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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784087211696
作品紹介・あらすじ
政治学者・姜尚中氏、大絶賛!
北朝鮮が過激なテロ行為に走る背景にはどのような事情があるのか?
韓国読書界を騒然とさせた衝撃のノンフィクション、ここに刊行。
本書の主人公は、凄惨な事件を引き起こしたテロリストである。
しかし、その正体は非人道国家により実行犯に仕立て上げられた、一人の青年に過ぎない。
祖国に見捨てられ、異国の刑務所で寂しく生涯を終えたこの悲運のテロリストをめぐる物語は、国家というものがもつ暴力性と不条理を見事な形で浮き彫りにする。
「個人の尊厳とは何か?」「国家とはいかなるものか?」といった問いを抱えた、すべての読者に手に取って欲しい名著である。
(姜尚中・東京大学名誉教授)
1983年、ミャンマー訪問中の全斗煥・韓国大統領を狙い、合計21名の死者を出す大惨事となった「ラングーン事件」が発生する。
本書はその実行犯である北朝鮮テロリスト、カン・ミンチョルの証言を記録し、周辺人物への聞き取りや関連資料の収集も丹念に行いながら、事件の全貌と南北関係の矛盾に迫った第一級のノンフィクションである。
なぜ北朝鮮は過激なテロ行為に走るのか。
カン・ミンチョルが属した北朝鮮特殊工作部隊の実態とはいかなるものなのか。
そして、凄惨なテロはどのようにして起こったのか?
数々の歴史の謎を解き明かしてくれる、衝撃の一冊!
【主な目次】
プロローグ ビルマの聖地アウンサン廟で何が起きたか
第一章 南北分断の悲劇
第二章 光州民主化運動とラングーン事件
第三章 「菊花作戦」と全斗煥大統領のビルマ訪問
第四章 歴史的な場所、アウンサン廟の爆破事件
第五章 テロリストたちの運命
第六章 祖国に捨てられたテロリストたち
第七章 テロリスト、カン・ミンチョルの生と死
第八章 生と死の狭間で苦悩したカン・ミンチョル
エピローグ 忘れられたテロリストの死を哀悼して
訳者あとがき
【著者経歴】
著者・羅鍾一(ラ ジョンイル)
1940年韓国ソウル生まれ。英国ケンブリッジ大学Ph.D.。慶熙大学教授、国家情報院海外・北朝鮮担当次長、大統領秘書室国家安保補佐官、国家安全保障会議常任委員長、駐英国大使、駐日本国大使、又石大学校総長等の数々の要職を歴任。現在、漢陽大学、国防大学、嘉泉大学碩座教授。
訳者・永野慎一郎(ながの しんいちろう)
1939年韓国生まれ。英国シェフィールド大学Ph.D.。大東文化大学名誉教授。NPO法人東アジア政経アカデミー代表。
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
国家の暴力と個人の尊厳が交錯する深いテーマが描かれた一冊で、北朝鮮のテロリストの実態とその背景を丹念に掘り下げています。1983年に発生したラングーン事件の実行犯、カン・ミンチョルの証言を通じて、彼が...
感想・レビュー・書評
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朝鮮分断の歴史は、ひとつの民族であるにも関わらず、民が家族や知人と決裂する生活を強いられる。彼らの願いは様々な方向へと離散していくが、やはり南北統一の社会を求めるのは不自然ではない。そこに政治や経済といった利権を求める邪な思想が容易く介入して、平穏な生活を求める行動は、無情の暴力へと変容する。抗う手段がそこしか与えられない偏狭な思想こそ糾弾すべきであり、それを国家が扇動するのは命の尊厳を軽視している。守るべきは国家の体裁ではなく、一人ひとりの命である。獄中で生涯を閉じる実行犯の切なる思いを知ると、現在の国家のあり方に厳しい目を向けてしまう。
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ラングーン事件は私が生まれる以前、1983年に発生した爆破テロ事件。
外遊中の当時の韓国大統領・全斗煥を爆殺すべくビルマに潜入したものの作戦の主目的に失敗し、結果捕らえられた北朝鮮の工作員、カン・ミンチョルの足跡を限られた資料・口伝で詳らかにした一冊。
まず読んで思ったのは、およそ40年前と今の北朝鮮政府がやっていることにほぼ変化が見られない事の驚き。
そもそも半島統一を韓国大統領の暗殺をもって成そうという発想自体が、当時に於いても十数年遅れた手法である事は間違いない。
が、そういった誹りや蔑みをあろう事か祖国・北朝鮮は黙殺し、頼みの同民族・韓国からの細々とした支援の糸は断たれてしまう。
想像を絶する程の孤独と’自己の喪失という恐怖’に異国の収容所で戦い続け生涯を終えた男の姿を、少なくともせめて本書の読者は心に刻むべきである。
「私たちは彼に、個人としての道徳的な責任まで問うべきなのだろうか」(p174)
この問いかけこそが本書の主題。
ややピントがズレている事は承知で書くが…、日常生活レベルにおいても’長いものに巻かれた結果間違いが発覚し、責任を負わされトカゲの尻尾切りのように処分される’事態は目にする機会はある。
いざ直面した時に冷静に判断できる眼は備えておきたいものである。
1刷
2021.11.1 -
一気読みとは言えないけど、まあまあ早いペースで読んだ。それだけ読みやすくて面白かった。
なんか、退路をスパイに与えないとか、国際情勢に疎いとか、日本も同じ立場になったらこんな感じなんだろうな。
このスパイの人は、結局異国で死んでいった。お母さんはどんな思いで待ってたんだろう。 -
「証言・ラングーン事件」とあるが、内容はラングーン事件そのものよりも、ラングーン事件実行犯の境遇への同情論である。
実行犯自身は、各国の無実の国民の拉致に関わり、また、ラングーン事件での数多の人の死にも関与したとされていることから、破壊してきた人生の数を思えば、司法の裁きを受けて刑に服している身でもあり、当の実行犯個人の孤独など考慮に値しないと思いたくもあるのだが、それでも、権力の駒とされた一人の人間が、政治の狭間に落ち込んで孤独に消えたという事実はやはり哀しい。 -
東2法経図・6F開架:316.4A/N11a//K
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有り S319/ラ/21 棚:13
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原書は2013年出版。ラングーン事件の前史、事件、08年に実行犯カン・ミンチョルがミャンマーの刑務所で死亡するまで。
事件の背景に光州事件があり、韓国の民心が全斗煥から離れているとみた北朝鮮が、全斗煥を除去すれば社会が混乱し自らに有利な状況を作れると考えたこと。突然青瓦台の意向で決まったビルマ訪問と、ノーと言えない官僚たち。全斗煥殺害の失敗は実行犯たちがその到着を勘違いしたという捜査結果の公式発表ではなく、実は誤爆によること。ずさんな警備体制と、ビルマ当局による中立的・客観的な捜査努力。
そんな個別の内容以上に本書の根底を流れるのが、彼を言わば捨て駒にした南北双方の体制への批判だ。北はテロを重視しても、工作員の安全や脱出、捕まった時の尋問への対応は軽視。旧日本軍を思い出した。南とて、北に工作員を派遣していた。そして、2000年頃からは南北融和の中で彼は双方から見捨てられる。南北か、せめて自民族が暮らす土地で生きたいと切望しながら死んだ彼の境遇を思う。
原書の出版時、韓国国内ではそれほど評価されず、批判の声すら上がったという。保守・進歩双方に耳が痛い内容だったということだろうか。 -
ラングーン事件。
1983年、ビルマ(現ミャンマー)を訪問中の全斗煥韓国大統領をもくろんだ北朝鮮が3人の工作員を送り込んでアウンサン廟を爆破、様々な偶然から全斗煥大統領自身は難を逃れるも、韓国・ビルマ両国の閣僚や記者らが多く犠牲になった事件である。
本書は前半部分で、ラングーン事件を細かく描写し、後半部分ではビルマで終身刑となり、ついに祖国の地を踏むことなく異国で死んだ工作員の一人カン・ミンチョルの生涯にスポットを当てている。
「そういう事件があった」ということ以上の知識を持っていなかった私にとって、衝撃的な内容ばかりであった。特に「暗殺者」らのその後について考えたことはなかった。このとき、ビルマに入国した工作員は3人。1人は暗殺未遂直後の交戦で死亡。リーダーだった男は死刑となっている。本書で取り上げられるのは、死刑判決の後に終身刑となったカン・ミンチョルである。
カンはスポーツが好きで、学術においても優秀な学生だったという。軍への入隊後も優秀な成績を上げて将校となった。特に優秀なエリートであったからこそ、敵国の大統領を暗殺するという重要な任務を命じられたのだろう。
工作員らのビルマ入国後、彼らが帰還する際に利用する予定だった船は、その後に首脳会談が予定されていることを理由に入港を拒否される。しかし北朝鮮は、それを工作員らに伝えなかった。最初から帰還する方法がなかったのである。そうとも知らず、暗殺に失敗した後、カンらは帰還のためにラングーン川へと向かうが、そこに迎えの船は来ていなかった。その後、ビルマの警察との銃撃戦の末、1人は死亡、2人はそれぞれ手榴弾を取り出し、大怪我を負った状態で逮捕される。
北朝鮮はこの事件の関与を現在まで否定している。
若い歳で家族や恋人と別れて海外に派遣され、腕を失う大怪我をして数十年を異国の刑務所で暮らし、そこで死亡したカン。彼らの行ったことは許されることではないにしろ、その重大な罪を個人が背負わされたことに対する違和感を本書は指摘する。
不気味な点は、カンらが戦闘で使用した手榴弾だ。ピンを抜いて5秒後に爆発するタイプの手榴弾だが安全レバーを握っている間は爆発しないのが普通だという。しかし、2つともピンを抜いた直後に爆発して、工作員ら自身が大怪我を負うことになった。カンはこれを単純な事故ではなく、彼を派遣した人間たちが意図的に自爆をするように仕向けたのではないかと考えていたという。
著者は、生きている間のカンに会ったことはないという。祖国、あるいは韓国に行くことを諦めていなかったというカンの生の姿は、本書からは読み取れない。いや、本書で指摘されているように、テロリストである彼に関心を向けるものは誰もいなかった。祖国も彼を見捨てたし、韓国人にとっては自国の大統領を暗殺しようとした犯罪者だった。そのせいで、彼に関する記録はほとんどないという。だから想像するしかないのだ。信じていた祖国に裏切られ、捨てられた一人の人間の苦悩を。
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