始皇帝 中華統一の思想 『キングダム』で解く中国大陸の謎 (集英社新書)

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  • 集英社
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レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210750

作品紹介・あらすじ

【『キングダム』から、2000年間、中国を「影」から支配してきた原理を読み解く! 】

・秦の統一は400年早かった。秦を「異常な国」に変えた法家の思想
・媧燐も李牧も呉鳳明も、なぜ「他国を滅ぼして中華統一する」と言わないのか?
・なぜ鄴の城主は難民を受け入れたか? 背後にあった氏族制社会
・李牧の「七国同盟」は、既得権者たちの抵抗の象徴
・2000年間、中国大陸を規定してきた国家モデル「古典中国」
・中国人はなぜこれほど「自信満々」なのか?

【本の内容】
●秦は「ベンチャー的体質」ゆえに中華統一できた●
初の中華統一を成し遂げた秦は、もともと「田舎の小国」に過ぎなかった。
しかし、既得権者も少数だったため、リーダーが「抵抗勢力」を封じ込めることができた。
「技術革新」にいち早く対応し、新たな社会体制を構築できたのだ。
一方の六国は、フットワークが重く、テクノロジーがもたらす「新しい秩序」に背を向けたことで、秦に敗れた。

●法家は歴代帝国に引き継がれた●
秦が社会体制変革を行なう際に、理論的支柱となったのが「法家」の思想だった。
これにより、国内の全リソースを「君主」一人が管理・収奪するシステムを作り上げる。
秦の滅亡後も、法家は形を変え、歴代国家に引き継がれた。
結果、人類史上、中国大陸でだけ、繰り返し統一帝国が興ることとなった。
中国大陸の帝国が、広大な領土を中央から一律に支配し続けたのは、「始皇帝の遺産」を引き継いだからなのだ。
そして、法家は現代中国でよみがえりつつあるように見える。

●『キングダム』で通奏低音のように流れる法家●
原泰久氏の漫画『キングダム』では、法家改革後の秦と、旧式の社会体制である六国の対比が見事に描かれている。
本書では、『キングダム』という物語に流れる地下水脈を、25点もの名場面を引用しながら縦横に解説する。

【目次】
第1章 『キングダム』前夜 ~春秋・戦国時代はなぜ550年も続いたのか?
第2章 法家と秦の大改革
第3章 中華統一と空前の権力
第4章 始皇帝はなぜ儒家を憎んだのか
第5章 理想のゆくえ

【著者略歴】
渡邉 義浩(わたなべ よしひろ)
1962年、東京生まれ。筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程修了。文学博士。
現在、早稲田大学理事、文学学術院教授。大隈記念早稲田佐賀学園理事長。三国志学会事務局長。専門は古代中国思想史。
『三国志 演義から正史、そして史実へ』(中公新書)、『三国志事典』(大修館書店)、『春秋戦国』 (歴史新書)など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • 春秋戦国時代以前の殷周時代から秦による中華統一までの、現代に繋がる中華思想の根底を分析した新書。『キングダム』はやや後付けの宣伝口実感があるが、事前に本書を読むと『キングダム』の時代背景や文化背景が理解できてさらに楽しめるのは間違いない。

    秦の嬴政が唱えた「法の下の中華統一」が商鞅の法家を軸にした大改革であり、それまでの儒教のマトリョーシカ型ピラミッド構造つまり氏族社会に対する挑戦状でありイノベーションであったとする見解が面白い。これを読むと秦の中華統一思想や『キングダム』の6カ国合従の背景など、歴史の深みを一層味わえる。

    漫画内のキャラクターは化け物級の登場人物だらけだが、史実を基にしたモデルがおり人物描写はそう外れていないというのが面白い。『キングダム』作者の原泰久氏の文献読み込みに驚かされるとともに、豪傑たちが群雄割拠した春秋戦国時代おそるべし。

  • キングダム で解くという題名にはなっているが、本書のメインは秦統一以降の話なのでキングダム はあまり関係なく宣伝に使われてるだけだなとおもった。
    中国はなぜ巨大な人口を統一できているのか?他の国々を見ると中国大陸ほどの大きさではいくつもの国が乱立してるのが普通である。それは秦の始皇帝から始まった、法家の思想を取り入れて氏族制を廃止し、次の漢の時代で古典中国ともいわれる国のモデルができあがったからである。古典中国モデルは何かというと、大一統、華夷秩序、天子という3つの特徴である。簡単に言うと儒教に取り込まれた法家の考えが中国人に根付いているので、中国人はあんなに自信満々なのだ。今、習近平時代でも同じように法家の信賞必罰と儒教的価値観を使って強力に国を統治している。現在も始皇帝の意思は引き継がれている。

  • 「『キングダム』で解く中国大陸の謎」、という副題の通り、今もなお続く中央集権国家の原理がよく分かる。ちょうど漫画を読んでいて法家の思想が気になっていたところだったので、理解がより深まった。
    周の封建制、秦の郡県制、漢の郡国制(ハイブリッド)という流れを俯瞰した上で、改めてキングダムを読めば、現代の東アジア情勢の理解にも役立つだろう。

  • キングダムは、フィクションのマンガですが、ベースになっているのは古代中国史の史実。そこを理解することで、物語の一層の理解がのぞめます。

    中国の歴代帝国がこれまで広大なエリアを、何度も統一し支配することができたのは、2200年前の初の統一帝国・秦国の統治方法があまりに強力だったため。

    どうも私たちは、統一国家が理想だと思う傾向がありますが、決してそういうわけではなかったということがわかります。

    戦国七勇のうち、統一国家を目指していたのは秦一国のみ。ほかの六国は「七国同盟」を希望しますが、結局秦に滅ぼされてしまいました。
    「七国同盟」は、今でいうEUのようなもので、個々の秩序が保たれます。どちらがいいのかというのは見方次第。現に、現在の中国は巨大すぎるあまり、支配力を低下させないため、ネットワークの自由が制限されているという不自然な状態にあります。

    どうして西の辺境にあった秦が最終的に最大の力を得たのか、後の中国統一のために始皇帝が敷いた施策とは何か、統一を成し遂げた秦が15年後に完全に崩壊してしまったのはなぜか、など、気になるトピックが根拠と共に語られ、歴史欲を満たしてくれます。

    始皇帝が不老不死の霊薬を求めたのは、単に自分が生きながらえるためだと思っていましたが、秦という統一国家を維持するためにどうしても必要だったという意見が目からウロコでした。

    タイトル通りの満足のいく内容。
    歴史学者の著者が読んでも、マンガ『キングダム』は当時の社会がよく調べ上げられているとのこと。登場人物やドラマはフィクションが多くても、ベースとなっている社会については学ぶことができそうです。

    主要登場人物の大半が実在した人物であるため、想像も膨らみます。
    漫画や地図も挿入されて、理解しやすい構成。

    「奇貨おくべし」「符合する」などの言葉の由来がこの辺りにあったことも知りました。「お姫様」という言葉までそうだったとは。

    まだ本編は掲載途中ですが、こちらでは秦の滅亡と、その後の国家のことも言及されています。
    キングダムに留まらず、中国史を知りたい人も楽しめるでしょう。

    漫画を読んでいる時には気づきませんでしたが、当時の国々の話す言葉は方言ではなく外国語レベルで全く異なっていたそうです。
    始皇帝が文字の統一を徹底したことが、今の中国の統一にもつながっているというのは、全く持って頷けることです。
    2200年前のこととは思えない彼の施策と支配力に改めて驚嘆しました。

  • 【感想】
    キングダムで描かれている秦の強さの源泉を、キングダム以前の時代で実現された法家改革から解説している。
    広大な土地と膨大な人口を統一・支配する中国の鍵となる、「法家」の思想と統治制度が簡潔に書かれていて分かりやすい。
    與那覇潤の「中国化する日本」を読み返したくなった。

    【要旨】
    中国が桁違いの人口を擁し、広大な土地を支配できるようになった布石は秦の時代に形成された。
    秦の孝公・商鞅による一大政治改革(法家に基づく法治国家・県制による中央集権国家への変革)、そして始皇帝による中国統一後の郡県制確立・"漢民族"の文化的統合は、漢や南宋での修正も経て、中国における「国家モデル」として、その後2000年間国家の統一を繰り返してきた歴史を支えている。

    (帯に「ネタバレなし!」とあるが、いくつか重大な戦いの結果や登場人物の生死を書いてしまっており、完全なネタバレなしとは言えないことに注意。)

  • 中国古代史を読む上での背景を今初めて知ったと満足

  • 中国という国の根本が分かった気がした。本来なら違う国になってもおかしくないのを、始皇帝からの思想を脈々と受け継いでるのが今。歴史面白い。

  • キングダムという漫画を介して、秦国が中華を統一するに至った理由から、その後の中華の政治的な歩みについて考察した本でした。

    秦は従来の氏族制度を否定し、法家思想を導入することで徹底的な法治国家を築き上げた。

    キングダムを読んでから本書を読むと、時代背景が理解でき、よりキングダムを深く知ることになったので良かったです。ただ、本書後半は、秦滅亡以降の話題になったので、必然的にキングダムに関連した話題が少なくなってしまったのが残念でした。

    改めてキングダムを読み直したくなりました。

  • キングダムファンの自分からしたら知ってるキャラが
    どんどん出てきて良かった。

  • 儒家、法家の違いを背景に、中国全土を広く席巻した統治のための基本思考がよく分かった。
    基本的にはそこから大きな変化があったわけではないので、現在の中国のメンタリティを学ぶのにも非常に有用な書であった。

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著者プロフィール

1962年、東京都生まれ
早稲田大学文学学術院教授。『三国志』についての一般向け解説、啓蒙を精力的に行い、映画『レッドクリフ』の日本語監修、『三国志DVD&データファイル』(全32巻、講談社)の監修などを手掛ける。三国志学会事務局長。『「三国志」の政治と思想』(講談社)ほか著書多数。

「2020年 『三国志人物大事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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