言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか (集英社新書)

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  • 集英社
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レビュー : 195
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210873

作品紹介・あらすじ

2018年、M-1審査員として名を轟かせた芸人が漫才を徹底解剖。
M-1チャンピオンになれなかった塙だからこそ分かる歴代王者のストロングポイント、M-1必勝法とは?
「ツッコミ全盛時代」「関東芸人の強み」「フリートーク」などのトピックから「ヤホー漫才」誕生秘話まで、
"絶対漫才感"の持ち主が存分に吠える。
どうしてウケるのかだけを40年以上考え続けてきた、「笑い脳」に侵された男がたどりついた現代漫才論とは?
漫才師の聖典とも呼ばれるDVD『紳竜の研究』に続く令和時代の漫才バイブル、ここに誕生!

◆もくじ◆
プロローグ「僕が霜降り明星を選んだワケ」
第一章 「王国」 大阪は漫才界のブラジル
第二章 「技術」 M-1は100メートル走
第三章 「自分」 ヤホー漫才誕生秘話
第四章 「逆襲」 不可能を可能にした非関西系のアンタ、サンド、パンク
第五章 「挑戦」 吉本流への道場破り
第六章 「革命」 南キャンは子守唄、オードリーはジャズ
エピローグ「10年ぶりの聖地。俺ならいいよな」

◆著者略歴◆
ナイツ 塙宣之(はなわ のぶゆき)
芸人。1978年、千葉県生まれ。漫才協会副会長。2001年、お笑いコンビ「ナイツ」を土屋伸之と結成。
2008年度以降、3年連続でM-1グランプリ決勝に進出する。漫才新人大賞大賞、お笑いホープ大賞大賞、NHK新人演芸大賞大賞、
第9・10回ビートたけしのエンターテイメント賞 日本芸能大賞、浅草芸能大賞新人賞・奨励賞、第68回文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞、第67回芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣新人賞など、受賞多数。

聞き手 中村計(なかむら けい)
ノンフィクションライター。『勝ち過ぎた監督』で講談社ノンフィクション賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 「この本は、ぶっちゃけ、言い訳です。」と塙さんは語り始める。
    芸人。お笑いコンビ・ナイツのボケ担当。東京の芸人を中心に組織される一般社団法人 漫才協会の副会長も務める。
    幅広い層のファンを持つ塙さんだが、あの「M-1グランプリ」には第一回大会から挑み続けても優勝することはできなかった。

    「ずっと、ずっと、考えてきました。どうやったらM-1の決勝でウケるのだろう、と。もう出られないのですが、今もつい考えてしまいます。それを考えることは、僕にとってどう生きるかという問題とほぼ同義なのです。」

    アツい。

    「のっけからこんなことを言うのもなんですが、僕は、関東芸人はM-1で勝てないと思っています。ちょっと、言い過ぎかな。言い換えると、勝とうと思わないほうがいい。矛盾するようですが、そう思えたら、チャンスはあるかもしれません。」

    たとえば言葉の問題がある。関西弁のように感情を乗せて東の言葉で話すことは難しい。
    だが、審査員の思考を読めば… 新しいアイデアを歓迎する雰囲気があの舞台にはある。
    とはいえ、ただ新しければいいというものでもない。何のために漫才というスタイルでやるのか…
    塙さんの考え続けてきたことがこの一冊に吐き出されている。
    過去のM-1出場者を中心に、古今東西の芸人の名前が上がるのが楽しい。
    数時間で読み切れる内容ながら、YouTubeなんかで関連する動画を漁りだしたら止まらなくなること間違いなし…!



    塙さんの話にはいろいろな「たとえ」が出てくるんだけど、個人的にぞくっと来たのは「時事ネタで漫才ができるのはフグの調理師免許を持っているようなもの」でした。座布団!
    競馬や野球のたとえもぽんぽんあがる。どれも上手くて笑う。楽しい。

    ・相手の言葉をきちんと聞いてから反応する
    ・ツッコむことと引くことは明確に違う
    ・二人じゃないと生み出せない笑いのために漫才をやる
    このへんの話は、なんか感動してしまいました。単純な「漫才論」を超えた本だと思うのです。

  • 2018年、M-1審査員に抜擢された芸人が漫才を徹底解剖。M-1チャンピオンになれなかった塙だからこそ分かる歴代王者のストロングポイント、M-1必勝法、…「ヤホー漫才」誕生秘話まで、”絶対漫才感”の持ち主が存分に吠える。

    ナイツは大好きな漫才師だし、お笑い番組での露出もトップクラスだ。だけどなんとM-1優勝経験がない。第1期のM-1では08~10年に連続して決勝へ進出したものの涙を飲んだ。

    チャンピオンが漫才を語るというのならサマになるのだが、そうでない自分が語ると「何をえらそうに言ってるんだ」ということになる。そういう分けで本書は、塙の「負け惜しみ」「言い訳」が書かれているという位置づけだ(笑)。

    しかし、「負け惜しみ」「言い訳」といいつつ、その中身はよく捉えているなと感心する。それは塙がお笑いに本気だからだろう。

    歴代のM-1チャンピオンを列記してみる
    第1回 中川家
    第2回 ますだおかだ
    第3回 フットボールアワー
    第4回 アンタッチャブル
    第5回 ブラックマヨネーズ
    第6回 チュートリアル
    第7回 サンドウィッチマン
    第8回 NON STYLE
    第9回 パンクブーブー
    第10回 笑い飯
    第11回 トレンディエンジェル
    第12回 銀シャリ
    第13回 とろサーモン
    第14回 霜降り明星

    本書には、このすべてのコンビおよびそれだけでなく、最近の話題の芸人たちについて触れられている。おそらく塙はすべての芸人について触れたいと思ったのではないか。本書でもお笑い全体をアピールしたいという熱意が伝わってくる。

    全部で90問のQ&A形式。聞き手はノンフィクションライターの中村計氏。どちらかというとスポーツ系のライターだが、塙自身がスポーツ好きとあって話の喩えにもスポーツが出てくるし、M-1が本質的にスポーツの要素を兼ね備えている(塙はM-1の4分間で笑いをとらねばならないシステムを100m走に例えている)こともあり、よい形の編集となっているのではないか。

    M-1は吉本が投資し、立ち上げた、どちらかというと吉本芸人のための発表会的要素をもってスタートしたとあった。そういうわけでスタートから関西芸人の得意とする「しゃべくり漫才」の色が濃く、そこへ関東芸人が道場破りのように「コント漫才」で切り込んでいくという流れが書かれていて、最近のお笑い傾向を体系的に理解できた気がした(笑)。

    そういう意味では、非関西系のアンタッチャブル、サンドウィッチマン、パンクブーブーなどは関東に道を拓いた偉大なコンビなのだ。確かに関西人でも笑えるモノがある。

    これを読んでバラエティ番組やお笑い番組を見ると、審査員的な見方になってしまうかもしれない(笑)

  • 「ヤホーで調べたんですけど」「ヤフーだろ!」

    うんこをもらしたことでいじめられていた少年時代。
    それを逆手にとって笑いを取った時、彼は「最強の鎧」を身につけた。

    松本人志に感動し、本気で芸人を志した。

    「どうしたらウケる事が出来るか」

    大学の後輩土屋伸之とコンビを結成。

    M-1で決勝まで進出するも、頂点を極めることは出来なかった。

    「大阪は漫才界のブラジル。M-1は100メートル走」

    独自の視点から、M-1を、漫才を語り尽くしていく。

    2018年12月、著者はM-1審査員の席に。
    そこで生まれた「初ゴール」。

    優勝した霜降り明星に1票を投じた理由とは。

    笑いを真剣に、縦横無尽に語り尽くす。

    ページを止められない。
    堪らない高揚感が続く。

    「人類が芸術を生み出したのは、言葉で伝えきれない思いを作品で表現しようとしたからです。芸術家が感動したとき、それが『感動』という言葉で足りていたなら、絵画も音楽も創造し得なかったと思うのです。
     漫才師も同じです。人間の『おかしさ』をおかしいと言うだけでは伝えきれないから、ネタを思いついたのです。漫才という話芸が誕生したのです。
     深いところからお客さんの感情を揺さぶり続けるために漫才師ができること。それは優れたネタを考え続けることしかないと思います」

    「浅草の星」が漫才を語り尽くす。

    昭和には、立川談志の「現代落語論」。

    平成には、松本人志の「遺書」。

    令和の「現代漫才論」ここにあり。

    • やまさん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/16
  • 芸人としても審査員としても出演している、筆者。
    演じる側も評価する側も経験した筆者による、M-1の分析エッセイ。

    おもしろかった。

    関西寄りな点について、関東芸人だからこその指摘にはうなずくものがある。

    分析は、ナイツだけでなく、ほかの芸人についても。
    褒めるときも批判するときも、きちんと実名を挙げていて、内容も具体的。
    説得力がある。

    目次に並ぶQの内容だけで、わくわくできる構成。
    聞き手である中村計の力も大きい。

  • M-1を笑いをここまで分析しているとは感心します。
    所々クスッと笑えるところもあって、さすが芸人さんだなと。
    第一回大会からもう一度見てみたくなりました。

  • 「ナイツ」の塙宣之の語り下ろしによる「M-1グランプリ」論。――と、一言で説明すればそうなるのだが、それだけには終わらない奥深さを具えた本である。

    聞き手を務めるのは、講談社ノンフィクション賞も受賞したノンフィクションライターの中村計。彼の構成の巧みさもあって、読みやすいが内容は濃く、一冊の本としてよくできている。

    全90問の「Q」が、小見出しの代わりになっている。この構成は、わりとコロンブスの卵。
    通常の本のように小見出しで内容をつないでいく形にするより、読みやすさが増している。

    『言い訳』というタイトルは、〝チャンピオンになれなかったナイツ(3年連続で決勝には進出)の塙がM-1を論じても、言い訳にしか聞こえないと思うが……〟という苦い自虐を孕んでいる。

    本の成り立ちとしては、「髭男爵」山田ルイ53世の『一発屋芸人列伝』に近い。
    自らも一発屋芸人である山田が、自分たちを含む一発屋芸人たちを描いた同書は、彼にしか書き得ない本であった。

    同様に本書も、M-1グランプリの頂点目指して戦い、現在はM-1の審査員も務める塙にしか作り得ない本になっている。

    みなもと太郎さんや夏目房之介氏のマンガ評論がそうであるように、〝実作者にしか持ち得ない、深い批評眼〟というものがある。
    本書で全編にわたって展開されるM-1批評――各年のM-1で優勝を争った漫才師たちへの批評――もしかり。そこには、評論家による漫才批評にはない臨場感と納得感がある。

    M-1グランプリを毎年熱心に観ている人ほど、本書は面白く読めるだろう。だが、そうではない私のような者にも、十分に楽しめる。
    いまはYou Tube等で、本書で言及されている「◯◯年決勝第1ラウンドの〇〇のネタ」が後から見られるし……。

    M-1歴代王者のストロングポイントの絶妙な解説が、本書の中心になる。が、それだけには終わらない。M-1論が漫才論になり、お笑い論になり、ひいては関西・関東のお笑い比較文化論にもなるのだ。

    「M-1審査員が贈る令和時代の漫才バイブル」という帯の惹句にウソはない。M-1を目指す漫才師の卵が本書を読んだなら、M-1必勝法をつぶさに明かしたバイブルになるだろう。
    本書をボロボロになるまで読み込んで優勝するような芸人も、やがては出てくるかもしれない。

    だが、一方で、塙は次のようにも言う。

    《いちばんやってはいけないことは、M-1を意識し過ぎるあまり、自分の持ち味を見失ってしまうことです。
    (中略)
     M-1に挑戦するという若手に僕はよく「優勝を目指さないほうがいいよ」とアドバイスします。心からそう思えるようになったとき、初めて自分らしさが出ますから。
     M-1の「傾向と対策」は存在します。できることはしたほうがいい。でも最終的には、今の「自分」で戦うしかない。》(117ページ)

    ナイツの軽やかな笑いの背後に、これほど深い「笑いの哲学」があったのかと、感銘を覚える。
    ……というと、堅苦しい内容を想像されてしまうかもしれないが、そうではない。何よりもまず、楽しく笑える本である。

    M-1グランプリの楽しみ方、漫才の楽しみ方がいっそう深まる一冊。

  • 「大阪は漫才界のブラジル」
    「M-1は100メートル走」
    「関東の日常言葉は感情を乗せにくい」
    「M-1は新しいもの至上主義」
    「南キャンは子守唄、オードリーはジャズ」
    今や最も注目を集めるお笑いイベント「M-1」について、関東を代表する漫才師の一人であり、昨年のM-1審査員も務めたナイツ塙が語り尽くしたのが本書。
    いちいち腑に落ちるし、時に眼から鱗が落ちました。
    私は、M-1を第1回から欠かさずテレビで視聴しています。
    視聴後は、興奮の余りブログに決勝出場者のネタの感想を書き綴るほど。
    ど素人が評論家気取りで書く感想ほど「イタい」ものはありませんが、止められないんだなぁ。
    生放送を見るだけでなく、折に触れてVTRも見返します。
    M-1は出場者だけでなく、お笑い好きの視聴者にとってもワクワクするコンテンツですね。
    ですから、こんな本を待っていました。
    2時間の一気読み。
    まず、M-1は吉本芸人のための大会だということを再認識しました。
    特に関西芸人が幅を利かせているのは周知の通り。
    第1回優勝者の中川家が「M-1はしゃべくり漫才の大会」だという先鞭をつけたのが大きかったのだとか。
    たしかに、第1回の優勝者によって、その賞の性格が決まるということはありますね。
    で、しゃべくり漫才だと、やはり関西芸人に有利です。
    「サッカーで言えば、関西は南米、大阪はブラジルと言ってもいいでしょう。ブラジルでは子どもから大人まで、路地や公園でサッカーボールを蹴って遊んでいます。同じように、大阪では老若男女関係なく、そこかしこ日常会話を楽しんでいる」
    とは言い得て妙。
    では、関東芸人は関西芸人に勝てないのか。
    そんなことはありません。
    風穴を開けたのは、アンタッチャブルでした(2004年)。
    さらに、敗者復活から劇的な勝利を収め戴冠したサンドウィッチマン(2007年)、パンクブーブー(2009年)と続きます。
    3組に共通しているのは、「しゃべくり漫才」ではなく、「コント漫才」だということ。
    関西弁と違って感情を乗せにくい関東の言葉でも、「コント漫才」なら十分、関西芸人と伍していけることを、この3組の優勝は示しました。
    さらに、M-1は「新しいもの」を評価する傾向があります(特に松本人志はその傾向が強い)。
    その意味でM-1は「お笑い界の新人賞」だということができます。
    その点、スリムクラブは新しかったと塙は評価しています。
    M-1は、最長でも4分という短い時間の中で、どれだけ笑いを取れるかの勝負です(この点でも、しゃべくりに秀でた関西芸人に分があります)。
    にも関わらず、スリムクラブは実にゆったりと、間も大きく取ったネタを披露したのです(文字に起こすと、NON STYLEの「溺れている少年を助ける」約2000字に対し、スリムクラブの「葬式」約800字!!!!!)。
    M-1でこういうネタは当時新鮮だっただけに、驚きとともに腹を抱えて笑った記憶があります。
    「笑いの神様」である松本の「時間が惜しくないのか」という評は、スリムクラブにとって最大の賛辞だったでしょう。
    塙は「M-1史上、最大の革命」だと言っています。
    革命といえば、南海キャンディーズもそうでした。
    「オカッパメガネのあやしい男と、それに負けず劣らずあやしいでっかい女」(本書より)が出てきた時の「キワモノ感」は忘れられません。
    ネタを見終わって、「新しい笑いが誕生した」と衝撃を受けたのも強く記憶に残っています。
    本書では、いろんな意味で物議を醸した昨年のM-1までをカバーしています。
    塙は、最終決戦で和牛ではなく霜降り明星に一票を投じました。
    その理由は「強さ」だったとプロローグで語っていますが、「なるほどそうだったのか」と感動しました。
    M-1ファンには必読の書。
    個人的には、ものを作る全ての人に参考になる本だと思いました。

  • m-1の歴史を振り返り、それぞれ活躍した芸人の漫才、m-1とは何かを考察していく。
    お笑い好きにはたまらない1冊。今後の漫才の見方が変わる。そして、やはり芸人はストイックでカッコいい。

  • 同じことを何回か繰り返してるとこもあったけど、M-1もずっと見てるしナイツも好きだし野球も好きなので楽しく読みました。ナイツはなかなか生で見るチャンスないけどみたいなー。

  • "分析"と言うには一手足りないが、"感想"と言うほどには属人的でない、プロからの漫才評。
    なんとなく視ているだけでも楽しめる"直観"の世界において、なぜ面白いのか、なにが面白いのかについて、改めて納得できる"論理"が示されることで、新しい視点をもって漫才を楽しめるようになれるだろう。
    ちゃんと構成すれば優れた分析・解説本になっていただろうに、雑な編集のせいで『面白い本』止まりになってしまっているのだけが残念。

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