世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)

著者 : 中野剛志
  • 集英社 (2014年9月17日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207552

作品紹介・あらすじ

米国の世界覇権が終焉する。それは皮肉にも自ら主導したグローバル化の帰結であり、実は第二次大戦前の国際秩序の崩壊もグローバル化のせいだった。緊張高まる国際情勢、覇権戦争の危機を描く衝撃作!

世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)の感想・レビュー・書評

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  • 読み始めたが、内容が充実している。
    日本は、核抑止力保持を含め、自前で防衛する力をつけるときが来た!

  • 今の世界各地で起こっている危機的状態は、アメリカが主導してきたグローバリズムが、経済縮小に伴い崩壊しつつあることによるものだ。近年保っていたリベラルな国際秩序は覇権国家を必要とし、アメリカがその座を守ってきたが、いまその力を失った。E・H・カーは、政治はパワーであり、それは軍事力と経済力と意見支配力で構成されると言う。▼覇権国家が撤退すると、カオスが待ち受ける。ユーゴ、イラクなどがその例。日本はアジアの覇権を狙う中国が仕掛ける覇権戦争に巻き込まれる可能性が非常に高い。尖閣はその象徴で中国にとっては欠かせない。アメリカは今後は撤退主義をとるため安保同盟は期待できず、日本は自主防衛力を高めるか、中国の属国になるか、他に道はない。……筆者の記述は説得力が高い。しかし、未来は過去の繰り返しだけではないはず。他に道はないのだろうか?

  • アメリカ政府はグローバル・トレンド2030の中で、アメリカがもはや覇権国家たりえないということを公式見解として出している。アメリカはウクライナ、中東、アジアを単独で抑え込むことができないので、アジアからは撤退することも考えている。
    覇権国家の消えた後の国際社会では、地域覇権を争う戦国時代に突入する危険性もある。もう日米同盟に頼れない日本は、中国の属国になるか、自力で防衛する軍を持つしかない。
    国際政治学の世界は、大きく理想主義と現実主義に分けられる。理想主義は人権や民主主義を共有できれば世界は平和になるという確信を広めることだが、それは暴力を伴う強引なものだったし、むしろ戦争を起こしてきた。理想主義が現状の分析を怠ったせいもある。理想主義は自由貿易が戦争の抑止になるという幻想を抱いているので、TPPも抑止の役に立つとしているが、現実主義を取り始めたオバマはそのような考えは一切ない。息子ブッシュは理想主義によって覇権国家アメリカの民主主義を推し広めようとしたが失敗し、オバマは現実主義の政策をとっている。安倍政権は理想主義である。
    アメリカは世界覇権をめざさす、西半球の地域覇権にとどまり、海を隔てた地域には軍事介入を必要最低限にとどめ、国力を温存するというオフショア・バランシング戦略をとることにした。
    理想主義の主張する、民主主義と経済的な自由が戦争を防ぐというのは、歴史的にはむしろ逆である。民主化の過程においては、かえって戦争が起きる。フランス革命は民主化の過程で内戦のみならず、対外戦争も引き起こしたし、1990年代のルワンダとブルンジでは、人権擁護団体の圧力によって民主化と自由化を急速に進めたが、民族対立が激化し、50万人以上の虐殺が起きてしまった。20世紀初頭、ドイツはイギリスの最大の貿易相手国だったが、第一次世界大戦が起こった。1930年代に日本とアメリカの対立が深まっていったが、日米貿易は1941年までその影響を受けなかった。 他方で、1920年代末以降の保護主義の台頭が世界経済を崩壊させ、第二次世界大戦を原因となったという通説があるが、当時の保護主義の連鎖がマクロ経済に与えた影響はわずかだった。世界経済の崩壊の原因は世界恐慌の勃発にあったが、その原因となったバブルとその崩壊は、保護主義ではなく資本移動の自由がもたらしたものだった。
    中国はアメリカ及び同盟国の兵力が戦域内に効果的に展開するのを妨害する、アクセス阻止・エリア拒否(A2/AD)という能力を高めることに傾注してきた。そうしたことでアメリカは中国と戦争することが難しくなった。歴史家のマイケル・ハワードは、戦争は作戦、兵站、技術、社会の4つの側面があり、その中で最も大切なのは社会であるという。2013年にアメリカ国内では海外で余計な口出しをせず、他国にできる限り任せるべきと答えた人が過去最高の52%に達した。
    日米安保条約第5条の規定には日本国の施政の下にある領域とある。もし中国が尖閣諸島を急襲して実効支配し、尖閣諸島が日本の施政の下になくなれば、日米安保条約は適用されなくなるということだ。韓国が実効支配する竹島や、ロシアで支配する北方領土に日米安保条約が適用されないのと同じである。アメリカにとって尖閣諸島は死活的問題も経済的利害もないところで、そんな場所のために核保有国と戦争するなどということは、議会や世論が認めるはずがない。
    現在は、覇権国家アメリカを中心とする国際秩序に、新興大国である中国が挑戦しているので、日本は国際秩序を守る側にいる。しかし、靖国参拝問題を巡っては日本と中国の立場は逆転する。中国は旧戦勝国として、国際秩序を守る側にいる。日本は敗戦国という立場に不満を持ち、国際秩序の再編を企てようとしていると捉えられる。各国のメディアが批判したのは、そのためである。
    日米同盟がなければ、いまの東アジアの秩序は維持できない。日米同盟が継続すればするほど、撤退後の混乱はいっそう大きくなる。日本の安全保障は完全にジレンマに陥っている。
    アメリカの中東政策は失敗に終わり、混乱を招いている。まずオバマ政権がエジプトのモルシ政権やトルコのエルドアン政権と手を結ぶ姿勢を示したことで、サウジアラビアとの関係に亀裂が走った。サウジアラビアはムスリム同胞団やトルコのイスラム主義勢力を敵視していたからである。とりわけ、アメリカが親米的であったムバラク政権を見捨てて民主化を支持したことで、サウジアラビアやイスラエルの信頼を失った。オバマは国連演説でイランの核開発では国連安保理を用いると話したが、サウジアラビアはその年の国連非常任理事国に選出されながら辞退するという前代未聞の行動に出た。もちろんアメリカへの抗議である。
    ロシアはアメリカやEUと対立したため、天然資源をお隣の中国に輸出しようとしている。2014年には40兆円もの取り引きを約束した。日本は中国を孤立させるためロシアに近づいたが、ロシアはウクライナ問題でアメリカと対立しているため、アメリカに歩調を合わせればロシアと離れることになる。そうなると得をするのは中国だけである。
    南沙諸島では中国の国際法違反を指摘する声があるが、該当するのは中国を含む166カ国が加盟する国際海洋条約である。だがアメリカは自国の利益を優先したがためにこの条約を批准していないのだ。これでどうやって中国を非難するのか。さらに言えば2003年のアメリカのイラク侵攻は国連決議を受けていない明らかな国際法違反である。日本はそれを手放しで支持したのである。
    中国にとって尖閣諸島の領有は、東アジアの覇者として認知され、地域覇権の地位を手に入れることができるのである。尖閣諸島はほんの小さな局地戦だが、日清戦争もそうだったのである。局地戦で敗れた清国は存続したけれど、下関条約でアジアの中心国が中国ではなく日本だと示された。中国が尖閣諸島を強奪する真の目的は、アメリカとの同盟の信頼性を低下させることだ。アメリカが同盟国の領土を守ろうとしなかったら、アメリカ覇権の威信が失墜するだろう。
    国際秩序は、人々が身近に感じるところ、地域から作っていくしかない。下から築き上げていくしかないのである。

  • 本書にいう国際情勢分析は妥当だと思います。私も、著者が典拠とする文献の幾つかは読みました。米国のグローバルパワーが低下する中、中国は地域覇権を目指します。狭間にある日本が何事もなく平穏に過ごす近未来はないのでしょう。ただ、中野氏が開陳している文脈は、「理想主義」「現実主義」の権威が書いたモノをつぎはぎしているのにすぎません。気鋭の論客なら独自の国際政治理論またはよって立つ位置を明らかにして書いてください。

  • 中国が尖閣諸島を狙う真の目的は、日米同盟を失墜させること。日本は自主防衛に進むべきなのか。

  • 本書は、世界の警察官を自認するアメリカの国力が低下し、オバマ政権下のアメリカが理想主義(「理想主義はアメリカ的な自由主義や民主主義の価値観を世界に広めることを理想とするが、非自由民主的でアメリカの価値観を拒否する国に対しては、その理想を実現するため、内政干渉や武力行使を辞さない」)から、現実主義(「現実主義は…軍事力などの勢力の均衡が世界秩序の安定をもたらすと考える。」)へと転換し、一極主義的な世界戦略を放棄し、「オフショア・バランシング」(「海を隔てた地域で起きる紛争については、軍事介入を必要最小限にとどめ、国力を温存するという戦略」)を採用して中国との協調路線を採るようになる、と解説している。
    また、 ロシアのウクライナ侵攻は、アメリカ及びEUの失策が原因であること、その結果、ロシアと中国が経済的な連携を深め、中国がアジアでの覇権確立に向けて攻勢に出てきていることも。このような地殻変動の中で、日本が今とるべき道は?5-10年後は一体どうなってしまっているのだろうか。とにかく中国の動きが怖い。

  • 覇権国家としての力を失いつつあるアメリカの外国戦略の見通しについて書かているが、内容はなかなか難しい。ウクライナ危機におけるロシアの狡猾さは読み応えあった。満足度7

  • レビュー省略

  • 日米同盟、中東情勢、ウクライナ危機について深く考えさせられた一冊。特に「第五章 ロシアの怒り」を読むと、ロシアのとった行動がよく理解できる。

  • 読了。

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