悪の力 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
3.13
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208030

作品紹介・あらすじ

現代人を苦しめる「悪」はどこから生まれるのか。そして、心の奥底から湧き上がる「憎しみの感情」とどう向き合えばいいのか。100万部のベストセラー『悩む力』の著者が、最大級の難問に挑む。

感想・レビュー・書評

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  • 今現在の、世界中の社会に立ち現れた悪意が起こした事件の様相を紐解きながら、悪とはそもそも何か、私たちは悪に対してどう抗って行けるのか、悪に負けないための共生という考え方などを説いています。
    新書版であり、エッセンスだけを本書に込めたとのことですが、厚み以上の濃い内容です。

    「人は大きな虚無に捕らえられたとき、自分であれ、他人であれ、死への刃を振るいたくなるのでしょうか。」
    この一文を読んだ時ぶるっと震えが来ました。
    「空っぽ」の中に悪が巣くう。言い得ていると思いました。

    これまでの「力」シリーズのように、多くの世界や日本の文学が引用されています。純文学(一部ですが)へのブックガイドとも読めます。

    著者のおっしゃるように、悪の連鎖がいつか人間的な連鎖へ全て変わっていく希望は持ち続けて生きたいものです。

  • 忖度なしに悪が悪であるためのすべてが書かれていた。平常心で読むのは危険。悪を好む人、悪と戦う人、どちらの感情をも揺さぶる内容。空っぽの自分とは違う、確かな存在感のある空虚な悪(ん?)に惹かれるカラクリ。これは世界の新しいレイヤーが見えてくる恐怖体験だと思う。

  • 2016/12/13

  • タイトル借り。本書では中村文則氏の作品からも抜粋がありましたが、悪とか神とか、説明不可能な土着性とか、そういったにおいのする内容の本にひかれます。

  • 悪は空虚に宿るという論に、正直なじめなかった。自分の環境に悪をあまり感じないせいかもしれないけれど。ナチスのホロコーストの解説として「不純なものへの恐怖」「ヨーロッパの歴史の中に深く根差した悪をめぐる病理があった」「ヨーロッパが抱える虚無を埋めるため」と指摘していた箇所は興味があるので、これを中世の魔女狩りやハプスブルク家の純血へのこだわりとからめて説明してほしかった。

  • 悪の代表として、イスラム国の残虐非道ぶりを取り上げていたが、もっと言及してほしかった。彼らのしてることは宗教における原理主義でもなんでもなく、意味のない非道極まりない暴力集団にしかすぎず、到底許せるものでない、どうして他国は彼らをのさばしておくのか、理解に苦しむばかりだ。とにかく私は許せない。

  • 今起きている殺人など、凶悪犯罪の原因を、資本主義が押し広げているとのこと。

    他に、悪の定義は旧約の頃から変わっていないなど、著書の引用あり。

    資本主義以前からも人間の凶悪の犯罪は歴史に残るだけでも相当あったし、今のように報道、記録にならないものが多かっただけだと自分は考える、つまり、資本主義=犯罪の温床にはならないと思う。どんな状況であれ人間は悪に手を染める存在であることを忘れずに自分を戒めて生きていくしかないのではないか。

    あるいは、キノの旅にでてくるある国のように、ある程度の年齢まで一律施設で育て上げ、試験にクリアしたものだけ施設から出られるような仕組みで無い限りは。

  • 久米書店。

  • 「悪の力」
    姜尚中の悪に対しての考察である。
    古くは聖書から、その他古典的な文学から考察した悪に対しての考察である。
    キリスト教的な考えが強く、ベルゼハブやヨブ記についての考察が印象に残る。
    そして、資本主義が悪を生み出す根源ととらえているようで少々行きすぎのような気もする。
    しかしながら、空虚に悪が忍び寄るというのはわかるような気がするが、人間はそれほど高潔なものでも悪魔的なものでもないだろう。
    むしろなぜそういう悪の考えや行動が生まれるのかの科学的な知見が必要なように思える。原罪だの心の闇などと言っても何も解決にはならないし、そもそも解決できる問題なのだろうか。

  • 著者の本は初めて読んだが、かなり期待外れだった。
    悪についてもう二段、三段掘り下げた考察を期待していたが、「悪を探す名著紀行」の様な展開で、著者の悪に対する見解は上っ面だけのものにとどまり、後は聖書や古典文学に語らせて終わり。
    本人の考えをもっと聞きたかった。

    敢えて議論の対象の定義を狭くして自分の知っているごくごく狭い世界に読者を引き込み、その世界の中だけで語られた感じ。

    資本主義が悪を培養するという説はいただけない。社会主義でも官僚の腐敗や一部特権階級への富の集中は厳然としてあり、資本主義が悪を生む根本原因とは考えられない。悪を生む原因はもっと深い所にあるはず。

    ここまで言うと失礼だが、本を読んで世界が広がるのではなく、逆に世界が狭くなる珍しい本。

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著者プロフィール

1950年熊本県生まれ。東京大学名誉教授。専攻は政治学、政治思想史。主な著書に『マックス・ウェーバーと近代』『オリエンタリズムの彼方へ―近代文化批判』(以上岩波現代文庫)『ナショナリズム』(岩波書店)『東北アジア共同の家をめざして』(平凡社)『増補版 日朝関係の克服』『姜尚中の政治学入門』『漱石のことば』(以上集英社新書)『在日』(集英社文庫)『愛国の作法』(朝日新書)など。

「2017年 『Doing History』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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