科学者は戦争で何をしたか (集英社新書)

著者 : 益川敏英
  • 集英社 (2015年8月12日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207996

作品紹介

「戦争する国」へ突き進もうとする政治状況に危機感を抱く著者が、過去の戦争で科学者が果たした役割を分析。ノーベル賞学者ならではの洞察力で、二度と同じ道を歩まないための方策を提言する!

科学者は戦争で何をしたか (集英社新書)の感想・レビュー・書評

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  • 読みごたえあった。筆者の科学に対する思いを感じる。サイエンスと平和の関係を普段切り離して考えてしまっていることを気付く。このテーマを、ノーベル賞受賞者が、受賞コメントを振り返って言ってるから面白い。

  • 「自分の研究が社会でどんな役割を持つのか、悪用されるとすればどんな可能性が考えられるか、科学者ならばまずそのことを深く考えなければならない。」

    この一文に益川氏の考えが凝縮されているように思う。

    そして私たちはこの言葉を「科学者」というどこか特権的な人々へのメッセージだと受け止めてはならないのだろう。
    例えば上に引用した一文は次のように言い換えることが充分に可能ではないだろうか。

    「自分の『言動』が社会でどんな役割を持つのか、悪用されるとすればどんな可能性が考えられるか、『市民』ならばまずそのことを深く考えなければならない。」

    おもしろい本というのは、必ずそれを「自分のこと」として読むことができると思う。
    その意味で本書がとてもおもしろい本であることは間違いない。

  • 科学者だけでなく、全ての人に読んで欲しい。年齢に関係なく。しかし、若い人に読んで貰えれば嬉しいですね。

  • 益川さんの先生である坂田昌一先生の、科学者である前に人間として、という言葉が深い。
    今まで戦争については歴史家の人たちの本ばかりだったが、科学者の立場から戦争を考える本を読むことができて、第一次世界大戦における毒ガスの開発についてなど、その苦悩や葛藤や使命感に、はっとさせられることも多かった。自分の発明や技術を戦争で生かすことに平気な人はいないはずで、だからこそ科学のことだけで頭がいっぱいになってはいけないのだと感じた。

  • 中身に価値がというより,益川先生の政治的スタンスがよく分かる本だった。科学者と戦争についてもうちょっとまとまった科学者による本なら,池内了『科学者と戦争』が良い。

    STAP細胞事件については,組織の問題と断罪。
    "非常に閉鎖的な組織の中で、彼女は予算を獲得する政治的な道具として使われたわけです。そのせいでSTAP細胞問題は、研究レベルを逸脱して、理研トップの政治的な動きと思惑に追い詰められて自殺者まで出してしまった"p.83

    中村修二氏に対しては手厳しい。金儲け主義に反発。
    "なぜ研究者が数百億円もの報酬を欲しがるのか。私はへんてこな欲望同士がぶつかり合った喜劇だと思っています"
    "我々は論文を書くために様々なデータを使います。そのときにこのデータには何百億円もかかっているのだからその何パーセントかを支払えと言われたら、もうお手上げです"p.85

    そしてこういうところは正直だなあと。宮崎駿氏にも通じるところ。
    "「兵器ゼロを目指す」と言っている私がこんなことを言うとおしかりを受けそうですが、このいたちごっこの経緯が、実に興味深くもあります。この迫撃砲に対抗してこんな装甲車ができたのか、車両のボディの高硬度鋼板にセラミックパネルをサンドイッチ式に挟み込むことで、防御力を強化したのか、なる程うまいこと考えるもんだなと、ときには感心したりもします。兵器研究というのは、科学者としての純粋な好奇心をそそることは確かです。"p.97
    いくら戦争に反対でも,科学者あるいは知識人として,戦争や兵器に関することには全く興味がない,考えること自体悪である,みたいのは偽善じゃなかろうかと思っているので,このくだりは好感が持てた。

    九条科学者の会の呼びかけ人だったというのも初めて知った。ノーベル賞受賞者にして九条ノーベル平和賞論者。
    "早いところノーベル委員会が、憲法九条にノーベル平和賞をあげて、それを安倍首相に受け取らせるという筋書きをつくってくれないと、日本はとんでもないところに行ってしまいそうです。"p.122

    幼児期の戦争体験もそうだけど,恩師の坂田昌一博士からも大きな思想的影響を受けたそうで,組合活動や社会活動にも熱心に取り組まれたらしい。
    25歳のときの物理学会で,突然「ベトナムでの毒ガス使用反対!」と叫んで動議を提出,先輩研究者に「若造、そんなこと学会のような席で言うべきじゃない」とたしなめられても怯まず,「ポンコツ、黙れ!」と一喝したという武勇伝まで載ってる(p.141)。

    全体を通して,国家に利用される科学に忸怩たる思いを持っているのが伝わってくる。政治的発言を良しとしない科学者が多い中,本音で語ってる真摯な本だと思う。
    "戦時下における科学者の立場というのは、戦争に協力を惜しまないうちは重用されるものの、その役目が終われば一切の政策決定から遠ざけられ、蚊帳の外に置かれます"p.49
    シラードらの原爆投下反対が無視された件について。そう,意思決定権ってのは本当に強大な権力なのだ…。

  • 2008年に「小林・益川理論」による物理学への貢献でノーベル物理学賞を受賞した科学者、益川敏英さんが、自身の戦争体験とその後の反戦活動を振り返りながら、科学者が過去の戦争で果たした役割を詳細に分析する一冊。科学の進歩は何の批判もなく歓迎されてきましたが、本来、科学は「中性」であり、使う人間によって平和利用も軍事利用も可能となること、素晴らしい発明も簡単に兵器として転用されてしまう可能性があることを科学者はもちろん、市民も認識しなければならないと著者は説きます。
    似たような問題を取り上げた本に、池内了/著『科学者と戦争』(新書:404)があります。こちらもあわせてどうぞ。

  • 著者の益川敏英は2008年にノーベル物理学賞に輝いた理論物理学者だ。益川は米軍機による大空襲の中を逃げまどった体験があり、ノーベル賞記念講演でも自らの戦争体験に触れるなど積極的な反戦平和活動を行ってきた。現在の安倍政権が日本を「戦争のできる国」に導こうとしていることに強い危機感を抱いた著者が、科学者が大量に動員された戦争の歴史を振り返り、平和に使われるべき科学が軍事利用されないための方策を提言しているのが本書だ。
    ドイツ軍のために毒ガスの開発に没頭したフリッツ・ハーバーの行いや日本に投下された原子爆弾を開発したアメリカのマンハッタン計画は、科学者がどのように国家権力に取り込まれて戦争に加担してきたかを物語っている。著者は、現在の日本でも科学技術の軍事利用が進み、政治的な動きの中で科学者の動員が巧妙に進められていると危機感を募らせている。
    「九条科学者の会」に参加する著者は、「日本は憲法九条の歯止めがあり「戦争ができない国」であるからこそ、知恵を絞り外交政策などでこの70年間危機を乗り越え平和を維持してきたことに思い至るべきだ」と訴え、それを今「戦争のできる国」にしようとしている安倍首相の暴走を非難している。
    著者がテレビ番組で特定秘密保護法を批判したらすぐに外務省の役人が研究室に説得に来たりとか、「軍事研究をしない」と誓った名古屋大学の平和憲章が国会議員に非難されたりというエピソードには、日本の社会に戦争が現実問題として迫ってきていることを改めて実感させられ、著者の危機感が納得できる。
    科学の発展は文明の進歩に大きく貢献するものだが、ひとたび戦争となった場合にはその科学技術は兵器を開発するために使われ、多くの人間の命を奪うものとなる。そして国家権力に動員される科学者は軍事開発への協力を拒むことはできないのだ。
    恩師と仰ぐ理論物理学者坂田昌一の「科学者は科学者として学問をするより以前に、まず人間として人類を愛さなければならない」という言葉を胸に刻む著者は、科学の発展は平和利用にも軍事利用にもつながる諸刃の剣だからこそ、科学者は自分の研究にのめり込むのではなく、ひとりの生活者として社会と向き合わなければいけないと訴える。この社会を守り後の世代に残していくために、科学者を含む私たち皆が世の中に対して広い視点を持ち、今日本や世界で何が起こっているのか、どこに進んでいるのかを見極め、正していく知性が必要なのだ。
    戦争体験をもつ著者が、一流の科学者だからこそ強く感じる戦争への危機感と、どんなことがあっても戦争は避けるべきだとの強い信念をもって訴えている反戦平和の呼びかけが心に響く一冊だ。

  • 最後は脱線したねぇ〜

  • 2006年のノーベル物理学賞受賞者である益川敏英・名古屋大学名誉教授がしたためた、警世の書である。
    科学技術は人類の生活を大幅に向上させたが、それは同時に兵器の発達を促したことは、皆様もご存じだと思う。「世紀の発見・発明」といわれるものが、時代が下るにつれて平気に使われるようになった事例は、枚挙にいとまがない。戦前のノーベル賞受賞者で、科学の進歩が兵器に転用されることを危惧する科学者は多かった。化学薬品然り、レーダー然り。これらはもともと民生用に開発されたものだが、いつの間にか兵器にも使われるようになった。
    著者が本書で繰り返し書いてることは、科学者は自分の研究が、社会に与える影響を考えなくてはいけないということ。科学者は研究室という「蛸壺」の中に閉じこもることが多く、社会と関わることが少なくなりがちだからだ。
    一つ残念なのは、益川氏は原発の可能性を捨てていないということ。益川氏は物理学者であり、原発は物理学理論の集合体であるから、自分がこれまで培ってきた世界を否定されるのはイヤなのだろう。

  • ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英教授の著書。
    益川さんと言えば、ノーベル賞受賞時のユニークなキャラクターの印象しかなかったが、このような本も書かれていたことを初めて知った。

    本書のテーマは「科学と社会の関係」だ。現代科学の世界は商業化が進んでいて、純粋な学問ではなくなってきていること、自分の専門研究にばかり熱中して、社会問題に無関心な科学者が増えてきていること、そして科学が戦争の技術として利用されるようになってきていること、などに警鐘を鳴らしている。

    本書を読んで思い出したのは、グーグルやアップルのような企業が開発して話題となっている人工知能だ。ホーキング博士のような人が人工知能の危険性を訴えているが、それでも研究は進んでいく。原爆や水爆が生み出された時もそうだったが、高度な技術が悪用された時の被害は計り知れない。益川さんも、科学技術が軍事目的に転用されるリスクについて述べている。そして、それを防ぐことは難しいとも。

    だからこそ科学者達は社会や政治の動きなどにもっと目を向け、自分達の専門の枠を超えて行動を起こすべきであると主張している。益川さんはこうした問題について今まで深く考えてこられたようだ。本書を読むと、現代における科学・社会・政治を取り巻く問題が分かり、大変勉強になる。

    ちなみに、益川教授の恩師である坂田教授の名前がしばしば文中に出てくる。読めば読むほど素晴らしい人物だと感じる。このように人間的に立派で、信念を持った科学者が過去にいたのだと感心した。

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