いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208887

作品紹介・あらすじ

アート小説の旗手として圧倒的人気を誇る原田マハが、自身の作家人生に強い影響を与えた絵画はもちろん、美術史のなかで大きな転換となった絵画を紹介。原田作品ではおなじみの名画も多数掲載!

感想・レビュー・書評

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  • 2023年のおそらく最後となる294冊目として本書を読み終えました。
    今年の最後を締めくくったの原田マハさんの新書、累計34作目の読了となりました。

    何度も記しましたが、マハさんの作品と出会い、アート作品に興味を持つようになり、美術館へも足を運ぶようになりました。

    本書では「生きているうちに見るべき名画」と題し26点の作品をマハさんが紹介し、それぞれの画家についても語りかけてくれます。

    私のような初心者にはまさに教科書と呼ぶべき一冊です。

    マハさんのアート小説の題材となった作品ももちろん登場♪

    思い出すなぁ...

    そして自分自身の目で本物を見に行きたい!!
    いつか、きっと、そのうちに...


    本年も残すところあと僅か、多くのブク友さんのお陰で今まで手にすることのなかった本や写真集、絵本にも数多く出会えた1年でした(*^^*)
    2024年もブク友さんのレビューを参考にさせて頂きながら、ステキな本との出会いを期待して☆

    <あらすじ>
    原田マハさんが著したエッセイ集です。自身の作家人生に強い影響を与えた絵画や、美術史のなかで大きな転換となった絵画、後世の芸術家に影響を与えた革新的な絵画などを紹介しています1。ピカソ、ジョット、ボッティチェリ、モランディ、ゴヤ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、セザンヌ、マネ、モネ、ドガ、ゴッホ、クリムト、マティス、ロスコ、ルソー、ビアズリー、マレーヴィチ、ポロック、ムンク、東山魅夷など、全26点の絵画を豪華カラー図版とともに紹介しています。

    原田マハさんは、アート小説の旗手として圧倒的人気を誇る作家です。『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞し、『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞を受賞しました。その他の作品に『ジヴェルニーの食卓』『デトロイト美術館の奇跡』『暗幕のゲルニカ』などがあります。

    いちまいの絵は、原田マハさんの熱い想いが伝わる作品です。絵画に秘められた画家の思い、メッセージ、愛や苦悩を、作家ならではの視点で綴っています。絵画に興味のある方や、原田マハさんのファンの方におすすめの一冊です。





    アート小説の旗手として圧倒的人気を誇る原田マハが、自身の作家人生に強い影響を与えた絵画はもちろん、美術史のなかで大きな転換となった絵画を紹介。原田作品ではおなじみの名画も多数掲載!一枚の絵画に秘められた、強烈な力。何もかも変えてしまうほどの革新的な表現。抜きん出た技術。美術史を大きく転換するほどの先見性。そういった個性をもつ絵画を「絶対絵画」と名づけて紹介する。掲載作品……ピカソ『アヴィニヨンの娘たち』『ゲルニカ』、ジョット・ディ・ボンドーネ『聖フランチェスコの伝説』、ボッティチェリ『プリマヴェーラ』、モランディ『ブリオッシュのある静物』、ゴヤ『1808年5月3日』、レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』、セザンヌ『セザンヌ夫人の肖像』、マネ『バルコニー』、モネ『睡蓮』、ドガ『エトワール』、ゴッホ『星月夜』、クリムト『アデーレ・ブロッホ=バウワアーの肖像I』、マティス『ダンス』、ロスコ『シーグラム壁画』、ルソー『夢』、ビアズリー『おまえの口に口づけしたよ、ヨカナーン』、マレーヴィチ『黒の正方形』、ポロック『No.1』、ムンク『叫び』、東山魅夷『道』など、全26点。

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      ヒボさん、こちらでも…
      こんばん૮₍ • ᴥ • ₎აワン(笑)
      す、凄いですねぇー294冊!!
      お茶( ^^) _旦~~ドウゾ~
      お疲...
      ヒボさん、こちらでも…
      こんばん૮₍ • ᴥ • ₎აワン(笑)
      す、凄いですねぇー294冊!!
      お茶( ^^) _旦~~ドウゾ~
      お疲れ様でした〜☆☆
      良いお年をお迎えください〜
      2023/12/31
  • 著者が選りすぐりの絵画たち26作品を紹介。その多くは、著者の小説の題材になっているもの。

    自分には、中高の美術の教科書で出会った印象派の作品たちがしっくりくるようだ。あとフェルメール。20年以上前にマウリッツハイスで見た絵画たち(真珠の首飾りの女、デルフトの眺望など)は忘れられない。

    一方で、どう解説されても黒い正方形だったり、意味のない雑然とした模様だったり、モダンアートは理解不能だなあ。


    アヴィニヨンの娘たち ―― パブロ・ピカソ
    秘儀荘「ディオニュソスの秘儀」―― 作者不明
    聖フランチェスコの伝記 ―― ジョット・ディ・ボンドーネ
    プリマヴェーラ(春)―― サンドロ・ポッティチェリ
    最後の晩餐 ―― レオナルド・ダ・ヴィンチ
    セザンヌ夫人 ―― ポール・セザンヌ
    バルコニー ―― エドゥアール・マネ
    大壁画「睡蓮」―― クロード・モネ
    エトワール ―― エドガー・ドガ
    星月夜 ―― フィンセント・ファン・ゴッホ
    アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I ―― グスタフ・クリムト
    真珠の首飾りの女 ―― ヨハネス・フェルメール
    ブリオッシュのある静物 ―― ジョルジョ・モランディ
    マドリッド、1808年5月3日 ―― フランシスコ・デ・ゴヤ
    ダンス ―― アンリ・マティス
    夢 ―― アンリ・ルソー
    ゲルニカ ―― パブロ・ピカソ
    おまえの口に口づけしたよ、ヨカナーン ―― オーブリー・ピアズリー
    黒の正方形 ―― カジミール・マレーヴィチ
    Number IA,1948 ―― ジャクソン・ポロック
    シーグラム壁画 ―― マーク・ロスコ
    テワナ衣装の自画像、あるいは私の考えの中のディエゴ、あるいはディエゴへの思い ―― フリーダ・カーロ
    聖マタイの召命 ―― ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ
    オルナンの埋葬 ―― ギュスターヴ・クルーベ
    叫び ―― エドヴァルド・ムンク
    道 ―― 東山魁夷


  • 〜生きているうちに見るべき名画〜

    このなかなかのタイトルに惹かれ読むことに
    26点の名画が紹介されている

    気になった作品をピックアップ
    個人的な過去の体験やら思考整理が大半のため、たぶん本の参考にはなりません
    悪しからず…

    ■アンリ・ルソー
    「夢」
    ルソーの絵は技術的には稚拙と言われるが、色彩が素敵で何故か心がウキウキする
    不思議なときめきをもたらせてくれる
    ルソー自身は家庭に恵まれず孤独な人生を送ったはず…
    税関職員だった彼は誰にも師事せず、独学で自分の才能を信じ描き続けた
    ゴッホ同様、生前はあまり評価されず、死後に評価が上がったアーティスト
    彼の人生はあまり楽しそうじゃないけど絵はユーモアを感じる

    ■オーブリー・ビアズリー
    「おまえの口に口づけしたよ、ヨカナーン」
    サロメの挿絵
    お恥ずかしいながら初めて知ったこの作品
    何となく見覚えがある
    そして一目で気に入った!
    サイケで毒々しいがセンス良くお洒落なのだ
    軽く調べてみると…
    ・耽美主義ムーブメントの中心人物
    ・アール・ヌーヴォーの創始者としても位置づけられている
    ・日本の浮世絵や平面画の影響が強い
    とある
    いやーこれは深追いしたくなる!
    そしてサロメも読まなくては!
    ワクワク

    ■ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ
    「聖マタイの召命」
    カラヴァッジオはかなりお気に入り
    インパクトのある「ゴリアテの首を持つダビデ」
    まさに彼の精神を反映しているであるが、ただグロいだけではなく彼の心の闇と葛藤が見て取れる
    そうカラヴァッジオの人生はなかなかひどい
    暴行、喧嘩、殺人…そして逃亡
    そんな感情の起伏の激しさを絵にぶつけているのであろうか…
    闇は深く、光は鋭い
    そして写実感は見事

    ■ピカソ
    「アヴィニヨンの娘」
    左から5人の女性像
    左はかろうじて女性とわかるが、右に行くほど歪んでいく
    もう一番右の方なんて怪物ですからね
    ピカソの何が凄いって人々の常識を覆すことをやってのけたところだ
    そういうのを知らないとこの絵の良さは理解できないよなぁ…
    一方の「ゲルニカ」
    個人的にピカソの作品で一番好きなものだ
    中学の授業で初めて「ゲルニカ」に出会う
    絵の背景を知り、戦争に対する強烈なメッセージを感じ、いつか本物を見たいと思っていた…
    そしてその15年後にスペインで本物を鑑賞
    思った以上の大きさと迫力に圧巻
    これほど無彩色を徹底していても伝える力の強さに驚いた


    ■マネ
    「バルコニー」
    マネといえば落選展に出品された「草原の昼食」
    これが好きである
    当時は問題となった作品(女神ではない女性の裸体を描くというタブーを犯した作品)であり、
    不謹慎だと言われるのだが、それ以上にその場の自然な空気感を収めた絵という感じでなかなか良い
    個人的には下品さも卑猥さを感じないため、そのギャップが面白いのだが…
    マネの描く自然は柔らかく太陽の暖かみがあり落ち着く

    ■モネ
    「水連」
    以前はモネの絵に全く興味を持てなかった
    何故か…
    それは本物を見たことがなかったからだ
    本物を見た瞬間にノックアウトされましたけど(笑)
    モネの絵こそは実物を見ないと意味がない
    ちなみにマハさんの「モネの足あと」はモネを知るにはうってつけの書だ


    ■ドガ
    「エトワール」
    ドガの着眼点が興味深い作品
    バレエを踊る少女の背景、舞台のそでに居る黒服の男
    こちらはパトロンだという
    この夜パトロンは少女を連れ出すのであろうか…
    彼女の生活はどんなであろうか
    家族はそれを知っているのか…
    こういう絵って妄想が止まらなくなる
    ただ単にモデルとして美しいエトワールを描かないところがミソ

    その他有名どころでは、
    「プリマヴェーラ」ボッティチェリ、「最後の晩餐」レオナルド・ダ・ヴィンチ、「真珠耳飾りの少女」フェルメール、アンリ・マティス、ゴッホ、ゴヤ、クリムト、ムンク、東山魁夷などなど

    日本で人気のゴッホとクリムト
    大きい声で言えないが、未だに良さが理解できない
    好みの問題だと思うのだが、いつか何か思う時がきたらそれはそれで面白い
    ムンクも以前はなんじゃこりゃ?って思っていたが、彼の作品の多くを展示会でみて結構気に入った(彼は長生きだったからか残された作品が非常に多い)
    東山魁夷もなかなかのご苦労な人生を歩まれたようで…これから追っていきたい

    以前読んだ「絵」だけを観ることを推奨している「13歳からのアート思考」
    こちらを読んだその時はなるほど!と思ったものの、やはり作品の背景、アーティストの生い立ちや考えに触れて絵を観る方が私は好きだ
    じゃなきゃピカソやセザンヌの良さなんて全く理解できないもの!
    特に現代アートもこの傾向がとても強い
    ここに出てきたジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、ブリーダー・カーロ
    濃密な彼ら(彼女ら)の人生を反映した作品に仕上がっている
    アーティストの背景や生い立ちを知り作品を見ると驚くほど感情移入しながら見ることができるのはまるで何かのトリックみたいだ(良いのか悪いのか…?)
    頭でっかちになってはいけないが、これからも自分なりの鑑賞法で楽しんでいきたい

    さて本書
    原田マハさんの体験談も絡んでいるところは面白いのだが、
    もう少し突っ込んだ内容を知りたい身には物足りない
    ちょっとタイトルから期待し過ぎたかな
    これらに登場する作品や絵をモチーフにした小説がやはり多いと感じるので、マハさん本当に好きなのですねぇ…

    ちなみに皆さんのいちまいの絵はどれですか?
    コレ結構難しい
    好きな画家は挙げられるが、ではいちまいの絵を選ぼうと思うと…
    うーん
    これからの人生で見つけていこうかな






    ■最後の晩餐 
    ■睡蓮
    ■真珠耳飾りの少女 フェルメール
    ■マドリッド、1808年5月3日 フランシスコ・デ・ゴヤ
    ■ダンス アンリ・マティス
    ■夢 アンリ・ルソー
    ■おまえの口に口づけしたよ、ヨカナーン オーブリー・ビアズリー


    ジャクソン・ポロック
    マーク・ロスコ

    ブリーダー・カーロ



    ■聖マタイの召命 ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ

    ■叫び エドヴァルド・ムンク 
    ■道 東山魁夷

    • 5552さん
      ハイジさん、中途半端な時間に失礼します。

      すごい!
      数々の本物の名画をご自身の目でご覧になっておられるんですね。
      やっぱり本物は違...
      ハイジさん、中途半端な時間に失礼します。

      すごい!
      数々の本物の名画をご自身の目でご覧になっておられるんですね。
      やっぱり本物は違いますか?
      レビュー、トリビア満載でたいへん興味深く拝見しました。

      私のいちまいの絵、は、ゴッホの『夜のカフェテラス』かなー。
      何故か懐かしく、切なくなるんです。
      ゴッホはキャラクターがツボなんです。
      いえ、側にいたら確実にもてあますと思いますが、遠くでこっそり眺めるぶんにはすごく面白い方だなと。
      実際、マハさんもゴッホに魅了されていますよね。
      私も、ハイジさんがレビューで書かれている通り、アーティストの生い立ちや背景を知ると作品にますます興味が湧いてきます。
      感覚でなく、物語として絵画を観ているのでしょうかね。
      2022/07/04
    • ハイジさん
      5552さん
      コメントありがとうございます!

      若い頃は(笑)海外旅行が大好きで、さらに美術館巡りも大好きで、運良くいくつか拝見することがで...
      5552さん
      コメントありがとうございます!

      若い頃は(笑)海外旅行が大好きで、さらに美術館巡りも大好きで、運良くいくつか拝見することができました
      最近はなかなかそんな機会もないですが…(涙)

      そうですか!
      「夜のカフェテラス」なのですね
      確かにゴッホのキャラクターと彼の人生を知ってしまうと、切なくなりますね
      5552さんのおっしゃるように身近に居たら、ちょっと敬遠してしまうタイプですが(笑)
      でもあの作風はゴッホにしかない個性が溢れていて、わたしには受け止める技量はないですが、好きな方の気持ちはわかる気がします

      物語として絵画を観る

      名言です!
      5552さんのレビューをみてもいつも思いますが、言葉のセンスが素晴らしいです!
      感服
      2022/07/04
  • 何も知らないままで、絵を鑑賞したときに感じる第一印象も大切なんだろうけど、少しでもその絵が描かれた背景や、画家の生涯などを知ってから鑑賞すれば、もっともっと名画の世界が楽しくなるんだとワクワクしました。
    「綺麗だなぁ」「迫力あるなぁ」だけではもったいない……ですね。
    いちまい、いちまいの名画に対する原田マハさんの真摯な語り口に、これらの絵に「いつか会いたい」と恋焦がれ、だけど、きっと一度も会うことが出来ない方が多いんだろうなと、報われないまま片想いに終止符を打ってしまいそうな、そんな初恋にも似た感情を抱きました。
    アートの力に心が震え、その美しさに言葉をなくし、名画が発するオーラに引き込まれる。そんな心打たれる想いを、たったいちまいの絵が私たちに届けてくれるのです。

  • 原田マハさんから、
    たくさんの絵のおもしろさを学んだ。

    小説、映画と続き、今回は実際の絵画から
    語られるストーリーと作者の生い立ちを。

    タイトル通り、いちまいの絵から
    さまざまな物語が生まれるんだなぁということを
    身に染みて感じた。

    美術館はたびたび訪れるが、
    わりと絵をさっと見て次の絵へ。。
    という見方しかしてこなかったので、
    次はじっくりといちまいの絵と向き合ってみよう
    じゃないか。

    そう思いながら読了。

  • 図書館で目にとまって読んでみました。
    「生きているうちに見るべき名画」とサブタイトルに惹かれて。
    知っておいた方がいいかも、と
    不用な虚栄心。
    アートの上澄みをすくっておこうとした自分に
    大いに反省いたしました。

    原田マハさんの美術品に対する向き合い方、
    画家たちの命を削るようにして書き上げた
    歴史の一部を知るにつけ
    私も縁のある作品にいつか出会える日に向けて
    純粋な感動を大切にして進まなくちゃと
    思った次第です。
    とはいえ、何も知らない自分には
    大変役立つ一冊になりました。
    おすすめです。

  • 美術が苦手で、美術館やアートと言われるものには興味がないとずっと思い込みつつ、時々、食指が伸び、いや、一瞬でもの気の迷いに違いない…と思ったりしてきた。

    でも、原田マハさんの小説は大好きで、そこで出てくる数々のアートはやはり気になり…この本を読んで、生きているうちに、このうちの1枚でも見てみたいと思わされた。

    特に【ゲルニカ】に関しては、心を打つ。

    未読のマハさんのアート小説もまた読んでいこうと改めて思う。

  • 2016年末に手にした「デトロイト美術館の奇跡」。

    破綻寸前の美術館に起きた奇跡を描いた作品に魅せられて、上野の森美術館の「デトロイト美術館展」に出かけた。

    美術館に行ったのなんていつ以来だっただろうか。学生時代は、キャンパスに隣接した美術館に頻繁に通っていたのに。

    社会人となってからも、都内の美術館を訪れるのが楽しみだったのに。

    だが、いつの間にか時間と心の余裕がなくなっていた。


    ただただ絵画と対峙して楽しむ。

    美しさに圧倒される。

    作品の背景を知ることで様々なことを思索する。

    そんな大切なことを思い出させてくれ、美術館に呼び戻してくれた著者は、私の恩人の一人であると言っても過言ではない。


    専門家としての豊富な知識と経験。

    純粋にアートを愛する無垢な心。

    それが両立する彼女の作品は、気取りがなくわかりやすい。

    「青春と読書」の連載記事をまとめた本書には、28作品すべてがカラーで掲載されている。

    アヴィニョンの娘たち、ゲルニカ パブロ・ピカソ

    最後の晩餐 レオナルド・ダ・ヴィンチ

    セザンヌ夫人 ポール・セザンヌ

    バルコニー エドゥアール・マネ

    大壁画「睡蓮」 クロード・モネ

    エトワール エドガー・ドガ

    星月夜 フィンセント・ファン・ゴッホ

    アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ グスタフ・クリムト

    真珠の耳飾りの少女 ヨハネス・フェルメール

    マドリッド、1808年5月3日 フランシスコ・デ・ゴヤ

    叫び エドヴァルド・ムンク

    道 東山魁夷

    「その絵は世界中のどこかの美術館に収蔵されていて、いつでも観にいくことができる。そのこと自体、世界中のすべての人に与えられた幸運であると私は思う」(P42)

    「美術館訪問は『遅きに失する』ということがない。そこがいいところなのだ」(P123)

    「たったいちまいの絵。そう、ただそれだけである。けれど、そこには光がある。私を、あなたを、私とあなたが生きる世界を変える力が、その絵には秘められている」(P253 あとがきにかえて)

    移動が制限されて、人と自由に会うことができない2020年。
    美術館だけでなく、あらゆるイベントが中止や自粛に追い込まれる世界的危機と対峙している今。

    そんな時に、時間も空間も超えた芸術との対話の機会が得られた。

    それは、著者のアートを心から愛する情熱があったればこそだ。

  • 「生きているうちに見るべき名画」を1点ずつ紹介されています。有名なものが多いので、見たことのある名画もたくさんありました。なぜそれを見なければならないか、書かれた時代背景についても紹介されており、一通りの知識を整理することができたと思います。見たことがあるから、へえこんな名画もあるのかと興味を深めるようにもなっていると思います。口絵に紹介されている名画がカラーで載っていますので、それを見ながら本文を読んでいくことで、それらを近く感じながら知ることができると思います。
    著者がその名画と出会った瞬間も書かれています。図録などで見るだけではなくで、実際に本物を見にいくこと。名画と出会うことの意味が、本書から訴えれてきたと感じました。そう、生きているうちに、そこへ行って見るべきだと。

  • 小さい頃から謎の線や色を芸術と持て囃す人種に対しての理解ができなかった。大人になるにつれて教養としての芸術を目の前にすればするほど、理解したい気持ちと向き合った時に感じる虚無感に耐えられなくなってしまう自分に嫌気がしてしまう。
    この本を読むと教養のある人というのは画家の人生やその時代の出来事を知識としてではなく、想像力を膨らませるための材料としていることがよくわかる。感性を磨く道はあまりにも長く、同じ土俵で人生を生きる未来は遠い気がしてくる。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

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