- 集英社 (2025年1月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784087213454
作品紹介・あらすじ
恋物語と言葉遊び
新しくて面白い仏教読本!
仏教の経典や僧侶たちの説法を紐解くと、意外にも恋愛話や言葉遊びがいたるところに見られる。
インドから中国・朝鮮半島を経て日本に伝わった仏教は、宗教そのものだけでなく、恋愛文学や言葉遊びも育てたのだ。
洒落や掛詞、ちょっとしたおふざけなど、エンタメ要素満載……身近なようで実は知らなかった仏教の本当の姿とは?
仏教文学研究の第一人者である著者が、膨大な資料から仏教と恋愛文学の関係性を明らかにする。
石井公成(いしい こうせい)
1950年東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科単位取得退学。駒澤大学名誉教授。
アジア諸国の仏教と周辺文化の研究者。
『華厳思想の研究』『聖徳太子――実像と伝説の間』(春秋社),『〈ものまね〉の歴史――仏教・笑い・芸能』(吉川弘文館)、『東アジア仏教史』(岩波新書)など著書多数。
集英社刊『アジア人物史』(全12巻)第3巻『ユーラシア東西ふたつの帝国』第3章執筆。
感想・レビュー・書評
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仏教のイメージがガラリと変わる。こんなに、仏教って民俗的だったんだぁ…(いろんな意味で)
仏教ってなんか、哲学的で、お坊さんで…ってイメージが強かったけどさ、、こんなちょっとえってぃな感じだったんだね…(精一杯濁しております)
ブッダも、頭ん中こんなに恋愛のこともあったんだろーか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1. インド文学と仏教の関係
- インド文学の影響を受けた仏教文学の特徴が強調されている。
- カーリダーサの作品は、仏教文学における表現の豊かさを示す例として言及されている。
- 乳房の重みで前屈みになるという表現が、インド文学の詩型に見られる。
2. インドの社会構造と仏教の受容
- インドの四つのヴァルナ(バラモン、クシャトリア、ヴァイシャ、シュードラ)とその下に位置するマータンガ種の人々について説明されている。
- 仏教は、出家を通じて身分や年齢を問わず教団に入ることを認めることで、社会の階層を打破する動きを見せた。
- マータンガ種の娘が仏弟子に恋する物語が、仏教経典に取り込まれる過程が語られ、人気の高いテーマであったことが示されている。
3. 恋愛物語の展開
- 恋愛物語として、スダナ王子とマノーハラーの再会を描く話がアジア諸国で広まり、特に東南アジアや東アジアで受け入れられた。
- 各国での物語の変遷やバリエーションについても触れられている。
4. 唐代の恋愛文学
- 唐代における恋愛文学の進化が述べられ、特に武帝の詩が紹介されている。
- 武帝の詩は、恋しさや女性の美しさを描いた作品が多く、当時の文化的背景が反映されている。
- 白居易の「長恨歌」が、道教と仏教の影響を受けた恋愛物語の一例として取り上げられ、その内容が詳述されている。
5. 仏教音楽と文学の融合
- 仏教音楽が、男女の愛をテーマにした歌と深い関係を持っていることが明らかにされている。
- 南朝の梁の時代に、音楽と詩が融合し、新しい表現が生まれた背景が説明されている。
6. 日本における仏教と恋愛文学
- 日本の古典文学において、仏教の影響を受けた恋愛表現が見られることが強調されている。
- 「源氏物語」における仏教的要素や無常観が、恋愛の描写にどのように反映されているかが論じられている。
7. 文学と社会の相互作用
- 文学作品は、社会の価値観や文化的背景を反映し、また形成する役割が強調されている。
- 特に、恋物語が社会の中でどのように受容され、変化していったかが詳述されている。
8. 結論
- 本書は、インド文学から日本の文学に至るまで、仏教が恋愛物語に与えた影響を広範囲にわたり考察している。
- 各時代や地域における文学の変遷とその背景を理解するための重要な資料である。 -
仏教がそれを受容した国々、特に中国、韓国、日本、ベトナムの文学にどう影響を与えたのかについて、平易な語り口調で述べているんだけど、仏教の影響ここまでと思うと驚きを隠せない。
白氏文集などで日本の文学が中国からの影響を多大に受けてきたことは認識していたが、その白居易も仏教徒だったし、仏教が来る前の日本の純粋な文学のように思われていた万葉集の歌ですら、その内容やレトリックには仏教の影響が多々見られる。そして書名のとおり、仏教には恋にちなんだ説話が多く、東アジア各国の文学にも当然恋の話が持ち込まれたと。
日本の古典文学も仏教も深過ぎて、いくら学んでも底がどれくらいかさえ見えそうにない。
著者プロフィール
石井公成の作品
