風景は記憶の順にできていく (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206975

作品紹介・あらすじ

日本各地を旅してきた著者が、浦安、銀座、熱海、四万十、西表島などを巡る。モノカキの原点となった町や昭和の空気をいまだにまとう街など、現在の風景を入り口に記憶をたどる、シーナ流ノスタルジック街ブラ。

感想・レビュー・書評

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  • 七月の講演会で椎名さんが「今年はこの後、ちょっとどうかしてると思うほど次々本が出ます」とおっしゃっていたが、まったく読むのが追いつかないくらいだ。雑魚釣り隊に続いて探検隊本隊(?)のもあるし、最後の赤マントも出る。とてもにぎやかだけれど、ここのところ椎名さんの本を読むとちょっと切なくなってしまう。これもそんな一冊。

    椎名さんが、思い出深い場所を訪ね歩き、その風景の変わりよう(あるいは変わらない様子)を綴っている。子ども時代を過ごした千葉の海、新橋・銀座は「ストアーズ・レポート」社の頃、武蔵野の家で子育てをし、「ガクの冒険」は四万十川、新宿御苑近くのビルで「本の雑誌社」は始まった…。

    いやまったく、なんとエネルギーに満ちあふれた熱い人生であることよ。長年の愛読者としては、老年にさしかかろうとする今、それら懐かしい場所に立つ椎名さんの胸の内を思うと、何とも言いようのない感傷的な気持ちに襲われてしまう。

    私は「岳物語」に始まるシーナファミリーの物語が大好きなので、そこはことにしみじみした気持ちで読んだ。誰だったか、「子育てにはゴールデンタイムがある」と書かれていたが、まったくそうだなあと思う。子どもたちが小学生だった頃、一緒にどこかに行ったり、いや別にどこへも行かなくても毎日の生活の中で、笑ったり困ったりバタバタしていた頃が、今思えば実に黄金の時間だった。過ぎ去らないとわからないものっていろいろある。椎名さんもきっと同じような思いでかつて住んだ家を見上げたんだろうな。

    著者自らの手になる写真がとてもいい。表紙も含めすべてモノクロで、そこがノスタルジックな気持ちをかき立てる。なんだかしんみりと読みました。

  • <目次>
    第1章  浦安
    第2章  新橋・銀座
    第3章  武蔵野
    第4章  熱海
    第5章  中野
    第6章  神保町
    第7章  浅草
    第8章  四万十川
    第9章  石垣島の白保
    第10章  舟浮
    第11章  銚子
    第12章  新宿

    <内容>
    椎名誠は一時期夢中で読んだ。そうしたエッセイや小説の舞台を、また彼の生い立ちや人生に関わる場所を次々と旅していく本。ちょっと懐かしくなった。


    逗子市立図書館

  • 遠い記憶は夢と同じようなものだ。何もかも朧で曖昧な、静止画が少しずつ仕方なく運動していくような至って頼りない、淡い風景がよく似ている。記憶は冷淡だ。風景が消えないうちに、風景の多くの断片が衰えないうちに、それを大急ぎで回収するような気持ちでランダムに歩いて見た。海が遠くに去った浦安。変わらない新橋・銀座。雑木林がなくなった武蔵野。老衰化の熱海。成功した換骨奪胎の中野。まだ安心の神保町。雨の浅草。変わらない四万十川。守られた珊瑚の海の石垣島の白保。チンチン少年を探した舟浮。灯台の銚子。そして新宿。

  • 原点となった街や思い出の町を歩くシーナ流「心の旅」。

  • 読みやすくてよかったです。

  • [ 内容 ]
    著者は、自身の原点となった様々な“街”に再会する旅に出る。
    浦安、銀座、熱海、浅草、四万十川、石垣島の白保、銚子、新宿…。
    日本各地を巡る旅は、これまでの人生に堆積してきた記憶の断層を掘るかのようで、なつかしい風景に心震わせ、感無量となることもあれば、思いがけず困惑し落胆することもあった。
    作家の原点となった街やいまだ昭和の空気をまとう町など、現在の風景を入り口に記憶をたどる。

    [ 目次 ]
    浦安―海は遠くに去りもう青べかもなかった
    新橋・銀座―かわらない風もときおり吹いて
    武蔵野―雑木林がなくなったなつかしい武蔵野のからっ風
    熱海―老衰化「熱海」万感の一五〇〇円
    中野―中野ブロードウェイ成功した換骨奪胎
    神保町―まだまだ安心
    浅草―雨の浅草でよかったような
    四万十川―変わらないチカラ
    石垣島の白保―珊瑚の海は守られた
    舟浮―イリオモテ島「舟浮」チンチン少年を探しに
    銚子―地球はまだまだ丸かった 銚子の灯台、近海キハダマグロ
    新宿―旅人は心のよりどころに帰ってくる

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 著者にゆかりのある土地を改めて訪ね歩いた紀行連載の新書化。
    以前、著者の講演を聴いたことがあるが、その時の著者の印象は、「人にも、そしてご自身の行動という意味においても、壁が低い方だなあ」というものであった。
    間口の広さと壁の低さが、人との交流を豊かなものにしていくのだろう。

  • 椎名誠著 風景は記憶の順にできていく 読了。椎名さんの原点となった街や思い出の日本各地を巡るシーナ流”心の旅”。珠玉の旅ルポを綴ったもの。その町の今をたどる旅。そこには変わらぬ風景や人々、時には昔の面影はなくすっかり様相を変えてしまった場所に出会う事になる。

    「浦安」「新橋・銀座」「武蔵野」「熱海」「中野」「神保町」「浅草」「四万十川」「石垣島の白保」「舟浮」「銚子」そして「新宿」と椎名さんの心の旅は続いていく。

    「ぼくはまだ、もう少し、人生のいろんな風景を見ていくことになるだろう。懐かしい風景をふりかえるよりも、数はすくなくてもいいから、静かにこころ静まるまで眺めることができるようなやわらかい風景を見つけてみたい。」(本書より抜粋)

    新書本ながら中々読み応えのある一冊であった!謹賀新年!我輩もどこか今年こそは懐かしい昔の風景を探しに旅にでも出てみようかなあ。

    【Dance1988の日記】
    http://d.hatena.ne.jp/Dance1988/20140103

  • なんだか椎名さんの本にしてはタイトルもカタイし表紙も明るくない。その予感通りに、割と重苦しい、というか切なくなるような話が続く。記憶というものが割と適当であること。その記憶と現代の風景を照らしあわせてみて、落胆したり、喜んだり。前半はなんだか本当に風景の退化ばかりが目立つような気がして、それが現実なのだろうなあとしんみりするのだけど、だんだん慣れてくると、椎名さんはいつのまにか、酒飲んでガハハっぽい雰囲気になってくる。とはいえ、劣化に落胆することや、懐かしがることはずっと変わらない。
    僕も、近くまで行くと昔住んでいた所を見に行ったりすることがあるが、もうちょっとまじめに記憶と風景を照らしあわせてみたいなあ、と思った。僕がそうしても誰も喜ばないが、なんだか自分への義務のような気がする。

  • ☆5つ

    やはりシーナ兄い の本はすごく面白い。
    なんだかんだ言っても面白いのだからしょうがない。
    今回は特にお終いの一遍「新宿」がもっともおもしろい。
    粗製乱造 などと、時々自分でシーナ兄いは云うが、いいではないか粗製だろうと乱造だろうとかまやしない。これからもづぅっと粗製乱造してください。
    すまんこってす。すごすご[m:237]。[m:80]

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著者プロフィール

1944年生まれ。作家。1988年「犬の系譜」で吉川英治文学新人賞、1990年「アド・バード」で日本SF大賞を受賞。著書に「ごんごんと風にころがる雲をみた。」「新宿遊牧民」「屋上の黄色いテント」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズ、「そらをみてますないてます」「国境越え」など多数。また写真集に「ONCE UPON A TIME」、映画監督作品に「白い馬」などがある。

「2012年 『水の上で火が踊る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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