- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087208337
作品紹介・あらすじ
核協議合意によって、国際社会のキープレイヤーとして浮上するイラン。欧米と巧みに渡り合い、シリアなど中東情勢の鍵を握るこの「大国」について、元テヘラン駐在員が詳細にリポートする。
感想・レビュー・書評
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イランという国に馴染みのある日本人はそう多く無いと思うが、カスピ海とペルシャ湾を結ぶ一体に日本の4倍以上の国土、さらには9000万人近い人口を持つ中東最大規模の国だ。世界史好きな人はかつてこの地に存在したペルシア帝国や、サファビー朝、ウマイヤ朝、アッバース朝などアフリカ北部、地中海沿岸までの広大な土地を支配する大帝国のイメージが強いだろう。現在のイランの場所も中東の石油を求める世界各国にとっても、イスラム圏東西の横断にも、交通の要所となっている。石油や天然ガスの埋蔵量はロシアすらも凌ぐほどで、日本人から見たイランのイメージは薄くても、世界各国から見たイランの重要性たるやかなりの存在感を示している。国際的な各国との関係性においては、反米の旗手であり度々アメリカからの爆撃に晒されている。またお隣イラクとの関係は、中高年世代にとっては毎日ニュースに流れたイラン・イラク戦争のイメージが強く、当然ながら良好な関係とは言えない。だがそれも過去の話であり、イラクのサダム・フセイン(スンナ派)がアメリカによって排除された後、国民の大半を占めるシーア派による政権樹立がシーア派の国イランとの関係性を改善させる。更には再びアメリカにより、イランに敵対的なタリバンが弱体化させられた事でイランは労せずして周囲の敵対勢力が無くなりつつある。これは敵対するはずのアメリカの中東戦略の失敗と言われるが結果的には正にその通りと言える。こうして長年対立するシーア派とスンナ派のイスラム世界は、後者のサウジアラビア中心の新米勢力に対して前者はイラン、イラク、シリア、レバノンの「シーア派の三日月地帯(孤)」としての存在感を高めていく。
日本との関係性では、イランに対して明確なイメージを持つ人は少ないと思うが、ダルビッシュ投手や歌手のMayJさんはイラン人の血筋でありスラリと高い鼻、ほりのはっきりした美しい顔立ちは、正に中東の香りを漂わせるような人の交流は存在する。ペルシャ時代にも外交関係は存在し、寺院などでペルシャの陶器を所蔵するケースも少なく無い。現代は日本はアメリカ寄りの外交政策を取らざるを得ないので、表立ってイランに近づく事が出来ず、代わりに中国や韓国がイランでの存在感を高めている様だ。
本書はこの様なイランの地に新聞社の特派員として派遣された筆者が、歴史や対外的なイランの姿を明らかにしていく内容であるが、馴染みの薄い日本人にとっての入門書として非常に読みやすい。何となく不安定な国のイメージから、将来最も有望視される国の一つとして、地政学的にも宗教的にも経済的にも興味の尽きない国であることを教えてくれる。
何よりこの地はかつての大帝国であり、世界の半分と言われた地域である。アメリカ、中国、日本、EUに並ぶイスラム世界の筆頭としては、親米派かつスンナ派のサウジアラビアが君臨するのか、反米派かつシーア派のイラン勢力が君臨するのか目が離せない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2017.02―読了
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685772 -
核合意直後の2016年刊なので、現在とは状況が異なる点もある。また、著者はイランに肩入れするわけではないが、イランの論理や事情を丁寧に解説している。
歴史や文面から来るプライド。シーア派としての、またイラン・イラク戦争で欧米や周辺アラブ諸国が軒並みイラクの支援に回った被害者意識。イラン航空655便撃墜事件。潜在的・顕在的な核の脅威に晒される中での核開発。それだけに、「ロウハニとオバマのボタンが合致」した偶然による両国接近と核合意が失われたのは残念だ。
また、本書で垣間見るイラン社会も面白い。対米不信や言論統制、宗教規制は確かにある。一方、特に都市部では偽マクドナルドにKFC。ハリウッド映画やヘビメタ音楽の流通。女性の高学歴化や社会進出。国内ユダヤ教徒との良好な関係。今も残るペルシャ文化とゾロアスター教の影響。思ったよりも多様だ。 -
東2法経図・開架 302.27A/U99i//K
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最近のイラン情勢がわかる。