愛国と信仰の構造 全体主義はよみがえるのか (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208221

作品紹介・あらすじ

信仰心と愛国心が暴走した戦前の全体主義。その種が蒔かれた明治維新から第二次大戦までの75年と酷似した過程を戦後日本も歩んでいる! あの全体主義は甦るのか。気鋭の政治学者が宗教学の泰斗と徹底分析。

感想・レビュー・書評

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  • 発売された当初から読まなきゃと思っていたが、3ヶ月足らず経ってしまった。

    私が勉強を進めようかどうしようかと門の前をウロウロしている仏教、特に親鸞聖人の教えが、戦前の全体主義につながっていった、ということを、常に注目している中島岳志さんが対談されているということで、読まないわけにはいかなかった。

    賢い人が2人寄ると、賢いことになるなあと感心しながら読んだ。

    新書の対談本ということで、私のような基礎的な知識のないものにも、わかりやすく書かれていたのが良かった。といっても、あまりにも無知なので、スマホ片手に、人名や仏教用語、歴史的事件など、検索しながら、できるだけたくさん検索結果をたどりながら読み進めた。

    たくさんの知識を得、いろいろと考えさせられ、いい読書時間を過ごせた。
    自分の中で、また次につながっていく。

    私にとって、あまりにも内容が盛り沢山すぎて、感想がまとまらないが、特に近代日本150年が、75年サイクルで繰り返しになっているという指摘(もともとは大澤真幸さんの指摘)には愕然となった。

  • 宗教と政治の話はタブー。
    それが、常識かのように刷り込まれて大人になってしまった気がする。
    公の場で話題にすることを避けてきたから、わからないことはそのまま。「なぜ?」と思うことも、聞くこともなかった。でも、知らないままでいることはとても危険だ。
    第二次世界大戦の状況に似ていると言われる現代の日本。
    同じ過ちを繰り返さないためには、歴史を引き受けることだ。
    「宗教」と「政治」について向き合うための必読書。

  • お二人の研究への入口が、学園紛争やベトナム戦争、阪神淡路大震災やオウム真理教事件から受け取った衝撃や周囲との違和感であったように、生きていく中では共感や違和感の繰り返しであるなとつくづく思ったことと、宮沢賢治も、天皇機関説も、秋葉原事件も、伊勢神宮も、靖国神社も、新宗教も同じ文脈でどんどん整理されていく展開をおもしろく読みました。

  • 中島は昭和初期の煩悶青年や日蓮主義親鸞主義からつながる全体主義、 島薗は国体論や国学からつながる全体主義を語る。第二次世界大戦へとむかう宗教とナショナリズムの関係を俯瞰するうえで非常に見通しのいい地図を与えてくれる。

  • 歴史は繰り返す。今は戦争前の状態によく似てる。

    宗教が全体主義と結びついて超国家主義へと向かった。

  • 中島岳志は前から読んでたし、ナショナリズムと信仰心ってテーマも気になるところ。
    対談だからか、ちょっと密度薄い感じは否めないけど、かなり難しいテーマをサクサク読めたのでそこは良かったかな。欲を言えば現在の日本会議とかそのあたりもっと突っ込んでほしかったけど、それは別の、もっとジャーナリズム寄りの人の仕事なのか。
    日本近代、現代政治史とか天皇制とかについて、中島岳志と原武史が対談したらおもしろそう、とか読みながら思ったり。

  • 16/02/19。
    中島「彼女(三原じゅん子)は福祉に熱心なのに『八紘一宇』発言をしたと捉えるべきではなく、福祉に熱心だからこそ『八紘一宇』の理想に惹かれたと捉えるべきです。p100

    親鸞主義については、知らなかった。
    2/27読了。

  • 戦前の皇室祭祀は、ほぼ全部明治維新後に定められた。
    復古と言いながら、明治政府の存在理由の権威付けにすぎない。
    「伝統」は、政権の統治のあり方に基づいて発明される。

    革新左翼は人間が理性を使って正しく設計すれば、未来はよい方向に変革できると考える。右翼は、人間の理性だけでは、理想社会は実現できると考えず、長い歴史の中で蓄積された経験や伝統といった「人智を超えたもの」を重視するべきと考える。ありもしなかった過去のよき社会を復古させることができれば、ユートピアを実現できると。

    何が無謀な戦争に向かわせ、国民の自由を奪っていったのか、しっかりと自覚できていない。ゆえに「憲法を押し付けられたせいで、日本は主体性を失ったから、憲法を改正し、明治の体制に戻れば、本当の強い日本を取り戻せる」という単純な議論が罷り通る。長州という通奏低音が響く自民党は、戦後レジームの解体などと言いながら、アメリカ追従という矛盾に満ちたことをしている。

  • 第1章 戦前ナショナリズムはなぜ全体主義に向かったのか
    第2章 親鸞主義者の愛国と言論弾圧
    第3章 なぜ日蓮主義者が世界統一をめざしたのか
    第4章 国家神道に呑み込まれた戦前の諸宗教
    第5章 ユートピア主義がもたらす近代科学と社会の暴走
    第6章 現代日本の政治空間と宗教ナショナリズム
    第7章 愛国と信仰の暴走を回避するために
    第8章 全体主義はよみがえるのか

    著者:中島岳志(1975-、大阪府、政治学者)、島薗進(1948-、東京都、宗教学者)

  • 明治維新以降の150年のうち、前半の75年と後半の75年で同じような道をたどっているとのことだ。富国強兵に向かっていることか。それにしても中島氏はいろんなことをよく知っている。大学教授はみなこんな感じなのだろうか。

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著者プロフィール

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『思いがけず利他』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『保守のヒント』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『保守と立憲』『親鸞と日本主義』、共著に『料理と利他』『現代の超克』などがある。

「2022年 『ええかげん論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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