沈みゆく大国 アメリカ (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
3.86
  • (89)
  • (114)
  • (86)
  • (16)
  • (5)
本棚登録 : 1032
感想 : 139
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207637

作品紹介・あらすじ

農業、食、教育、金融の領域を蝕んできた「1%の超富裕層」たちによる国家解体ゲーム。その最終章は、人類の生存と幸福に直結する「医療」の分野だった! 稀代のアメリカ・ウォッチャーの最新作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 沈みゆく大国 アメリカ
    著:堤 未果
    集英社新書

    なんという欺瞞、オバマケアの真相

    ■被保険者の実態

    もともと、アメリカでは、医療保険は、自己責任、
     ①雇用主を通じて医療保険に入る
     ②失業すれば、高額な医療保険を自己負担で加入しなければならない

    ⇒ 自己負担金は、125万で、免責は、50万 なんという高額
    ⇒ 全米50州のうち45州は、保険市場の50%以上が、1,2社で独占されている ⇒ つまり競争が起こらない
    ⇒ オバマケアのせいで、今までよりずっと条件の悪い保険に加入せざるをえなくなった
      補助金は、65000ドルの年間所得があるともらえない
      一生つかうことのない、妊婦医療・避妊薬・薬物中毒カウンセリングがついている

    メディケア:65歳以上の高齢者と障害者・末期腎疾患患者のための公的医療保険
    メディケイド:最低所得層向けの公的医療保険
    そして、オバマケア

    ⇒ アメリカの医療保険は恐ろしく複雑 ⇒ 一般の人には理解できない
    ⇒ 政府が薬価交渉権をもっていないので、製薬会社は言い値で、薬を販売している ⇒ おそろしく薬が高い
    ⇒ オバマケア導入後、保険を加入させないために、フルタイムからパートタイムへ、そのために、労組の加入率が低下
    ⇒ メディケイドは、加入条件は非常に厳しい

    ■医療従事者の実態

    肝心のオバマケアを扱う医師がみあたらない ⇒ アメリカでは病院が公的保険を拒否することができる
    オバマケアを適用するためには、膨大な事務が必要 ⇒ 医療事務が膨大に増える ⇒ 医師の66%がオバマケアのネットワークにははいらない
    ⇒ 専門職の中で自殺率がいちばん高いのが医師 ⇒ ここでも、高額な訴訟保険 2000万の収入で、訴訟保険料が 1750万 ってありえない
    ⇒ メディケイドもオバマケアも、彼らを診れば診るほど、病院も、医師も赤字になってしまう

    ■真の勝者

    保険会社
    製薬業者

    シングルペイヤー案を排除して、巨大な利益が得られるビジネスモデルを作って、全米を支配している
    これが、真のオバマケアの実態だ

    ⇒ これを日本の国民皆保険制度、医療制度に導入しようとしている

    <結論> アメリカの理不尽な保険・製薬複合体より、日本を守れ!

    目次
    はじめに 父の遺言
    序章 「一パーセントの超・富裕層」たちの新たなゲーム
    第1章 ついに無保険者が保険に入れた!
    第2章 アメリカから医師が消える
    第3章 リーマンショックからオバマケアへ
    第4章 次のターゲットは日本
    参考資料

    ISBN:9784087207637
    出版社:集英社
    判型:新書
    ページ数:208ページ
    定価:720円(本体)
    発行年月日:2014年11月
    発売日:2014年11月19日第1刷
    発売日:2015年02月24日第5刷

  • 図書館に予約して半年後にやっと読めた。それだけ人気があるという事。それが唯一の希望である気がする。

    先ずは「BOOKデータ」より
    鳴り物入りで始まった医療保険制度改革「オバマケア」は、恐るべき悲劇をアメリカ社会にもたらした。「がん治療薬は自己負担、安楽死薬なら保険適用」「高齢者は高額手術より痛み止めでOK」「一粒一〇万円の薬」「自殺率一位は医師」「手厚く治療すると罰金、やらずに死ねば遺族から訴訟」。これらは、フィクションではない。すべて、超大国で進行中の現実なのだ。石油、農業、食、教育、金融の領域を蝕んできた「一%の超・富裕層」たちによる国家解体ゲーム。その最終章は、人類の生存と幸福に直結する「医療」の分野だった!


    なぜそういうことが起きるのか。オバマは日本のような国民皆保険を実現したのではなかったか?仕組みは複雑すぎて、正直読んでも理解が追いつかなかったが、要するに保険会社や薬業者が、自分たちが損をしないように、いやむしろ儲かるように制度を作ったからである。というのが真相。

    出来るまで、政府は必ず美辞麗句で国民を騙そうとする。「日本の民主主義のお手本」アメリカでさえ、国民はそうやって騙されてきた。次に狙われるのは日本である。それは間違いない。では、どうするか。

    メディアは頼りにならない。アメリカがそうだったからである。一部の正統な批判は無視して、「オバマはアメリカを社会主義国にしようとしている」等のバカな議論で国民を振り回した。

    インターネットの信頼出来る情報を見分ける「目」を持つことである。では、どうすれば持つことが出来るか。そこは内に籠らず、外に出て人と議論しながら、自分の考えを「持つ」ことだと思う。その上で、こういう「キチンとした」本を読むことも必要だと思う。
    2015年6月23日読了

  • 医療技術は世界最先端。でも、医療費は日本では考えられない
    ほどに高額のアメリカ。年間150万人の自己破産者のうち、高額
    な医療費の負担が原因のトップだそうだ。

    日本とアメリカでは医療制度が大幅に異なる。世界保健機構の
    お墨付きをもらっている日本の国民皆保険制度が、アメリカに
    はない。医療費をカバーするのは民間の医療保険だ。

    しかし、保険料の支払いが出来ない低所得者層では無保険の
    人も少なくない。だから、少々体の具合が悪くても病院へ行く
    ことをしない。

    そうするとどうなるか。生きるか死ぬかの瀬戸際になってから
    ERに駆け込み、手遅れになることも多い。

    これでまにも何度か医療制度改革に挑んだ大統領がいた。しかし、
    その度に壁にぶち当たった。この医療改革を実現したのが、オバマ
    大統領である。アメリカにも国民皆保険を!通称。オバマケアは、
    様々な理由で医療保険に加入できなかった人々から大歓迎を
    受けた。

    だが、その実態は…というのが本書である。悪名高き「愛国者法」
    をはじめ、アメリカ政府への批判を続ける著者の作品だけあって、
    オバマ大統領が手を付けた医療改革の矛盾点を鋭くついている。

    実際、無保険だった人が医療保険に加入できるようにはなった。
    しかし、そこには思いがけぬ制限があった。保険会社は加入保険
    の規定を見直し、充実した医療を受けようとすれば保険料は高額
    になる。そもそも、オバマケアのネットワークに加入している医師が
    極端に少ない。

    本書で実例として紹介されているのだが、シングルマザーの女性が
    強烈な腹部の痛みを訴え、遠くの街からスラム街の医師に電話で
    相談する。医師は彼女のいる場所の近くでオバマケアの診療を
    してくれる医師を探すのだが、一番近い場所でもかなり離れた地域
    の女性医師しか見つからなかった。

    その女性医師もオバマケアで殺到する患者で、急患を診る時間が
    割けない。腹痛を訴えていた女性はどうなったか。近所の病院へ
    駆け込み、保険証を握りしめて亡くなってしまった。

    対岸の火事…と思ってはいけない。いずれ日本にもアメリカのような
    「医療は人の命を救うものではなく、投資の対象」という現象が現れる
    かもしれない。

    農業vs工業で語られることの多いTPPだが、もし、日本がTPPに参加
    するようになると、アメリカの後押しを受けて規制緩和が進む。日本が
    世界に誇る国民皆保険さえ、崩壊するかもしれない。

    収益と株価。それだけが世の中を計る物差しになる時、社会保障も
    福祉もどこかへ去っていく。そして、残るのは高額な医療費による
    借金を背負うか、死を選ぶかの二者択一になるのだ。

    げ…嫌な世の中だよな。でも、近い将来、日本もアメリカと同じように
    なるかも。「社会保障に使います」と言って消費増税したのに、一体、
    どれだけ社会保障が削られているか…だもんな。

  • 日本の医療が狙われている?
    どういう話なのかと思ったら~
    「貧困大国アメリカ」でアメリカの問題点を鋭く指摘した著者の本です。

    オバマ大統領は、国民が皆、保険に入る改革を目指したが、それは業界の反対で骨抜きに。
    結果、出来上がったものは‥
    医療保険制度改革「オバマケア」とは、日本の保険制度とは全く違い、民間の会社の保険のどれかに入らなくてはいけないというもの。
    掛け金が高い割りに制限が多くて支払いは渋られ、とんでもない実態となっている。
    がん治療薬は自己負担になり、安楽死薬なら保険適用とは。
    手厚く治療すると医師が罰金をとられるという規則まである!
    一%の富裕層たちが、自分たちの都合のいいように国を動かしてしまう。
    それだけの力があるのだ。

    今のところは、日本の保険制度は世界に誇れる良いものだそう。
    ところが、アメリカの実情は日本にとっても他人事ではない。
    アメリカの保険会社は日本に進出している。
    戦略特区などとよくわからない名前をつけて、日本でも特例が通る地域が勝手に作られている。
    その狙いとは‥?

    また、消費税を上げる時には、いつも必ず、同時に法人税が引き下げられている。
    消費税そのものより、法人の優遇が続きすぎることのほうが問題では。
    大企業が豊かになれば徐々に一般庶民まで行き渡るだろうという楽観的?な経済理論は、現実にはどうも起こらないようだとだんだんわかってきたのだから。

    国の借金が膨らんでどうにもならないので、消費税アップもやむをえないという話があるが、他の各国では国の資産を差し引いたものが借金になるのに、なぜか日本では国の資産を引かないで金額を公表しているという。
    そんなことがあるとは。

    こういう大事な問題をちゃんと報道せずに、どうでもいい番組ばかり作っているところはないだろうか。
    一般の人も、いろいろなことを知り、そんなに馬鹿じゃないんだよというところを政府に感じさせないと。

    強引に国のあり方を動かしていこうとしているのは、何のため?
    思わず出た「保育園落ちた。日本死ね」というネットの発言が鋭く問題点を突いていたため、急に事態が動き出したりすることもあるんです。
    いい方向に変わるきっかけは、まだ作り得ると信じます☆

  • 報道を鵜呑みにしてはいけない。
    知識・情報が自分を守る。

  • アメリカの医療問題を理解するために一読。オバマケアの欠点について知ることができ勉強になった。オバマケアを擁護する話はここアメリカでよく聞く。アメリカにいて痛感することは、人が何々言っていることを鵜呑みするべからず。ということ。言っている人の立場はどのような立場で言っているのかを一歩引いて考えることが必要。日本の医療の素晴らしさは高齢にならないとなかなか病院にお世話になる機会が少ないので分からないのだと思う。アメリカの治療費の高さはクレージーといえる。私も日本の国民皆保険はなくしてはならないと思う。佐久総合病院については現地でガン患者に対する研修を受けた際に成功事例として少し聞いていたものの、「協同組合の精神」ということは今回この本で初めて知った。お父さんの病気/死をきっかけにこのテーマに取り組むことになった彼女に私自身の経験も含めて共感できた。医師の過剰労働はアメリカも日本にもある問題。彼女が取材したアメリカの毎月定額制のシステムは、まだ少数ながらも私の周りでも少し話題になってきていて、自分の将来の方向性も含めてかなり気になっているところ。
    ただ、細かい難なことを言えば、介護ケア施設の値段は、カルフォルニアという住宅も法外に高い地域だから余計に高いのではと思ってしまうが。。アメリカ平均だと月1000−4000ドルくらい(http://www.care.com/senior-care-cost-of-senior-care-p1145-q204478.html)なので、カルフォルニアの本で書かれた月6000ドル(認知症ケアは月9000ドル)はカルフォルニア物価だなと感じる。参考資料の英語の文献の数の少なさも気になる。ただ実際に足を運んで取材している生の話は貴重。そして、国民の無知を警告して、私たちに知ることを啓蒙するこの本は、一読の価値あり。なので5つ星!!

  • 内容に対して、タイトルは少し大袈裟だが、本書に示されている一点をとっても、アメリカは滅びつつあるか。

    オバマケアの知られざる一面が、克明に描かれていて、いかに、日本の皆保険制度が優れているかがよく理解できる。地獄の沙汰も金次第では、あまりにも切なすぎる。

    日本は安保法案の成立を受け、益々、アメリカへの依存を強め、アメリカは少なからず、見返りを近い将来求めてくる。安全保障へのただ乗りは、許されない。後方支援だけでなく、経済的な見返りも、かならす、求めてくるだろう。

    その一つが、TPPでも求められている、この医療分野だろう。米だけでなく、この分野も守らなけばいけない。












    その、一つが

  •  主張はよく分かったが、オバマケアを評価する側の意見も聞いてみたくなった。マイケル・ムーアもオバマケアを称賛したそうだ。
     マイナス面が多くあることは分かったのだが、以前より良くなった面はないのか?

    -------------------------------------------

     著者は、オバマ・ケアの問題点を指摘する。

     アメリカでは年間150万人の国民が自己破産者となる。自己破産理由のトップは医療費。

     アメリカには日本のような「国民界保険制度」がない。
     医療業界でも、市場原理が支配するため、薬も医療費もどんどん値上がりし、一度の病気で多額の借金を抱えたり破産するケースが珍しくない。

     世界最先端の医療技術を誇りながら、アメリカでは、毎年4万5000人が、適切な治療を受けられずに亡くなってゆく。

     労働者は雇用主を通じて民間保険に加入するが、利益をあげたい保険会社があれこれ難癖をつけ、保険金給付をしぶったり、必要な治療を拒否するケースが多い。
     医療破産者の8割は保険加入者が占める。

     日本の国民皆保険制度は、WHOが絶賛し、世界40か国が導入する制度。日本が持つ数少ない宝ものの一つだ。

  • アメリカの庶民生活の真実をルポ。前作「貧困大国アメリカ」の続編と言える作品。前作で食生活、農作物がどのように作られ、流通にのり、消費者にどのような形で届けられるか、そしてそれは誰が儲かるシステムなのかを明かした。
    今回は医療分野の話。「国民皆保険」を政策に掲げ、実際実行に移したオバマ政権。今までのように無保険、民間保険任せではなく、政府主導で皆保険制度を作り上げ、施行したが、それは日本の皆保険制度とは全く違うものであることがこのルポでわかる。
    日本のそれは「社会保険制度」のひとつであり、誰かこの保険で儲かるというものではない。しかしアメリカのそれは民間保険会社が作り上げた保険に国民皆が加入しなければならないという制度で、結局保険会社がビジネスとして作り上げたものである。
    資本主義国家アメリカでは、根本的に会社、株主が利益を得られるよう、システム化されている。その結果、たった人口の1%の信じられないほどの富を持つ富裕層を産んでいるのだ。
    この本を読んで、つくづく日本に生まれて良かったと思った。今、日本の保険制度も高齢化社会等で医療費が増大し、大変だ、個人負担が増えそうだ等不満や不安が話題に上る。既にアメリカの保険会社は既にその眼を日本に向けているという。、なんとかこの社会保障制度としての国民皆保険制度は守り抜いていかねば、アメリカのように人の命までが、ビジネスとなってしまう。日本の医療制度に対する警鐘とも言える本だ。

  • アメリカの医療費がとんでもなく高いことは駐在しているときに実感した。出産と病気が同時期に重なると破産するとも聞いていたし、この本に書かれている人々が直面している命にも関わる問題は実際にあったことだろうと素直に思う。一方、民主党か共和党かにかかわらず政治家が国家を解体しようしているとか、ウォール街、保険会社、製薬会社の陰謀説とかという扇情的なストーリーは、ウケるためには必要なのかなあとは思うが、まるで週刊誌や夕刊紙位の質感だ。とは言え、機能不全のセクターを民営化していくことの功罪を問うていると思えば、この本の存在価値は十分ある。折角、悪役を設定して面白く書いたのだから、幅広く読まれて欲しい。

全139件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

堤未果の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
スティーブン・ピ...
トマ・ピケティ
ジャレド・ダイア...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×