視線がこわい (集英社新書)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206579

作品紹介・あらすじ

異変は、ある日突然、起こった。街ですれ違う女性の顔を「見られなく」なったのだ。それは、強迫神経症のひとつである「視線恐怖」だった-。著者は、わが身にふりかかったこの異変を克服するため、「視線」について徹底的な調査と研究を開始する。そして、精神医学領域にとどまらず、脳科学、認知行動学、社会学へと探究のフィールドを広げていく。そこから見えてきたのは、私たちの社会が、いかに「視線」に規定され束縛されているかという事実だった。著者の苦闘と思考の過程を赤裸々に綴った、知的論考。

感想・レビュー・書評

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  • 他人の視線が自分を嘲笑している、軽蔑している。また逆に、自分の視線が相手に不快感、嫌悪感を与えているのではないか。不安が増大し、ひどくなると社会生活の場からドロップアウトの選択を迫られる。
    病理(強迫神経症など)の一種と隔離することは容易いが、大なり小なり声に出せぬ思いを抱えている者も多いのではないか。微小なウィルスもひとたび世に蔓延すれば、社会内問題として注視を余儀なくされることとなる。
    古今東西広く生物学的な、あるいは文化生成面での、近代以降日本における、視線という存在。
    森田療法の実際について、ともすれば概念の紹介で見過ごしてしまいがちなところ簡潔にまとめられていていたのは有り難かった。
    終盤、現代日本社会(特に都市圏)における視線のメカニズムは社会学で言うところの「儀礼的無関心」を心得ていれば新鮮味はないが、

    「被害妄想を幾度疑った上でも、それでも確かに人々は私に睨みを効かせ、舌打ちをしていたのだ」

    からがらの告白にはいよいよ我が意を得たりという思いであった。
    とはいえ、森田療法に成功しても、無限地獄を脱し四諦の境地を垣間見たとしても、歪んだインフラの中に身を置く限り持続可能性は低迷の一途ということになりかねない。随所に散りばめられた先達の「まなざし」を「共視」しさらなる知見を重ねたい。

    cf.
    小町谷朝生『地の眼・宙の眼・視覚の人類史』
    P.K.ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』
    映画『カッコーの巣の上で』
    ベネディクト『菊と刀』
    土居健郎『甘えの構造』

  • タイトル見て、自分のことやんかって思って、こんな本出たんやったら絶対読みますよね。
    視線恐怖のことに関してはあまりページが割かれていないので、内容としてタイトルからは離れているかもしれへんけども、それでもけっこうおもしろい内容でした。
    ただ、数少ない視線恐怖の話のときは共感しまくってしまった。
    「見るなの禁」の話が印象的。「視線」についての話が意外と掘り下げられていた。

  • 素人判断で医者にかかるのをやめるから変な症状が出たんじゃないかと。

    自分がやらかした炎上事件棚にあげてよくSNSの問題点がどうこう言えたものだなw

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