悪寒 (集英社文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784087440096

感想・レビュー・書評

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  • 妻が殺人事件を起こす。殺されたのは自分が憎んでいた上司だった。離れて暮らす家族の心情とは、そして事件の起こった真意とはー

    今作の主人公も井岡瞬作品定番の中年男性だ。
    もどかしくも憎みきれないアンニュイなヒーロがここにもいたか!!と期待したがなんのその、言葉は悪いが本当にただの未装備中年男性だった。魅力は...すまなんだ感じられず。

    物語は二転、三転では飽き足らず、数字を足しながら転がり続ける転々物。正直言うとくどさを感じたし「家族の絆」の押し売りに辟易とした。
    これは「家族の絆」を否定しているのではなく、美しく魅せようと必死な背景に対して揺れたMY NECK(首)だ。転がる真相も、興味より「もう誰でも良いです」と投げ捨てたくなる気持ちの方が強かった。

    良くも悪くも複雑な性格の持ち主しか現れない本作品だが、ここまでに至った心情は理解出来てもその後の各々の行動は謎過ぎる。
    ここまで自体を深刻化させる言動は誰そのの為だと声高らかに言えど結局は地雷行為だ。「護る」とはなんぞだ。空振りがすぎる。
    そしてその空振りがテーマかと思いきや「家族愛」に振り切った着地点にもう脳内は大混乱だ。何を伝えたいのかなるほどわからぬ。

    魅力的オーラを纏わされたであろう眞壁刑事でさえ中途半端謎人物だ。スポットを浴びせかけて最終章では御役御免、捕まえても結局パーティに参加できない幻のポケモンかよ。むむぅ...彼はこの作品に本当に存在したのだろうか。

    「善い人」に魅力を感じれなかった分、本作品唯一の根性曲がりな人物に心のメーターは寄り添ってしまったが、冷静になればその人物もよくわからない。「この世界を破壊してやる!!!」と理不尽極まりない悪役の世界征服行為の方がまだ理にかなっている。トータル、不自然な世界観にファンタジー要素すら感じてしまった。

    延々と酷評を並べてはいるが、話としては面白かったのだ。名言感漂う「中年男性の鈍感さは、それだけで犯罪」はなるほど感心した。
    中年男性のみを射程圏内に収めた賛否分かれそうな言葉だが、私個人は中年男性のワードを外して「鈍感さは、それだけで犯罪」として響いた。
    人は、家族にでさえ、気心知れた友人にでさえ、いや、だからこそ「鈍感」という特性は知らず知らずに発動しているのだろう。細部漏らさず神経張りつめて気を遣う必要は無いとは思うが、目線を自分視点から相手視点へ切り替える意思が大切だと思う。
    見る位置を変えれば別のことに気付くことが出来るだろうし、それを経てどう行動するか選択肢が増える。その後の行動でさえ分かれ道が存在するのだろうが、人は学ぶ生き物だ。
    その道を踏み外したらゲームオーバー、なんてことは無いのだからズンズン進んで経験していきたい。無論、極力人を傷付けずに。
    ーーーーーーーーーーーーーーー

    結局作品紹介はボロくそだし、我ながら偽善者御免!!!と天誅下したくなる感想だなとは思うが、う、(´;ω;`)嘘じゃないだもん、、、。
    ((訳)生暖かい目で見守って下さい)

    • NORAxxさん
      りまのさん。
      毎度ネタに振り切った私の拙いレビューをそのように言っていただけて感謝感激です。中身はなくとも楽しんで貰えるよう遅読ながら更新し...
      りまのさん。
      毎度ネタに振り切った私の拙いレビューをそのように言っていただけて感謝感激です。中身はなくとも楽しんで貰えるよう遅読ながら更新しますのでこれからもよろしくお願いします^ ^
      りまのさんのレビュー、今後とも楽しみにしております!!
      2022/01/27
    • nikuさん
      こんばんは、初めましてnikuと申します。
      私も伊岡瞬さんは何冊か読みましたが、合うのと合わないのが半々くらいで、こちらの「悪寒」は本屋さん...
      こんばんは、初めましてnikuと申します。
      私も伊岡瞬さんは何冊か読みましたが、合うのと合わないのが半々くらいで、こちらの「悪寒」は本屋さんでばーんと売られていたのになんだかなと思った方でした。
      こんなコメントですみませんm(_ _)m
      いつも素晴らしいレビューですね!楽しく読ませていただいております(^∇^)
      2022/01/27
    • NORAxxさん
      nikuさん初めまして、こんばんは^ ^ いつもいいねをありがとうございます。コメント嬉しいです。
      確かに一時の「伊岡瞬ブーム」が過ぎ去り...
      nikuさん初めまして、こんばんは^ ^ いつもいいねをありがとうございます。コメント嬉しいです。
      確かに一時の「伊岡瞬ブーム」が過ぎ去り、叩き売りや古本屋さんで並ぶ姿もよく見かける様になってきましたね。。大当りを求めてつい手を出してしまうギャンブル要素が強めの作家さんですがお互いまったり追い続けましょう...!!!
      そう言っていただけて嬉しいです。遊びに来てくれてありがとうございます。また是非覗きに来てください...♪*゚ これからもnikuさんのレビュー楽しみにしております^ ^
      2022/01/27
  • 汚職事件の責任の一旦をとらせて、東北の系列会社に出向となった藤井。東京本社に戻る事を信じて、置き薬の営業の日々を過ごす。
    愛する妻と子の心の距離まで遠くなってしまったようだった。そんな時、東京の我が家で殺人事件が起こる。犯人は、妻か娘か母親か、それぞれが庇いあう。
    “痣”の真壁刑事が、強かな感じで登場。“代償”の美人弁護士真琴先生登場。
    なんというか、ストーリーは、よくできていると思うのですが、この主人公中年会社員さんの鈍さに悪寒。いくらなんでも、認知症状出ている高齢者の介護認定がおりないわけないじゃ無いですか。
    それを義理妹に預けるとか、もはや殺人事件以上に不可解。奥さん娘さん部下の女性と、女性陣に振り回されてて。でも、その愚鈍さが今作の読みどころだとしたら、すっかり、手の内にハマってしまったのかも。

    • 1Q84O1さん
      「もはや殺人事件以上に不可解」
      おびのりさんのこの一言、最高です!www
      「もはや殺人事件以上に不可解」
      おびのりさんのこの一言、最高です!www
      2023/02/16
    • おびのりさん
      こんばんは♪読んでいただきありがとうございます♫ちょっと、中島敦に手間取っていました。文豪ストレイドッグスだと可愛いんだけどね。
      こんばんは♪読んでいただきありがとうございます♫ちょっと、中島敦に手間取っていました。文豪ストレイドッグスだと可愛いんだけどね。
      2023/02/16
    • 1Q84O1さん
      おびのりさんでも手間取ることがあるんですね(・・;)
      どれどれ中島敦、李陵・山月記
      おびのりさんのレビューを拝見
      ……。
      …。
      すみません、...
      おびのりさんでも手間取ることがあるんですね(・・;)
      どれどれ中島敦、李陵・山月記
      おびのりさんのレビューを拝見
      ……。
      …。
      すみません、私にはお手上げですw
      けど、やっぱり新潮文庫ですね!w
      2023/02/16
  • なかなか面白かったですが

    殺人事件と関係なく
    妻 倫子の【為にならない優しさ】
    妹 優子の【すっとこどっこいク◯ヤロウ感】
    どっちも嫌いです

    特に優子みたいに
    【全てに感謝がない人】
    【全人類の自分の常識は他人から見れば非常識。を理解してない感】
    嫌ですね…色んな意味で、全てにおいて効率悪い
    自分の人生の時間
    時間は有限
    それを全て浪費してる

    人の足を引っ張る…ってことは
    【あなたの両手塞がってるわけだから、ヤるべき事なんて出来なくて当たり前、人のせいにするな!】と思ってしまう


    話は変わり、小説「痣」の真壁刑事達が登場するあたりは
    激アツだったなぁ( ☆∀☆)

  • 「痣」を最初に読んだので、真壁刑事と宮下刑事のコンビをまた見たくて購入。両方とも非常に登場が薄いのが残念。
    「悪寒」は前半がサラリーマンの悲哀のような小説。会社が2派に分かれて争い、相手のミスに乗じて敵派閥を閑職へ。主人公も見事に嵌まって子会社に飛ばされるが、その先には自分を虐める上司と、不倫を誘うかのようなOLの媚態。推理小説はどこ行ったと思い出すと、急に妻が主人公の会社の雲の上の人を殺したという事件。原因は何かと主人公と一緒になって考えてしまう。妻を庇うわけでは無いが、色々な事実が出てくると妻が殺したことに徐々に違和感が感じられてくる。後半は目まぐるしく犯人が変わってくるが、段々とその違和感が、真の犯人に近づく。真壁刑事が側面から小出しにヒントをくれる。
    犯人が確定してからも新たな事実が出てくるが、最後は主人公も生活の立て直しができてホッとした。収まるところに収まった感じで読了感もスッキリする。

  • 伊岡瞬 著

    人気の作家さんであるけれど…
    伊岡瞬さんの作品は初読みで、、(・・;)
    何から読んだら?読もうか~(・・?)と迷っていたところ、ブク友のakodamさんにお伺いして、お薦め本をご親切に教えて頂き、先ずは『悪寒』を読みました。  知れて、読めて良かったです♪
    akodamさん、ありがとうございます。
    いや〜面白かったです!(^^)

    サスペンスのようなミステリ系の警察小説や法廷ものは大好きな私にとって…読みはじめのシーンからワクワク面白い予感しかしない展開で、さらさら(頭の中はグルグル)読めました。
    ミステリーだから内容は言えませんが…
    途中から”誰が…?”は予想出来たけど、
    “何が…どうして?”という主人公の気持ちを追うように入り込んで、その謎を知らなきゃ…という思いで読み進められました。
    この作品は男の人が読んだ方が翻弄されるのかもって正直思いました(^_^;)
    文中の…
    「中年男の鈍感さは、それだけで犯罪ね」
    笑っちゃいけないけど…笑ってしまった^^;
    (無理もないけど、確信を突いた言葉)
    女性の方がしたたかなのは間違いない!
    その分、目に見えないような女性特有の隠れた嫉妬や嘘をついても平然と成りすまし、態度を変えれる様子には驚異を感じることもある。
    男女関係なく、人の噂話や根拠のないデマは悩ましい問題だと思う。「まさか…あの人が!(◎_◎;)」とか「そんな妙なあり得ないこと…」と一笑に付すような話でも、人は大概、最初に吹聴した者の言葉を疑惑を持ちつつ、信じやすいのではないだろうか⁉︎(;´д`)怖い!
    そんなバカなあり得ないような話でさえ、釈明することが難しい場合だってある。
    釈明する説明が弁解になってしまうような危うさを含んでいたりして…人はどれだけ自分を正当化出来るのだろうか?そしてそれを信じてもらい賛同を得れるだろうか?フトそんな事を考えながら、
    ジレンマに陥る主人公の賢一に対して「しっかりしてよ!」と思う反面、憎めず気の毒な気持ちにさえなってくる(・・;)大手企業の社員としてなら尚更…上を目指すと言っても、真面目に働き、それに見合った程度の地位を求めているだけ…。
    それでも結局、真面目に働く社員も上司や強いては会社のドンの捨て駒に過ぎないのか?と思いながらも生活を支え、自分が描く正当な評価を求めているこの努力の奔走する姿に呆れつつも感動する。 
    解説にも書かれてあったが、典型的な日本の中年男性というキャラクターがまさに、サスペンス醸成の源になっている。
    今の世の中、家長である男性が、例えば…我、家の主態度で妻に「誰の為に汗水流して稼いでると思ってるんだ!」なんて言おうものなら…妻は「そうね…あなたのお陰、」なんて言いながら心の奥では「自分の為でしょ」なんて思ってるかもしれない、、そこが女性本来のしたたかさであったりするのだろうけど…勿論、もっと古風で?旦那様の言う通りです!って心の中まで従順な女性もいるだろう。ま、今や女性も男性も自分の力で成り上がってゆく自立した結婚なんて望まない!という形も確立しつつあるけれど…^^;
    ただ、自分の信じる者を疑わず、最後まで信じて守り抜く思いだけは見失わないことを肝に銘じてその大切さを改めて感じられた物語であった。

    ところで、私は本作に登場する”警視庁捜査一課「特務班」(相棒か…^^;笑)の真壁という人間にとても惹かれ興味を持ちました。
    杉江松恋さんの解説で、有り難くも真壁の登場作品の『痣』も紹介してくれていました。
    (『悪寒』とほぼ並走する形で書かれており、最初から伊岡に、真壁を両方の作品に登場させる意図があったことがわかる。)と書かれており、是非こちらの作品も読みたいと思いました。

    そして、初読みである本作に於いても解説にもあるように、作者の掌の上で巧みに転がれされ心地よい疲労と共に…充足感を感じられた作品でした。
    作者の他の作品も期待感募り楽しみです♪

    • akodamさん
      hiromida2さん、おはようございます!
      レビューを拝読して(うんうん!そうそう!)の連続で追読体験させていただきました。素敵なレビュー...
      hiromida2さん、おはようございます!
      レビューを拝読して(うんうん!そうそう!)の連続で追読体験させていただきました。素敵なレビューありがとうございます♪

      本作はミステリを軸に、組織の圧力に屈する会社員の心情、パワハラ、家族の在り方、姉妹愛などなど盛りだくさんながらも、一つひとつ丁寧に、かつリアルに描かれていて読み応えがあって好きな作品です。

      そしてhiromida2さんも刑事の真壁に惹かれましたか!私もです。本作で真壁が夫であり父の賢一に放った「ご家族の中で、もっとも愛が欠落していたのは、あなたじゃないでしょうか」は響きました。

      引き続き伊岡瞬作品、お楽しみください^ ^
      2022/05/05
    • hiromida2さん
      akodamさん、こんにちは。
      ありがとうございます(^^)
      また好きな作家さんが増えて嬉しいです。
      一人の人間に取り巻く環境を丁寧にリアル...
      akodamさん、こんにちは。
      ありがとうございます(^^)
      また好きな作家さんが増えて嬉しいです。
      一人の人間に取り巻く環境を丁寧にリアルに描かれていて読み応えありました。

      akodamさんもでしたか(^O^☆♪
      真壁クールで渋いですよね!
      そうそう、真壁が賢一に言い放った言葉
      「もっとも、愛が欠落してたのは、あなたじゃないでしょうか」も響きました。
      「自分のことを棚に上げて言わせていただきますが、愛するということは、何があっても信じることではないでしょうか。そして、わが身に代えてもかばうことではないでしょうか」という言葉には痺れました。

      今後も伊岡瞬作品注目☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
      楽しみに読ませてもらいます( ̄^ ̄)ゞ
      2022/05/05
  • 他作品の代償が面白かったので、伊岡瞬作品連読。

    妻が殺したのは、夫が勤める会社の重役だった…というあらすじから、真実が究明されていくストーリー。

    頼りない主人公と、彼を取り巻く合理的、論理的な女性陣。文章も展開も読み応えがあって、またまた徹夜で一気読み。最後のどんでん返しまで楽しめた。

    『中年男の鈍感さは、それだけで犯罪』

    作中にある登場人物が放った言葉を見て、ブルッと震えてしまったのはなぜだろう。なぜかしら。

  • 伊岡さんを読むのは7作品目。
    これはこれは、面白すぎて1日で読み終わってしまいました笑
    どんどん引き込まれて、主人公の気持ちに完全に同化され自分も物語の中にいる感覚!

    感情揺さぶりながら展開がよめないまま終盤までハラハラさせる伊岡さんはすごいなあ。

    それにしても、こんなにも人の事恨んだりする事あるの?ってくらい、最後恐ろしい。南田の兄弟側の関係性も、、家族なのに仕事入るとこうなるの?とか、色々な気持ちになるー。

    最後のラストは、ほっこりしました✨
    救われた、良かった。

    やはり、伊岡さんはすごい!面白い!!

  • 伊岡瞬は「本性」からの二作目。

    主人公賢一に何度も突っ込みを入れたくなる。しっかりしてよ!と。特に奥さんと娘に対してのコミュニケーションの取り方の情けなさにイライラしてしまいました…(^^;)
    作中に出てくる「中年男の鈍感さは、それだけで犯罪」はまさに主人公を的確に表す言葉で、深く頷いてしまった。正直倫子の考え方もよくわからない(^^;)と、登場人物が好きになれなかったがミステリーとしては真相が気になり一気読み。わかりやすい人間のもつ闇が詰め込まれていて、おもしろかった。
    私も二人姉妹ですが、たまたま仲良く育ち、大した確執も生まれず、今では親友のような存在になれていることはラッキーなのことなのだと感じた。同じ家庭で育つ姉妹、兄弟だからこその幼少期から積もる憎悪の恐ろしさに悪寒でした。

    • しんさん
      中年男が鈍感は犯罪まさにそうですね(T_T)
      姉妹ならではの共感できる部分またお聞かせ願いたいです(^o^)
      中年男が鈍感は犯罪まさにそうですね(T_T)
      姉妹ならではの共感できる部分またお聞かせ願いたいです(^o^)
      2022/07/17
  • ★3.5

    憎んでいた上司が殺された。犯人は、自分の妻だった──。
    絶望の先にあるのは愛か、それとも……。

    大手製薬会社社員の藤井賢一は、不祥事の責任を取らされ、山形の系列会社に飛ばされる。
    鬱屈した日々を送る中、東京で娘と母と暮らす妻の倫子か届いたのは、
    一通の不可解なメール。
    〈家の中でトラブルがありました〉
    数時間後、倫子を傷害致死容疑で逮捕したと警察から知らせが入る。
    殺した相手は、本社の常務だった──。
    単身赴任中に一体何が?

    とても読み易かった。
    前半は、主人公が理不尽な日々を送る様子が描かれていて暗くなってしまった。
    妻が憎んだ上司を殺してしまった…。
    そこから話はがらりと変わる。
    何となく犯人は予想通りだったのですが、
    憎かったなぁ。
    最後は希望の光が見えて良かったです。

  • 「痣」「代償」に続く伊岡瞬さん3作目。
    「痣」に出てきた真壁刑事と宮下刑事、「代償」に出てきた白石弁護士も登場し、再会できて嬉しい。

    主人公:賢一はなぜ美人妻に夫として選ばれたのだろう。読み進めながらそんな疑問を抱いてしまった。
    社内での立ち回りも下手だし家族とのコミュニケーションもうまく取れないしで全てがもどかしい。
    ただ、頑固で不器用ながらも妻:倫子のメールにすぐさま行動を起こしたことには、賢一の妻や家族を大切に想う気持ちを感じた。

    前半も、捜査が進んでいくと賢一にとって到底受け入れられない事実が判明する。そこで怒りに任せて相手を糾弾したり放棄する人もいるだろうが、賢一はそうはせずに自らの今までの行いを反省し、真相を突き止めようともがく姿は好感が持てた。
    長年培ってきた思考や行動をすぐさま変えるのは難しいけれど、義妹や真壁刑事からの指摘を受け入れて努力するってすごいことだと思う。

    事件の真相は様々な感情も交差して二転三転するけれど、賢一が諦めずに踏ん張って家族を守れて良かった!

    最後、倫子が賢一に過去のこと含めて真実を打ち明けたのを読んで、周囲からは美人だともてはやされていた倫子も人並みに、それ以上に1人悩んでいたのかなと思ったら事件で倫子の取った行動も、賢一を夫として選んだことも何となく納得できたような気がする。
    鈍感さは時に罪にもなるけれど、人によっては救いになることもあるのかもしれない。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』(『約束』を改題)で、第25回「横溝正史ミステリ大賞」と「テレビ東京賞」をW受賞し、作家デビュー。16年『代償』で「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、50万部超えのベストセラーとなった。19年『悪寒』で、またも「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、30万部超えのベストセラーとなる。その他著書に、『奔流の海』『仮面』『朽ちゆく庭』『白い闇の獣』『残像』等がある。

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