日本とドイツ ふたつの「戦後」 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207934

作品紹介・あらすじ

在ドイツ25年の著者ならではの視点で、歴史認識・経済・エネルギー政策などをテーマに日独について論考。ドイツの戦後の歩みを知ることで、日本が今後重視するべき問題を浮き彫りにする1冊。

感想・レビュー・書評

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  • うーん、なんだかねえ。。
    ドイツが戦後、自ら行ったことに対しての反省をし続けている、というのはよく分かるんだけども、それがいとも簡単にされてるような印象を持たされる本なんだよね、これ。
    わたしがこの8月に「戦後70年 東アジアフォーラム-過去・現在・未来-」にドイツの「記憶・責任・未来」財団理事会アドバイザーの人が来て、記念講演をやったのを聞いたんだけど、ドイツだって戦後すぐから反省を始めたわけではなく、例えば強制労働者はアメリカの裁判所にドイツの企業を訴える、ようなことだってしたんだよね。補償だって一番最初の対象者はほんの一握りの人たちだった。ドイツだって紆余曲折があって、今の状態になってるのよね。わたしはこういう「紆余曲折」の内情が知りたかった。最初から反省していたわけではないのなら、いつから、どういう動きがあって、そのときの国民は誰をどう支持して今の状態になったのか。それが分かれば今の日本の状況を変えていく「ヒント」になるかも知れない、そう思ったからだ。

    なのにこの本はそういうことは一切書かれてなくて、まるで最初から深い反省をしているような印象を持たされる本だった。まぁ新書にそういうことを期待してはいけなかったんだよね、多分。

    それに、ドイツと日本は同じ敗戦国だからといって、地理的、歴史的な状況が全く違う。ドイツが行ってきたものをそのまま日本に当てはめることは出来ない。そこのところをただドイツの状況紹介だけではなく、日本風にどうすればいいのかについてどう考えているのかを少し書いて欲しかった。確かに東アジア版EUというのは分かるけど、それはもっともっと先の話で、目標値でしかない。

    あと「歴史リスク」のためにドイツは反省してるんだって、それは分かるんだけど、でもそれはあとから来るものとして考えなきゃならないよね。まずは過去にやったことに対して真摯に向き合う、被害者に心から詫びる、それがないと被害者はすぐに誰のためにやっている謝罪なのか、自分たちに向いているのか、それとも自国が国際社会から信頼を得たいためにやっているのか、それはすぐに見破られると思うんだが。後者のためだったら被害者が納得するはずはないだろう。「被害者への真摯な謝罪、その気持ちを未来永劫持ち続けること」が結局は「歴史リスク」に繋がるのだと言うことをもうちょっと強調して欲しかったかな。

    ドイツと日本で圧倒的な差があるのは「倫理観」だという。それは分かる。ではどうやってその「倫理観」を身に付けさせたらいいのか。今の日本を見ているとどう考えても自助努力じゃそうならないような気がする。かといって「外圧」で身に付けるようなものではないし。本当に難しい問題。

  • ドイツ贔屓の著者が、第二次大戦後のドイツの隣国への対応(繰り返し謝罪し続け、徐々に信頼を得た的たこと等)の上手さを指摘しつつ、日本の問題や今後のを提言している。ギリシャ問題を巡る昨今の有識者の批判や、経済が悪化する度にドイツで台頭する極右の動きなどを見ると、ドイツが潜在的にはあまり変わっていないのではないか(たまたま経済が絶好調であるために負の部分が隠れているだけ)、とも思うが、歴史認識への取組や被害国への謝罪について、自分の国のために行うべき、としていることは、その通りと思う。

  • 【由来】
    ・図書館の新書アラート

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 先の大戦の敗戦国。敗戦後は戦勝国による裁判で戦犯が裁かれた。
    戦後は産業を基盤に復興を遂げ、アジアとヨーロッパで経済大国と
    なった。

    日本とドイツの共通点である。しかし、それぞれの国の在り方は
    大きく異なる。ナチスという過去の汚点に今でも向き合い、歴史的に
    犬猿の仲であったフランスはじめ周辺諸国と良好な関係を築き、
    実質EUのリーダーとなったドイツ。

    先の大戦中の罪を中国・韓国から攻め続けられているのに、国会
    議員が積極的に戦犯を祀る靖国神社に参拝し、日本国首相である
    安倍晋三は「未来志向の日韓関係」とか言っている。それは過去は
    なかったことにしてこれからを考えましょうとってことなのか。

    本書は歴史認識・エネルギー政策等、在ドイツ25年の著者が両国
    の違いを解説している。国外から祖国を眺める視点は大切だとは
    思う。だが、少々ドイツびいきになっているようにも感じるんだよね。

    ただ、過去は過去、今は今とい日本の姿勢にも問題があることは
    分かる。従軍慰安婦問題にしたって朝日新聞が長年誤報を放置
    してきたからってまるっきりなかったことではないし、南京虐殺に
    しても人数の問題ではなく戦闘員ではない一般市民を殺害した
    ことに変わりはないんだよな。

    まるっきりドイツの真似をしろとは思わないが、過去と対峙せずして
    未来はないと思うんだけどどうなんだろうか。

    尚、個人的に興味深かったのはドイツのメディアの在り方だ。公共
    放送にしても政府の思惑を忖度しないっていいなぁ。要はドイツ版
    NHKみたいな存在だよね。日本のNHKなんて自民党の御用メディア
    になっちゃってるもんな。

    尚、日本でも遅まきながら民間では過去に対峙する姿勢が出て
    来た。今年、2015年に三菱マテリアルが中国人強制労働者に
    対する賠償の意向を明らかにした。民間とは言え、一歩前進
    なのだと思いたい。

    「若者たちが過去のことについて無関心になるのは、当然のことだ。
    彼らが、前の世代の犯罪について、重荷を背負わされることを拒否
    するのは、ごく当然のことだ。若者たちには、父親や祖父がしたこと
    について、責任はない。しかし彼らは同時に、自国の歴史の流れ
    から外へ出ることは出来ないということも知るべきだ。そして若者
    は、ドイツの歴史の美しい部分だけではなく、暗い部分についても
    勉強しなくてはならない。それは、他の国の人々が、我々ドイツ人を
    厳しく見る理由を知るためだ。そしてドイツ人は、過去の問題から
    目をそむけるのはなく、たとえ不快で困難なものであっても、歴史
    を自分自身につきつけていかなくてはならないのだ」

    1989年に行われたヴィリー・ブラント元首相への著者のインタビュー
    からの引用である。

    安倍晋三にはまったく期待してないけど、将来、日本にもこんなこと
    が言える政治家が出て来るだろうか。う~ん…。

  • どれだけドイツが優れているか、日本の戦後は怠けていたか、というのを淡々と書いている本。
    ユダヤ人への迫害に対するドイツの姿勢、ドイツの行動は大きな汚点に対する姿勢として日本も見習うべき点であると思ったが、戦後ドイツがその歴史を隠蔽しようと学校教育で教えようとしなかった時期があったことなどは書かれていなかったので、戦後のドイツを多角的に見ているかと言われると異なるのではないかと感じた。

  • 記録

  • 近隣国と歴史認識を共有できず、長時間労働が問題となっている日本。ナチス時代と向かい合い続けてEUのリーダーとなり、年間150日の休日を確保するドイツ。とはいえドイツを過大評価しすぎな感じも。

  • 日本の戦後対応があまりに貧しくて

  • 在ドイツ二五年のジャーナリストの視点で、ドイツと日本両国の歴史認識・経済・エネルギー政策などを論考。
    一方にドイツ贔屓がすぎるとの批判もあるが、ここは謙虚に耳を傾けてもいい具体例が沢山引用されている。
    ドイツに倣えの具体的内容の一端を知ることは無益ではないと思われる。

  • ドイツではナチスの台頭、ユダヤ人虐殺で教科書の80-100ページくらいを割いて説明している。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。
著書に『ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか』『ドイツ人はなぜ、年「290万円」でも生活が豊かなのか』(ともに小社刊)、『ドイツ人はなぜ、毎日出社しなくても世界一成果を出せるのか』(SB新書)、『パンデミックが露わにした「国のかたち」』(NHK出版新書)など多数。『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研)で2007年度平和・協同ジャーナリズム奨励賞受賞。

「2023年 『ドイツ人はなぜ、年収アップと環境対策を両立できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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