日本の大問題 「10年後」を考える ─「本と新聞の大学」講義録 (集英社新書)

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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207927

作品紹介・あらすじ

朝日新聞×集英社が仕掛ける連続講座第3弾。姜尚中と一色清を中心に、佐藤優、上昌広、堤未果、宮台真司、大澤真幸、上野千鶴子という日本最高の知性が、日本の「これからの10年」を大胆予測する!

感想・レビュー・書評

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  •  (堤)オバマケアを日本の皆保険制度と同じようなものだと思っている人が多いのですが、実は、両者には決定的な違いがあります。日本の皆保険制度は、国家が国民の生存権を守るための、憲法25条をベースにした「社会保障」です。一方、アメリカの医療は値札の付いた、れっきとした商品です。オバマケアはこの構図には一切メスを入れずに、民間の保険に加入することを義務化した。(p.115)

     (堤)これまで私は、命や教育など本来は商品にしてはならないものまで商品にしてしまったアメリカを取材してきました。バランスシートの数字に表れないものは何も価値がないという価値観が、たくさんの大切なものを犠牲にしてきたのを見てきた今改めて思うのは、たとえいろいろな問題があったとしても、制度としての国民皆保険制度が持つ、「共同の精神」は守らなければいけない、ということです。(pp.120-1)

     (大澤)理想やユートピアが不可能になる。これを、20世紀末以降の、よく使う言葉で言えば、ポストモダンな社会です。ポストモダンな社会というのは、理想やユートピアを、実際、事実として難しいということだけではなくて、強烈な理想やユートピアを持つこと自体が規範として望ましくないと感じられる時代です。
     これは、簡単に言うと、相対主義の時代ということです。つまり、何か一つの理想や理念を絶対的に正しい、それが全員にとってのユートピアであるというふうに掲げて、人に押しつけるような生き方が、最も恥ずべきこと、悪いことであるという感覚です。(p.205)

     (上野)自分が弱者になった時に安心できる社会を作る、というのが大事です。競争に勝ち抜いて、人を蹴落として商社に残ろうっていう、そういう時代はもう終わったはずなんですね。たとえ勝者になっても、勝者のままでは死ねません。(p.155)

     (姜)あるべき社会の網の目の中で、人は初めて個人として生きることができる。ですから、個人の能力や意識を高めるにしても、それは同時に、社会を強くしていくことと並行して進んでいかなければいけない。そういう意識が三人の講師に共通していたのではないかと思います。それはまた、2020年の東京オリンピック後の日本社会を考えていくうえでも、示唆に富む私的だと思っています。(pp.264-5)

  • 佐藤優さんの知識の集積方法を、今後の学生たちに伝授てしていかないと、知識の底上げが出来ないということが、良くわかった。

    基礎力のベースを取り除いてゆとりに振ることの無意味さと、その怖さを知るためには、必要なことだなと。

  • 現在の日本の社会的な問題について、教育、医療、介護福祉等、色々な側面から光を当てて論じています。知らないということは本当に恐ろしいことで、日本には大問題と言われる問題やこれから起こりうるであろう危機が存在するということを、この本から学べます。全体を通して思ったことは、やはり教育が国を作るんだなということです。GNP比で極端に教育費が少ない我が国は、このまま本当にやっていけるのかという不安に駆られます。必読書です。

  • 10年後のことを書いてる人は少なかったが、参考になる文章が多かった。
    佐藤優
    特定秘密保護法は治安維持法とは違う。政治運動を弾圧するためのものではなく、スパイを取り締まるための法律だ。軍機保護法にちかい。日本が戦争するかしないかを決断しなければならなくなったので、日本版NSCを創設した。軍機を保護するために秘密保護法が必要だった。
    いまの司法試験や国家公務員試験は、記憶力を問う問題だ。これは途上国のエリートの作り方で、明治維新直後、とにかく記憶力の良い若者を集めて、エリートを促成栽培した。それがいまの日本の官僚システムの根っこにある。だから環境が大きく変化すると、その変化に対応できない。
    ドイツやロシアには、魚は頭から腐る、ということわざがある。社会がおかしくなるときは、エリート層から腐っていくという意味だ。
    すぐに役に立つ実用教育は、すぐに役に立たなくなる。
    高校生が覚えるべき英単語は1951年では6800語だったのに、現在は3000語で、ゆとり教育のときは2200語だった。
    ITビジネスで成功している人たちは、子どもが小学校低学年のうちはスマホやタブレットに触らせない。ゲームもさせない。依存症になるのがわかっているから。
    国家が国民に対して強制するということは極めて限定的でなければならない。裁判員制度は罰則まで設けて強制しているので、事実上の徴用令である。
    堤未果
    アメリカには昔から格差があるのに、なぜ今さら貧困大国アメリカを書いたのかと言われたが、以前の格差が人種や性別によるものだったのに対し、ある時期以降、完全に経済格差に変わったから。今まで勝ち組だった人たちが最下層に転落している。アメリカの地方には家に住めない人たちの巨大なテント村がたくさんあるが、テントすら買えない人たちは地面に穴を掘って住まなければならない。日本のメディアはアメリカの報道の受け売りではなく、公開情報で裏付けを取った報道をしてほしい。
    2014年に黒人の少年が警官に撃ち殺された事件があったが、ポイントは人種差別だけではない。それがきっかけで起きたデモのとき、警察は戦争で使うような武器を市民に対して使用した。1990年代以降、アメリカはイラクやアフガニスタン、ソマリアなどで使いきれなかった武器の在庫を地域の自治体に払い下げているが、そうした武器を持つ警官の権限が拡大している。
    アメリカでは医師と患者の間に医療保険会社が入っているので、一人一人加入している保険が違うため、医師は治療する前に患者の保険で何ができるか確認しなければならない。膨大な事務作業に追われて、医師の過剰労働率は年々悪化し、自殺率もトップクラスである。
    宮台真司
    2007年の調査によると、政府は貧困家庭を助けるべきでないと答えた人の割合は、欧州で10%、アメリカでは28%、日本では38%もあった。
    保守には政治保守や経済保守があるが、真の保守は社会保守である。
    障碍児教育の混合教育と同じく人種・性別・国籍など属性が多様な子どもが混ざり合う集団環境を作って、そこで育ち上がれば、ヘイトスピーチする輩を見かけるたびに許せんと憤激する人間に育ち上がるのが当たり前になる。プラグマティズムのリチャード・ローティは、ヘイトスピーチ禁止法を作るのも良いが、そうした感情プログラムをインストールすることが大切だと考えた。
    デューイは経験を通じた成長を学びと見なし、教育の本義は知識の伝達ではなく内から湧く力の受け渡しであると考えた。ローティもそれを引き継いでいる。
    ネットは誰にでも開かれているが故に政治もコミュニティも感情の劣化に見舞われるので、顔が見えない人をコミュニティから排除する動きが出てきた。スローフード運動に象徴される食の共同体自治や、脱原発運動に象徴されるエネルギーの共同体自治である。ネットから見えなくする見えない化はおそらく先進国の全てで広がっている。
    宮台は感情の相互浸透こそが感情教育の中核と考える。感情の相互浸透に満ちた人の輪に身を投じ、そこでの陶冶を通じて、人は単なる損得勘定の自発性を超えて、内から湧く力である内発性を手にできる。
    上野千鶴子
    新潟県長岡市の特養こぶし園の代表、小山さんはこれから先、地方では特養の施設は畳み方を考えら時代だという。施設はもういらない、住宅は余っている、それならうちにいてもらって、特養並みの365日24時間切れのないデリバリーサービスをすればいい。
    団塊世代の老後は自分の資産を自分のために使い果たせば大丈夫だが、その子世代はどうなるかとても怖くて考えられないそうだ。やれやれ。
    姜尚中
    悪というのは全てネオリベラリズム的である。シェイクスピアの作品に登場するリチャード三世やマクベス、リア王は悪事を企む人間ばかりだが、彼らは他人を信用せず、自分だけを頼りに物事を決めていく。それはネオリベ的な発想に近い。

  • 介護に関して興味を持って読んだが、思いの外、教育部分に惹かれた。ペーパーテストの競争ではなく、想像力で考え抜き行動する力を身につける教育が必要なのだろう。

  • 多少難解だったパートもあったものの、日本が今抱えている問題が良く理解できる本。

  • 一冊で様々な問題がわかる良書であると思う。社会学の部分は途中で挫けたが・・・医療・介護、教育とか、今やらなければならないことは多い。

  • まずは、宮台氏の講義がダントツで難解だった。
    あとは今インプットしておきたい課題(反知性主義、医療、教育、超高齢化、ナショナリズム)について学べた。大学職員とい職業もあって、特に印象的だったのが佐藤氏と上氏の講義。
    「経済の右肩下がりよりも深刻なのは、教育の右肩下がり(p40)」
    「教育機関こそが地域振興の最大のテーマです(p89)」
    読んで良かった。

  • まあこのくらいかな、という読後感。

  • 序章と終章を除いて、6章の内3章が医療と介護に関連する問題。
    日経新聞ばかり読んでいると気づかない視点。
    社会学の話が難しくて理解が及んでいない気がする。

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