感情で釣られる人々 なぜ理性は負け続けるのか (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208412

作品紹介・あらすじ

近年、国家や企業、共同体などが、巧妙に感情的な共感を引き出し、献身や購買といった形で人々を動員している。そこで、感情で釣られないための方策を提示。注目の政治社会学者による革新的論考!

感想・レビュー・書評

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  • 知らず知らずのうちに情報操作に引っかかってしまったり、社会や周囲のムードに流されやすいことを情けなく思っている身であるがゆえに、この本は心に沁みるものがあった。とはいえ、たまたま衆議院選挙の直後に読んだので、感情に翻弄される日本の政治が哀れに思えた。

  • 中々読み進められず読み返しながらなんとか読了。
    しばらくしてまた読んだ方がよさそう。
    ナッジの例

    あとがきより
    自然と行動をうながす仕組みさえ作っておけば、理性への意志の力を当てにすることなく、事前に考慮された選択肢の中から感情を信じて選ぶことができる
    人間は社会駅諸関係の総体 社会的な動物
    政治や労働・消費といった分野での動員戦略 何を対象としてどのように作用するかを知る

  • 題名に興味を惹かれた一冊。人間はそもそも感情的な生き物であるという前提に立ち返ることで、理性や意志のだらしなさを説明している。また理性を強化する手段として、共感能力に期待する方法と理性による管理の徹底を示唆している。

  • 東2法経図・6F開架:311.1A/H89k//K

  • 人間がなぜ理性ではなく感情で動くかということを、社会政治学の立場から分析した一冊。

    行動心理学の本ではないので、その点は差し引くとしても、あまり言ってることが理解できなかった。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】
    ・ナッジ gtdが最後に出てきて意外。もちろん、自分的には嫌いではないけど。そもそもアレンは、対象を認識して、どうしたいかを考えてラベル付けをして、具体的で分かりやすく分類するということを言っており、これ自体はとても当たり前でマトモなこと。

    ・ナッジは「肘でつついてそれとなく気づかせる」というニュアンス。これは、他人にも使えるが、自分に使う。そのテクニックとしてGTD的な「出かける前の玄関に予め置いておく」的なものを使う。また、一日に時間を決めて、とても理性的な自分と対話する、というようなことで日々の生活で埋没なしがちな意識をメンテする。

    ・この辺りが「あとがき」に書かれており、実は本書のコア・メッセージ。

    ・しかし帯にあるような「姜尚中大絶賛」というほどの内容か、これ?まぁ、帯なんて、売るためのツールだからいいんだが、もし本当なら、高名な社会学者も勉強不足ということになるかも(どこに「大絶賛」したのか、そのポイントによるので)。

    【目次】

    第1章 自分で決められてる>感情で釣られる人々
     「ウンコな議論」をどうするか 私たちが気をつけたいと思っているものの重要性
     上に政策あれば、下に政策あり
     Time Is on My Side 時間よ止まれ
     クッキーとダイコン
     「理屈は、そうだけど」 あえて、理性を弁護する
     パンだけでは生きられない
     名誉のために
     何のために働くのか
     「であること」と「させること」
     労働の中の「人間らしい要素」
     より、人間らしく
     ニッポン的経営
     やりがいと搾取の間
     私たちは「0円」で何を買っているのか?
     「釣られている」のは誰?

    第2章 マーケティングの中の「自分らしさ」
     誰のための広告
     思想としてのマーケティング
     良い品をより安く
     違いの分かる男
     「何」をお金で買いますか?
     つながりの消費
     あなたは、なぜ「つながる」ことができるのか
     「もっと、自分らしく」
     誰のための「自分らしさ」
     「広告」の中の「人間らしさ」
     その「いいね!」で大丈夫?

    第3章 感じる政治
     いつまでも、冷戦の勝者ではいられない
     「山の動く日来る」
     「誰に投票していいか分かりません」
     「政治への関心」とは何か
     嗤えないニッポンの私
     消費でも承認でもなく
     差別はもうない?
     貧困・階級・差別
     守られるべき中間層とは何か
     戦争と暴力
     「ポピュリズムですが、何か?」
     よき動員
     「民主主義が嫌いですか」
     「ファシズム」の魅力
     民主主義に適した「土壌」
     クオ・ヴァディス ドミネ(主よ何処へ)?
     人は自分のついた嘘にだまされる

    第4章 私たちはどういう社会を生きているのか
     「社会は存在しない」
     伝統は創ることができるか?
     コミュニティの限界
     グローバリゼーションという名の妖怪
     正義とは何か
     私たちは、見える手すら、よく見ていないから
     複雑な世界、単純さを求める「わたし」
     強い学問、弱い学問

    第5章 自分自身を知る(釣る)ために
     よい共同体はよりよく、そうでない共同体はそれなりに
     なぜ、いつも「全米は泣いている」のか?
     シェアする政治
     アメリカの孤独
     政治の技術化、技術の政治化
     それでも、もう一歩前へ
     統治される者のための統治

    あとがき

    読書案内 参考文献にかえて

  • わかりにくい本。
    時々、私はちょっと質問しただけなのに、その相手がダーーーって喋りまくり、ようやく話が終わったところで「はて?何が言いたいのかわからない、私はシンプルな答が知りたかっただけなのに…」と思うことがあるんですけど、この本を読んでその経験がフラッシュバックしました。

    堀内進之介さんをwikiで調べると、「慶応大学大学院に進んだもののゼミのレベルの低さに失望して退学」とあったので、頭の中がそうとう複雑にできているのでしょう。

    しばしば「読書の良さは自分の考えていたことを文章にしてくれているのを発見すること」という意見がありますが、姜尚中さん杉田敦さん橘玲さん宮台真司さんがこの本を推薦しているのは、彼らの頭の中が堀内さんと同じように高性能だから、共感するのでしょう。
    私レベルでは「カモられた」感が拭えません。

    あとがきを見ると、堀内さんはNMB48の須藤凜々花ちゃんとの共著で哲学の本を出されたそう。
    その編集者から「もっとわかりやすく」とダメ出しがありました。
    堀内さんは「結果だけでなく過程が重要で、結論だけ知っていればそれでよいというものではない」と反論。

    ただ、この『感情で釣られる人々』については、ところどころ面白いことは書かれていたから、読んだのは無駄ではありません。
    でもいきなりウ〇〇の連呼(ヒント:韻を踏んでる)はとっても不愉快。
    今後、凜々花ちゃんのお墨付きがないと、堀内さんの本は読みませんので。

  • まあ実際のところ理性より感情の方が優位なんだからあんまり理性理性言いなさんなという言説にシンパシーを抱いていたのだけど、確かに筆者のいう通り、かつて十分に理性的であった時代なんてないのだから、方向としてはいかに感情のウェイトを下げられるかという思考に向かうべきなんだよな、納得。

    それにしてもナッジとアーキテクチャの違いがようわからん。
    僕の理性もまだまだである。

  • 橘玲っぽいテイストと思ったら文中に出てきた。
    労働、マーケティング、政治など幅広い分野における感情のハッキングを紹介・批判。
    人間は理性がそんなに強くなく、感情で動きやすいので、それを前提にしたシステムにすべき。
    考えるべきことが多い現在、システムやテクノロジーを利用して、優先度をつけていくことが大事だと思った。

  • ■ダニエル・カーネマンは人間が何かしらの情報を処理する過程は,感情(システム1ファスト),理性(システム2スロー)の二つのシステムからなっており,理性(システム2)は期待されるほどには優れておらず,むしろ感情(システム1)に左右されていることを明らかにしている。
    ■「選択肢が増えすぎると人はむしろ何も選べなくなる」(決定回避の法則)
    ■人間の欲望は社会的,文化的,政治的な様々な理由により影響を受けるし集団の中の人間関係にも左右される。
    ■1920年代のイギリスでは労働者が仲間意識(感情的紐帯)を持つことが生産性を向上させることが明らかになり,既にどうしたら感情的な繋がりが生み出せるかということが考えられるようになっていた。
    ■マイヤーズは物理的な環境を整えるだけでは十分でないと知っていた。彼は,これを「ヒューマン・ファクター」(人間らしい要素)と名付けた。それまで労働者は経営者と同じ人間だと理解されていなかったのに対し,彼は,労働者は動物でも機械でもなく彼らに特有の恐れ,心配,不安といった「心」を持った人間「個人」だと考えた。生産性を上げたければ労働者が仕事をしやすいように精神的な障害や困難を取り除く必要がある。マイヤーズたちはこれを「精神衛生」と呼んだ。
    ■広告の発想はモノからコトへと変化してきた。シェアさせるためには同じカメラの広告でも製品本体をアピールしたものよりもカメラのCMであることさえ分からないような,広告の方が有利。
    ・コンテンツ(中身)よりもコンテクスト(文脈)を重視するようになっただけでなく,更に文脈そのものをコンテンツ化するようになった
    ・製品そのものを説明するのではなく商品の文脈を強調することで媒介者を得,そこから不特定多数に訴えることになる
    ■社会は契約を中心にした集合であり,それが生み出す機能や利益が重視される。それに対し,コミュニティは縁を中心とした集合であり成員であることそれ自体が重視される。
    ■宣伝とは他人の行動に影響を与えるように物事を記述すること。人々は事実を伝えるだけでは動機づけられない。人を動かすにはポップでより人々の感性に刺さるようなものでなければならない。
    ■マーケティングの重要な変化は「何が事あ実か」より「どう認識させるか」だ。
    ・重要なのは事実が「何か」ではなく,事実を「どのように」認識させるかということ。
    ・広告のキャッチ・コピーでは事実よりもメッセージが伝える高揚感が重視される
    ■ハイトによれば私たちの道徳的な傾向には次の六つのチャンネルがある
    ①配慮(ケア)
    ②公正(フェアネス)
    ③忠誠
    ④権威(敬意)
    ⑤神聖(ピュアリティ)
    ⑥自由(リバティ)
    ・リベラル派は前半の三つ,保守派は六つ全てを重視する傾向があり,リベラル派,保守派ともに,それぞれが重視するチャンネルに結び付く感情的な語彙や内容に共感しやすい
    ・教養層,高収入層,クリエイティブ層,比較的年齢の若い層は,配慮,公正,自由に反応しやすい傾向がある
    ・低学歴層,低収入層,ルーチンワーク層,高年齢層は忠誠,権威(敬意),神聖の三要素に共感的な反応をしやすい傾向がある
    ■人間のためのものが逆に仕組みの方に人間を適応させるようになってきた。
    ・システムの人間への「逆適応」
    ・「システムによる生活世界の植民地化」(ユルゲン・ハーバーマス)
    ■「玄関に置いておく小技」アレン

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著者プロフィール

首都大学東京客員研究員、現代位相研究所首席研究員/政治社会学・批判的社会理論

「2018年 『談 no.112 感情強要社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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