日報隠蔽 自衛隊が最も「戦場」に近づいた日 (集英社文庫)

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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087441048

作品紹介・あらすじ

結局すべてがウソなんじゃないか──。
「南スーダン日報問題」に挑んだ調査報道ノンフィクション

第18回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」受賞!

自衛隊に駆け付け警護が付与された南スーダンPKO。
在野のジャーナリストによる情報公開請求に端を発した疑惑は、
防衛大臣など最高幹部の引責辞任という前代未聞の結末を迎えた。
現地の状況を記した「日報」はなぜ隠されたのか。
首都ジュバでは、一体何が起きていたのか。
この問題は我々に何を問うているのか──?
公開請求を行なったジャーナリスト・布施祐仁と、
南スーダンに14回潜入した特派員・三浦英之。
政権を揺るがした「南スーダン日報問題」の内実に、
気鋭のジャーナリストが連帯して挑む、調査報道ノンフィクション!

●直感的に、「ありえない」と思った。
自衛隊にとっても重要な日報が半年も経たずに廃棄され、
防衛省に存在しないなんて、常識的に考えられない。
こんなに短期間で廃棄されてしまったら、
国民は自衛隊のPKO活動について何も検証できないではないか──。(布施祐仁)
●目の前に広がったのは自衛隊宿営地の全景。
ポールに日の丸がはためき、自衛隊員が車に乗り込んだり、
会話をしながら道を歩いたりしているのが肉眼でもはっきりと見える。
ロケットランチャーを撃ち込まれれば、
間違いなく多数の死傷者が出ただろう──。(三浦英之)

おわりに 三浦英之

【著者プロフィール】

●布施祐仁(ふせ・ゆうじん)
1976年、東京都生まれ。ジャーナリスト。『ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場』(岩波書店)で平和・協同ジャーナリスト基金賞、日本ジャーナリスト会議によるJCJ賞を受賞。著書に『日米密約 裁かれない米兵犯罪』(岩波書店)、『経済的徴兵制』(集英社新書)、『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿』(伊勢崎賢治氏との共著/集英社クリエイティブ)など。現在、「平和新聞」編集長。

●三浦英之(みうら・ひでゆき)
1974年、神奈川県生まれ。京都大学大学院卒業後、朝日新聞社に入社。東京社会部、南三陸駐在、アフリカ特派員などを経て、現在は福島総局員。2015年、『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』(集英社)で第13回開高健ノンフィクション賞を受賞。著書に『水が消えた大河で─JR東日本・信濃川大量不正取水事件』(現代書館)、『南三陸日記』(朝日新聞出版)など。

感想・レビュー・書評

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  • ジャーナリストの矜恃ここにあり!
    大まかな推移は、「はじめに」で三浦英之さんが3pでまとめている。
    それを更にまとめると、

    2012年南スーダンに自衛隊が平和維持活動(PKO)で派遣される
    2016年7月、大統領派と副大統領派の、首都ジュバでの大規模な戦闘が発生する。
    当時、日本政府は「政府軍と反政府軍との間に散発的な発砲事案が生じている」と発表。
    憲法9条は、海外での武力行使を厳しく禁じている。よってPKO派遣の原則は「現地で戦闘が起きていないこと」であった。政府は奇策を打った。南スーダンの事実を加工して「戦闘」を「衝突」と言い換えた。

    「戦闘」か「衝突」か、国会やマスコミが不毛な議論を繰り返している時に、朝日記者の三浦さんは南スーダンに飛び込む。

    一方、日本ではフリージャーナリストの布施さんが、情報公開制度を駆使して、政府の内部資料によって政府の嘘を次々と暴いていった。

    そして、やがて追い詰められて、翌年7月現職の防衛大臣稲田朋美、事務次官、陸上幕僚長という国防トップ3の辞任に発展し、PKOは5月に撤収した。

    2人のジャーナリストの共闘は、SNSという新しい時代のツールによって成し遂げられた。

    事実とは何か。権力とは何か。(13-15p)

    この書で、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞受賞。

    これら簡単な経緯は、連日報道されていたので多くの方が今だに覚えていることだろう。本書を読む意義は、それを再確認することではない。

    真実は細部に宿る。

    「結論ありき」の為に、防衛省全体で事実を隠微した経緯。自衛隊への「駆けつけ警護任務付与の実績つくり」のために、国会で言葉遊びをすればやり抜けると思っていた稲田防衛大臣以下官僚、もしかしたら官邸も。南スーダンの現実に「臭いものに蓋をする」仕組み。国内では通用しても、自衛隊をあのまま南スーダンにおけば決定的な戦闘が起きて、隊員の命を脅かしていた。PKO現場では通用しない「平和ボケ」した対応。公文書に対する態度。不都合な真実を隠微する体質。‥‥は布施さんが詳細に描いた。

    その間をぬって、三浦さんの、下手をすれば兵士に連行されるような取材や、悲惨な耳を覆いたくなるような戦争被害者の声が綴られる。そして現場の写真を見る。百聞は一見にしかず。

    「戦争の最初の犠牲者は真実である」(アイスキュロス)

    これらの細部を読み終わった私に去来するのは、これは3年前の出来事じゃない。今現在、官邸で起きていることだ。ということだ。しかも、この「失敗」を正しく学んで、この伏魔殿は、さらに分かりにくく強力な「隠微」を完成させたようだ。新型コロナの相談目安が厳しくて何人も人が亡くなっているのに、それは「誤解だった」と言って責任逃れをする大臣も出てきた。もはや、滅多なことでは新しい議事録などは出てこない。(←書評なので、日々変化する時事問題を評するのは反則かもしれないが、本書から連想される事柄を言わないのは又違う気もしている。それに、ここで書いたことは一年後に読んでも当てはまることだと確信している)

    私たちは、私たちのアンテナを鍛えなくてはならない。


  • 「戦闘」か「衝突」なんてどうでもいいよ、というか南スーダンて内戦状態じゃないの?と当時も思った。日本が積み重ねてきた「信頼」が崩されていっている。なぜ安倍政権は改憲に執着しているの?なぜ人命を軽んじるのか。誤魔化されていること、知らされていないこと、私達が知ろうとしていないことがもっとたくさんあるのだろうなと感じた。

  • 世間で騒がれた自衛隊派遣の裏にこんなことが行われていたのは衝撃的。しかし、やっぱりね。という感じもした。

  • 当時からニュースで追っていたことだけど書籍の形にまとめられるとすっきりして良かった。日本と現地の並列進行も読みやすい。

  • 2016年、南スーダンにPKO活動として派遣されていた自衛隊をめぐり、「文民駆け付け警護」等の任務が新たに付与されようとしていた矢先、その派遣先である南スーダンで政府軍と反政府軍との間で激しい戦闘が発生しました。
    自衛隊をPKO派遣する前提として「戦闘状態にある現場には派遣しない」という原則があったため、安倍政権は頑として「戦闘ではなく”武力衝突”である」等の答弁を繰り返しました。事実確認のため、本書の著者である三浦氏が当時の日報を情報開示請求したところ、「日報は破棄されているため開示できない」との回答が出されます。以後の国会でも「日報は規則に従って破棄されており存在しない」と一貫して当時の稲田防衛相は答弁しました。しかし、のちに日報は自衛隊内で保存されている事が発覚し、最終的には日報の隠蔽であったとして稲田防衛相、陸上幕僚長、防衛事務次官などの最高幹部が辞任する事態へと発展しました。
    本書はこの一連の事態の推移を追うのですが、その構成は、稲田氏の答弁を中心に布施氏による日本の国会での答弁を追った章と、三浦氏による南スーダンの現場ルポの章が交互になっています。実弾が飛び交い、政府軍による市民への暴行が絶えない南スーダンの現場が誰が読んでも危険な状況であることが明白であることと、実弾が飛び交う状況を「戦闘」ではなく「武力衝突」だと言い張る稲田氏の答弁をはじめとする国会でのまさに”言葉遊び”のような難解さとのコントラストがあまりにも際立ちます。
    国会で稲田防衛相や安倍首相が、のらりくらりと訳の分からない答弁を繰り返している間にも、数百人規模の銃撃戦や、迫撃砲弾、ロケットランチャーを乱射するような戦闘が宿営地のすぐ傍で発生するような切迫した状況に自衛隊員達は置かれていました。少年兵も多い現地で、もしも少年兵が自衛隊へ発砲してきた場合について「相手が少年兵だったら、こちらが撃つよりも撃たれることを選ぶかもしれない」と証言する隊員もいました。
    森友・加計学園、桜を見る会についても都合の悪いことについては記録が残っていないと言い倒し、つい最近もコロナウィルス感染対策の専門家会議も議事録を残していないと平然と言ってのける安倍政権。
    毎日の報道だけでは、事態の全体像を掴み切れない事も多いですが、本書は日報隠蔽の事態を再構築して分かりやすくまとめてあり、少しでも多くの人に読んでもらいたいと感じました。

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著者プロフィール

1976年生まれ。ジャーナリスト、「平和新聞」編集長。著書に『経済的徴兵制』(集英社新書)『主権なき平和国家』(共著、集英社クリエイティブ)『日報隠蔽』(共著、集英社)ほか。

「2018年 『9条の挑戦 非軍事中立戦略のリアリズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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