- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087208153
作品紹介・あらすじ
大ヒット漫画『テルマエ・ロマエ』の作者が、もうひとつの「本業」である美術論に初挑戦。正統派の論考にして、ルネサンスの大巨匠を「変人」をキーワードに楽しく解読する、ヤマザキ流芸術家列伝!
感想・レビュー・書評
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まあ、ヤマザキさんが思い切り自分の好みで書いたエッセイかな。ルネサンス絵画の幕開けとして挙げているのがフィリッポ・リッピというのがいい。中世キリスト教絵画の基本のイコン画では、聖母もキリストもあくまで「記号」を意味していて、あいそもそっけもない。ところが、フィリッポ・リッピの聖母子は、一目で現実の女性を描いているのが分かるし、赤ん坊もいかにも乳臭い。というのも、自分の妻ルクレツィアと息子フィリッピーノをモデルにしているらしいのである。フィリッポ・リッピは坊さんのくせに、修道女のルクレツィアに一目惚れして駆け落ちしてしまったといういわくつき。これこそ、ルネサンスという「人間復興」のしるしなのだ。ルクレツィア、超美人です。
このあと、ボッティチェリ、フィリッピーノ・リッピ、ラファエロ、ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチを取り上げ、マニエリスム、ヴェネツィア派、北方ルネサンス、さらにフェデリーコ2世、ダンテ、ペトラルカ、アンドレーア・パッラーディオ、ヴァザーリまで筆が及んでいる。
ルネサンスとは、多様性、寛容さ、精神の自由さがキーポイントである。日本が鎖国をしてしまったのがとても残念だと著者はいうが、まあ、安土桃山時代の東南アジアまでどんどん乗り出していく闊達な日本人の気質は貴重だったかもしれない。日本にもルネサンスが訪れたか。でもまあ、鎖国をしていなかったら、江戸時代の安定はそんなに長く持たなかったかもしれないね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ヤマザキマリさんが特に愛してやまない"変人"たちをピックアップして紹介した1冊です。
ここで言う"変人"とは「既成概念にとらわれず、型にはまることもなく、自在に自らの感性と技巧を操る、果てしなく自由な思想を持った人々」のこと。
ルネサンスの時代を生きた変人たちに驚かされつつ、それを生き生きと語るヤマザキさんの筆にわくわくさせられます。
特にインパクトが強かったのはフィリッポ・リッピ。
修道士の身でありながら、一目惚れした30歳年下の修道女と駆け落ち、しかも宗教画である「聖母子像」を愛する妻と息子をモデルに描いちゃう。自由奔放…!!
だけど、その自分自身を生きてる感じがいいですね。
それから、ブリューゲルについて知ることができたのもよかったです。
高校時代、世界史の教科書の表紙がブリューゲルの「ネーデルラントの諺」でした。
1枚の絵に詰め込まれた100以上の諺を探すべく、授業そっちのけで『ウォーリーをさがせ!』に夢中になる子供のように表紙を堪能していたことを思い出しました。
情報量過多で不条理さや残酷さといったきれいじゃないものまで緻密に描き込む変人…よきかな。
本書内で時々話題にのぼっていた『男性論 ECCE HOMO』(文藝春秋)も、読んだのはずいぶん前なので再読したいです。 -
著者、ヤマザキマリさん、ウィキペディアには次のように書かれている。
ヤマザキ マリ(1967年4月20日 - )は、日本の女性漫画家・文筆家。東京造形大学客員教授。海外暮らしが長く、現在はイタリア共和国在住。スマイルカンパニー所属。
この本は、ルネサンス時代の変人をヤマザキ流に書き上げた作品。
久しぶりに楽しめる本でした。
68ページまで読んで、図書館に返却。 -
ルネサンス関連の本は今までたくさん読んできましたので、復習が7割。
そしてそれらはたいてい高学歴の皆さんが大学卒業後渡欧してから書かれたものなので、ヤマザキマリさんのように高校中退して一人で絵の勉強のために留学、シングルマザーになって帰国して、その後漫画家として大ブレークというかたによるルネサンス論というのはとてもフレッシュで面白かったです。
また、ヤマザキマリさんの本もたくさん読んだけど、今回「ついにここにきたか」と思いました。
まだまだ、楽しみにしていますよ、マリさんのルネサンス! -
ルネサンス美術に興味を持ち、ヤマザキさんの美術論とのことで読んでみた。
当時の芸術家を「変人」と呼ぶ、ヤマザキさんならではの視点がとても楽しく、ますますルネサンス美術や当時の芸術家たちに愛着がわいた。
フィリッポ・リッピの聖母子の絵が好きなのだけど、あの絵はブロマイド的という表現は「まさに!」という感じ。
巻頭のカラーページの「アテナイの学堂」の写真は左右が逆では?
本文では「右側にラファエロの自画像が描かれている」とあったので、ヤマザキさんのミスではないと思うのだけど、ちょっと残念。 -
ビバ変人!
ヤマザキさんの手にかかれば、どんな偉大な画家さんも偏屈で変態で、でも魅力的に描かれる。
画家の人間臭さに焦点が当てられているので、画家のイメージをつけやすかった。 -
ルネサンスの変人エピソードはどれも面白かったけど、この本の真髄は最終章。いかに人間にとって文化や創造活動が人間たらしめるものか、不可欠なものだがしかし自由な精神や寛容さ、知性をアクティブにしておかないとすぐに動物的、稚拙に戻ってしまうと説き、さらに今の日本にこそルネサンスの精神が必要だと主張する。まさに平田オリザの本で感じた、文化や教養の重要さと、懐疑的な思考力を育む必要性を再認識した。
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美術館の絵を見てもすごい〜映えるな〜としか思わなかったけど、背景を知ると愛着が湧く気持ちが少しわかった。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689935 -
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