科学と宗教と死 (集英社新書)

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レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206241

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  • 著者の加賀乙彦は、精神科医であり作家でもあります。
    そのことと「宣告」という代表作があることとは知っていましたが、著書を読んだことはありませんでした。

    阪神大震災のときに65歳だった加賀乙彦は、「東京で小説を書いているよりも医師として被災された方々のために働こうと決心し」、精神科医として避難所の人々の治療に専念したそうです。

     そして、今回の大震災、加賀乙彦は81歳であり、自身が心臓病手術後にペースメーカーを装着した障害者となっており、直接的な支援はできない状況の中、今までの様々な経験の中で考えてきた幸福のこと、死のことなどから、「とくに東北の被災者の方々に襲いかかった不幸から希望のある未来を望み見るにはどうしたらいいか」を、精神科医、小説家としての体験から「懸命に書いてみた」そうです。

    自身の戦争体験や精神科医としての死刑囚との交流、また若き日のフランス留学時代に断崖から車で転落して奇跡的に助かったこと、さらに奥様の予想もしない突然の死など、死にまつわる自分のさまざまな経験から、加賀乙彦が考えたことがとても読み易い平易な文章で綴られています。

    そんな人生を経て、加賀乙彦はクリスチャンになりますが、キリスト教を媒介しながら今の世相や人の生きる道、そして死に至る道を独自の視点で述べている本です。

  • 著者がキリスト教をどの様に捉え、どの様に入信したか、その経過が分かります。
    信仰を選ぶとはこういう事なのか、と分かりました。

  •  軍国主義時代に育った著者は、戦争による多くの死を見て、受けた教育との板ばさみに苦しむ。
     精神科医となり、犯罪者の心理学の研究を行う中でも、死についてたびたび考えた。
     学問という科学では、限界がある人間の心の深さを感じる一方、長く人間を支えてきた宗教に思いをはせる。
     死刑囚との交流やフランス滞在、妻の突然の死、日本を襲った震災。著者の体験も交えた実感のこもる思索に、深く納得させられる。

  • 著者は医師で小説家であり、キリスト教を信仰しています。
    その立場から、死について思索してます。

    キリスト教と浄土真宗との相似点や、生死をわけるのは何か、など。

    ps:妻も真剣に読んでいました。

  • 読了。

  • [ 内容 ]
    「死」を考えることは「生」を考えること
    精神科医でありまたキリスト教の信徒でもある作家が82年の人生で続けてきた死をめぐる思索の軌跡を綴る。
    自身の病、妻の死と厳しい試練に見舞われながら希望を失わない生き方の秘密が明らかに。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 恥ずかしなから、本書で初めて加賀乙彦という作家を知った。戦争体験、医師、死刑囚相手の医務技官、自らの交通事故、伴侶の死... 様々な「死」から得られた人間観や社会観が、飾りのない口調で語られる。押し付けがましい人生訓ではないが、静かに深く熱い思いに満ちている。
    著者本人はキリスト教信者との事だか仏教への造詣もあり、両宗教の類似性などの示唆も興味深い。

  • 生々しい「死」の感覚、それは著者にとっては、「死は鴻毛より軽い」と教えられた軍国主義の時代での死生観がまずありながら、戦時中の空襲での黒焦げの死体、戦後まもない頃の新宿駅などでの、復員兵などの餓死した死体などを見て形成された意識で、現在のように、ドラマや小説や映画などでありふれた「にせものの死」で濁されてしまう「死」の感覚とはまったく違う、そういうふうに著者は書いていたと思います。それが震災によって、人々はそれまでのウソの「死」から生々しい「死」を感じ直すことになった。それで、そういう「死」を目前にした今、祈りや宗教が大事なんじゃないかと主張しているわけです。

  • 著者の戦争体験と、自身の犯罪者の精神医学的研究より考察された生と死への考察。そして自身の宗教的体験についての、ほぼ自伝的な本とも言える。東日本大震災と原発問題についても触れ、科学と宗教の絡みについても述べられている。いかに生きるか、宗教は理解することではなく、体験することである、ということを述べることは浅い理解、いや読書体験かもしれない。

  • 戦争、精神科医として、阪神と東日本の大震災、妻の死と、多くの死に直面してきた著者の、信仰と死についてのエッセイ。
    不幸な国の幸福論でも感じたが、この方の意見の述べ方の立ち位置がとてもいい。
    意見を押し付けることなく分かりやすい文章で書いてくれているので、意図を受け取り自分の中で租借する余裕を読者に与えてくれている。

    第4章が、この本の核となっているが、1章から順番に読むことをオススメ。
    新書の場合は速読するようにしている私ですが、2章の途中から精読に変更。時間がかかってしまったのは誤算でしたが、しっかり読む価値がありました。
    キリスト教について神父さんをご夫婦で質問攻めにしたくだりは面白かった(笑)
    そして、突然質問がなにもなくなり、気持ちが軽くなったと。
    魂が信仰の領域に入っていったのではないかと思います。
    そんな体験してみたいかも。

    東日本大震災からの復興についての、頑張ることと祈ることについての考察も興味深い。
    ゴスペルのイベントのお手伝いをすると、実際に手配をしたり行動することと、祈ることのバランスについて考える機会が多く、いつも難しいところだなと感じる。
    科学の範囲である心理学を追及した著者が、ひとの心は心理だけでは分からない部分があると書いていることが、とても心に刺さった。

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著者プロフィール

加賀 乙彦(かが おとひこ)
1929年、東京都生まれ。東京大学医学部卒業後、精神科医として勤務のかたわら、小説の執筆を始める。『フランドルの冬』で芸術選奨文部大臣新人賞、『帰らざる夏』で谷崎潤一郎賞、『宣告』で日本文学大賞、『湿原』で大佛次郎賞、自伝的小説『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞、自伝的大河小説『雲の都』で毎日出版文化賞特別賞を受賞している。その他の著書に、『錨のない船』『不幸な国の幸福論』など多数ある。
近年は、殉教者を描く歴史小説『ザビエルとその弟子』、ペトロ岐部の生涯を描いた『殉教者』などを発表。

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