- Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087441444
作品紹介・あらすじ
石油を生成するかつてない細菌「ペトロバグ」を巡り勃発する世界的混乱の数々。ウイルスの次は細菌なのか!? 新たな“予言の書"。
感想・レビュー・書評
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高嶋哲夫『バクテリア・ハザード』集英社文庫。
石油を生成するバクテリアを巡る国際謀略バイオ・ミステリー小説。
アイディアは独創的で、ストーリー展開も早くなかなか面白い。しかし、世界規模でストーリーが展開する割りには主な舞台は日本に留まり、世界の描写は味付け程度で、無難な結末にも少しがっかりした。
林野微生物研究所の山之内明は短時間で効率的にクリーンな石油を生成するバクテリア『ペトロバグ』を発見する。世界の石油市場を根底から覆す発見に、アラブの産油国やアメリカのメジャー石油会社は動揺に包まれる。石油を巡る戦争にも発展しかねない驚異に山之内の殺害と『ペトロバグ』の奪取に動く。
昔は世界の石油が後数十年で枯渇するなどと言われていたが、新たな油田の発見や採掘技術の進歩により、石油は容易な高効率エネルギーとして世界の産業を支えている。もしも、石油が短時間に高効率で生成出来るならば、世界のエネルギー市場は大きく変わるだろう。特に石油で国を支えて来た産油国や石油の利権を背景にのし上がって来た大国のダメージは計り知れない。
本体価格980円
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面白かった
今度はバクテリアを題材にしたバイオサスペンスエンターテイメント!
石油を生成するバクテリア「ペトロバグ」を巡り、アラブ産油国、米国石油メジャーの争奪戦!
ストーリとしては、
ペトロバグを発見した山之内明。しかし、彼は学生を事故で死なせてしまう過去を持ち、人生をやけっぱちになってしまってます。この研究だけが今の生きがいみたいな状態。
この人とてもくらーーい。そこまで背負い込むか...
そして、これが実用化されると困るのがアラブ産油国や米国石油メジャー。ペトロバグもろとも山之内を抹殺しようとする一方、ペトロバグを奪って、石油を牛耳ろうとそれぞれの思惑で山之内やその周辺に襲い掛かります。
ペトロバグや山之内はどうなるのか?
そして、研究しているうちに明らかになったペトロバグの致死性。この細菌が人間の体に入ると、人間の体を石油に変えてしまう!
この細菌を保菌したまま山之内を追う殺し屋
どうなる?どうなる?
といった展開です。
ちょっと欲張りすぎ!!
細菌のバイオパニックでも描けそうだし、細菌の争奪戦でも盛り上がりそうなのに、ある意味中途半端(笑)
さらに、ラブロマンス付きで、盛沢山です!
また、ちょっと違和感感じたのが時代設定。
フロッピとか出てきて、違和感あるなあって思っていたら、2001年の時代設定でした(笑)
ということで、いろんなことがてんこ盛りのバイオエンターテイメント!
楽しめました。 -
バクテリア=細菌には、ヨーグルトを作る乳酸菌や、パンやビール造りに欠かせない酵母菌、あるいは納豆を作る納豆菌など、人がその力を利用できる有益な菌が存在する。
本作の主題は、架空の「石油生成細菌」である。
細菌が石油を作る。油田を持たない国でも産油国になることができる。それは世界のエネルギー情勢を大きく変える。
というわけで、この菌と、発見・開発した科学者とが、OPECや米国石油メジャー企業に狙われる、というお話。
単なる有益菌なら「ハザード」というわけではないのだが、研究途上で、この菌が致死性も持つこともわかってくる。感染力はさほどではないが、ひとたび体内に入ると、身体の中で大増殖して、組織を石油に変えてしまう。もちろん、宿主は死ぬ。いや、こんなの蔓延するとどうなっちゃうわけ・・・?
開発した民間企業の研究者グループは、有益性を維持しながら致死性を抑えられないかと奮闘する。
エネルギー市場を牛耳りたいものは、細菌も科学者も抹殺してしまえ、と密かに指令を出す。
細菌に興味があるアメリカの研究者は、何とか手に入れて研究しようとする。
過去に起きた事故から、開発グループの科学者を恨む記者がいる。
そして国を背後から動かす大物政治家も動き出す。
そんな中で、殺し屋グループの1人が細菌に感染してしまう。
さまざまな人の思惑が絡み合い、ハリウッド映画ばりの追うもの・追われるもののアクションサスペンスが展開される。もちろん、ロマンスも付いてくる。
いやいや、もちろん、フィクションである。
石油生成細菌自体はまったく荒唐無稽というわけでもない。実際、石油成分を産生すると思われる細菌や植物プランクトンが見つかった例はある。但し、石油と同様の成分を産生するというだけであって、しかも産生量は多くはない。
細菌を「生物工場」的に使うような話には大抵、スケールアップの問題が絡む。商業規模・工業規模で産生しようとすると莫大なコストがかかる。早い話、細菌に石油を作らせた場合に、購入するよりも高い費用が掛かるなら、何の意味があるのか、ということである。
そう思った時点で、このお話には乗れなくなる。
同時に、どことなく漂ってくる「古さ」に気が付く。
作中で、封じ込めレベルをP4(PはPhysical containmentの意)と言っているが、現在ではBSL4(Biosafety level)と称することになっている(ついでにいうと、こんなレベルの封じ込め施設を民間の研究所がホイホイ作れるのか、というのもよくわからない。そして最初はただ有益菌ということしかわかっていないのに、P4で実験やるかな・・・?)。
研究者らが所属する研究所は「林野微生物研究所」となっていて、何となく林原生物化学研究所を連想させる。が、林原は2011年に会社更生法を申請したり、いろいろあったんだよね、確か・・・。
遺伝子解析に妙に手間取ってるのもちょっと解せない。配列決定くらいちゃっちゃとやれるのでは・・・?
よく読み返すと冒頭に1991年とか2001年とか年号が入っている。
で、最後まで読んだら、巻末に、元は2001年に宝島社から刊行したもの(当初の題は「ペトロバクテリアを追え!」(こっちの方がいいじゃん!))を改題・再編集したと書いてある。
・・・ああ、そうか、20年前なのか・・・。
初版刊行が2001年5月だから、911よりも前である。
ちょっと何とも言えない微妙な読後感なのだが。
有益だけど致死性がある細菌というアイディアはもしかしたらちょっとおもしろいかも。
しかし、このタイトルはどうもコロナ騒動に便乗している感が漂う。
「ウイルスの後は細菌か」という帯がついているバージョンもあるようだ。裏表紙の紹介には「予言の書」という文言もある。
大きな意味で、今後、細菌感染が流行することはありうるとは思うが、20年前のアイディアでいろいろいわれてもなぁ・・・というのが正直なところ。 -
久しぶりに作者のパニックものを読みたくて、手に取った一冊。
石油を生成するバクテリアを発見し、実用化に向け、研究を進める研究者・山之内を巡るサスペンス。
アメリカのメジャー、アラブ諸国のOPEC、日本政府…世界はいつでも石油に飢えている。そんな中、洞窟の中から採取した土壌から発見した細菌には、石油に似た物質を生成する性質を持っていることを発見した山之内。
彼は過去に研究に熱する挙句、研究室で爆発を起こし、自分が教えていた学生たちを死に追いやっていたことを悔いながら生きていた。
そんな山之内が民間の研究施設に移り、もうすぐ実用化出来るところまで来ていたが、その情報が企業スパイにより、あらゆるところに情報が漏れ、命を狙われることに。
普段であれば、専門的な話は序盤で終わり、中盤でパニック的な展開で一気に読むところだが、今回は一貫して専門的な分野で攻めていて、読むペースが上がらない。
結局、登場人物が多すぎて、誰がどこの組織の人間か分からないし、期待していたほどのパニックものでもなく、内容も微妙で残念… -
この作者は時間を超えた読み応えのある作品をいつも届けてくれます。コロナ禍に平積みされていた別の小説を読んでこちらの作者を知りました。そこから色々と読み漁っています。
今回の石油を題材とした内容にはドキッとさせられました。次の作品も楽しみにしています。 -
内容は面白い。
ただ最後は淡々と過ぎていった。 -
設定だけ
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高嶋作品なので勝手にパニックものだと思っていたがどちらからというとサスペンスかな。発見し発明した細菌の威力が凄すぎて毒性を無くすように遺伝子を操作する。なるほど奥が深い。
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僅かながら分子生物学を齧っている身なので、興味深いテーマだと思い手に取った本。非現実的だが近い未来に起こりそうな、完全なるフィクションとも言えない曖昧な世界観が非常に面白かった。ただ、登場人物が多く、風呂敷を広げすぎたのか、消化不良な結末であった。
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首都感染を読んでから気になった一冊。
主に中盤の駆け引きにハラハラした。
それぞれの思惑が絡み合い、複雑な展開となっていて読みごたえがあった。
著者プロフィール
高嶋哲夫の作品





