ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた (集英社新書)

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  • 集英社
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レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210125

作品紹介・あらすじ

子供たちの独立国家は、本当に実現するのか? 竹島問題、憲法改正、象徴天皇制などのアクチュアルなテーマを、架空の小学校を舞台に平易な言葉で論じた小説的社会批評。

感想・レビュー・書評

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  • 高橋源一郎さんの小説。相変わらず不思議な小説。こどもたちが主人公で、ある学校にいる生徒たちが、不思議な先生たちとインタラクションをして夏休みの宿題で『くに』を作っていくお話。『くに』だって作ることができるのだと。小説によって、『くに』というものの形をゆるめて、そして、たぶん民主主義というものについて、なにかを湧き出させようとしている。『くに』については明白に意識的だけれども、ひらがなが多いのもあきらかに意識的で、それはこの小説のもつ特性のひとつになっている。本がすきなにんげんは、もっている本をぜんぶ読むようなことはしない、というおとうさんは、自分が書いている小説を『くに』だ、という。『くに』もあるときひとが人口的につくったもので、つくる理由があったということだ。それはある観点では小説もそうだ。少なくとも高橋さんにとってはそういうものだということなのかもしれない。

    小説の中で肝太先生はこういう。「わたしの考える『おとな』についてはなしましょう。『おとな』というのは『ひとり』ではなすことができるひとのことです。たったひとり。条件というのは、そのひとに、名前があること。他には、なにもいらない。そのひとが、歳をとっているとか、中学生であるとか、左足に障害があるとか、おおきな通信会社の課長をしているとか、そういうことはすべて関係なく、ただ、『ひとり』で、自分の名前をもっていて、それだけの条件で、なにかをはなす、あるいは、なにかを考える、それが『おとな』であることです」

    自分は『おとな』になったのだろうか。

    あとがきで高橋さんが書くように「『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』は、二十一世紀版の『君たちはどう生きるか』を目指して書かれた」という。小説というもののひとつの特性は、制約のなさであり、そこに何らかのメッセージ性を込めるとき、そのメッセージの内容によって小説は互いに似てくるものなのかもしれない。

  • この本に出てくる「がっこう」の実現は難しいけど、この本を教材にする学校が出てきてほしい。

  • 国ではなく「くに」を作るプロジェクトをたちあげたランちゃんたち。高橋家がそのままモデルなのだろうなぁと思いながら読んだ。

    「憲法は使わないと」とか領土がなければ領土争いなんておきないとか柔らかい思考の大切さを感じつつ、面白かったけれど、不思議なモヤモヤも残った。そのモヤモヤの正体はまだわからない。

    アイちゃん一家が出て来て、小さな人が出て来て、小さな人が出てきたからイギリスが登場したのかなぁ。小さな人が出てきたことの意味は何なのだろうなぁ。

  • 民主主義、象徴天皇制、憲法9条…平易でわかりやすい文章だから、押し付けがましいとまでは感じないけど、やはり小説として読むにはメッセージ性が強過ぎる気がする。あとがきで『君たちはどう生きるか』に触れ、その時代ゆえに『君たち』は物語の形式を”とらざるを得なかった”ときちんと書かれているだけに、よけいにモヤモヤする。

    小説なんだから国のために人がいるのではなく、人が望み選び集い、互いに関わる事で生まれるのがくにであると、シンプルにそれだけでよかったのでは。

  • 含蓄があって深いのかもしれないけれど、それを読み解く力は僕にはなかった。もっとシンプルでいいんじゃないか?
    優しさの中で語られる「くに」は優しく好ましく感じられるが、そういう「くに」ばかりでもないのも現実。そういう意味で、あくまでも「ぼくたちはこの国を」に限定したお話であった。そこが少し物足りなかった印象です。

  • 普通の学校と違って、生きていく様々を自分のペースで進めることができる学校。
    学校で務めていた時に同じような指導をしたことを思い出す。
    でも、「なんだか、日本って日本人って変だね、みんなを否定するわけじゃないけどね、ちょっと考え直してみない?」と、口調は穏やかなのだけど、自分が高みにいて、自分や友達以外は同じカテゴリーにいないと言っている感じがして、読むのがしんどかった。

  • 子供達にわかりやすく,もちろん大人が読んでもすっきり理解できるような啓蒙小説という感じ.「くに」を作るという形で憲法だったり国民や国旗,国交,基本的人権,独立宣言,象徴天皇など,複雑な問題を,素朴ななぜ?で問いかける.図書館に住む裸のキャラメルの箱おじさんって何者?神様ではないだろうし,まさか南方熊楠??

  • 領土問題のこと、象徴天皇制のこと、憲法のこと…いろいろなことが遠回りに、小説形式で書かれている。
    子どもたちが発するみずみずしい疑問や表現によって、なるほど、と思ったり面白い見方だな、と感じる部分もあったけど、理解力に乏しいのかよくわからない部分もあったり、読みづらく感じる箇所も。
    『ぼくらの民主主義なんだぜ』のほうが、個人的には良かった。

  • ああ、これは高橋源一郎版、21世紀的『君たちはどう生きるか』だなあ、と思いながらわくわくして読み進めたら、最後のあとがきにそれを意図して書いたってあって、少し自分の読書経験に自信がついた次第(笑)。

    もう少し違うタイトルにならなかったの?
    文庫で出版できなかったの?
    もっと多くの人に読まれる可能性の高い流通形態をとることができなかったの?
    という疑問が出るくらいいい本だと思う。
    もしかしたら怒るような人がいるのかもしれないけれど、こういう形でしか表現できないことも確かにあると思う。
    それに著者自身がこの本の内容すべてに諸手を挙げて賛同してもらうことを期待はしていないと思うし。
    この本を読んで、それが「考える」ことのきっかけになればいい。
    学校では教えてくれないこともあるし、教えられないこと、教えきれないこともある。
    いや、たぶん本書でランちゃんのお父さん(誰かモデルになっているかは一目、いや一読瞭然)が言っている通り、本当に大切なことは自分で調べなくちゃならならいんだろうし。

    とにかく一度読んでみてほしい。そしていろいろと考えてほしい。できればランちゃんのようにその考えたことを共有し合える仲間と巡り合ってほしい(僕としては巡り合いたいけどそれはなかなか難しい現状なので、ランちゃんのお父さん同様、書棚の本と向き合うことにします)。

    そんな本でした。

  • 2018.5.4読了

    小学生のランちゃんが夏休みに友達と「くに」を作るという小説のようなもの。文体は易しく子供向けのようにすら感じられるが、国家のあり方や憲法、外交などについて書かれた「小説的社会批判」というジャンルの本らしい。初めて知ったジャンルだ。
    自由で個性的で、公立小学校には馴染めなかった子供たちと知性ある優しい大人たちは皆魅力的で、テーマは難しいが考えていくのが心地よくなる。

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著者プロフィール

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』で群像新人賞優秀作を受賞しデビュー。『優雅で感傷的な日本野球』で三島賞、『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞、『さよならクリストファー・ロビン』で谷崎賞を受賞。

「2018年 『作家と楽しむ古典 土左日記 堤中納言物語 枕草子 方丈記 徒然草』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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