言の葉は、残りて (集英社文庫(日本))

  • 集英社 (2022年1月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784087443424

作品紹介・あらすじ

第32回小説すばる新人賞受賞作。

選考委員・村山由佳氏 絶賛!
「遠い時代を生きる主人公たちの運命に、こんなにも胸かきむしられるとは。
新人離れした豪腕」


海沿いの地にある鎌倉幕府。
美しい景色とうらはらに、そこには陰謀、嫉妬、憎しみが渦巻いていた。

そんな中、若き三代将軍・源実朝のもとに、摂関家の姫・信子が嫁いでくる。
突然の縁談と異国の地に不安を覚える信子だったが、実朝の優しさと生まれて初めての海の匂いに包まれ、次第に心をゆるしていく。

一方の実朝も、信子が教えてくれた和歌の魅力に触れ、武の力ではなく言の葉の力で世を治めたいと願うようになる。

しかし、殺戮さえいとわない醜い権力争いが、ふたりを否応なく悲しみの渦に巻き込んでいく――。

新世代の作家が描く、何度も心を揺さぶられる歴史恋愛小説。


【著者略歴】
佐藤 雫(さとう・しずく)
1988年、香川県生まれ。2019年、「言の葉は、残りて」で第32回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。

みんなの感想まとめ

歴史恋愛小説として、鎌倉幕府の若き将軍・源実朝と摂関家の姫・信子の運命を描いた作品は、哀しみと美しさが交錯する物語です。実朝は武力ではなく「言の葉」の力で世を治めようとする青年であり、和歌を通じて心の...

感想・レビュー・書評

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  •  鎌倉三代将軍・源実朝の理想と現実を、哀しくも美しく描いた歴史ロマンです。歴史小説というよりは、一人の青年の生き様を丁寧に綴った内容で、歴史小説が苦手な方にもおすすめです。

     和歌を愛し、武力ではなく「言の葉」の力で世を治めようと願う青年将軍・実朝と、彼を支える御台・信子の運命が煌めくような筆致です。著者は本作でデビューし、小説すばる新人賞受賞! ひょっとして実朝に恋してる? と思うほど、魅力的な人物造形と描写に感心しました。

     平安初期の「古今和歌集」序文(紀貫之) 〈やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞ なれりける〉が、実朝の理想とするところでした。
     千年も昔から、「伝えたいこと(事=言)は、心を種として、伝える相手の心に蒔かれ、やがて成長し、その葉が生い茂る」と…。和歌の中に、現代に通じる「言葉の力」の原点を見る思いがしました。

     そんな、今の時代を先取りするような感性をもつ実朝の理想は、陰謀蠢く不穏な鎌倉という時代が許さず、実朝の望まなかった熾烈な権力争いに巻き込まれていき…。
     それでも、抗うことのできない現実から逃げず、自身の運命に毅然と対峙する実朝の姿に、涙を禁じえません。単なる〈ひ弱な悲劇の将軍〉ではなく、〈美しい「言の葉」を愛した青年〉なのでした。

     享年28歳の青年将軍。その理想は、800年後の今、叶えられているのでしょうか? 読後、勝手な自己陶酔への没入感覚に陥る(危険な)一冊でした。
       空蝉の世にも似たるか花桜
         咲くと見しまにかつ散りにけり
           (古今和歌集 読み人知らず)

  • 「へたれではない実朝の本当の姿を知ってもらいたい」という作者の狙い通り、源実朝は武家の棟梁のイメージにはない文化的で芯の通った好人物だと感じた。

    初めは難しそうな登場人物欄に辟易したけど、理解してからは物語がおもしろくて没入した。

    存在自体が危うい身内は斬らねばならず、血縁は繋がれば繋がるほど争いのもとになる。
    肉親や友が謀反の疑いという体裁で殺されるやりきれなさ、肉親の情愛がないという孤独感、それが源氏の血だとするなら実朝のように和歌に救いを求めたのもわかる気がする。

    物語だけでなく、この小説が優れているのは歴史上の人物が1人の人間としていきいきと描かれる
    こと。
    特に言葉の陽の力を信じる実朝に対して、陰の力を信じた阿波局の複雑な心境がよくわかる。

    また、一番印象に残ったのは文章の美しさ。
    どうしてこんな文章が書けるんだろうとうっとりしちゃう情景描写で、活字を追うだけでも癒された。長いけど一番好きな箇所↓

    「露の玉はまるで玻璃が砕け散るかのごとく脆い音色を立てては消えていく。一つ一つに見入れば、ある露はさやけき月のように玲瓏な白、ある露は茜雲のように明々と燃え、別の露は紺碧の空のように透き通って青い。そのうちの一つに触れようとした時、さぁん、と風が吹いて、一斉に露の玉が風に舞い上がり、清らかな音色を立てながら色とりどりに煌めいた。この世とは思えぬ美しい光景だった。」(P303)

    くどい情景描写は嫌いだけどこれは美しくて、うわぁ〜ってなりました。
    さっそく佐藤雫さんの他の作品を2つ図書館で予約。(高評価なのに予約少なくて狙い目!)
    惜しむらくは表紙の絵がアニメなこと。上品な和柄が合いそうなのにそれだけ残念。

  • 思わぬ掘り出し物と言ったら著者に失礼かもしれないが、この若さ、しかもデビュー作で、歴史小説のこの完成度にちょっと驚いた。もっとベタな恋物語を想像していたので。正直、既視感は色々あるけれど、実朝と正室の儚い夫婦愛を丁寧に描きつつ、一連の内部抗争など史実も要領良くまとめられていたと思う。何より人物造形が秀逸。頻繁に出てくる実朝“らしい”言の葉「うん」「きぃん」「みだい」が頭に残った。

  • 源実朝。歴史で鎌倉幕府第3代将軍と習っただけで、それ以上のことは知りませんでした。28歳という若さで惨殺されたことも。

    妻 信子の導きで和歌を知り、和歌を愛した実朝。そして、武力ではなく「言の葉」の力で世を治めようと願う。そんな実朝と妻 信子が美しい筆致で描かれていた。

    読み終わって、早速図書館で『金槐和歌集』を借りました。実朝がどんな和歌を作ったのか知りたいと思ったので。

    図書館で目にし、タイトルに引かれて借りて読みました。手元に置いておきたい一冊です。

  • 「言の葉は、残りて」佐藤雫著|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/304181

    和歌の響きが美しい。佐藤雫『言の葉は、残りて』あらすじと感想。|ぶくらぼ。~books laboratory~(2022年9月25日)
    https://books-laboratory.com/satou-sizuku-kotonoha-nokorite/

    第32回小説すばる新人賞受賞『言の葉は、残りて』 刊行記念対談 佐藤 雫×村山由佳
    言の葉は、残りて | 集英社 文芸ステーション(青春と読書 2020年3月号より転載)
    https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/kotonohahanokorite/

    第32回 小説すばる新人賞受賞記念エッセイ受賞作「言の葉は、残りて」 | エッセイ | Book Bang(「青春と読書」2020年1月号掲載)
    https://www.bookbang.jp/review/article/621981

    立原圭子 | GALLERY HOUSE MAYA
    https://www.gallery-h-maya.com/artists/tachiharakeiko/

    言の葉は、残りて/佐藤 雫 | 集英社 ― SHUEISHA ―
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-744342-4
    (単行本)
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771697-9

  • 激乱の世で、変わりゆく実朝と周囲の関係性だが、信子との関係性はずっと穏やかなままであった。本書を読了して、そう感じられた。
    実朝が公暁に斬殺されるという歴史の教科書ではたった一行で表される出来事であるが、それを実朝はどう受け止めたのか、公暁や周囲は…?と考えさせられる。
    本書では、弱々しかった実朝が源氏の血筋であることを受け止め、徐々に強さを見せていき、実に逞しい最期が描かれていた。実朝の最期は元から知っていたが、全く不穏な空気が感じられなかった故、あまりにも突然だったのだなということが伝わってきた。
    なれど、実朝が残した言葉がこうして現世に残されている。波乱の世を生きながらも美しい心を持った彼の言の葉を、一千年という時を経て受け取れることが嬉しいし、神秘的な気持ちになる。


    「言の葉は、残りて。」生きているうちに、たくさん言の葉を紡ぎたいと思った。

  • 実朝と信子のラブストーリーではあるのだが、北条姉妹兄弟など、登場人物の描かれ方がよかった。

  • 言葉で世を治めようとする実朝の思いが詰まった物語。妻・信子との紡ぐ言葉も良かった。綺麗事ではなく、物事を言葉で解決できないことは哀しいとすら思わせる。「知らずに決断することは、知った上で決断することより罪が重いのです」
    言葉は重くも温かくもあり、人の心を動かせる。
    美しいものは残り続けるのだと感じることができる作品です。

  • ・さねともぉ。。。
    ・のぶこぉ。。。
    ・とももりぃ。。。
    ・みなせぇ。。。
    ・やすときぃ。。。

    ・ってなる物語だった。
    ・これだけ壮絶で儚い話が、現実に起こったことが基になっているというのが衝撃。
    ・実朝が生きている間の話は、言葉のマイナスの力の強さを思い知った。
    ・だが、実朝が言葉の力を信じて行動したおかげで、実朝の意志を受け継いだ人間たちが、言葉のプラスの力を信じて世を治めることができたと思う。
    ・テストの勉強でしか覚えなかった人間たちが、生き生きとしている情景が思い浮かんだ。もっとちゃんと歴史勉強しておけばよかった。

  • 実朝と信子の、お互いを敬い慈しみ合う姿が美しく、
    またとてつもなく切ない。

    幼い実朝を由比ヶ浜に連れて行って遊んでくれていた大姫が、実は実朝の中に木曽吉高を見ていて、実朝を『よしたかさま』って呼んでたところはハッとして涙が出た。

    佐藤雫さんの本はまた読みたい。

  • お友達のお勧めの一冊です。史実に忠実なのに、女性の作家さんのためか、繊細な描写が多く読みやすかったです。鎌倉の三代将軍、源実朝と公家の姫、信子との夫婦愛が何とも言えない甘酸っぱさで、とても良くて。また、実朝は、和歌に秀でていて、金槐和歌集が後にまとめられたそうです。

  • 鎌倉殿の13人を見ているひとにおすすめの本として紹介されてるのをみてこれは読まねば!!と手にとった本。登場人物がちょうど今見てる人たちですっと入ってきたのがよかった。歴史に詳しくないのでどれくらい忠実なのかわからないけど、頼朝を尊敬しながらも『言の葉で世を作る』と言う自分の政治を全うしていたのもすごいなと思った。(つい最近ドラマで頼家の振り回された挙句の不憫な死をみたので。)
    個人的には、信子も素敵な女性だったけど水瀬がすき。信子と実朝みたいに重保殿と会えてたらいいよね。公暁は親の仇というよりも実朝への恨みのだけのような気もしたな、、、今の世も大して変わってない。言の葉ですべての人の心を動かせますように。
    この本を読んでから和歌にすごく興味を持ったので色々調べている。おすすめ。

  • 鎌倉幕府三代将軍、源実朝。若くして征夷大将軍につき、若くして暗殺された。日本史の授業でもそのようなことしか触れられない。この作品ではそんな実朝が主である作品である。武力で世を治める時代の中、言の葉の力を信じ続け生きた実朝をぜひこの作品で知ってほしい。

  • 今まで実朝にはあまり良いイメージがなかった。「武から逃げたかっただけじゃ?」「なんでそんなに和歌?」「あっさり前世の話に騙された挙句、港にならない地形でもろい船なんか作っちゃって」とか。でも武に依らない統治を目指し、人によって態度を変えない強さを待ち、当時珍しかったであろう妻onlyっぷりに、真の優しさを持った人だったのかなと思い、好きになりました。
    実朝以外の人についても、人物描写がはっきりしていて面白かったです。
    歴史時代小説には、難しい漢字にも「知ってるよね」的にふりがなが少ないものが多いですが、この本は読み方のみならず、それについても説明的にならずにさりげなく説明してくれていて、分かりやすかったです。歴史的結果が分かっているので、途中から終わってほしくない思いで読みました。
    今、鎌倉はまるで、食べ歩き、インバウンドのエンターテイメントの街のようになっているのが少し残念です。私自身は歴史を感じに行くのが好きなのですが、今度は改めて永福寺跡や鶴岡八幡宮を踏みしめたいと思います。

  • 言の葉で世を治めるという実朝の考えは、力ではなく言葉で解決するという意味で現在にも通ずるところがあるなと思った。
    その点で実朝はちょー賢い
    信子は一生つらい
    実朝死ぬところをもっと時間かけてやってほしかった。

  • かつて存在した歴史上の人物も、こんなふうに葛藤したり苦しんだり時に笑ったりしながら生きていたのかなと考えると少し不思議な気持ちになります。
    権力に翻弄されながらも、自分を持とうと足掻く実朝はなんだかかっこよく見えました。

  • とにかく美しくて、涙が出ます

    史実を考えれば、変えられない行方を

    こうであって欲しいと願わずにはいられないです

    本当に綺麗で、清らかで、壮大で

    言の葉は、残りて

    言の葉の力を信じたくなります

  • ティーンズ小説のようだった。歴史小説らしくないけれど、読みやすい。女性向け。

  • 武力で政を治めた時代を穏やかに、でももの寂しさがずっとほのかに漂う物語でした。
    とても良かったです。

    NHK大河ドラマで鎌倉殿を観ていた方なら、なお一層楽しめるのではないかと思います。
    当時 実朝推しだった私にはかなり心に響いた作品になりました。刺さりすぎて、読み終えるのに時間がかかった!
    また数年後に読み返したいです。
    素敵な物語をありがとうございました!!

  • 「鎌倉殿の13人」ですっかり実朝くんファンになってしまったので、読んでみた。
    もちろん鎌倉殿とは違う描き方をしているのだけど、とてもよかった。

    実朝様とその御台所信子様(ドラマでは千世様)中心のストーリー。

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著者プロフィール

1988年、香川県生まれ。2019年、「言の葉は、残りて」(「海の匂い」改題)で第三十二回小説すばる新人賞を受賞してデビュー

「2023年 『白蕾記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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