ことばの危機 大学入試改革・教育政策を問う (集英社新書)

  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087211245

作品紹介・あらすじ

一連の「国語」改革は何が問題なのか?
東大文学部の有名教授陣による、緊急講演録!


大学入試改革や新学習指導要領の公示により、「国語」をめぐる様々な変更点が注目を集めている。
「論理国語」「文学国語」といった区分が新たに誕生し、新・大学入試共通テストでは実用的な文章の読解が増加する見込みである。
また、それに連動する形で、高等学校の「国語」からは文学の比重が減ることが予想されている。
このように「実用性」を強調し、「文学」を特殊な領域に囲い込もうとする大学入試改革・教育政策はいかなる点で問題なのか。
その変化の背景にある、日本社会全体に蔓延した「ことば」に対する偏った見方とは何か。
そして、なぜ今の時代にこそ文学的知性と想像力が重要なのか。
東京大学文学部の5名の有名教授陣が、各専門の立場から問題意識を熱く語った、必読の講演録!

【本書の構成】

はじめに (安藤宏/国文学研究室)
第一章 「読解力」とは何か――「読めていない」の真相をさぐる(阿部公彦/英語英米文学研究室)
第二章 言葉の豊かさと複雑さに向き合う――奇跡と不可能性の間で(沼野充義/現代文芸論研究室・スラヴ語スラヴ文学研究室)
第三章 ことばのあり方――哲学からの考察(納富信留/哲学研究室)
第四章 古代の言葉に向き合うこと――プレテストの漢文を題材に(大西克也/中国語文化研究室・文化資源学研究室)
第五章 全体討議
おわりに (安藤宏)
資料

【著者略歴】
阿部公彦(あべ まさひこ)1966年生まれ。東京大学教授。

沼野充義(ぬまの みつよし)1954年生まれ。東京大学教授を経て、2020年4月より名古屋外国語大学副学長。

納富信留(のうとみ のぶる)1965年生まれ。東京大学教授。

大西克也(おおにし かつや)1962年生まれ。東京大学教授。人文社会系研究科長・文学部長。

安藤宏(あんどう ひろし)1958年生まれ。東京大学教授。

感想・レビュー・書評

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  • だいぶ前から気になっていた、読解力と注意力の関係。自分が教えながら感じていたことが、やっぱりそうだったんだと再認識できた。

  • 2021/4/24

    ことばはもとより、文学の在り方に何度もハッとさせられた。文学を読むことは訳の分からない作品の世界に入り、その世界のコンテクストを想像し、理解すること。文学はそういう力を陶冶するんだ、と。これがひいては他者理解の助け、そして世界理解に繋がるのではないか。

    ことばは誤解に満ち、表現したいことを表現できない不器用さを備えているが、その前提を理解しなきゃいけないんだと思う。昨今、すぐに役立つとか、すぐに稼げるとか目先のものを追求する態度が人気を博しているが、そのために何かをツール化することは自分が何かのツールと化すことになってしまう。そこには納富先生の言う魂はありえない。

  • 810-T
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  • 展示テーマ:入試

  • 大学入試改革で「論理国語」と「文学国語」を分けていることから、文学は論理的ではないと国や経済界は思っているのではないかと感じる。
    しかし、文学(小説)を解するためには徹底的に論理的に読む必要があり、文学に論理性がないとは到底いえない。また論理国語とされる試験問題からは、文章の意味は一義的に定まるという考えが読み取れるが、そもそも人間の用いる「ことば」というものは複雑で、文脈や時代の情勢を織り込まないことには意味が正確に取れず、また受け手側のスタンスによっても意味の取り方が変化しうる。
    そのため、文学を取り出して囲い込むことは幾重にも間違った政策判断であるように思える。
    以上が本書を読んだ感想である。

  • 英語も国語も実用重視という気持ちは分かるが、
    若者たちの何ができていなくて、
    今後何を期待したいのか政府も企業側も明確に分かっていないから迷走するのではなかろうか。

    若者たちだからこそ持つ力やリテラシーには
    簡単に甘えて労働力にするけど
    昔ながらの仕事のこなし方に順応しなかったり
    政府や企業が期待する方向性にハンドリング
    ができないから
    実用的な力がないんじゃないの、
    というのは違う気が...

  • 東2法経図・6F開架:810.9A/A12k//K

  • 昨秋行われた東大でのシンポジウムの採録。英語の阿部公彦、スラヴ文学の沼野充義、哲学の納富信留、中国文学の大西克也、それぞれの話+ディスカッションで、どの人の話もなるほどと思うところ(あたらしい共通テストや学習指導要領への疑念や危機感)と、そうかなと思ってしまうところ(とくに新井紀子氏の「RST」への見解がきびしく、そこまで敵視することがあるのかと疑問に思った)がある。
    「ことばの危機」というタイトルが象徴するように、「国語」や「英語」といった学校の教科教育をはじめ、言語能力(読解力)や言語教育のありかた、文学や古典などの教養教育への危機感や志はみなそう違わないはずなのに、一枚岩になれずいろんなところで断絶が感じられるのがなんとももどかしい。

  • 日本人の読解力の低下や日本の教育問題に関心がある人にオススメの本

  • 経済優先の世の中では数値化できないものが切り捨てられていく。そんな恐ろしさを新・大学入試共通テストのプレテストから感じてしまう。
    恐ろしさを感じると同時に、ここで語っている東大の5名の教授の言葉には胸を打たれるものがあり一筋の希望が見えてくるようだった。
    ことばの危機はことばだけの問題ではないことを改めて気付かされる一冊。

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著者プロフィール

東京大学大学院人文社会系研究科教授

「2020年 『理想のリスニング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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