- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087206890
作品紹介・あらすじ
「映画にはサスペンスが必要だ」と豪語する荒木飛呂彦が、イーストウッド作品から青春・恋愛モノまで、あらゆる作品に潜むサスペンス性とその掟を明らかにする、全くユニークな映画論。
感想・レビュー・書評
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「この映画が好き、この映画が嫌い」といった駄話に終始することが多い有名人の映画評の中でも、この本はかなり真剣にして真面目なものだった。漫画家が映画を語るという点で言えば、これ以上ないくらいに分析的。『ジュラシックパーク』のカット割りの話など、漫画家ならではの視点が盛り込まれている。
前作、『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』が好評だったので、「期待に応えて!」ということなのか、荒木飛呂彦の映画本が出るのはファンとしては嬉しい限り。今回はサスペンス映画を中心に、荒木飛呂彦が影響を受けた映画を語り尽くしている。週刊少年ジャンプという日本文化最大のメインストリームで、黄金期にカルト的な漫画で長期連載をしたという一点だけでも伝説的な漫画家の、かなり真面目な映画についての持論が述べられている。個人的には、巻末にある荒木飛呂彦の映画研究ノートの写真! が一番の見所だった。
荒木飛呂彦がかなり分析的な作家だというのは、『死刑執行中脱獄進行中』のあとがきで短編の分類をしたときから感じていたことだったけれども、やはりそのルーツは映画研究にあったのかと納得してしまった。しかも、映画研究ノートを見ると、かなり本格的なので驚く。そういうわけで、荒木飛呂彦が作品論や創作論を語れば、それはもう面白くないはずがないわけだ。この本でも、「面白い」ということについて突き詰めて考える作者の仮説、サスペンスこそが面白さの源泉になるという論については、確かにそうだと思える部分が多々あった。
荒木飛呂彦は週刊連載していたときから、かなり映画に影響を受けているということを隠そうとしない漫画家だった。というのも、ジョジョにも「あ、これは『激突!』のオマージュね(運命の車輪)」とか「あ、これは『スピード』のオマージュね(ハイウェイ・スター)」みたいなシーンが登場するからだ。でも、それは週間連載というハードなスケジュールのなかで、アイデアを出すという部分では仕方がないと思うし、そのままというわけではなく、ジョジョ風にアレンジして楽しませるという工夫もあった。そこが単に展開をパクった漫画との決定的な差だったと思う。作品の、どこが面白いのか、どこがキモなのかをちゃんと語れるところに、ただの映画好きとは一線を画す、クリエイターならではの視点がある。
この本の読み方としては、そういう荒木飛呂彦の作品論や創作論を楽しむという面の他に、映画評としても自分が好きな映画と対比してみるという楽しみ方がある。荒木飛呂彦のサスペンス映画ランキングの中で、『96時間』が3位にランクインしているのは、僕もこの映画が大好きなので嬉しい。また、本文の中での映画評では、イーストウッドの映画は題名だけ観たら観る気がしないけれども、観たら「すごいものを観た!」と圧倒される……というくだりがあって、最近『ミリオンダラー・ベイビー』を観てそう感じた僕は激しく同意してしまった。逆に、「え?」と思ったのは、ポランスキーを『ナインズゲート』を観て評価したというところ。結構珍しいと思う。
基本、荒木飛呂彦の作風に沿って、採り上げられている映画は「サスペンス要素のある映画」で統一されているので、恋愛映画やSF映画は少ない。また、前作の『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』でもそうだったように日本映画もほとんどない。この辺りは、荒木飛呂彦の音楽の好みが洋楽一辺倒だったように、日本映画を観る気があまりしないのかな~と。でも、この調子で色んなジャンルを語ってほしいので、温存しているという可能性もあるような気がする。格調高い作風の映画と違ってサスペンスの面白さを真正面から論じ、軽く観られがちなものにそうではないという視点を提供してくれる、という意味ではかなり質の高い映画評だと思う。 -
アクション映画、恋愛映画、アニメ…取り上げたジャンルを問わぬ映画作品の数々には、その全てに、まさに荒木飛呂彦流の「サスペンスの鉄則」が潜んでいる。
本書は、その一つひとつを徹底的に分析し、作品をまったく新しい視点から捉え直した映画論であり、エンタテインメント論である。
『ジョジョの奇妙な冒険』を描かせたとも言える、荒木飛呂彦独特の創作術とは?
映画の大胆な分析を通じて、その秘密が明らかに。
荒木飛呂彦が理想とする良いサスペンスの条件とは、ストーリーを惹きつける「謎」、主人公に共感出来ること、ストーリーに説得力を与える設定描写の妙、見る者が憧れるファンタジー性、泣けること。
このサスペンスの条件が荒木飛呂彦の認めた映画でどのように演出されているかを、スピルバーグ監督の「ジョーズ」「ジュラシックパーク」、デパルマ監督の「殺しのドレス」、イーストウッド監督の映画や「96時間」や「ヒート」などのサスペンス映画を通して具体的なシーンを引用して説明しているので、漫画家や監督志望の人が読んでも、楽しめる映画本になっています。
このサスペンスの条件が荒木飛呂彦の認めた映画でどのように演出されているかを、スピルバーグ監督の「ジョーズ」「ジュラシックパーク」、デパルマ監督の「殺しのドレス」、イーストウッド監督の映画や「96時間」や「ヒート」などのサスペンス映画を通して具体的なシーンを引用して説明しているので、漫画家や監督志望の人が読んでも、楽しめる映画本になっています。 -
荒木先生が何を想いJOJO作品群を描いたのか、
その一端を窺える、ファン垂涎の品と言えるでしょう。
ジョジョラーならば是非とも手に取るべき一冊ですね。
但し、タイトル通り調偏愛な内容に終始しているため、
一般的な映画評論を期待して読むと消化不良を起こします。
この本の主軸として度々登場する「男泣きサスペンス」。
成程、熱い観方ですし理解はできます。
しかし、文言通りに男性独特な感性であるため、
女性の私には全く共感できないどころか、
むしろ、この説明とは真逆の感覚を持っています。
氏の言う「男泣き」の部分は、私には人の愚かさに感じられます。
何度同じ経験をしても学ぶことを知らない、愚かで悲しい生き物=人間。
つまり、その人物のマイナス要素でしか無く、
「仕方ないよな、分かる分かる」とは絶対に思わないという事。
ただ馬鹿なだけに思えて、彼(または彼女)の評価がダダ下がるだけです。
反面、サスペンスを含むエンタテインメントの件は素直に共感できる部分です。
「サスペンス」という表現をここで使うか!と、驚かされました。
正に、目から鱗が落ちる状態です。
各監督にスポットを当てた評論も、頷けるものばかりで好感度の高い内容です。
それぞれ一時代を築いた監督や俳優たちの説明を読み進めるうち、
いつの間にか荒木飛呂彦という人物像が頭の中に出来上がっている、
不思議体験をさせてくれる本ですね。
可不可併せて☆3つなのでしょうけれど、JOJO加算で☆4つです。 -
ホラーが売れたので今度はサスペンス。
サスペンスっていっても幅広。 -
紹介されている映画を、私は殆ど観た事がないのがちょっと残念だけれど、それでも充分楽しめる本でした。
荒木さんの映画愛、作品愛が伝わってくるというか。
荒木さんの作品も、こういう視点で生まれてくるのかな、って思ったり。
前著作のホラー映画論もまだ読んでいないので、そちらも読みたくなりました。 -
面白かった!
熱量のある文章っていいよね、何より映画愛溢れる感じ。
全部観たくなったけど、それにしてもすごいですね。
荒木先生の映画分析ノート読みたい。
トップシークレットって書いてあったからなお読みたい。
ああいう人目につかない努力ができる人なのですね…私なら何でもかんでも公開したくなっちゃいますが。
時代の影響なのか。
ああいうトップシークレットなノート持ってる人は色々魅力的なんだろうなあ。
藤本タツキ先生も映画大好きって言ってたし、映画ってそんなにすごいのか…奇跡…創作の落とし穴…創作に命かけられる人たちの思考は全く理解できないよね。
私ならそういう世界で生きていくのは無理だ。
そう強く感じてしまう…やっぱり偉大な人ってやることなすことでかいよね。 -
サスペンスに必要な5つの要素を分析。
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前著に引き続き、荒木節炸裂。
見ものは「あとがき」の先生が若かりし頃に作った映画研究ノート。 -
シンプルに人がどう映画を観ているのか聞けて面白かった。
サスペンス的な展開に興奮するのはわかる。
映画の何に私は興奮するのだろうか。見えなさ、人の愛などに感動するのが楽しいのかもしれない。あとは知らない人の世界を知る、また何かが必ず起きるから面白いのだろう。
監督で映画を観てみよう。
ちゃんと判り易く書いてくださって、とってもgood!観る予定の全く無いホラーについて書かれた前...
ちゃんと判り易く書いてくださって、とってもgood!観る予定の全く無いホラーについて書かれた前著にも目を通そうかと考えましたよ(でも、読んで恐くなったらヤなので、考え直しましたが)