非接触の恋愛事情 (集英社文庫)

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本棚登録 : 130
感想 : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087443349

作品紹介・あらすじ

お題【コロナ禍で変わる新しい恋愛を描け】キスもデートも禁止! 気鋭の作家7人が想像の限りを尽くして描く、恋愛アンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • コロナ禍で変わる恋愛をテーマにした短編アンソロジー。7人の作家が描き出す新しい恋愛の形。全作品よかった!コロナ禍という閉塞的なテーマをこんなにも自由に料理して、短編として仕上げるのはすごいと言うほかない。

    相沢沙呼『拝啓コロナさま』
    かつてアサヒ菌と言われいじめられてきた朝陽。新型コロナウイルスという脅威が現れたことで、いじめから解放されて居場所を得ることができた高校生活。憎悪を集めるウイルスに自分を重ね合わせる日々を送る中で、彼女は写真部の先輩・荻野と交流を深めていくが──。

    いじめとウイルスをテーマにすることで、分断した世界に繋がりを見出すという切り口が斬新。人との繋がりを恐れる朝陽が、荻野との対話を通して覚悟を決める姿が清々しい。どこへも行けない世界だからこそ、写真は感動を届けることができる。医療知識がなくても写真なら闘えると語った荻野が素敵だった。必殺技「ソーシャル・ディスタンス!」も好き。


    北國ばらっど『仮面学級』
    高校入学の年、世界を襲った脅威が原因で自習の日々を送っていた僕。その時見つけた仮面学級。同じクラスに入学予定の生徒が集うチャット上の架空教室。アイコンに仮名という仮面の下、僕はある人に恋をした。

    まだ出会っていない入学予定の生徒たちが、匿名かつ発言は本当でも嘘でもいいというルールで繋がる仮面学級のアイデアが楽しい。自分も混ざりたい(笑) 仮面の下を想像したり、その隙間から本音が見える場面にドキドキする。非現実の空間で、雨音が好きという現実の美しさで心を通わせる描写が好き。

    仮面というテーマを匿名のコミュニケーションに留めず、現実での正しさに置きに行く生き方であったり、マスクに隠れた表情という意味合いにも広げて演出しているのもいいよね。北國ばらっど先生って呪術廻戦のノベライズを担当されてた方だよね。あのノベライズもとてもよかった。


    朱白あおい『過渡期の僕らと受け入れない彼女』
    2035年の世界。人々がリアルでは会わず、オンライン上でコミュニケーションを取るのが当たり前になりつつある時代。感染症が発生して県境封鎖された中、恋人と会うために洋太たち3人は夜の山中を駆け抜ける。

    未来から見た現在を知ることで感じるノスタルジー。それは現在のぼくたちでも同じだ。昔はCDなどの物が情報源だったのが、配信サイトによって家に居ながらにして最新の作品と出会える時代になった。その技術を現実の人間関係にどう生かすのか。真琴がある意味で非接触の恋愛を貫いていて笑ってしまった。


    十和田シン『ああ、鬱くしき日々よ!』
    同棲している彼・久戸がテレワークになり、イラストを仕事にしている雫と過ごす時間が増えた。しかし、彼の言葉は冷たく雫の心を突き刺していく。自分を罰する鬱々とした日々を送っていた雫は、彼とかつて旅行した先を独り巡る。

    周りと非接触になるからこそ、同棲という密室で行われる言葉の凶器に気づけない。近くにいれば心が通うなんて幻想で、近いからこそ非接触になる領域もある。外からしか見えない歪な家庭内のルール。凍てついた部屋と心に刺さったナイフを溶かせるのは、周りにいる第三者のあたたかい言葉だったりするんだよね。


    上遠野浩平『しずるさんと見えない妖怪~あるいは、恐怖と脅威について~』
    しずるさんシリーズは未読。なんと安楽椅子探偵の推理小説シリーズらしく、これは読むしかない!内容は未読でも楽しめる会話劇で、濃厚すぎる14ページ。

    上遠野先生らしい哲学性。コロナ禍をテーマに“恐怖”と“脅威”の違いを語る。不安な気持ちが恐怖なら、実際の危険性が脅威。それを混同しないこと。そして、怖がらなければ脅威が消えるということはない。脅威への無知を隠すために虚勢を張ることで、自分が周りを巻き込む脅威になってしまうという話も鋭い視点。


    半田畔『グッド・ローカス』
    保健・衛生上の観点から、すべての都民の位置情報を把握する社会。その管理をする部署の由佳は、8年前に別れた恋人・五条宮昌の位置情報を見つけてしまう。彼の居た場所は8年前の思い出の場所で──。

    位置情報を把握しても、その人物を理解できるわけではない。8年前に通ったコインランドリー。そこをグッド・ローカス(良い場所)と名付けた昌。思わぬ再会で知る彼の現在。白紙だった未来を色付けるのはいつも自分で、そこに正しいも間違いもない。良い場所を作りたいという願い。きっとそれだけでいいのだ。


    柴田勝家『アエノコト』
    非接触同棲をしている隆と逢(あえ)。部屋に入らず、会話は付箋。役者兼コンビニバイトと医療事務という真逆の生活時間を過ごす二人。出会いは田舎に伝わる見えない神様を迎える行事「アエノコト」に遡る。

    非接触同棲というアイデアと、奥能登に伝わる民俗行事「あえのこと」を重ね合わせた新しい恋愛小説。姿が見えない同居人は実在するのか。もしかしたら「アエノコト」のように見えない神様をもてなしているだけでは?そんな不安を超えてリモートの芝居に魂を込める隆。最後にまさか泣かされるとは思わなかった。

    現在と過去が交互に描かれていく演出がとてもよかった。現在と過去が近づくほどに、非接触の壁が立ちはだかっていく切なさ。最後の最後までドキドキしながら読めたし、二人が重ねてきた思い出が芝居に降りてくる感覚がすごい。トリにふさわしい作品。一番好き!

  • 様々な角度から描写されたコロナによる恋愛は、今まで読んできた恋愛物とは全く違うようで本質は一緒なので、それぞれの登場人物の感情に寄り添いつつ新鮮味がある恋愛を体験できる話達だった。

  • 相沢沙呼にひかれて手に取る。これだけが書き下ろし。
    相沢沙呼「拝啓コロナ様」のは、凄く共感しながら読みました。コロナで生きやすくなった人、結構いると思います。特に学生。主人公と先輩の立場や話の流れが良かった。
    北國ばらっど「仮面教室」コロナでリモートの間、架空の教室で交流する高校生。架空で交流して持った気持ちが現実で上手く生かされるところが良かった。叙述でのミスリードは私は好まなかったかな。
    朱白あおい「過渡期の僕らと受け入れない彼女」途中、そこまでしなくても良いんじゃない?って突っ込んだ時点で少し冷めた感覚で読んだけど、勢いやアイディアは良。
    十和田シン『ああ、鬱くしき日々よ!』コロナ抜きで一番共感できたかも。パートナーとの関係、抑圧であっても気付かないし、自分が悪いのかもとか思いがち。こんな風に王子様は現れないけど、自分を守るために離れることはできる。
    上遠野浩平『しずるさんと見えない妖怪~あるいは、恐怖と脅威について~』キャラクターが続き物らしく、あまり解らなかった。そのうち読んでみよう。
    半田畔『グッド・ローカス』そんな仕事できるのか?できたとしてもAI分野じゃない?と思ったけど、話の流れは好き。恋愛、過去との決別、踏ん切り。
    柴田勝家『アエノコト』私の読解力不足なのでしょうか、イマイチ流れを理解できず…。スミマセン。

  • 齋藤孝の本読んでから一番最初に読んだ本。読みやすさがずば抜けて高い。
    そんでいて、ちゃんと一つ一つが面白かったので満足です。

  • 2023/01/01
    コロナ禍で人と人との接触が憚られるようになった時代において、人々の恋愛はどうなるのかという観点からジャンプブックスの企画で書かれたものをまとめた短編恋愛小説。
    それぞれの話に共通するのはコロナ禍での非接触が推奨される世の中での恋愛上について。
    もちろんコロナ禍が行き着くところまで行き着いたフィクションの世界もあり、あるいは現実としてコロナ禍で浮き彫りになってきている恋愛の形における課題などがそれぞれ何かしらのテーマを持って描かれた短編が載っている。
    コロナ禍での恋愛についても、小説だから誇張して表現されているフィクション的な要素も多いけれど、現実としても考えられる内容もある。
    こんなふうになっちゃうのかなーなどと想像したり、自分の体験と重ねながら読むのがいいのかもしれません。

  • ウィズ&アフターコロナで恋愛事情はどう変わるか、という短編集。7名の著者それぞれの視点が全く違うので、その違いを比べるのも楽しい。現状がこの先も続くなら、ここに描かれる人間関係が普通になっていくのかもしれないな感じます。サコモコファンとしては『拝啓コロナさま』に触れねばなるまい。辛い過去のため高校生活でも不安を抱える朝陽は、それを払拭できるのでコロナを肯定する。そんな彼女が先輩との関わり合いで前向きになって行くのだけど、その心情の動きが細やかに描かれていて、まさにサコモコ文学と思いました。

  • 「拝啓コロナ様」はわかるな…。「過渡期の…」は微笑ましくて好き。

  • 私は誰かと付き合ったことはないけれど、コロナ禍という今の時代設定で、ちょっとファンタジー要素のある恋愛小説で恋愛している気分になれた。でもただの恋愛小説なのではなくて、家に閉じこもっている日々が多いからこそ私たちは勇気を出して何かに挑戦するんだといったことや、人と直接会えないからこそ再会したときの喜び、感謝など、いろいろ気付かされるものがあった。

  • 913-H
    文庫

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著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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