日本会議 戦前回帰への情念 (集英社新書)

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  • 集英社
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本棚登録 : 223
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208429

作品紹介・あらすじ

欧米メディアが「日本最大の右翼組織」と報じる日本会議。この右派政治団体と安倍政権が改憲へと傾倒する動機が、かつて日本を戦争に導いた国家神道を拠り所とする戦前回帰への道筋だと指摘する。

感想・レビュー・書評

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  •  反憲法派の中心組織「日本会議」に関する著作が2016年に相次いで刊行されたが、本書は日本会議の刊行物や関係者(所属の政治家や言論人)の公表された言説の分析を通して、その思想と運動の特徴を抽出することに重きを置いており、ジャーナリストによる「内幕暴露」的な類書と一線を画している。

     彼らの本質を「戦後」の全否定と戦時体制・国家神道体制への回帰とみなす視角は全面的に首肯しうるが、それに反駁するために、戦後の日本国憲法体制こそが「平和と繁栄」をもたらしたという認識を対置するのは、その「平和と繁栄」を享受できた世代・階層には通じても、そうではないバブル崩壊後に人格を形成した世代や繁栄から疎外された階層には通用しないのではないか。日本会議的な言説が若年ほど支持されているように見受けられるのは、平和主義やリベラリズム自体が「もてる者」=他者の専有物で、「もたざる者」=自己はそこから疎外されているという被害意識が、現実に戦前の受益を剥奪された国家神道勢力の被害意識とリンクしやすい(どちらも「戦後」に「奪われた」という認識が共通する)状況にあると思われる(トランプ現象に象徴されるようにそれは世界的傾向である)。憲法改定がいよいよ具体的な政治日程に組み込まれている状況ですでに遅すぎるが、日本会議に対抗するロジックの構築には政略的にもっと注意が必要であることを実感した。

  • 2016/7/18読了。
    たとえば、ブクログに投稿された本書や類書のレビューの中で、高い評価を投稿したレビュアーの個人情報の開示がパブーに要求され、そうして提供された情報を元に、ある日、僕の自宅のドアがノックされる。五年前にこのレビューを投稿したのはあなたですね。
    そんなことが日本で起こるわけないじゃん、と思いたいが、ならばなぜそれが今の日本で起こらないでいるのか、五年後(二年後でも十年後でもいいが)にも起こらないと思うのはなぜなのかを考えてみなければならない。そう遠くない過去の日本のある時期には、それが実際に行われたことがあるからだ。その時期の日本では行われ、今の日本では行われていないのは、なぜなのか。それは本当に五年後にも行われないと信じられるのか。
    こうしたことを考える大事なピースである「日本会議」という存在を、僕はつい最近、菅野完の『日本会議の研究』という話題書で知った。本書は『日本会議の研究』を補完する視点と構成で書かれたと覚しい。著者は紛争史・戦史が専門とのこと。『日本会議の研究』を読んで腑に落ちないところがまだある、という人にはおすすめの一冊と思う。類書も多く出始めたようなので、それらも引き続き読んでみたい。

  • 平易な言葉でとても理解しやすく、また章立ても、大変良く組み立てられており、一気に読み通すことができました。それ故に、何故、あの人々が戦前戦中を良しとするのかがわからないのです。1945年に破綻したあの頃の、一体何に戻ろうとしているのか?それを実現したとして、何が達成できるのか?どんな未来が日本に、世界にあるのか、見えません。

  • いろいろな意見や立場、考え方、信条、信じるもの
    大事に思うことやものがあると思います。だから
    否定はしませんし、声高に叫んだり攻撃をするほど
    強くもないですが。
    私はこういう団体の活動、それに賛同する人達の考え方
    には賛同できません。
    それから、政治家というのはある意味自分の信条や思考を
    政治に反映するのはいかがなものかと思ったりします。
    またマスコミも同様で、バランス感覚が崩れているような
    気がします。
    そこだけは将来この国は本当に大丈夫かと思います。
    一つだけ。。。国の首相も含めて、そういう人たちの
    顔が私には醜く映って見えてしまいます。

  • 国民主権を終わらせてはならない

  • 現在の日本の状況に将来的な不安、そしてその要因となる現象を見るとき、何かのせいにしたくなることがある。「何故こんなことになってしまったのか?」といった具合に、…。
    そんなとき、変化している世の中に、歴史のなかに、似たような流れを見つけようとしたり、他者からその要因を吹き込まれたりすると、その符合の正当性を自ら進めていってしまう。そんなことはよくある。

    でも、そんな簡単に答えを出してしまって悔いたこともあった。

    将来を不安にさせる要因はいくらでもある、もしかしたら、そうさせられているのかもしれない。
    自ら参照の対象として選んだ選択が誤っていたのかもしれない。

    それを救う存在として神を崇め、宗教が生まれ、教義か作られてもきた。

    日本は戦後の成長と豊かさを手にする過程で十分に学んできたはずだ、もう過去の轍は踏まないためにも、自分たちが責任をとるという覚悟をもって、自分が主体となって判断するという姿勢を示してもいい頃ではないだろうか。
    “憲法改正”に賛成するのも、反対するのもその決定にもたらす結果に対して責任を持つ覚悟だ。
    とんでもないことになるかもしれないけど、歴史に取り返しがつかないことはない。
    それだけ真剣になれるもので、「俺は反対したのになぁ」とか「賛成したけどひとりの力では無力だ」なんて言葉は後になって語ってはいけない。

    我が子の将来を嘆いて、拳を振るったり、パターナリスティックな指導に陥ったりせずに、自らの不可知に謙虚に、しかも他者の差延べる手に慎重に向き合わなければならない、危うさが待ち構えている時代を今私たちは通過している。


    この“日本会議”の存在やその狙いについては、あまり大手メディアでは語られないので、書かれている主張を追っていくと、ゾクッとした緊張感がいつも背後には漂っていた。

    日本という国はもう現状の不安と引き替えに、“戦中・戦後を美しいと偽装する”システムの駆動スイッチを押しているのかもしれない
    トランプの大統領当選やイギリスのブレグジット決定、そして日本のN国党の議席獲得、憲法改正のニュース映像は、もう私の未来テレビでは並べられて流れている。





  • 戦前の国家神道を拠り所として組織された「日本会議」の歴史を、わかりやすく解説してくれています。現閣僚の大半が日本会議のメンバーであり、憲法改正を強く望んでいる背景も理解できます。日本会議を理解する上で、最初に読む教科書として最適のように思いました。

  • 安倍政権と日本会議の緊密な関係。
    日本会議の歴史認識において、重要な柱となっているのが、戦前・戦中の国家体制(国家神道の精神に基づく社会)の肯定と、当時の日本が行った諸々の対外戦争の正当化です。

  • 日本会議の実態がよくわかる本である。この組織が、戦前戦中を反省せず、復活させようとしている実態がよくわかる。日本を不幸に陥れる大変危険な組織であることがわかる。

  • 政治的思想や価値観を根本的に考え直させられる団体も、その歴史を学べば目的が理解できる。

    日本会議は、日本を守る会と日本を守る国民会議が統合する形で1997年に誕生した。最も重点を置く運動目標は憲法改正。

    敗戦後、国家神道を日本の民主化の障害と考えたGHQは、神道指令を日本政府に送り、神道系施設や団体への資金的・人材的サポートを停止することを命じた。神社を統括していた神祇院が廃止されると、神祇院から国費補助を受けていた法人など三団体が合同して神社本庁を設立した。神道指令の内容は、信教の自由、集会・結社・言論・出版の自由、国民主権、基本的人権の尊重といった形で間接的に日本国憲法に盛り込まれて恒久化された。神社本庁は、占領軍によって一方的に押しつけられたと理解する日本国憲法の破棄と、国家神道的価値観への回帰を盛り込んだ自主憲法の制定を重視した運動を展開した。

    1930年に創設された生長の家は、天皇中心の世界観と宇宙や霊魂についての独自の考えを融合した思想を流布した。戦後のサンフランシスコ講和条約が調印されると、日本国憲法の破棄と明治憲法への回帰を主張し、政治団体を設立した。生長の家の教えに心酔した椛島有三らは、大学で左派学生と戦う学生運動を進めた後、その運動を一般社会人に広げて、1970年に日本青年協議会を設立した。日本青年協議会は、1979年に法案が成立した元号法制化運動で存在感を示し、この過程で結成された元号法制化実現国民会議は1981年に日本を守る国民会議に発展し、日本青年協議会は事務局を取り仕切ることになった。

    東西冷戦期の日本でも、あらゆる宗教の価値を否定し、国ごとの固有文化を尊重する考えのない共産主義に共鳴する市民が少なからず存在していた。共産主義が広がることを懸念した宗教家や保守的な政治運動家は、1974年に日本を守る会を創設した。

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著者プロフィール

1967年生まれ。戦史および紛争史研究家。主な著書に『歴史戦と思想戦 ――歴史問題の読み解き方』(集英社、2019年)、『沈黙の子どもたち─軍はなぜ市民を大量殺害したか』(晶文社、2019年)、『〔新版〕西部戦線全史』(朝日文庫、2018年)など。

「2020年 『激戦の再現CGと戦略地図で蘇る! 独ソ戦のすべて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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