パラ・スター <Side 百花> (集英社文庫(日本))

  • 集英社 (2020年2月20日発売)
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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784087440843

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、用途によって『車いす』にも種類があることを知っているでしょうか?

    “2024パリ・パラリンピック”において、小田凱人さんが『車いすテニス』の男子シングルスで金メダルを獲得されました。普段よく目にする一般的なコートと全く同じ場所で、同じラケットを使い、同じボールを使う、見た目には『普通のテニス』と同じように行われるのが『車いすテニス』です。しかし、そこには誰もがわかる大きな違いがあります。それこそが、プレイヤーが『車いす』に乗ったままラケットを振り、ボールを打ち返しているところです。

    そんな場面をさらによく見ると『車いす』は、私たちが普段目にするものとは異なり、『左右のタイヤに「ハ」の字型の角度がつけられ』ていることに気づきます。そうです。『車いす』とひとことで言ってもそこには種類があり、『車いすテニス』の試合に使用するのは『車いすテニス』という競技で戦うために特別に作られた『競技用車いす』であることがわかります。

    さてここに、そんな『競技用車いすを製作』する『車いすメーカー藤沢製作所』で働く一人の女性に光を当てる物語があります。『車いす製作』の”お仕事”を描くこの作品。そんな女性の友人である『車いすテニスプレイヤー』の活躍を見るこの作品。そしてそれは、『車いす』が繋ぐ二人の女性の夢の行き先を描く物語です。

    『工場長、こちら調整終わったのでよろしくお願いします』と『仕上がったパイプ』を確認し『親方的存在でもある』岡本に声をかけるのは主人公の山路百花(やまじ ももか)。『おう。こっちもちょうど上がったから頼む』と返す岡本の作業台では『百花が点検調整を行った時にはバラバラだった部品たちが、すでに車いすの完成形をうっすらと感じさせる姿にまでつなぎ合わされてい』ます。そして、『組立ては、担当する仕事の中で一番好きな作業だ』と『最終工程、組立て作業に入る』百花。『車いすはプレイヤーの「足」…この車いすが持つ力を最大限発揮できるように、正確に、丁寧に』と『全神経を集中させる』百花。そんな中、『作業服のポケットから電子音が響』きます。『すみません』と消し忘れていたことを周囲に侘びながらスマホを見る百花はそこに『君島宝良(きみじま たから)』という名が表示されているのを見ます。『これが家族やほかの友人だったら、一度切ってあとでかけ直した』という百花にとって『その名前は特別』でした。許可をもらい外に出た百花は『もしもしっ、たーちゃん?』と語りかけます。『モモ』と返す主は『ワールドチームカップ、イギリスに勝った。明後日に決勝』、『勝ったよ。ギリギリだったけど、サラ・コールマンに』と『世界ランキング7位の選手』の名を出す宝良は、現地が夜中だと説明するとあっけなく電話を切ります。そんなところに『就業時間中に工場抜けてスマホいじってるとはいい度胸だな…』と『百花の指導係』の小田切がやってきました。慌てて理由を説明する百花に『君島選手は勝ったのか』と訊く小田切に『目もとをこす』る百花。それを見て『そうか ー よかったな』と返す小田切。『毎日のように叱りとばされている小田切に温かみのある声で』言われて『涙があふれ』る百花は、『おめでとう。ついにここまで来たんだね、たーちゃん』と思います。
    『昭和四十年創業の老舗車いすメーカー』という『千葉に本社を置く藤沢製作所』は、『車いすユーザー』でもある現社長の藤沢由利子が『競技用車いすを作ると言い出』したことをきっかけに社内でのさまざまな議論の先に、『競技用車いすを次々に発表』するようになりました。『二〇一七年にはロンドンの車いすバスケ団体と専属サプライヤー契約を締結。藤沢は世界の「FUJISAWA」として現在も車いすの改良開発に邁進してい』ます。『高校三年の夏にはすでに競技用車いすを製作する仕事に就きたいという気持ちを固めていた』百花でしたが、『学校の先生に相談しても「競技用車いす?そんなのあるのか?」という反応であまり頼りにな』りません。『悩んだあげく』『藤沢由利子さんとお話しさせてください』と『社長を電話口に呼び出し』た百花。丁重に礼を言われるも『来年は採用予定がない』、『もう少し勉強を続けてみては…』と由利子に言われた百花は、『短大の健康科学部に進学』、二年後再び『藤沢製作所』の門を叩きました。『二年前にお電話くださったかたね』と、『最初から社長の藤沢由利子が出席した』『採用面接』で、志望理由を訊かれた百花は『車いすユーザーの友人がいること。彼女は現在、車いすテニスに打ちこんでいること』を説明します。友人の名を訊かれ『君島宝良です』と答えた百花。由利子は『今話題になっているお嬢さんなのよ』と他の面々に説明します。『「いい車いす」とは、どんなものだと思いますか?』とも訊かれた百花は『その人を、自由にする車いすです』と真剣に説明します。『その人が、やりたいことを、やりたい時に、やりたいようにできる…』と宝良のことを思い浮かべつつ語る百花。それに、『私たちも、そんな車いすを作りたいと常に願っています。藤沢の車いすを必要としてくれるすべての人のために』と『ほほえみを浮かべ』る由利子。『この面接から三日後、自宅に藤沢製作所の社名入りの封筒が届』き『震える指で封を開け、採用通知を見た』百花はその場で涙します。そして、『藤沢製作所』で働きはじめた百花の”お仕事”を見る物語が描かれていきます。

    “車いすメーカーで働く百花の夢は、親友で車いすテニス選手の宝良のために最高の競技用車いすを作ること。高校2年の時、交通事故で脊髄損傷し、車いすでの生活を余儀なくされた宝良を救ったのは、百花が勧めた車いすテニスだった。宝良が日本代表チームに選出され華々しく活躍しているのに対して、新米エンジニアの自分に焦りを感じている百花は、はじめて顧客との面談を担当することになり…”と内容紹介にうたわれるこの作品。2020年2月20日に刊行された「パラ・スター」と名付けられたこの作品。実は全く同じ書名でこの一ヶ月後の3月19日にも「パラ・スター」という書名で別の作品が刊行されています。その違いは書名に付された「Side 百花」、「Side 宝良」という記載です。そうです。これら二つの作品は二冊で一つの作品となる続編ものなのです。しかし、内容紹介を含めどこにもこの説明がなされておらず注意が必要です。このレビューを読んでくださってこの作品に興味が湧いたという方は

     「Side 百花」→「Side 宝良」

    この順で作品を手にしてください。逆順でも楽しめないこともないとは思いますが、やはり時系列的にもこれが順当だと思います。

    そんな二冊で一つのこの作品は、書名にある二人の女性に順番に光が当てられていきます。まずはこの二人をご紹介しておきましょう。

     ● 二人の女性主人公について
      ・山路百花: 『短大の健康科学部』を卒業後、『車いすメーカー藤沢製作所』に就職。『日常用車いす』を製作する『第一工場』に一年勤務した後、『競技用車いす』を製作する『第二工場』に異動。
       → 『車いすエンジニア』になることが夢

      ・君島宝良: 『高校二年の秋』、『帰宅途中にトラックに撥ねられ』、『脊髄を損傷して』『へそから下の感覚』を失う。元々『テニスプレイヤー』だったこともあり『車いすテニス』の世界へ。
       → 『車いすテニスプレイヤー』としての活躍が夢

    百花と宝良は同じ高校の『テニス部』だったという接点を持ちますが、その繋がりがどのように築かれていったかはここでは触れないこととします。この作品には、二人の高校時代を一章まるまるかけて振り返る章があり、そこには鮮やかな”青春物語”が描かれていきます。”青春物語”は、この作品のもう一つの側面であり、阿部暁子さんが最も得意とされる分野でもあります。これから読まれる方には是非この側面にも期待いただきたいと思います。

    とは言え、この作品の中心主題は『車いすエンジニア』になるために”お仕事”に邁進する百花と、『車いすテニスプレイヤー』として勝利のために『一年の半分以上を海外』に遠征する宝良を描く物語です。物語はこの両者の活躍を織り交ぜながら描いていきます。「Side 百花」というサブタイトルで百花を中心に描くこの作品にも『車いすテニス』の試合の場面は登場します。少し見てみましょう。『鷹のような眼光が印象的なブロンドの美女で、世界ランキング3位の実力者』というオランダのギーベルと、『ギーベルを見据える目は肉食獣のそれのように鋭い』という『ポニーテールの君島宝良』の第2セットの場面です。

     『バウンドを終えた宝良が、黄色の球を握り、高くまっすぐなトスを上げた。車いすに座った状態で、上半身を目いっぱい反らせるサーブフォーム』。
        ↓
     『宝良の腕が鞭のようにしなり、風を裂いて飛んだ球は、宝良のトスの時点で車いすを走らせとび出したギーベルの脇を鋭い針のように抜き去った。「15 ー 0」』。
        ↓
     『ギーベルも二度目のエースをゆるしはしない。左サイドに移って宝良が打ちこんだサーブを、どんぴしゃのタイミングで間合いに入りこみリターン』。
        ↓
     『レフティのギーベルのフォアハンドは強烈で、すさまじい鋭角ショットで叩きこまれた球に、宝良はかろうじてラケットを当てはしたものの球はネットにかかって落ちた。「15 ー 15」』。

    ほんの一場面に過ぎませんが、『両者は一歩も譲らず、取っては取られ、取られては取り返す、緊迫のストローク』の場面が描かれていきます。これは思った以上に面白いです。スポーツを描く作品も多々読んできた私ですが、もしかすると『テニス』は初めてかもしれません。しかもそれは『車いすテニス』です。

     『ツーバウンドでの返球が認められるなどの多少のルールの差異を除けばほぼ一般テニスと変わらない』。

    そんな『車いすテニス』を描くこの作品。プレイヤーの宝良が視点の主となる「Side 宝良」にますます期待が高まる圧巻の描写の連続でした。

    一方で、この作品「Side 百花」は、『車いすのエンジニア』を目指して『車いすメーカー藤沢製作所』で働きはじめて一年四ヶ月という百花が主人公となる物語です。そこには、『競技用車いす』がさまざまな視点から描かれていきます。『競技用車いすの国内シェア五割を誇る藤沢製作所でさえ、第二工場で働く人員は百花を入れて八人しかいない』というニッチとしか言いようない分野が『競技用車いす』の世界です。『生活スタイルなどに合わせた一台一台のオーダーメイドが基本』という『車いす』の製作において、『競技用車いすは、そこからさらに選手のコンディションや競技会のプレースタイルの変化など刻々と変わる条件に対応し続けていく必要がある』とされています。そんな『競技用車いす』を製作する『第二工場』で、一番の若手かつ唯一の女性として日々精進していく百花。そこには、『競技用車いす』の世界の”お仕事”を見ることのできる極めて興味深い舞台裏が描かれていきます。

     『車いすはプレイヤーの「足」。小さなネジ一本を締める作業にも、まだ見ぬ誰かの身体にふれている気持ちで全神経を集中させる。この車いすが持つ力を最大限発揮できるように、正確に、丁寧に』。

    『ユーザーに最適な数値を追求して作成された指示書に従い、各パーツを組み立てていく』百花の姿が全編に渡って繰り返し描かれていきます。そんな中で浮かび上がる『車いすの製作』は『一台一台のオーダーメイドが基本』であり、単なる流れ作業ではないという現実です。そこには、『車いす製作』に想いを込めていく百花の思いがこんな言葉に集約されます。

     『この車いすを使う人に、工場で働く自分が会うことはきっとない。でもどうか、この車いすに乗る人が心から自由にコートを駆けられるように』。

    この想いに挙げられた『自由』という二文字に百花はどこまでもこだわります。

     『その人が、やりたいことを、やりたい時に、やりたいようにできる。その手助けをする車いすです。そんな、その人を自由にする車いすを、わたしは作りたいです』。

    そんな想いの先に、『藤沢製作所』で働くことを志し、就職二年目となった今を『競技用車いす』を手がける『第二工場』で誠心誠意尽くす百花。そんな百花をこの道に進めることになったきっかけ、それこそが高校のテニス部で一緒だった君島宝良の存在です。高校入学後、テニス部で知り合った二人。しかし、『一年生ながらも即戦力として』活躍した宝良に対して、ボール拾いの日々を送った百花。対極の存在にあった二人ですが、あるきっかけで深く繋がりを持っていきます。そんな中に宝良を悲劇が襲います。学校からの『帰宅途中にトラックに撥ねられ』、『脊髄を損傷して』『へそから下の感覚』を失った宝良。生きる目標を失った宝良を気にかける百花はこんな言葉を彼女に送ります。

     『たーちゃんはパラリンピックにも出るくらいの、最強の車いすテニス選手になって。わたしは、たーちゃんのために最高の車いすを作るから』

    そんな言葉の先に『車いすメーカー藤沢製作所』に就職し、先輩社員に教えを乞う日々を送る百花。そんな百花は宝良の活躍を知る中に自身も一つの目標を掲げます。

     『わたしは、車いすエンジニアになりたい。その車いすを使う目の前のひとりのために、自分のすべてをさし出して寄り添える、本当のエンジニアに』。

    二冊で一つの物語を紡ぎ上げるこの作品。物語は、百花視点で宝良を見る中に、今の百花がなすべきことをはっきりと浮かび上がらせていきます。『車いすエンジニア』の”お仕事”を描くこの作品。そこには〈Side 宝良〉に向けて確かにボールを打ち返す、そんな百花の魅力溢れる姿が描かれていました。

     『あれから四年の月日が経つ。それでも一日も忘れたことはない。あの日に交わした約束。あの日の宝良の笑顔。わたしの人生を照らす光』。

    そんな言葉の先に宝良のことを思い、『競技用車いすの製作』に想いを込める主人公の百花。この作品ではそんな百花がどこまでも真摯に仕事に取り組む姿が描かれていました。『車いす』に対するさまざまな知識が詰め込まれたこの作品。パラ・スポーツに対する興味が喚起もされるこの作品。

    阿部暁子さんの得意とされる”青春物語”と、”障がい”への理解の深さが物語を絶妙に編み上げる素晴らしい作品でした。

  • 先日、清水の舞台から飛び降りてしまったので、暫くはブックオフの100円で食い繋ぎたいところだ。。。

    ブックオフを物色していたところ、ひま師匠が登録していた本を見つけた。その時まだ感想を書かれていなかったのだが、ひま師匠が読まれる本を読むというこころに価値がありますからね♪


    阿部さんなら私でも読めるんじゃね??と思ったので即購入♪
    100円。ありがたい。゚(゚´ω`゚)゚。


    前半はちょっと退屈だった。
    事故で不自由になった運動神経の良い友達に、車椅子テニスをすすめ、自身は車椅子を作る会社に就職する。

    うーん、イマイチ盛り上がってこないなぁ、、、と思っていたが、後半は盛り上がってきた!

    良かったのは、主人公が落ち込んだ時、友達がかけてくれたこの言葉、

    『牛丼屋でつゆだく大盛り、温玉と味噌汁、キムチもつけて。
    ジムに行って運動。
    なるべく身体を、大きく使うのがいい。
    ちゃんと始める前と後わったあとのストレッチも忘れない。
    運動中は水分ちゃんと取って、アパート帰ってきたら、温めた牛乳をカップ一杯飲む
    それからお風呂に入る。シャワーだけじゃなく、ちゃんとお湯をためてゆっくり浸かる。
    あとは子犬の動画でま見てリラックスして、眠くなってきたら寝る』

    あー、これちょっと元気になれそうな呪文だなぁって感じた。

    女の子は、生理前とか非常に落ち込む時期がある(-。-;
    どうしようもなく凹み、イライラし、戻ってこれないことも。理性ではうまく制御出来ない時期がある。

    そんな時、この呪文いいなぁって思った。
    美味しいもの食べて、運動して、お湯に浸かってよく眠る!
    これが最強だっ!o(^▽^)o

    終盤はスピードアップして一気読み!
    すぐ忘れちゃうかも知れないが、後味最高、いい気分になった(*^▽^*)

    • bmakiさん
      リスって、多分鎌倉にたくさんいる台湾リスだと思います。ずんぐりしたやつ(⌒-⌒; )
      リスって、多分鎌倉にたくさんいる台湾リスだと思います。ずんぐりしたやつ(⌒-⌒; )
      2024/09/27
    • ひまわりめろんさん
      それまきちゃやないか!
      それまきちゃやないか!
      2024/09/27
    • bmakiさん
      ひぃぃーーー!
      わたしだったのかっ!!!
      気付かなかったっ!!
      ((((;゚Д゚)))))))
      ひぃぃーーー!
      わたしだったのかっ!!!
      気付かなかったっ!!
      ((((;゚Д゚)))))))
      2024/09/27
  • 阿部暁子さん、最近面白い作品によくあたります!!
    もっと他も読みたくて、ひま師匠やまきさんが読まれてるのを見て手に取りました♪


    side百花、side宝良の2冊からなっていて、まずはside百花から


    百花は車椅子の会社に勤める新米エンジニア、宝良は高2のとき事故で車椅子生活になった友人でテニスプレイヤーです


    車椅子のかっこよさに魅了され、日々奮闘してる百花ですが、どんどん先をいく宝良に焦ったり、失敗して自己嫌悪したりそんな日々が綴られています。
    ちょっと百花の前のめりな感じにあわあわしちゃうところもありましたが、情熱や素直さが読んでいて眩しかったです



    とても読みやすく、読後感もいい一冊でした(*^^*)


    宝良側の思いが読めるのも楽しみだな〜(*^^*)




    そして小田切さんかっこいー!!
    好きになっちゃうー(〃ω〃)


    • bmakiさん
      阿部暁子さん、失敗ないですよね!
      私も宝良の方も読みたいです!

      小田切さん、キュンキュンしちゃいますね♪
      阿部暁子さん、失敗ないですよね!
      私も宝良の方も読みたいです!

      小田切さん、キュンキュンしちゃいますね♪
      2024/11/02
    • どんぐりさん
      ひま師匠

      side宝良も読み終わりました!!
      こっちの方がよりよかったです〜!!
      ひま師匠

      side宝良も読み終わりました!!
      こっちの方がよりよかったです〜!!
      2024/11/02
    • どんぐりさん
      まきさん

      すごい読みやすいですよね!
      side宝良も読み終わったので
      どこよりも遠い〜をリクエストしてきますᕦ(ò_óˇ)ᕤ
      まきさん

      すごい読みやすいですよね!
      side宝良も読み終わったので
      どこよりも遠い〜をリクエストしてきますᕦ(ò_óˇ)ᕤ
      2024/11/02
  •  パリ2024が近づいてきました。オリンピック(7/26〜8/11)、パラリンピック(8/28〜9/8)ともに、日本選手団の活躍を期待したいですね。

     さて本作、阿部暁子さんの文庫書き下ろし『パラ・スター』は、<Side百花><Side宝良>の2部構成(2020発刊)で、車いすメーカー新米の百花と、親友で車いすテニス選手の宝良の物語です。

     <Side百花>の本作は、選手を支えるエンジニア視点で描かれます。メーカーの確固たる理念、技術者の情熱を中心に据え、競技用車いすの知識・理解が深まる内容でもあり、新鮮でした。

     百花を魅了する、アスリートの願いとエンジニアの技術が結晶した強靭で美しいマシンの描写、また、百花と宝良の出会い、宝良の事故、絶望や葛藤を乗り越えて2人の新たな夢をもつまでの揺れる心情や覚悟などが、繊細でリアルに描かれます。

     宝良が着実にプレイヤーとして飛躍していくうれしさの反面、百花は自分の仕事のステップアップに焦りを感じるのでした。もっとも、モノづくり職人が簡単に一人前になるはずもなく‥。けど、百花の想いは十分過ぎるほど伝わります。ある意味、ちょいポンコツな面と熱い想いのギャップが魅力?

     初めて担当したクライアント(バスケ少女)の対応を通じて、百花の芯が定まっていきます。愛想のない宝良だけど、2人の信頼関係バッチリで、百花は友人にも仕事にも恵まれているんだなと感じます。爽やかな読後感でした。
    <Side宝良>に続きます。

    • ひまわりめろんさん
      あ、なんか先越されたw
      あれでしょ?どうせ『金環日蝕』『カラフル』『カフネ』と傑作が続いたんで阿部暁子さんの過去作も漁ってみたくなった口でし...
      あ、なんか先越されたw
      あれでしょ?どうせ『金環日蝕』『カラフル』『カフネ』と傑作が続いたんで阿部暁子さんの過去作も漁ってみたくなった口でしょ?
      だとしたら全く一緒じゃないですか!w
      2024/07/06
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      全くおっしゃる通りでーす。
      なかなかいい感じみたい‥(^^)
      全くおっしゃる通りでーす。
      なかなかいい感じみたい‥(^^)
      2024/07/06
  • はい、遅ればせながら阿部暁子さん『パラスター』です

    変人しか出てこない

    夢を追い、夢に自分の全部をかけられるってちょっとやっぱり変人だとわいは思う
    だって普通はそんなん出来ないもの

    ただ目標に向かって一直線!というわけでもない
    そりゃそうだ
    そんなわけがない

    山あり谷ありクロード・チアリだ

    百花と宝良の友情がクロード・チアリを乗り越える力にちゃんとなっていて、百花の周りには道標となってくれる変人たちがちゃんといて
    そんな素敵な物語でした

    • ひまわりめろんさん
      土瓶さん

      今、『どくとるマンボウ航海記』読んでるんだが、ナセル出てきたw
      スエズで住んでる人の家にナセルの写真を飾ってる家がむっちゃあった...
      土瓶さん

      今、『どくとるマンボウ航海記』読んでるんだが、ナセル出てきたw
      スエズで住んでる人の家にナセルの写真を飾ってる家がむっちゃあったって話
      2024/09/25
    • 土瓶さん
      ナセル、見たいな。
      でもググりたくはない。
      そのうち街角で出会うときもくるだろうさ。
      ナセル、見たいな。
      でもググりたくはない。
      そのうち街角で出会うときもくるだろうさ。
      2024/09/25
    • ひまわりめろんさん
      くるかぁ!( ゚д゚ )クワッ!!
      くるかぁ!( ゚д゚ )クワッ!!
      2024/09/25
  • とても面白かった。
    スポーツを題材にした作品という事もあってか、試合の描写やその時の動きなどの場面がとても躍動感があってとても楽しめた。
    また、会社に勤める百花の視点というところからもお仕事エンタメという部分としてとても楽しめて面白かった。
    この後の、宝良sideも読んでいきたい。

    最後にこの小説をアニメ化したときの声優陣を自分なりにキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください。
    山路百花:安野希世乃
    君島宝良:小松未可子
    小田切夏樹:細谷佳正
    藤沢由利子:園崎未恵
    君島紗栄子:椎名へきる
    雪代和章:関俊彦
    志摩:榎木淳弥
    七條玲:上坂すみれ
    三國智司:杉田智和
    佐山みちる:小原好美
    佐山佳代子:平野文

  • この本、北上次郎氏が推しているのを見て、新刊で出た少し後に中古本屋で見かけた時に買おうと思ったのだが、表紙を見て手を出すのをちょっと躊躇った。
    「おすすめ文庫王国2021」の第1位だったので、改めて探し直して、今度は購入。普通なら絶対買わないな。

    第1位の推しコメントの中に『途中から涙が止まらない』とあったが、まあ確かにウルウルするところは多かった。
    歳を取って涙腺が弱くなるのは如何ともしがたいが、そういうところを刺激する場面が次々と配された、ツボを押さえた作りではある。
    生きている間ずっと付き合い続けなければならない身体のハンデを負いながら、それを受け止めて生きる決意をした人々、本人だけでなく家族や友人や近しい人たち、に対する描き方も良い。

    テニスに限らず車いすで競技する人って確かに凄いなと思う。車いすを動かすだけでも大変だろうに、それをしながら球を打ったり走ったりぶつかり合ったり。
    そういう車いすスポーツの世界と、それを支える競技用車いすの製作の現場についても勉強になった。

    親友の宝良と約束し最高の車いすを作ることを目指して老舗の車イスメーカー・藤沢製作所に入社した百花、のストーリーはまあそれなり。
    社長や上司や先輩が全て良い人で良かったけれど、実社会ではなかなかそうはいかないぞ。
    小田切が何度もくり返す『その人の本当の気持ちに向き合う』『その人のために何が最善かを考える』というのは、仕事をする上ではとても大事なことだな。
    一度大きな失敗をしながらそれを糧にして変化成長し、そして今、後輩を指導する小田切の姿は、お仕事小説として良いところあり。

  • どちらを先に読むのが正しかったのか分からないのですが、パラテニスプレイヤーの宝良の側から読みました。非常に感動的でティーン用の読み物にしておくのはとてももったいない傑作だと思いmした。
    そして今回、宝良の親友百花の側から見た物語を読みました。こちらもまたプレイヤーを支える車椅子メーカー、そして親友を支えたいと思いながら、技術が追い付かず懊悩する百花の姿に胸の熱くなる名作と言って差し支えありません。
    百花焦り過ぎだろうという声も聞かれそうなくらい、宝良の成長に追いつきたいという思いが空回りしています。それを受け止める先輩もいい存在感を出しています。

    順番的には百花side⇒宝良sideかなという気がしましたが、どちらから読んでもばっちり感動出来る事間違いないです。

  • 車いすテニス。思わずネットで動画を探して見まくりましたよ。
    すごいとかすごくないとか、もう、言葉がないくらいすごすぎますわ、この競技。
    車いすを操作してボールに追いつき、あるいはボールの行方を予想して先に動き、そして止まり、打つ。
    全身で、打つ。身体が車いすに固定されているのだから通常のあの文字通り全身を使って打ち返すのとは違うのだけど、それでも「全身で打つ」としか言いようのない動き。これはもう言葉にできないほどのすごさだ。
    そんな車いすテニスを余儀なくされた同級生のために、車いす製造会社へ就職した一人の少女の物語。
    読む前から、モノづくり系でありスポーツ小説であり青春ものであり、と自分の好きな要素だけでできているのはわかっていたのでちょっと気合が入っていた。
    だがしかし、読み始めてすぐに、この主人公にイライラし始める。おいおい、ちょっと甘いんじゃないの、と。
    モノづくりってそんなに簡単なものじゃないでしょ、たかが一年やそこら働いたくらいでなに焦ってまえのめりになっちゃってるの、甘いよ甘い甘い、と。
    自力で歩けない人のための「足」である車いす。しかもスポーツのためのものとなればどれだけ繊細な作業と熟練の技が必要か。なぜそんなに焦る。もっとじっくり修行すりゃいいじゃん。
    その焦りの意味、そしてなぜ友達のためにそこまで熱くなるのか、その理由が語られてからイライラがおさまっていく。二人がめざすもの。その理由。そうかそうか、と見守る目が優しくなる。
    でも、私はたぶん今月出る『宝良side』のほうが好きだろうな、という予感。早く読みたい。

  • 先日読んだ「金環日食」が素晴らしかったので。手にとった3年前の作品。
    車椅子メーカーに勤める百花と言う女性の、友情と仕事に向き合う成長の物語。設定や百花の描き方はありふれた感がある。真面目一直線でもドジで泣き虫で、と言う設定。がスポーツ車椅子と言う未知の分野を垣間見せてくださったのは有難い。折しも国枝氏が車椅子テニスで感動を下さったばかり。読んで良かったと思えた。

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著者プロフィール

岩手県生まれ。『陸の魚』で雑誌Cobalt短編小説新人賞に入選。『いつまでも』で2008年度ロマン大賞受賞。集英社オレンジ文庫に『鎌倉香房メモリーズ』シリーズ(全5冊)、『どこよりも遠い場所にいる君へ』コバルト文庫に『屋上ボーイズ』、ノベライズ『ストロボ・エッジ』『アオハライド』シリーズ、他の著書に『パラ・スター 〈Side 宝良〉』などがある。

「2022年 『読んで旅する鎌倉時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿部暁子の作品

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