- 本 ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087443202
作品紹介・あらすじ
母の愛を得られずに育った女。人妻となった今、彼女が求めるものとは──。恋愛小説の名手が愛と官能、欠落を描く短編集。
感想・レビュー・書評
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不倫とか許されない愛とかに沈んでいく女性たちの短編集。
どの短編も内容はちょっとえっちなんだけど書き口は淡々としてる。愛とか欲とかを求めてあやまち(とされること)を犯してしまう様にとても人間臭さを感じて好きだった。許されない愛は消耗するんだな。いろんな愛や情に狂う人を見られる。誰かへの情、自分への愛。
宮木あや子さん初だと思ってたんだけど「雨の塔」の方だった。好きです。あと装丁がきれい。
(↓引用&帯文)
愛情と呼ばれる檻につながれている人へ
その檻、意外と脆いかもしれないよ
狂おしく愛を求める女たちの物語詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
毒親に育てられた女性の歪な愛情を描いた短編集。躾と称した加虐、偏食の強要、売春の看過、精神錯乱による暴力、徹底的な管理支配等……本書の毒親バリエーションとその描写の緻密さには、読んでいてかなり辛い気持ちになるシーンもあった。感受性の強い人はある意味注意した方がいいかもしれない。
それが肉体的なものであれ精神的なものであれ、日常的に虐げられていた子供は感性、とりわけ痛覚に関する部分が鈍るようだ。それゆえにどの話の主人公も結局自身が妻、あるいは母親という立場になった際、無自覚に親と同じ道筋を辿ってしまっている。第三者から見たらどんなに醜悪な毒親であっても、子供にとっては唯一の「親」であり、それ以外のモデルケースを知らないからだろう。だから彼女達がいくら良き妻、良き母親であろうと熱心に努力しても、そもそも知らない、理解していないものを再現などできまい。そうして築かれた不器用な夫婦関係や親子関係は、些細なきっかけで砂上の楼閣の如く崩れていく。この錆びついた歯車を無理矢理回しているような不快さ、あるいは不毛さがリアルにありそうな感じで、より薄暗い気持ちになる。
個人的には「泥梨の天使」が一番グロテスクに感じてしまった。高校生の娘の携帯の履歴を監視して動向を逐一把握したり、通話履歴に異性の影が見られれば憤慨し、服や下着、アクセサリーに関しても気に入らなければ「売女のようだ」と決め付けて本人の意思は無視して処分する母親・美和子。本人は七歳の時に母親を亡くしており、母親と過ごした記憶は殆ど残っていない。ゆえに、子供から常に目を離さず、理想的な食事や生活をさせることが真っ当な子育てであり、母親の義務であると思っている。そこに全く悪意はないのだが、その愛情から起因する行動こそがジワジワと娘を苦しめ、衰弱させていることは分からないし、気付けない。親に愛された記憶がない女性が、自身は娘に精一杯の愛情を注いでいるつもりが、破綻した家族関係を生んでいる。残酷な話だとも思う。
やはり、毒親の居る劣悪な環境で生まれたけれど、なんだかんだ理解のある彼氏や旦那を捕まえてハッピー人生大逆転!的なエッセイをインターネットで発表している人ってほんの一握りで、現実的には幼少期に負った古傷に苦しみながら生きている人々の方が大多数なんじゃないだろうか。そういう上手く立ち行かない現実から逃れるために不倫という横道に逸れるヒロインも居るが、彼女達にも当然のことながらハッピーエンドは訪れやしない。不倫とはその時に作った都合のいい理由(言い訳)で衝動的に成り立つ関係だ。お互いがお互いに都合よく利用されるような関係性で理想的な幸せがつかめる訳もなく、それは束の間の現実逃避以上の意味を持たない。
もう、親と子供の関係と言うのはどう足掻いても逃れられない呪縛なんだろう。愛情という名のもとに与えられる支配や暴力は、まさに毒だ。長年にわたって心身に染み込んでいき、子供の人生を蝕み続ける。親ガチャ、子ガチャなんて言葉をよく耳にするようになった昨今だが、個人的には親ガチャの方が深刻だと思う。ある程度成長して抵抗できるようになるまで、非力な子供は親から与えられるどんな仕打ちも一身に受け続けなければならない。その果てに命が奪われてしまうという、悼ましい事件のニュースが流れることもしばしばある。読了後はやるせなさで一気に虚脱感が押し寄せてきた。辛い。 -
『the 宮木あやこさん』な一冊。
校閲ガールではなく、春狂いの宮木あやこさん。
最後の泥梨の天使は、ホラーかと思うぐらいにゾッとした。
フィクションとは言い切れない、親の子に対する愛という名の束縛の強さ。
私も娘を持つ母なので、将来こんなふうになってしまうのでは…と恐怖を感じた。
愛は伝え方によっては、檻になってしまうのだ。
解説にもあったが、本当に文章が濃密。 -
苦しい。
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ろくでなしが特に好きだった、なんていうか心地よい?脳がとぅるんとした感じ
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タイトルと表紙があまりにも美しくて惹かれた。
「愛情と呼ばれる檻に繋がれている人へ」から始まる短編集。「その檻、意外と脆いかもしれないよ」で締めくくられてはっとした。そういうメッセージだったんだ。
「泥梨の天使」怖すぎる。こういう過保護すぎる歪んだ愛情を向けてる母親が心底怖い。恐ろしい。 -
全部程よく気持ち悪くて良かったです。
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最後のやつきもすぎ
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2024.12.4読了
解説が秀逸で、最後やっとこの物語たちの深い意味がわかった気がした。
著者プロフィール
宮木あや子の作品





