本と鍵の季節 (集英社文庫)

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  • 集英社
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感想 : 509
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087442564

作品紹介・あらすじ

堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、同じく図書委員の松倉詩門(しもん)と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。そんなある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが……。

放課後の図書室に持ち込まれる謎に、男子高校生ふたりが挑む全六編。
爽やかでほんのりビターな米澤穂信の図書室ミステリ、開幕!

感想・レビュー・書評

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  • 高校生二人の掛け合いと関係性が素敵すぎ! 学生時代を思い出させてくれる青春ミステリ #本と鍵の季節

    ■きっと読みたくなるレビュー
    高校の図書委員で友人になった、堀川と松倉。いつも図書館で司書に従事する彼らが、校内や生徒間で起こる様々な謎を解き明かしていくコージーミステリー。

    二人の間で交わされるセンス抜群の会話が楽しすぎる。
    正直高校生とは思えないほど博学でロジカルで、しかも感性も鋭い。こぼれたセリフやほんの少しの事象から、真相を紐解いていく様は超カッコイイのよ。私自身クールさはまるで持ち合わせていないのでうらやましい!きっとモテるに違いない。

    本作は連作短編なんですが、最後の二編は鬼アツの展開です。
    日常の謎ミステリーだと思いきや、予想しなかったストーリーが続いていき、最後は薄暗いところに着地する。良いも悪いも、自身が学生だった頃を思い出させてくれる、青春ミステリーでもありました。

    〇913
    開かない金庫と憧れの先輩。
    数字の謎が想像を膨らませてイイ!着地点も捻りが効いてるし、さすがの一編。

    〇ロックオンロッカー
    美容院での出来事。
    二人の会話が可愛くも鋭くてドキドキしちゃう。たった一言の違和感から推理が広がっていく、とあるミステリーの名作を思い出させてくれますね。

    〇金曜に彼は何をしたのか
    友人の兄のアリバイを探し出せ。
    丁寧に仕込み、物語にしていく様は流石。ラストの急展開が見事でひっくり返りました。

    〇ない本
    自殺した友人が最後に読んでいた本を探す話。
    人の心を浮き彫りにした損装で、重みが胸に来る。寂し気な空気が漂う作品。

    〇昔話を聞かせておくれよ【おすすめ】
    主人公二人が暇を持て余し、謎めいた昔ばなしを語り合う物語。
    今までの日常の謎ではなく、冒険ミステリーといった趣。そして予想外の展開になっていき…

    おもろい。初めて二人の背景が見え隠れしてくる一編で、いよいよ読む手に力が入ってくる。特に中盤以降は一気に引き込まれること請け合い。

    〇友よ知るなかれ【おすすめ】
    前編からの連作、最初からぐぐっと目を離させなくなる。
    終盤からラストにかけて、あまりの美しさと熱い想いに、すっかり本作のファンになってしまいました。

    ■ぜっさん推しポイント
    堀川が昔話を語る場面、父とプールで遊んだエピソードが胸に沁みた。我々は子どもから大人になっていく微妙な期間において、様々な現実に相対し、悟りとともに成長していく。

    若い頃から何も変わっていないつもりでも、きっと繊細さは失ってしまったのでしょうね。久しぶりに学生時代の友人に会って、自分を取り戻したいなと思いました。

  • ほんとうに高校生なの、と言いたくなる程、頭脳明晰で大人びている堀川と松倉。放課後の図書室に持ち込まれる、日常に起きたちょっと異質な事件の謎に挑む。
    図書委員の作業を着々とこなすふたりが素直で清々しい。図書委員ってこういうこともするのか。図書室の本の知識が所々に。
    2話目まで、頭の中で謎解きばかりが働いて正直馴染めなかった(謎解き読みなれていないので)。が、徐々に不穏な空気が漂いはじめ、事件の裏に隠れていた真相を探ることで入り込んで読了。
    「ない本」でじわっとくる余韻がよかった。
    少し距離があったふたり。違う視点ながら、補い合って関係性が変化してゆく。お互いを評するセリフにほろりときた。ラスト2話では相手の意外な苦悩が見え、全て分かり合えるわけではないけれど、その部分も含めた(認めた)上での友情。分かる気がします。
    高校生といえど、苦みのあるラストに心動かされました。

  • 不人気な図書館。高校二年生の「僕」こと堀川次郎は図書委員会。同級生で背が高く顔もいい松倉詩門も図書委員である。

    図書委員として松倉と付き合うようになった堀川はそれまで思いもしなかったことを見聞きするようになる。その全てが松倉のせいではなく、むしろ彼は奇妙な体験から一歩引きたがるのだが、堀川がおかしなことに関わったときは、いつも隣にいた。

    もともと堀川も頭が良いいのであろうが、そんな堀川は松倉に刺激を受けて、その能力、知識が発揮できているようにも感じた。
    単に回転が早く、人の言動や状況理解にたけてるだけでなく、すごいなぁと思ったのは、最後に図書館で松倉兄弟の名前、詩門、礼門の名前のヒントで松倉の父親の名前に容易にたどり着いたところだ。

    ・英語圏の名前、サイモンとレイモンドに由来するものではない。
    ・「門」の字は祖父から取ったもので、かつ、兄弟の名前は父親のそれになぞらえている。
    ・父親と自分と弟で「五分の三」
    詩と礼を含む5つからなるものなんて、わからなかった。堀川は、これから儒教の主要経典である詩経、礼記、書経、易経、春秋を考える。冗談のようだ。四書五経のことなんて頭の端っこからほぼ消えかけていた。何年も前に必死で「孔子」の儒教を世界史の試験のために覚えたのに…と、これがわかっていれば、もっと同じ感覚で伝えたかったことがわかったかもと思うと、高校の勉強の凄さを感じたのと、もっと関心を持って、あの頃勉強できていればと、残念にも思った。

    「儚い羊たちの祝宴」は、最後は引いてしまったが、こちらは「配達赤ずきん」の雰囲気に似ている気がして、読みやすかった。
    それでいて、この作者ならではのストーリー構成には高さを感じて、読後の満足感が高い。(それがミステリーだからか?いまいちミステリーに慣れていないからなのかが、わからない)

  • 高校2年生の堀川次郎と松倉詩門…2人は図書委員として利用者の少ない図書室で過ごすことが多い…。そんな2人のもとを訪れたのは悩める高校生たち…2人が協力しながら、真相を紐解くストーリー。

    米澤穂信さんの作品は「満願」しか読んだことはなかったけれど、これがすごく面白く読めたので、こちらも手にとりました。高校生2人が主人公でもあり、ライトノベル的な作品に仕上がっています。すごく読みやすかったのですが、すごく大きな事件に巻き込まれるような内容ではなかったので、少し物足りなさも感じました…。でも、そのあたりが高校生ならではなのだから、と考えれば高校生活も上手く描けててさわやかな読後を得ることができました。

    レビュー作成する直前で気づいたのですが、私この作品文庫本でブクログに登録してしまったみたい…読んだのは単行本でした(^-^;

    • かなさん
      naokunyane8さん、こんにちは!
      いえいえ、評価の基準はそれぞれの読書家さんのものだから
      感じたままを評価するのが一番いいかと思...
      naokunyane8さん、こんにちは!
      いえいえ、評価の基準はそれぞれの読書家さんのものだから
      感じたままを評価するのが一番いいかと思います(^^)

      この作品は、すっごく読みやすかった分
      もう少し突っ込んでほしいところもあったかなって…
      私的に感じたんです…。
      でもでも、ずっと読みたいと思ってたんで
      読めてよかったと思っています!
      2023/05/03
    • ヒボさん
      かなさん、こんにちは♪

      とりあえず、連休初日には大好きな原田マハ作品を手にして見ました(^^)

      読み終えてので、「いけない」を手にしてみ...
      かなさん、こんにちは♪

      とりあえず、連休初日には大好きな原田マハ作品を手にして見ました(^^)

      読み終えてので、「いけない」を手にしてみますね。
      2023/05/03
    • かなさん
      ヒボさん、こんばんは!
      原田マハさん、私も読みたい作品あるんですよ♪
      でも、まだ読んだことはないんで…
      ヒボさんの本棚参考にさせてもら...
      ヒボさん、こんばんは!
      原田マハさん、私も読みたい作品あるんですよ♪
      でも、まだ読んだことはないんで…
      ヒボさんの本棚参考にさせてもらいます!

      「いけない」を読まれるんですね!
      是非読まれてくださいっ!
      ヒボさんのレビューを楽しみにしてますね(^^)
      2023/05/03
  • 図書委員会で知り合った堀川次郎と松倉詩門。
    高校二年生の、聡明そうな二人の会話のテンポがよく、読んでいてスカッとする。
    図書委員だけあって、本はもちろんのこと、謎解きに分類記号が出てきたり、金庫、ロッカーなど鍵に関する謎を解いていく。
    人の頼みが断れない堀川と、解決を導いていく少し大人びた松倉の二人の存在がだんだん鮮やかなものになって、実際にいるような気がしてしまう。

    爽やかな高校生の青春ものと思って読み進めていく反面、結末に想像がつかなくて戸惑っていたら、意外と深刻な方向へ向かっていって、最後はしんみりと考えさせられてしまった。

    二人の友情がこの後も続いていてほしいなと思う。

  • 爽やか青春ミステリー。

    堀川次郎と松倉詩門、図書委員の二人がが次々と難問を解き明かしていく6編の連作短編集。

    爽やかすぎて、最近僕自身に若さに嫉妬する傾向があるせいか、フィットしなかった。
    なんだこれは?ミドルエイジ・クライシスなのか?

    単に米澤さんの書く作品が、僕にはあわないのかもしれない。

    読みやすいし、おもしろいけど。

  • 堀川次郎(ほりかわじろう)
    松倉詩門(まつくらしもん)
    図書委員だけの付き合いしかない二人が身の回りに起きる些細な事件を解決していく青春ミステリー

    初出は、2012年から「小説すばる」に断続的に掲載された作品に書き下ろしの「友よ知るなかれ」を追加し2018年に単行本として刊行された連作短編集

    今回は、更に朝宮運河さんの解説入りの文庫本を読ませて頂きました。

    昨年の暮れから、米澤穂信先生の『古典部』シリーズの愛蔵版を入手しており、少しずつ読み進めておるのですが、解説でも朝宮さんが触れておられた、堀川、松倉という二人の主人公たちを見つめる著書の目がこれまで以上に優しいのを感じずにはいられませんでした。

    謎解きミステリーとしての完成度は、抜群でしたし、堀川、松倉の友情の物語としても素晴らしいと思います。

    是非ともお手に取って見てください。
    ミステリー好きの皆さんにお勧め致します。

  • やっぱ著者の学園もの好きだなぁ。

    正直なところ、読む前は、
    学園ものなら古典部シリーズの続きを!と
    求めてしまったけど、

    古典部シリーズを使わなかった理由も
    最後まで読めばしっかりと納得させてくれる。

    はいっ。必ず続編も読みますっ!

  • フォロワーさんのkurumicookiesさん、たけさんの感想を読んで気になり、ポチった。

    実際は、kurumicookiesさんの感想にかなり期待を持ってポチったのだが、たけさんの感想が面白くて(^-^)

    若さに嫉妬(笑)私もそうなので、その気持ちにどハマりした(笑)

    米沢先生の学校推理というのか、古典部のようなこのライトな乗りの本はあまり得意ではなかったが、この本は楽しかった(^-^)

    賢い図書委員の2人での推理が面白かったのもあるが、図書委員っていうところに読書好きは惹かれるものがあるのか?読み易く感じた(^_^)

    • たけさん
      bmakiさん、こんにちは!
      気持ちにどハマりしていただいてありがとうございます(笑)
      この本、若さゆえの爽やかが眩しくて、目を細めなが...
      bmakiさん、こんにちは!
      気持ちにどハマりしていただいてありがとうございます(笑)
      この本、若さゆえの爽やかが眩しくて、目を細めながら読んだ感じです。
      若くて賢いって最強!
      若い頃は不器用過ぎて、ようやく色々見えてきたと思ったら老けてた僕としては、羨ましい二人でした(笑)
      2021/12/19
    • bmakiさん
      たけさん

      こんにちは!
      土曜日にディズニーシーに娘と行ってきたのですけど、いやぁ、若いっていいなぁーーーと思いましたよ。
      私なんかより数割...
      たけさん

      こんにちは!
      土曜日にディズニーシーに娘と行ってきたのですけど、いやぁ、若いっていいなぁーーーと思いましたよ。
      私なんかより数割増しで楽しいんだろーなぁーと(笑)

      ディズニーシーで前に並んでいたお嬢さんがビールを買う時に年齢確認されていたので、私も身分証の用意をしていたら、私は顔パスでした(笑)

      嬉しいような、悲しいような(笑)
      若いって素晴らしい!!
      2021/12/22
  • 面白かった!
    高校2年生で図書委員の堀川次郎と松倉詩門が謎解きをするミステリー。
    近頃はミステリー作品を読むことから遠ざかっていたけれど、『たまには良いかな~』と思って手にとってみた。
    6話収められていて、開かずの金庫やテスト問題が盗まれる話、松倉詩門の家族の話等があった。
    高校生二人の掛け合いが面白かった。
    謎解きも「えっ!そうなの?」と読みはじめの頃は思うことが多かったが、最終話の頃には私自身の思考もミステリー作品に近づくことが出来て楽しめた。
    終わり方が「えっ、これで終わりなの?続きは?」と、とても後が気になってスッキリしなかったのですが、今年、続編が出るらしいので期待を込めて☆5つにしました。
    楽しみです。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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