとてもハードルが高い分野です。すぐに被害者と同化してしまい(笑)、ほら、そのドア開けるなっ!とか、そのみえみえな家に行く奴あるか、あほ!とか、そこでみんなと離れるなっ!ばか!とかいう具合で、それこそ監督の手の中で転がされやすい精神構造だからなのかもしれません。(笑)

      楽天の優勝で値引きセールをやっているのですか!確かにそうですよね。自分も何か買わないと!(←感化されやすい性格(笑))
      2013/11/04
  • 特にホラー映画のファンではないのだが、荒木さんのホラー映画論に興味をもって読んでみた。
    ところが、あとがきを含めてもわずか227ページという薄さ。
    数ある中から100選して、大雑把なカテゴリーに分類し、それぞれのあらすじや感想を述べるにとどまり、論じるというところまでは行っていない。
    ただ、本人のホラー映画への愛情と、自作品との関連性をかいま見て、そこがなかなか楽しかったかな。

    驚いてしまったのは、ベスト20を私が全部観ていたこと。
    (まぁ、それだけコアな作品がなかったということにもなるので、真のホラー映画ファンの方は、この本ではとうてい物足りないことだろう。)
    主演俳優の名前と顔とストーリーまできっちり記憶にあって、実は自分はホラー映画が好きだったのかしら??と胸に手を当ててつらつら考えてしまった。
    で、結論として分かったことは、「恐怖とは何か?」「暴力とは何か?」そんなことを考えていた時期が長いことあったのだ。
    ホラー映画に答えがあったのかどうか、肝心の点は曖昧なまま(笑)。
    ただ、見慣れてくると面白さが分かるようになり、次はこうなるぞと予想して楽しめるようにもなってくる。
    そして、もちろんのことだが、その予想が裏切られるともっと楽しい。
    現実面で相当に怖いこと・辛いことがあっても、ホラー映画で予習しておくと案外耐性が出来ていることもある。
    なんだ、別に元気で生きてるからそれでいいじゃないかって。
    本来かなりの怖がりなので、タフになれるよう、トレーニングしていたのかもしれないな。

    ということで、荒木さんの選んだホラー映画の、ベスト10まで載せてみよう。
    ホラーとひと口に言っても幅が広い。え?という選択もあるので、そこも面白いかも。
      1  ゾンビ完全版(78年)
      2  ジョーズ
      3  ミザリー
      4  アイ・アム・レジェンド
      5  ナインスゲート
      6  エイリアン
      7  リング(TV版)
      8  ミスト
      9  ファイナル・デスティネーション
      10 悪魔のいけにえ(74年)

    読み終えると急にホラー映画を観たくなってくる。
    それでちょっと困っているところ(笑)。すっかりホラー映画のファンになった気分だ・・

    • nejidonさん
      mkt99さん、こんにちは♪コメントありがとうございます!

      さてさて、私の両親は素敵だったのでしょうか・・(笑)
      私たち子どもを寝かしつ...
      mkt99さん、こんにちは♪コメントありがとうございます!

      さてさて、私の両親は素敵だったのでしょうか・・(笑)
      私たち子どもを寝かしつけてから、自転車の二人乗りをして
      しょっちゅう映画館まで行ってましたよ。
      のんきでしたよね。
      今だったら、ネグレストなんてレッテルを貼られているところです。
      いえ、しっかりご飯も食べさせてもらったし教育も受けさせてもらいましたけどね。
      映画のこととなると、話は別だったみたいです。
      で、帰宅後、ふたりで夢中になって観てきた映画の話をするのです。
      セリフを真似たり、仕草を真似たり(笑)
      それを観て育てば、誰でも映画好きになりますよ!

      おお、ジョニー・デップの話でしたね。
      探偵役をやっても、サマになってましたね。
      それを思えば、かなり役の幅が広いのかもしれませんね。
      「ギルバート・グレイプ」は、監督さんが好きというのも大きな魅力です。
      ワタクシは昨夜、「欲望という名の電車」を観ました。
      ヴィヴィアン・リーの鬼気迫る演技が凄かったです。
      ブクログには映画は入れてないので、ここでご報告して終わりです♪
      mkt99さん、これからも楽しい映画ライフを過ごして参りましょうね!!
      2013/10/12
    • mkt99さん
      やっと読みました!
      読んでいるだけで怖かったです!(笑)
      やっと読みました!
      読んでいるだけで怖かったです!(笑)
      2013/11/03
    • nejidonさん
      mkt99さん、こんにちは♪
      読了、おめでとうございます(笑)
      そうなんですよ~、読んでいるだけで怖いのです。
      おどろおどろしい描写が...
      mkt99さん、こんにちは♪
      読了、おめでとうございます(笑)
      そうなんですよ~、読んでいるだけで怖いのです。
      おどろおどろしい描写があるわけでもないのに、不思議ですよね。
      そもそも、目次に登場するたくさんの映画タイトルを見ただけで怖いですもん。
      監督さんのねらいは、見事に当たってるってことでしょうか。
      ホラー映画が「癒し」になるというのも、あの本で始めて知りました。
      【田舎に行ったら襲われた系】という表現は言いえて妙だと思いませんか?
      私はかなり笑ってしまいました。
      また面白い映画に出会ったら教えてくださいね。
      2013/11/04
  • ホラー映画は基本的に観ません。だって怖いから。
    特にスプラッター等の残酷描写は生理的に受け付けません。
    もう本当にダメです。
    でも気になるんですよね、ホラー映画。

    うっかり観てしまった『スクリーム』とか『ファイナル・デスティネーション』とか面白かったし。昔観た『オーメン』『エルム街の悪夢』『ヘルレイザー』(序盤で挫折)も面白かった。
    プロットやカメラワークや演出がいいんですよね。
    怖いのがOKで生理的にも耐えられれば『ホステル』や『死霊のはらわた』や『悪魔のいけにえ』やら『サスペリア』やら、観てみたいのがいっぱいあります(多分無理だけど)。
    ホラー映画には『怖がらせる』というエンタテインメント性に徹したプロの仕事にワクワクする部分も確かにあります。

    ホラー観るのは無理だけど、そういう部分が気になる僕には良書でした。
    確かに荒木飛呂彦氏のマンガの緊迫感の演出や、追いつめられた主人公が窮地を脱する感じ、なんだかわからないけどこれから恐ろしいことが起こる雰囲気などはホラー映画に通じるものがあります。
    初期の『魔少年ビーティー』のサマーキャンプの話や、いけすかないキザな先輩と不良を手玉に取る話はホラー映画のシチュエーションだし、軍服マニアのおじさん達に拉致される話なんてホラーそのものですよね。

    ファンとしては『エイリアン』と『バオー来訪者』の関係、『ナインスゲート』と『岸部露伴』の関係などの興味深い話も多く楽しめました。
    そして最後の『恐怖の無限ループ』も荒木さんらしい仕掛けで面白かったです。

  • 荒木飛呂彦がこよなく愛するホラー作品の数々は、『ジョジョの奇妙な冒険』をはじめ、自身が描いた漫画作品へ大きな影響を与えている。
    本書ではそんな著者が、自身の創作との関係も交えながら、時には作家、そして時には絵描きの視点から作品を分析し、独自のホラー映画論を展開する。
    巻頭には「荒木飛呂彦が選ぶホラー映画 Best20」も収録。
    ホラー映画には一家言ある著者の、1970年代以降のモダンホラー映画を題材とした偏愛的映画論!

    「ゾンビは、無個性だからこそ、怖い」「孤立して逃げ場がない怖さを実感した「田舎で襲われるホラー」、荒木飛呂彦作品に影響を与えたスティーブン・キング作品の魅力、様々なジャンルのホラー映画の魅力の数々に加えて、荒木飛呂彦作品のテーマである「芸術作品は『美しさ』や『正しさ』だけを表現するのではなく、人間の『醜さ』だとか『ゲスさ』とか、そういった暗黒面も描ききれていないと、すぐれた作品とは絶対にいえません。」
    この言葉には本書のあとがきに寄せられたものですが、まさに荒木先生の創作に対する姿勢をそのまま表した言葉だと思います。
    「ジョジョの奇妙な冒険」や「魔少年ビーティ」、「バオー来訪者」の特徴である個性的な登場人物のルーツが、分かる本でもあります。
    悪を魅力的に描くほど、善人が際立つ作風の秘密が、分かってまた荒木飛呂彦さんの作品を読み返したくなります。

  • 第5部TVアニメ放送中につき再読。「途中まで良かったのに最後で台無しにしてしまってあの作品はダメだ」という評価だってできそうなところを、欠点があっても良い部分があれば評価すると姿勢が好印象。好きな映画について魅力が十分に語られており、映画をほとんど観ない私でもレンタルして観てみたいと思ってしまったのでした。とりあえず冒頭のBest20を本書を片手に順番に観てみようか。いくつかのオマージュ? 第3部:デス・サーティーン(死神13)→『エルム街の悪夢』フレディ?、第4部:アクア・ネックレス→『ブロブ』ドロドロのゼリー状生命体?、第5部:コロッセオ周辺でゴールド・エクスペリエンスで触れて魂の個数を調べる→『遊星からの物体X』採血して人間に化けている化物を見つける?

  • エンターテイメントそのものより
    エンターテイメントをこよなく愛する人が語るものこそが一番のエンターテイメントだと思う。

  • すごい昔から現在に至るまでのホラー映画についての荒木先生の評論
    偏愛的ホラー映画100選

    一般的にホラー映画と分類されないものも、荒木先生が思うホラー的要素がある映画はホラー映画とされて、この本では紹介されています。

    大半は自分も見たことがある映画でしたが、この本を読むと見たことがない映画もすごい見たくなります。
    荒木先生と同じような感想を持っている映画の時はなんだかめっちゃ嬉しくなります。

    特に荒木先生が9位にも挙げている「ファイナル・デスティネーション」は自分もかなりのオススメです。

    荒木先生好き、ホラー映画好きは是非読んだ方が良い一冊です。

  • 基本的には「モダンホラーの基本」と言ってもよい作品たちを、カテゴリーごとに紹介する本で、「論」というよりは入門書・ガイドブック的味わい。
    だがいくつかの作品で著者が恐怖を覚えた・見どころと思ったシーンはやっぱり創作者の視点を垣間見る感じがして面白かった。未見の映画(紹介されていた約100本の半分くらい)をメモらせていただきました。

    未読の方が気をつけるべき点が一点、「シックス・センス」のネタバレを喰らうおそれ。
    文章中でも「未見の人は読み飛ばす」よう書いてあるが、小項目ひとつぶんを飛ばしてもネタバレが終わらないので、その章の最後まで読み飛ばしちゃうように…

  • 私もホラー映画が大好きなので、わかるわかると共感する部分もあり、また新しい発見もあり、とても楽しく読ませていただしました。

  • 好きな映画について好きなように語る荒木先生、とても楽しそう。
    ただその視点・理論は独特で、荒木先生はやっぱり「一味違う」。

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