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本 ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784087212945
作品紹介・あらすじ
「抑止力」という考えはもうやめよう――。
イスラエル空軍で兵役を務めた著者が、イスラエルとアラブ諸国、パレスチナとの間で長く続けられてきた戦争を見つめていくうちに、「国のために死ぬのはすばらしい」と説く愛国教育の洗脳から覚め、やがて武力による平和実現を根底から疑うようになる、その思考の足跡を辿る。
武力放棄を謳う憲法九条の価値を誰よりも評価するのは、平和ボケとは程遠い、リアルな戦争が絶えない国から来た外国人アクティビストなのである。
母国のさまざまな矛盾点を指摘しつつ、軍備増強の道を進む日本の在り方にも異議を唱える一冊。
望月衣塑子氏(東京新聞記者)、推薦!
◆目次◆
第1章 罪深い教育
第2章 軍隊を疑う
第3章 虐殺された民族が虐殺する
第4章 「全ての暴力に反対します」
◆著者略歴◆
ダニー・ネフセタイ
一九五七年、イスラエル生まれ。
木製家具作家。高校卒業後にイスラエル空軍で三年間兵役を務める。
一九八八年、埼玉県秩父に移住。
自宅のログハウスを建て、木工房ナガリ家を開設。
現在は夫婦で注文家具、遊具、木工小物、オブジェなどの創作活動を行いながら、反戦や脱原発をテーマに講演活動を行う。
著書に『国のために死ぬのはすばらしい?
イスラエルからきたユダヤ人家具作家の平和論』(高文研)がある。
感想・レビュー・書評
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#イスラエル軍元兵士が語る非戦論
#ダニー・ネフセタイ
#集英社新書
#読了
教育は大事だ。平和を守るために必要な戦争もある、必要な武力もあると教育することもできてしまうのだ。公教育だけでなく、個人個人が能動的に情報を得て、考え、行動できたらいいなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イスラエル軍元兵士として空軍のパイロット候補生にもなったことのあるダニーさんが語る非戦論。
詳細や内容は本書を読んでほしいと思いますので省略しますが、太平洋戦争を兵隊として務めたことのない人がほとんどで、何なら自分の祖母世代がギリギリ空襲を体験したくらいの今の世代にとって、徴兵制があった日本、原爆が投下された唯一の国日本、たくさんの人々が戦争で犠牲になったことは記録や学校で習うことはあっても、イマイチ実感が湧かないもの。
私もそんな1人です。
語り手であるダニーさんは、イスラエル出身で、ユダヤ人。
ナチスにより数え切れないほどの多くユダヤ人がユダヤ人であるという理由だけで収監され、大量虐殺を受けた民族です。
そんな歴史をもつ彼らが、今や、お茶の間のニュースで聞かない日はないであろうガザ地区に武力行使をし、多くのパレスチナ人を殺害している。自分たちの国を守るという名目のために。
そして、イスラエルとパレスチナの話だけの話ではないということ。
実は日本も同じような道を辿る可能性も十分にあるということです。
日本も、世界で唯一、核爆弾を戦争に使われて、核により死者を出した国です。
そんな国で、核の脅威を知っているはずなのに、今や防衛のために核を持つべきだと主張する人もいる。
防衛のためならば、敵の基地を先制攻撃することも可能ということまで議論しています。
理由は、いつかロシアや中国あるいは北朝鮮がアメリカと戦争状態になり、日本が戦争の舞台になるかもしれないから防衛しないといけないため?です。
しかし、本当にそんなことが必要なのか?武器も必要なのか?
その武器で相手国のなんの関係もない一般人が、老若男女や子供が死ぬかもしれないというのに。
本書はこれから日本で起きることなのかもしれない話として読んでいただきたいなと思います。
さて、そんな本書で私が思ったのは、ダニー氏の言うことももっともだなと思うのですが、私も幼い頃には勧善懲悪の仮面ライダーや地球の平和を守るために戦う戦隊モノを見てきたせいか、もし、他所の国が日本に武力侵攻してきたら、自分の家族を守るために何ができるだろうか、侵攻を食い止め追い返すために戦うことを選択しそうだなと思いました。
私の愛国心なんか、サッカーやオリンピックの時などに日本代表を応援する程度のものですが、それでも自分が住んできた土地を武力で他所の国の人に奪われるのは耐えられないと思います。
そして、私の愛する人たちが奪われたら、当然報復する、もしくは相手にも同じ気持ちを味あわせたいなと思うだろうなと。
そう思うせいか、論理的ではなく感情的に私自身は100%賛同はできないなと読んでいて思うところです。
しかし、私自身も選挙にいくものの、今の日本の政治には期待していない、誰が政権でも良いし、自分の生活によほど何かが起こらない限り、このままでも良いという無関心なところがあります。
でも、本当に私達が平和を望むのであれば、平和を実現する国のリーダーを育てあげないといけないなというのは本当にその通りで、それができるのは選挙権をもつ一般市民である我々だということはしっかりと認識しないとなと思いました。
そして、今の私ができることは、もっと政治に関心をもって政治の話を忌憚なく話し合うこと。
戦争を始めるのは国ですが、戦争のない世界を実現するためには、その国民たちの相手の国に対する想像力と持っている選挙権の行使なのかもしれません。-
>実は日本も同じような道を
>これから日本で起きることなのかもしれない
既に日本は前の戦争でアジア各国を侵略、植民地支配したもの凄い前科が...>実は日本も同じような道を
>これから日本で起きることなのかもしれない
既に日本は前の戦争でアジア各国を侵略、植民地支配したもの凄い前科が有ります。
ヒロシマナガサキの犠牲者は原爆2発で数十万人に上りました。
しかし前の戦争で日本が殺めた外国人は2000万人以上です。
>地球の平和を守るために戦う戦隊モノ
>平和を実現する国のリーダーを育て・・・選挙権をもつ一般市民である我々だ
米日の戦争推進勢力はそれを既に熟知していて、幼いころから近未来の有権者をそうした戦隊モノ等のサブカルチャーで洗脳して来たのです。
2024/03/10
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国のために兵士として戦うことが当たり前だった著者が、「武力で戦争を抑止することはできない」と考えるようになった経緯が語られている。
イスラエルではみな平和教育を受けていると思っているが、教育によって「平和のためには戦争は必要」「軍隊や兵士は国のためにすばらしいことをしている」という刷り込みが行われていることに対して、ダニーさんは警鐘を鳴らす。
戦争や兵器が必要というのはダブスタや言い訳でしかない。戦争をしないと言っていても、ひとたび武器をもてば、抑止のためにもっともっとと、果てのないいたちごっこに参加することになる。
話が通じない相手だからと頑なになるのではなく、根気強い対話により平和を作っていくことが大切だとダニーさんは主張する。
そういうダニーさんの主張を「理想論だ」と冷笑する人がいる。それに対してダニーさんは「理想だと認めるのなら、理想のために愚直であっても何らかの努力をすべき」と反論しており、なるほどなぁと唸った。理想は実現不可能なくだらないものではなく、理想だからこそ叶えるために行動していくことが大切、というのは、今の私たちにかなり薄くなっている考えのように思う。仕方ないと諦めるのではなく、難しくても目指すのを忘れてはいけない。
正直一冊本を読んだだけでは諸手を挙げて賛成とまではいかないが、どうしたら平和は作れるのか、どうしたら戦争をせずにいられるのかはずっと考え続けていかなければいけないのだということは、痛いほどわかった。
イスラエルとパレスチナの関係については知らない部分が多く、内にいた人による市民の感情などの説明はわかりやすくありがたかった。
しかし当事者でありながらここまで冷静に自分の国を批判的に見ることができるのはすごい。 -
実際にダニーさんの講演を聞いてから本書を読んだ。非常にわかりやすく説明されている。私はいわゆる「武力による平和」は仕方ないと思っていたけど、そう思わされていただけだなと感じた。岸田政権がアメリカからたくさん武器を買って、それらを保管するために全国各地に保管庫ができて、自衛隊の基地だって沖縄以外にもたくさんある。最近県境に保管庫ができた。うっかり爆発する可能性もあるし、私が敵ならそこ攻撃するよね…。全然ニュースでもやらないから、知らなかった、恐怖。守るために武力が必要?本当に?明らかに国力のないこの国が戦争したら正直勝てる訳ない。先の大戦でもそうだったじゃないか。日本史を学んだときに。この小さな島国から他の国の領土なんて奪える訳ないじゃんと思った。現在だってアメリカ(他国)がメリットなしに血を流して日本を守ってくれる訳ないじゃないか。武器買うよりもっとやることが絶対ある。ファイティングポーズ取ったら相手も攻撃してくるって、日常でもあるあるでしょ。対話力、政治力磨くしかない。戦争したら儲かるって、それ、嬉しい?人を殺してお金稼いで自分だけ良い暮らししたら満足?頭がお花畑って、理想を掲げないでどうする?あなたの言う現実は本当に現実?認知が歪んでない?そう思わされてない?自分の親、子供、恋人、友人に、現実見なよ戦争仕方ないよって、言える?戦地に送り出せる?もしくはあなたが行く?全部全部全部、子供でもわかること。こういうことを言うと政治の話はしない方が良いとか左寄りだとか言われる?議論の否定と人格否定を切り分ける練習しなくちゃいけない。政治の話しちゃだめなら、何から考えて学べばいい?
…とか、すごく怒りが湧いてきた。でもなかなか日常的に何か行動するのは難しくて、関心を高めていくしかない。
ちなみに環境問題にも関心はあったけど、戦闘機や戦車の排気による環境破壊は生活のそれとは比較にならないと知らなかった。コツコツ節電したり企業アピール程度の環境保護より、戦争やめた方が効果がある。それも権力者はそれもわかってやってるんだから、なんだかもうやってらんない。 -
https://chichibujin.com/calendar/2023/
この本で主張されていることは、日本の平和教育がめざして来た考え方そのものだ。だから共感できることが多い。でも、武器を持たないことこそが平和への最も確実な道だという考えは、どの国も他国へ侵攻するという不毛さよりも、他国と経済的に連携して発展するほうがいいと思うだろうという願望を前提としたものだった。
その願望がロシアのウクライナ侵攻でもろく崩れてしまったことと、中国の覇権の歴史を併せて考えると、非現実的な理想としか思えない。理想を持つことは大切だけれど、現実もきちんと見ないといけない。
著者はたぶん、日本での暮らしは長いけれど、日本を含めたアジア諸国の歴史はあまり知らないのかなという気がした。
それから一般的なイスラエル人が、ちょっと異常に感じるほど被害者意識に満ちているものだということがよくわかった。イスラエルの国際社会に対する無責任で敵意に満ちた態度は、被害者意識のせいか。もうちょっと成熟してほしい。
「『イスラエル人の生存のためにパレスチナ人を殺すのは仕方がない』という人がイスラエル人の圧倒的な多数派」p.15
https://www.saitama-np.co.jp/articles/87543/postDetail
ユニバーサルデザインチェック
「誰かの人権が奪われていて、自分の人権だけが守られるということはあり得ない。」p.116
「軍隊はとてつもない温室効果ガスを排出します。戦争なんかやっている場合ではないのです。気候危機こそ、世界各国が英知を結集し、背水の陣を強いて取り組むべき待ったなしの最優先課題です。武器で地球環境は守れません。」p.201 -
著者はイスラエル出身で、現在は埼玉県秩父で家具や木工品を製作しながら、平和運動に取り組んでいる。本書は著者のイスラエル時代の経験を振り返りつつ、軍事力・暴力による支配を肯定する人々の心情がどのように作られるのか、なぜイスラエルの多数派が「力による平和」「抑止」という発想から抜け出せないかが平易な言葉で綴られていく。「人を殺す機械」に文化はない、という指摘が日本刀の制作者たちの前でも語られていたという場面がスリリング。
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武力で争いは止められない、復讐は復讐を呼ぶとその通りのことを言われているが、身近に犠牲者が出ている著者の言葉は重い。また、自分も過去は愛国心の名のもと正義と感じていたと認めている点がすごい。
同朋から裏切り者と言われても自分の信念に、則り覚悟を持って行動しているところに共感を覚える。 -
イスラエル人の著書を初めて読んだ。とても興味深かった。
(日本人ライターによる聞き書き) -
イスラエルを作るもの
極めて強烈な「強烈な被害者意識」と、神に選ばれたという「選民意識」(p. 34)。
=私は善であって彼らは悪。「国の半分を与えたのに、彼らは戦争を選んだ(ロケット弾を飛ばしてくる)」(p. 42)。
=神様から約束されていた土地なのだから、入植は当然
ローマ軍への抵抗として、マサダで集団自決したという史実をもとに「ユダヤ人は、たとえ自殺しても敵に降伏しない」、「国のために死ぬのは素晴らしい」という意識(p. 37)
「爆弾を投下するとき、機体にちょっとゆれを感じるくらい」(p. 82)
軍隊の悪(p. 98)
差別的組織、絶対服従を強いられる
ハンニバル指令→命令であれば軍隊は味方すら守らない
戦闘機の温室効果ガス排出量の多さ
アイヒマン裁判後のイスラエル外務大臣の語り
「わたしたちがされたことが明らかになった今、わたしたちが何をしても、世界の誰一人としてわたしたちを批判したり指図したりする権利はない」(p. 142)
イスラエル政府は追い出したパレスチナ人の家々の残骸を片付け、森や国立公園などにしてしまいました。それを専門に行う「景観・史跡整備委員会」が設置されました(p. 143)。
→ショアと類似。虐殺の記憶すら抹消する
イスラエルにおける「司法制度改革」への大規模デモと可決→「新しい法律などがイスラエル基本法に接触すると最高裁が判断した場合に取り消す権限を最高裁から奪う内容」(p. 162)独裁を可能にするシステム、(国会を通さずに政令を出せるがその発動条件はあいまいな)日本の緊急事態条項と同じ
ヒトラーの後継者、ヘルマン・ゲーリング「もちろん、一般市民は戦争を望んでいない。貧しい農民にとって、戦争から得られる最善の結果といえば、自分の農場に五体満足で戻ることなのだから、わざわざ自分の命を危険にさらしたいと考えるはずがない(中略)しかし、結局、政策を決定するのは国の指導者たちであり(中略)。国民は常に指導者たちの意のままになるものだ。とても単純だ。自分たちが外国から攻撃されていると説明するだけでいい」(p. 186)
著者プロフィール
ダニー・ネフセタイの作品





