沈みゆく大国 アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207859

作品紹介・あらすじ

アメリカ経済を喰い尽した1%の超・富裕層(スーパー・リッチ)が、日本の医療・介護市場を狙っている。綿密な取材と膨大な資料を通じ、すべてのカラクリを解き明かした衝撃の書き下ろし。沈みゆく大国シリーズ、第2弾!

感想・レビュー・書評

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  • 基本的には堤さんの一連の主張を繰り返した本。

    これはもう資本主義の終焉だね。自分を含め無知、無関心の結果、この日本でも抜き差しなら無い所までもう来ている。新安保法案の時に一時的に、その成立を阻止しようと市民レベルでも盛り上がったが、日本の皆保険制度は何としても守らねばならない。

    もう、アメリカの強欲資本主義の餌食になってはいけないだろう。処方箋は、堤さんの物だけでなく色々あるような気もする。何れにしても、無知、無関心が一番ダメ。

    幸い選挙権も18歳に引き下げられる。アメリカでリーマンショック後一人で、保険会社の前でビラ配りする若者姿が本書でも紹介されているが、こうしたことから粘り強く始めなければいけない。

    それにしても、マスコミの怠慢は許せない。もっと分かりやすく伝える義務がある。

  • 国民会保険制度は社会保障である
    アメリカはこの仕組みをこわそうとしている

    健康保険制度はかなり複雑である
    時間をかけて勉強しなければ理解できない
    一部の有識者により国民に知らされぬままこの制度が蝕まれつつある
    民間医療保険・薬の自由価格
    かわった後に元に戻すことは困難だ

    著者の主張は大げさかもしれない
    医療にはお金かかかること
    知るきっかけになる

  • 協同の力で医療を再生する。殺伐とした閉塞感の中に一筋の光があるようで、少し希望が持てた。この現実が知らされていないことが恐ろしい。

  • メインはオバマケアです。
    崩壊するアメリカの医療現場がリアルに描かれています。
    本当に読んでいて、恐ろしくなります。
    これが世界一の経済大国アメリカの医療や保険の現実なんです。1%の超富裕層のために、医療と保険が食い物にされている現実を突きつけられました。私は少なくとも、絶対にアメリカには住みたくないと思いました。
    そして、日本も決して他人事ではなく近い将来同じようになるのでは?という危機感を持ちました。

    前も書いたかもしれませんが、アメリカの今を知るには、堤未果氏と町山智浩氏の著書で事足りると思っています。
    それ程秀逸な著書の数々です。

    おすすめ
    堤未果氏
    「ルポ 貧困大国アメリカ」
    「ルポ 貧困大国アメリカⅡ」
    「(株)貧困大国アメリカ」

    町山智浩氏
    「教科書に載っていないUSA語録」
    「99%対1%アメリカ格差ウォーズ」
    「底抜け合衆国新版」
    「アメリカは今日もステロイドを打つ」
    「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」

  •  どこがどうとは言いにくいのだけど、何となくしっくり来ない本だった。
     糾弾する相手と内容は、必ずしも間違ってはいないと思うのだけど。

     情報を得たいと思って街角で買った見知らぬ新聞が、実は政党機関紙でアジテーションしか載ってなかった、みたいな感じ。

  • この連作は、後編である本作を読ませたいがためのものだったんですね堤さん、という感想。前編を読んだときは、あまりの文章の駆け足っぷり、はっきりいってしまえば説明の雑さ、に軽い幻滅すら覚えてしまったものだけど。後編を読んで、一応それは氷解しました。

    相変わらず「貧困大国アメリカ」に比べると説明は粗いけど、前編よりはずっと丁寧でわかりやすかった。内容もほかならぬ我らが日本のことだし。前編で粗っぼく学んだオバマケア下のアメリカ事情に照らして、省みた日本の国内事情はどうなんだ、というのがこの後編のテーマ。

    鮮明にアメリカ〜国際社会をターゲットに取っていた「貧困大国アメリカ」三部作と違って、この「沈みゆく大国アメリカ」二部作は、表題に「アメリカ」と謳いつつも、主に日本の話なんですよね。憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」規定に従って、あくまでも社会保障として整備されてきた日本の皆保険制度。それが時々刻々と危機に瀕している、というかむしろすでに大幅に侵食されつつある、という警告の書。

    その侵食の実情について、そして一見するとお先真っ暗にすら見える未来を免れて共存共生の社会を築いていくための対抗策と現在地について、実に多彩な提言がなされていて参考になった。特に医療現場で現に働いてる人なんか、この本を読んだら日常経験してることと突き合わせて深く納得するところがあるんじゃなかろうか。
    そんなことを思いました。

    もちろん、最後は政治家でも官僚でも医療従事者でもなく、利害当事者である僕たち市民が目覚めなきゃどうにもならない問題、ではあるわけなんだけれども。
    固定観念をまた1つ、打ち破ることができた。読んでみてよかった、と思います。

  • 日本は、医療費が実は諸外国と比べてもかなり低く、さらに患者の自己負担率はとても高い国らしい。いろいろと考えさせられる。

  • 知らないことは、隙をつくることになる。

    本書を読んで、強くそのことを実感した。
    日本の医療制度は本当によくできている。しかし、多くの人は家族か自らが利用するまでそのことに気づかない。
    高額療養費制度の存在など、その最たるものだろう。

    いかにわたし達が守られていて、それを邪魔に思い、奪い去ろうとする存在がいるのか。
    そして今、誰の手によって奪われようとしているのか。
    これらを知ることができただけでも、大きな収穫だったと思う。

    わたしも、父の病で触れるまで知らなかった、日本が守り続けてきた医療制度。
    しかし、わたしはもう知っている。
    失う気など、少しもない。作者が書いていたように、わたしも行動を起こしたいと思う。
    政治に諦めの気持ちを抱いている場合ではないようだ。

  •  製薬会社と民間医療保険によって市場化が進んでしまったアメリカ。そのアメリカの医療現場を破壊した市場原理を日本の医療に導入しようとしているアメリカの動きがよくわかる。
     アメリカでは、薬価は製薬会社の言い値で決まるという。これは保険会社との協議、ないし話し合いで決まるのではないだろうか。協議の形をとっているにしても、製薬会社の立場が圧倒的に強く、言い分がほとんど通るがゆえの「言い値」という言い方だろうか。
     ともかく、アメリカの医療の特徴は以下のようになるだろう。
    ① 所得層によって入る医療保険が異なり、また加入した医療保険によってカバーしている医療内容が違うため、受けられる医療の格差が激しい。
    ② 製薬会社と政府が政治献金・ロビー活動で強く結びつき、薬代が高止まりしている。医薬品に市場原理はそぐわないが、逆の意味で反福祉的に働いている。
    ③ 医療機関も利潤を追求しているため、お金がないことを理由に、患者の最善の利益が図られないこともありうる。
    これに対して、日本の医療は以下のような良い点とよくない点を持っている。
    ① 国民皆保険という制度が浸透し、公的保険で提供される医療サービスがほとんどをしめる。医療サービス内容が患者の経済力に左右されにくく、平等である。
    ② 医療機関は公的保険による医療サービスを提供すればいいという考えのため、患者を平等に扱う。
    ③ 高度な医療技術が同じ公的医療保険で受けられる。
    ④ 悪い点 現物支給のため、検査漬け、薬づけの医療になりがちで、無駄が多い。
    ⑤ 患者の話を丁寧に聞く見返りが医療側に少なく、定着しない。
    ⑥ いい医療が浸透しているため、臨床研究をすすめる環境が整わない。
    ⑦ ベッドが多い。在宅医療の環境が整っていない。
    ⑧ 保険外サービス、自由診療の部分で自由度が少なく、患者に選択肢が少ない。
     こうやって書き出してみると、日本の医療は優れている。混合診療も無制限に拡大すると、国民皆保険が崩れていく心配があるため、それほど自由度をあげる必要はないと思われる。保険診療がエビデンスが備わった医療から適用させていけば、恩恵が広がっていくという精神は非常に理解できる。
    日本の医療で、しいて問題をあげるとすると、出来高で過剰診療、過剰投与、過剰治療の余地が認められる点か。これもまた、過小治療などに比べれば、患者にとってむしろ望んで受けている人がいるわけなので、いいようにも思える。
    さて今後の問題であるが、TPPがやはり焦点になるものと思われる。できるだけ必要な医療については、できる限り保険診療でカバーする、しかも高額療養制度を維持する、というところは、異論がないところである。
    医療費の伸びを抑えるという点では、薬剤費の部分が大きいわけなので、この部分を合理化すべきように思える。検査も同じ。
    また入院ベッドの削減も進められる地域はすすめたほうがいいと思う。

  • 沈みゆく大国アメリカの第二弾、強欲資本主義とエセ民主義国家と化したアメリカという超ニヒリズムの実態。

    しかしながら、草の根部分から、超ニヒリズムを克服しようとする芽生えがあるとの現場取材の報告があり、少々の安堵感が得られた。

    しかしながら、金で権力を操る強欲資本主義の攻撃はまだまだ続くだろう。

    お金で情報操作を繰り返され、庶民も騙され続けているが、目覚めの時点はいつ来るか不明だが、ある限界点に達した時、一挙に、流れは変わるのだろう。

    地道な強欲資本主義との戦いを期待しておこう。

    日本社会に忍び寄るアメリカの強欲資本主義、無知・不勉強の隙間を突かれる。

    くれぐれも、政府、マスゴミが垂れ流す強欲資本主義の下請け情報にご注意を!

  • アメリカは先進国だよね?と疑いたくなるような
    事例が続々...日本に生まれて良かったと孫子の代まで
    言えるようにこの医療皆保険制度を守り抜かねば。アメリカで起こった事は以前は10年後には日本で起こると言われていたけれど今じゃサイクルがもっと早くなっているからここが踏ん張り時なのかも知れない。

  • 前著に続き、気鋭のアメリカウォッチャーがオバマケアの裏面を告発し、さらに「強欲資本主義」が日本を襲うと、警告する。我が国の、世界に冠たる『国民皆保険』が、その存立を危うくするのだと。
    「無知は弱さになる。」その言葉をかみしめながら、日本の、そしてわれわれ一人ひとりの対応を、過たることなきよう眼を据えよう。

  • 少し古いけど、話は、今でもよくある。アメリカと侵略をよく見極めねば。政治家、政治を庶民は、注視していかねば!

  • 貧困大国アメリカから、ずっとブレずに取材し書き続ける作者の姿勢に頭が下がる。
    権力者をこき下ろす語り口も顕在である。
    しかし、変わらないのがそろそろ物足りない気がする。別の切り口も欲しいな、という印象。

  • 医療に市場原理を持ち込んだ結果米国で起こった問題を提示した上で、医療の本来の姿を取り戻そうと草の根で活動する人達が描かれている。

    強欲資本主義の行き着く先でそれを正常化するのは「何かおかしい」と感じる市民とSNSなのかもしれない

  • アメリカの様々な問題点を指摘していた前作までと比べ、アメリカという入り口から日本の医療について切り込んでいる。アメリカの話を聞いていると何やら問題ばかり、利権・既得権益保持者ば好きなように制度を利用しているといったイメージを持ってしまうが、より身近(といっても自分も詳しいわけではないが)な日本の話になると、少し印象が変わってくる。

    何にせよ、改革をすれば、どの層がかぶるか?という議論は必要だとしても、今までより損してしまう層が出てきてしまうことはやむを得ない事ではないかとも感じるし、無い袖が触れない状態となってしまっていれば改悪もある程度やむを得ない気がしてしまう。もちろん、無駄を出来るだけ省くという努力を公共またはそれに準ずる医療サイドができているのか?というとそこも疑問ではあるが。

    P.63
    「日本の国民皆保険は、社会保障なのです」
    そういうのは、中央大学法学部の宮本太郎教授だ。
    「これは保険という名前がついていても、アメリカのような民間保険とはまったく性質が違う。社会保障のひとつの形態として理解しなければなりません。つまり、全国民が入れる条件を確保することが非常に重要です。労働市場の構成が変わり、国民健康保険についている加入者が自営業者から無職と低所得層中心になってしまった今、揺らいでしまったこの根幹を、どう守ってゆくかが問われているのです」

    P.81
    「ニューイングランド医学ジャーナル」元編集長で、ハーバード医学校社会医学科上級講師のマーシャ・エンジェル博士は、著書『ビッグ・ファーマ』の中で、大手製薬企業の提供する新薬の大半が既存薬の改良版であることや、製薬企業が自社製品関連の臨床に関与しすぎていること、大手製薬会社が新薬研究開発費よりもはるかに多くの費用を<マーケティング・運営管理費>にかけているなどの実態を、詳細なデータと公文書、綿密な取材によって暴いている。「多くの一般国民が信じている<開発費の回収のために薬に高値がつくのは仕方ない>という説は事実ではありません」
    エンジェル博士によると、このマーケティング費用には製薬会社による医師や焼死者への教育、学会や医師への謝礼、各種販促活動などが含まれる。そして開発費の中には、マーケティング目的の市販後臨床試験も高い割合でいれられているという。

    P.99
    結局国民の無知と無関心が、政治の裏側にいる強欲資本主義の面々に、やりたい放題させるのだ。
    どこかで聞いたことがないだろうか。
    <法案の都合の悪い部分は国民に伏せる>
    <法律を成立させるには、有権者の愚かさが不可欠>
    そして、一番肝心な部分を取り除いた形で、法案の素晴らしい部分ばかりを繰り返し宣伝する、政治と利害関係のある御用学者と大手マスコミ。

  • 堤未果氏の最近の本。医療にテーマを絞っている。格差は予想以上。日本はアメリカの後追わないでほしいところだ。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • ここでもあり得ん事実が浮き彫りに。それにしても、訴訟の保険で収入の大半が持っていかれるって、そんな環境でまともな仕事が続けられる訳ない。かの大国の医療評判が落ちている大きな理由は、その社会制度にあるんだと思わされる。オバマさん、かなり優れたリーダーという認識だったけど、細かいところで大きなポカもやっとる訳だな。ここで書かれている民主党主導の医療制度改革がイケてないとすると、逆説的に、今のトランプ共和党では制度が改善されてたりする?となると、彼の政治も悪いところばかりでもない?気になります。

  • ・国民皆保険制度の素晴らしさと、今それが解体されるかもしれない危険があることを啓発する本。
    ・無知は良くないと改めて感じた。制度についてよく知り、感謝するべきですね。
    ・政府に騙されないよう気を付けなくては!

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著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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