沈みゆく大国アメリカ (集英社新書)

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  • 集英社
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レビュー : 117
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207637

作品紹介・あらすじ

農業、食、教育、金融の領域を蝕んできた「1%の超富裕層」たちによる国家解体ゲーム。その最終章は、人類の生存と幸福に直結する「医療」の分野だった! 稀代のアメリカ・ウォッチャーの最新作。

感想・レビュー・書評

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  • 医療技術は世界最先端。でも、医療費は日本では考えられない
    ほどに高額のアメリカ。年間150万人の自己破産者のうち、高額
    な医療費の負担が原因のトップだそうだ。

    日本とアメリカでは医療制度が大幅に異なる。世界保健機構の
    お墨付きをもらっている日本の国民皆保険制度が、アメリカに
    はない。医療費をカバーするのは民間の医療保険だ。

    しかし、保険料の支払いが出来ない低所得者層では無保険の
    人も少なくない。だから、少々体の具合が悪くても病院へ行く
    ことをしない。

    そうするとどうなるか。生きるか死ぬかの瀬戸際になってから
    ERに駆け込み、手遅れになることも多い。

    これでまにも何度か医療制度改革に挑んだ大統領がいた。しかし、
    その度に壁にぶち当たった。この医療改革を実現したのが、オバマ
    大統領である。アメリカにも国民皆保険を!通称。オバマケアは、
    様々な理由で医療保険に加入できなかった人々から大歓迎を
    受けた。

    だが、その実態は…というのが本書である。悪名高き「愛国者法」
    をはじめ、アメリカ政府への批判を続ける著者の作品だけあって、
    オバマ大統領が手を付けた医療改革の矛盾点を鋭くついている。

    実際、無保険だった人が医療保険に加入できるようにはなった。
    しかし、そこには思いがけぬ制限があった。保険会社は加入保険
    の規定を見直し、充実した医療を受けようとすれば保険料は高額
    になる。そもそも、オバマケアのネットワークに加入している医師が
    極端に少ない。

    本書で実例として紹介されているのだが、シングルマザーの女性が
    強烈な腹部の痛みを訴え、遠くの街からスラム街の医師に電話で
    相談する。医師は彼女のいる場所の近くでオバマケアの診療を
    してくれる医師を探すのだが、一番近い場所でもかなり離れた地域
    の女性医師しか見つからなかった。

    その女性医師もオバマケアで殺到する患者で、急患を診る時間が
    割けない。腹痛を訴えていた女性はどうなったか。近所の病院へ
    駆け込み、保険証を握りしめて亡くなってしまった。

    対岸の火事…と思ってはいけない。いずれ日本にもアメリカのような
    「医療は人の命を救うものではなく、投資の対象」という現象が現れる
    かもしれない。

    農業vs工業で語られることの多いTPPだが、もし、日本がTPPに参加
    するようになると、アメリカの後押しを受けて規制緩和が進む。日本が
    世界に誇る国民皆保険さえ、崩壊するかもしれない。

    収益と株価。それだけが世の中を計る物差しになる時、社会保障も
    福祉もどこかへ去っていく。そして、残るのは高額な医療費による
    借金を背負うか、死を選ぶかの二者択一になるのだ。

    げ…嫌な世の中だよな。でも、近い将来、日本もアメリカと同じように
    なるかも。「社会保障に使います」と言って消費増税したのに、一体、
    どれだけ社会保障が削られているか…だもんな。

  • 日本の医療が狙われている?
    どういう話なのかと思ったら~
    「貧困大国アメリカ」でアメリカの問題点を鋭く指摘した著者の本です。

    オバマ大統領は、国民が皆、保険に入る改革を目指したが、それは業界の反対で骨抜きに。
    結果、出来上がったものは‥
    医療保険制度改革「オバマケア」とは、日本の保険制度とは全く違い、民間の会社の保険のどれかに入らなくてはいけないというもの。
    掛け金が高い割りに制限が多くて支払いは渋られ、とんでもない実態となっている。
    がん治療薬は自己負担になり、安楽死薬なら保険適用とは。
    手厚く治療すると医師が罰金をとられるという規則まである!
    一%の富裕層たちが、自分たちの都合のいいように国を動かしてしまう。
    それだけの力があるのだ。

    今のところは、日本の保険制度は世界に誇れる良いものだそう。
    ところが、アメリカの実情は日本にとっても他人事ではない。
    アメリカの保険会社は日本に進出している。
    戦略特区などとよくわからない名前をつけて、日本でも特例が通る地域が勝手に作られている。
    その狙いとは‥?

    また、消費税を上げる時には、いつも必ず、同時に法人税が引き下げられている。
    消費税そのものより、法人の優遇が続きすぎることのほうが問題では。
    大企業が豊かになれば徐々に一般庶民まで行き渡るだろうという楽観的?な経済理論は、現実にはどうも起こらないようだとだんだんわかってきたのだから。

    国の借金が膨らんでどうにもならないので、消費税アップもやむをえないという話があるが、他の各国では国の資産を差し引いたものが借金になるのに、なぜか日本では国の資産を引かないで金額を公表しているという。
    そんなことがあるとは。

    こういう大事な問題をちゃんと報道せずに、どうでもいい番組ばかり作っているところはないだろうか。
    一般の人も、いろいろなことを知り、そんなに馬鹿じゃないんだよというところを政府に感じさせないと。

    強引に国のあり方を動かしていこうとしているのは、何のため?
    思わず出た「保育園落ちた。日本死ね」というネットの発言が鋭く問題点を突いていたため、急に事態が動き出したりすることもあるんです。
    いい方向に変わるきっかけは、まだ作り得ると信じます☆

  • 報道を鵜呑みにしてはいけない。
    知識・情報が自分を守る。

  • アメリカの医療問題を理解するために一読。オバマケアの欠点について知ることができ勉強になった。オバマケアを擁護する話はここアメリカでよく聞く。アメリカにいて痛感することは、人が何々言っていることを鵜呑みするべからず。ということ。言っている人の立場はどのような立場で言っているのかを一歩引いて考えることが必要。日本の医療の素晴らしさは高齢にならないとなかなか病院にお世話になる機会が少ないので分からないのだと思う。アメリカの治療費の高さはクレージーといえる。私も日本の国民皆保険はなくしてはならないと思う。佐久総合病院については現地でガン患者に対する研修を受けた際に成功事例として少し聞いていたものの、「協同組合の精神」ということは今回この本で初めて知った。お父さんの病気/死をきっかけにこのテーマに取り組むことになった彼女に私自身の経験も含めて共感できた。医師の過剰労働はアメリカも日本にもある問題。彼女が取材したアメリカの毎月定額制のシステムは、まだ少数ながらも私の周りでも少し話題になってきていて、自分の将来の方向性も含めてかなり気になっているところ。
    ただ、細かい難なことを言えば、介護ケア施設の値段は、カルフォルニアという住宅も法外に高い地域だから余計に高いのではと思ってしまうが。。アメリカ平均だと月1000−4000ドルくらい(http://www.care.com/senior-care-cost-of-senior-care-p1145-q204478.html)なので、カルフォルニアの本で書かれた月6000ドル(認知症ケアは月9000ドル)はカルフォルニア物価だなと感じる。参考資料の英語の文献の数の少なさも気になる。ただ実際に足を運んで取材している生の話は貴重。そして、国民の無知を警告して、私たちに知ることを啓蒙するこの本は、一読の価値あり。なので5つ星!!

  • 図書館に予約して半年後にやっと読めた。それだけ人気があるという事。それが唯一の希望である気がする。

    先ずは「BOOKデータ」より
    鳴り物入りで始まった医療保険制度改革「オバマケア」は、恐るべき悲劇をアメリカ社会にもたらした。「がん治療薬は自己負担、安楽死薬なら保険適用」「高齢者は高額手術より痛み止めでOK」「一粒一〇万円の薬」「自殺率一位は医師」「手厚く治療すると罰金、やらずに死ねば遺族から訴訟」。これらは、フィクションではない。すべて、超大国で進行中の現実なのだ。石油、農業、食、教育、金融の領域を蝕んできた「一%の超・富裕層」たちによる国家解体ゲーム。その最終章は、人類の生存と幸福に直結する「医療」の分野だった!


    なぜそういうことが起きるのか。オバマは日本のような国民皆保険を実現したのではなかったか?仕組みは複雑すぎて、正直読んでも理解が追いつかなかったが、要するに保険会社や薬業者が、自分たちが損をしないように、いやむしろ儲かるように制度を作ったからである。というのが真相。

    出来るまで、政府は必ず美辞麗句で国民を騙そうとする。「日本の民主主義のお手本」アメリカでさえ、国民はそうやって騙されてきた。次に狙われるのは日本である。それは間違いない。では、どうするか。

    メディアは頼りにならない。アメリカがそうだったからである。一部の正統な批判は無視して、「オバマはアメリカを社会主義国にしようとしている」等のバカな議論で国民を振り回した。

    インターネットの信頼出来る情報を見分ける「目」を持つことである。では、どうすれば持つことが出来るか。そこは内に籠らず、外に出て人と議論しながら、自分の考えを「持つ」ことだと思う。その上で、こういう「キチンとした」本を読むことも必要だと思う。
    2015年6月23日読了

  • アメリカの庶民生活の真実をルポ。前作「貧困大国アメリカ」の続編と言える作品。前作で食生活、農作物がどのように作られ、流通にのり、消費者にどのような形で届けられるか、そしてそれは誰が儲かるシステムなのかを明かした。
    今回は医療分野の話。「国民皆保険」を政策に掲げ、実際実行に移したオバマ政権。今までのように無保険、民間保険任せではなく、政府主導で皆保険制度を作り上げ、施行したが、それは日本の皆保険制度とは全く違うものであることがこのルポでわかる。
    日本のそれは「社会保険制度」のひとつであり、誰かこの保険で儲かるというものではない。しかしアメリカのそれは民間保険会社が作り上げた保険に国民皆が加入しなければならないという制度で、結局保険会社がビジネスとして作り上げたものである。
    資本主義国家アメリカでは、根本的に会社、株主が利益を得られるよう、システム化されている。その結果、たった人口の1%の信じられないほどの富を持つ富裕層を産んでいるのだ。
    この本を読んで、つくづく日本に生まれて良かったと思った。今、日本の保険制度も高齢化社会等で医療費が増大し、大変だ、個人負担が増えそうだ等不満や不安が話題に上る。既にアメリカの保険会社は既にその眼を日本に向けているという。、なんとかこの社会保障制度としての国民皆保険制度は守り抜いていかねば、アメリカのように人の命までが、ビジネスとなってしまう。日本の医療制度に対する警鐘とも言える本だ。

  • 日本の官僚は半分以上が東大で、官僚主義が蔓延ってるという悪評もあるが、一方で優れた頭脳が官僚になることで国のシステムの大きな破綻は、アメリカに比べれば少ないのかもなぁと思った。

    オバマケア、めちゃくちゃなルールだったんですね。。この大混乱が予期できてなかったとしたら、作ってる側は能無しだったとしか。。。

    内容は広く薄く、しかし悪くなかったです。もう少しちゃんとした本を読みたくなりました。

  • 知らないってことはこんなにも怖いことなのか。
    そう戦慄した一冊。
    主テーマはアメリカの医療制度。とりわけオバマ大統領政権下で成立した「オバマケア」。
    恥ずかしながら私も言葉すら知らなかった。

    というか、アメリカの医療制度と比較しその非営利性が素晴らしい「宝の1つ」と述べられてた日本の医療制度も私はよく分かっていないのだと実感した。
    世界へ門戸が開く法案が成立し、日本の医療制度も変容していくかもしれない事実も。

    「無知は弱さになる」。著者が述べる通りだ。自分たちの身を守るためには、無知では許されない。そう危機感を覚えた。

    しかし民主党・オバマ元大統領政権は個人的にはクリーンなイメージが強くて、アメリカ国民に受け入れられてた感覚があったけど、実際はこんなことになってたんだ、というのは驚いた。
    国民には綺麗な面だけをアピールしその裏ではしたたかに富める者に利益が流れる仕組み。おぞましい。

    共和党トランプ大統領の勝利は医療制度面での国民の反発も少なからず影響してたのかもなって本著を読んで感じた。

    しかし、アメリカは知れば知るほど貧困格差が広がり続ける国ってのが見えてくる。
    そして日本がその道を辿らない保証はどこにも、ない。

    著者の現状への危機感と「伝えなければ」という使命感をとても感じる。それを受け取った私たちができることは無知を恥じること、自分でも政治に興味を持ち、届く情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考え続けることだ。
    少なくともこういった著書が何の圧力もなく当たり前に出版され続ける世の中を守りたいと私は感じる。

  • オバマケアの実態を暴く。トランプが生み出される土壌がいかに作られたかの一端が理解できる内容なので、今読む価値のある本。野放図な外資系商品の流入を避けるためにも改めてTPPが結ばれない方が良いと言えるかもしれない。

  • アメリカの医療、医療保険についての絶望的なルポ。医療がすっかり保険会社にイニシアチブを取られてしまったため、病院が診察や治療を拒むとか、どんな治療をするかは医師ではなく保険会社が決めているとか、皆保険になったのは表面上だけのことで保険会社に引き受けを強制した結果よい(加入者にとって割安な)保険は廃止されてしまったとか、医師も保険会社から支払いを断られると持ち出しになるし医療訴訟の保険料が収入の8割を超えてワーキングプアだとか、本当にもうウンザリするような話しのオンパレード。
    本書の鳴らす警鐘には傾聴に値するものがある。
    統計的な話しと実例、インタビューもよく書けている。

    ただ、経験上、この手の危機感を煽りまくる煽情的な話しは、話半分に割引いておく必要がある。

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著者プロフィール

堤未果(つつみ・みか) ジャーナリスト。東京生まれ。ニューヨーク一市立大学大学院で修士号取得。米国野村證券に勤務中、9・11同時多発テロに遭遇。以後、ジャーナリストとして執筆・講演活動を精力的に続けている。主な著書に『ルポ・貧困大国アメリカ1・2』『株式会社 貧困大国アメリカ』(以上、岩波新書)、『沈みゆく大国アメリカ』『沈みゆく大国アメリカ 逃げ切れ!日本の医療』(共に、集英社新書)、『アメリカから自由が消える』(扶桑社新書)、『政府は必ず嘘をつく 増補版』(角川新書)などがある。

「2016年 『政府はもう嘘をつけない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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