「建築」で日本を変える (集英社新書)

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  • 集英社 (2016年9月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784087208481

作品紹介・あらすじ

著者は近代主義建築に限界を見出だす一方、地方にこそ人と人をつなぎ、自然と調和した建築の可能性があると考える。本書では自身の地方での建築プロジェクトを通し、新たな建築のあり方を提案する。

みんなの感想まとめ

自然や地域に根ざした建築の重要性を訴える一冊で、著者は近代主義建築の限界を指摘し、地方における新たな建築の可能性を探ります。特に、岐阜メディアコスモスをはじめとする4つのプロジェクトを通じて、自然や土...

感想・レビュー・書評

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  • 第1章 都市を向いた建築の時代は終わった
    p.21 自然と言えば、下町を中心とした水との関わりを見逃すこともできません。現在の東京にようにレインボーブリッジがかかり、浜辺が護岸されて工場や相互が立ち並ぶ無味乾燥なものではなく、隅田川などの川辺では、手を伸ばせばすぐに水面に触れられるような親しさがあったのです。

    p.33 今までの東京の街づくりの基本構想は明治期以降も受け継がれていました。ところが最近は、まるで江戸以来の歴史や文化、自然との調和、近隣との繋がりを打ち消すように、この都市が持っていた親しみやすい庶民性や身体感覚を希薄化させて、技術に頼りきった高精度で人工的な空間にすり変えようとしています。

    第2章 近代主義思想を超えた建築は可能か
    p.46 人びとは自我を備えた「個」を確立することによって、中世以来ヨーロッパを覆っていた圧倒的なキリスト教の支配から解放されて野生を尊重する近代世界へ移行しました。これを受けて「個」の集合体である「都市」も変貌を遂げていきます。かつて人々は共同体という古い形の人間関係の中で、その一員として生きていました。それが自己を確立し個人を主張するようになると、共同体から独立して1個人が都市に集まり、市民社会を形成するようになります。

    p.47 それが明治維新を経て第二次世界大戦後、一気に近代化が進むと、人びとは新しい職業を得るため、地方を離れて1個人としての暮らしを求めて東京へ、大都市へと大勢が移動してきました。対する大都市も戦後の行動経済成長を支える人材の大半を地方に求めたのです。

    第3章 地方から発信する脱近代建築
    p.85 空間と人を結ぶという意味でも、インテリアや家具はとても大切です。建築において、柔らかや温かさと行った身体感覚は、実際に手に触れたり、腰掛けたりするものに影響をするからです。

    第4章 建築の始源に立ちかえる建築
    p.101 誰もが責任を回避し、リスクを負わない社会になると、夢を描くこともできないし、格別なことではなく当たり前のことをやった方がいいということになってしまいます。実際に、世界の建築はますますそういう方向に進んでいるし、特に日本では顕著です。

    第5章 市民が考える市民のための建築
    p.149 敷地が松本市の中心部になるため、カフェやレストランを含んだ商業的機能や、新聞社ならではのコミュニケーションっ機能を持たせたいとのことでした。そのためにコミュニティや商業施設に詳しい専門家に加わってもらい、市民とのワークショップを通して建物の中身を検討したいという要望がありました。そこで私たちは、コミュニティデザイナーの山崎亮さんを推薦し、さらに山崎さんから商業施設の専門家を紹介してもらって、かつて経験したことのないプロジェクトをスタートしたのです。

    第6章 歴史文化に根ざした建築
    p.174 水戸市民にとって「みんなの家」のよつに愛着を感じる建築を作っていくための手がかりを求めて、私たちは、水戸を象徴するような、あるいは水戸のみなさんの心の拠り所になっているものは何なのだろうかと調べることから始めました。

    第7章 みんなの建築
    p.187. 日本ではアトリエ派の建築家はひたすら追い詰められた状況にあって存在理由がないところまで来ています。経済合理性を求める建築ならば、大手の設計事務所なゼネコンの設計場の方がクライアントの言いなりですからリスクは少ないですし、安心安全な建物ができるからです。

    p.192 「ぎふメディアコスモス」に関しても、かつて本やデジタル化されて図書館は必要なくなると議論された時期がありました。しかし実際にオープンすると、子どもからシニアまでたくさんの人たちがやってきて、特に対話するわけではないのに、微妙な距離感を保ちながら本を読んだり、昼寝をしたりしています。それは近代主義建築が人と人とのつながりを断ち、人々を小さなゲージに閉じ込めてきたことの反動でもあります。目にも言えないコミュニティ大して、目に見える場、人と人とのつながりを体感できる場所をつくっていくこそが、これからの建築の使命です。

  • 岐阜メディアコスモスを作った人の本。
    東京の魅力がなくなってきている。なぜなら、自然や土地に何も配慮しない建築をしているから。今こそ、自然や土地に合わせた建築をするべき。それを実現させた4つのプロジェクトがあり、その一つがメディアコスモスである。空気の流れや光の入り方などに配慮して設計してあり、地域密着型の建築ができた。

  • 伊東豊雄さんの建築への眼差しが強い言葉で表現されている一冊。
    地方からコミュニティを通じて建築を考える。近代主義建築の言語ではない新たな言語の再構築。
    これからの建築家に求められる職能が明言されている。

  • 近代主義、資本主義の象徴となる都市は均質な空間を提供する一方で人同士の繋がりを断ち切ってしまった一面もあるという。

    自然と向き合う、地域を見直す、繋がりを作り直す。
    建築を皆で関わることで新たな人としての豊かさを考えましょう、と諭すようなやさしい表現で綴られています。

    そんな伊東さんと近代、都市、コミュニティーなどの解釈について、現在活躍される様々な建築家やクリエイターの方々との議論を聞いてみたくなりました。

  • 釜石のプランもすごく良さそうだったのに、結局全然取り入れられなかったのですね。ただ、地方に可能性を求める伊東さんのこれからが楽しみです。

  • ぎふメディアコスモスに行った。
    岐阜駅から北に2km。
    大きく広がる柳ヶ瀬のアーケードの向こう、寒い日で人の姿もまばらな街を抜けて一歩中に入り
    「みんな、ここにいたのね!」と思った。
    すごく賑わっていた。
    年配女性のグループ、バイオリンの講習、外国語のサークル、家族連れ、中高生、ガラスの向こうには書庫、その隣の部屋では本を修理する職員さん、
    いろーんな人が、いろーんなことをしていた。
    2階に上がると、歓声をあげたくなるような図書館!
    これ、全部、オリジナル家具?
    大きな傘の下や、周囲に作られた学習席は自然光を取り入れて明るく、季節がよければ外でもゆったり座れるようになっている。
    こんな素敵な図書館、どうしてできたのか? 
    こんなに人が集まるのはどうしてなのか?
    職員さんに、ここについての本はありますか?ときいたら、建築雑誌にはよく出てますが ... というお返事。
    うーん、もうちょっと知りたい ....と、ここを設計した伊東豊雄氏の新書に行き着いた。

    近代建築が、経済合理性を追求するあまり、都市は没個性でエネルギー効率の非常に悪い建物ばかりになった。
    建築とは、地域の要求に応え 人々をつなぎ 街に贈り物をするものではないのか?
    それが叶うのは、もう大都市ではなく、地方にある。

    ぎふメディアコスモスを作るときのコンセプト。
    屋内にある屋外という発想、訪れやすい場所、居心地のいい場所。 あの活気、私が感じた素晴らしさは どれも狙ってそう設計されたものだとわかった。
    省エネルギーも兼ねての 光と空気の扱いについても書かれていた。
    とくに触れられてはいなかったけれども、音にも感心した。
    息の詰まるような静寂は無く、小さい子などのびのびと遊んでいるのだけれども、それが柔らかな生活音になっていた。
    あの天井や傘や、オリジナル家具のおかげだろうか?
    とても心地よかった。

    他にも、震災のあとの「みんなの家」のこと、国立競技場のコンペ、松本の信濃毎日新聞本社、などなど なるほど 建築は どんな街が望ましいかという哲学の具現化、と伊藤さんが考えておられることが伝わってくるようだった。

    それで .... スタバだったんだ。
    ぎふメディアコスモス。
    私が中学生だったら、やっぱりスタバに行きたいだろうから。

  • 誰が見ても素晴らしいと思うモノを追求する必要はない。
    それよりも今近くにいる人たちと、幸せを感じられるほうが大切である。
    その幸せを形にし、積み上げていくことが、
    建築が担ってくれる一つの役割なのかもしれないと思いました。

    (以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋)
    ●「経済の豊かさより心の豊かさへ」
    一、自然との関係を回復する
    二、地域性を取り戻す
    三、土地に固有の歴史や文化を継承する
    四、人々の繋がりやコミュニティの場をつくり直す(P.56-57)
    ○一方、設備環境はというと、構造や空間が固まってから検討を始めます。つまり設備は後づけだったのです。けれども最近はテクノロジーが発達して、初期の段階から、構造と並行して光や空気の流れもシミュレーションできるようになりました。(P.66)
    ○まるで空間のなかにいるような感覚でリアルに想像することができました。今では構造と設備を同時に進めていくことによって、より自然に近くて快適な空間ができると確信しています。(P.67)
    ○建築というのは、このよに目指していることを共有できるたくさんの人たち、みんなでつくりあげるものなのです。(P.87)
    ●フランク・ゲーリー、菊竹清訓、ル・ゴルビジェのカップ・マルタン(P.142)
    ●コミュニティデザイナーの山崎亮(P.148)
    ●丹下健三さんの香川県庁舎、倉敷市庁舎、広島ピースセンター、前川國男さんの岡山文化センター、大高正人さんの坂出人工土地(P.158)
    ●カーテンウォール、プレキャスト工法、ブリーズ・ソレイユ(P.168)
    ●コンスタンティン・プランクーシの無限柱、磯崎新の水戸芸術館(P.171)
    ●アルヴァ・アールト(P.178)
    ○そして少しずつわかってきたことは、私たちが日常的に使っている建築言語では、建築の専門家ではない普通の人たちと同じ目線で対話ができないということでした。(P.183)
    ●村野藤吾、白井晟一(P.196)

    ○プロジェクトは単なる調査研究ではなく、より実践的に、「大三島を日本でいちばん住みたい島にする」に近づくために、自分たちも楽しみながら行動してみようということです。そのため、プロジェクトの運営方法やゴールはあえて決めていません。効率的に進める近代主義的な発想ではなく(P.114)
    ○私たちのように、島とはもともと関係のない人間がゼロから何かを始めようとするときには、まず島の方々かに受け入れられることが重要です。信頼を得なければならないのです。その一歩は、誤解を恐れずに言ってしまうのならば、「この人たちもいいやつなんだ」と認めてもらうことだと思うのです。(P.119)
    ○最近、ハーバード大学に限らず、世界中の大学から建築を学ぶ学生がワークショップや短期プログラムで日本に来ています。日本の建築は国内ではあまり話題にもなりませんが、世界からは注目されているという何とも皮肉な状況です。(P.131)
    ○興奮状態の現場と静かな病室のギャップもあって、このような「芸術的」とも言える建築をつくるのはこれで最後にしようか、と考え込んでいました。これほどの時間とエネルギーを注ぐ仕事は、自分の建築人生で、もはやあり得ないだろうと思ったからです。(P.198)
    ○東日本大震災の復興と新国立とが共通しているのは、相手が公共の場合には誰も個人としての顔を見せてコメントしないこと、オープンな討論は一切しないことです。(P.202)

  • オフィスビルで働く一人当たりの二酸化炭素排出量はそうでない人の10倍。

    経済の豊かさより心の豊かさへ
    1.自然との関係を回復
    2.地域性
    3.土地固有の歴史や文化の継承
    4.人々の繋がりやコミュニティの場つくり

    光や風といった自然そのものを建築に取り込む。
    「ぎふメディアコスモス」
     大きな家の中の小さなそれぞれの家=開放型のパオのようなグローブ。

    建築とはコミュニティに形を与えること。

  • タクシー代で、本は買える。これからの建築をきっかけに読んだ伊東豊雄氏の本。近代的な建築が及ぼす都市東京に対する問題提起。本当の豊かさとは何か。その突破口は地方にある。建築とはトップダウンで建物を作ることではなく、コミュニケーションを生み出すこと。みんなで作ったものだと、そこへの人の関わり方が変わってくる。自然と共存していた江戸時代。自然から人工的に隔離されている現代。これからの建築の第一歩として大三島やぎふ、せんだいでの伊東氏の建築の発想を軸にこれからの建築を語っているほ本だった。

  • 日本を変えるのではなく、社会を変えていこうとする姿勢にみえます。こんな仕事をしてみたいですね。

  • 伊東建築論

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著者プロフィール

建築家。1941年生まれ。主な作品に「せんだいメディアテーク」「みんなの森 ぎふメディアコスモス」「台中国家歌劇院(台湾)」など。ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、王立英国建築家協会(RIBA)ロイヤルゴールドメダル、プリツカー建築賞など受賞。2011年に私塾「伊東建築塾」を設立。児童対象の建築スクールや、地方の島のまちづくりなど、これからのまちや建築を考える建築教育の場としてさまざまな活動を行っている。

「2017年 『冒険する建築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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