累々 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 180
感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087445244

作品紹介・あらすじ

デビュー作『カモフラージュ』を超える衝撃。
たくらみに満ちた、著者の新境地。

本当の私は誰。
結婚、セフレ、パパ活、トラウマ……。不穏さで繋がる全5編。

「1 小夜」
「小夜と今年中に籍を入れたいと思う」。夕食の最中に告げられた、30歳の彼からの味気ないプロポーズ。23歳という自分の年齢が結婚に適しているのかどうか、小夜にはわからなかった。
「2 パンちゃん」
獣医の石川は、去勢手術をするたびに自分のモノが切られる夢を見る。そんなある日、友達以上恋人未満の女性とラブホテルへ行くことになり――。
「3 ユイ」
恋愛シミュレーションゲームをプレイするがごとくパパ活女子との逢瀬を繰り返す星野は、これまで出会った誰とも違う、ある女子大生と出会う。
「4 ちぃ」
美大生の彼女が、才能と人柄にのめり込んだハジメ先輩。すべてを賭けて好きになったその恋の末路は――。
「5 小夜」
誰もがうらやむ幸福な結婚式の、秘密。

【著者プロフィール】
松井玲奈(まつい・れな)
1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市出身。著書に『カモフラージュ』、エッセイ集『ひみつのたべもの』がある。

感想・レビュー・書評

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  • 「松井玲奈が企む、恋愛小説集」。Twitterで評判がよかったので、どんなもんだろうと興味津々で手に取ってみた。
    1話目、マリッジブルーのフリーター・小夜。松井さん、なかなか綺麗な文章で心情描写も丁寧だが、淡々として特別ひっかかることもなくという印象。
    …それは、あくまでも序章に過ぎなかったということを2話目から思い知らされる。
    語り手も代わり、生々しい表現にぎょっとしながらもしっかり翻弄され始める。2話目のセフレ(パンちゃん)、3話目のパパ活(ユイ)と、相手の男を手玉にとるような、縛られたがらない女の子。メリハリの効いた構成も巧く、それぞれの話をじっくり味わっていたところで、ガンと頭を殴られるような衝撃。
    後半からは「!?」の連続だ。4話目、先輩に片想いの女子大生(ちぃ)、最終話は、また小夜。好きになりすぎてみっともなくなっていく、なかなかに醜い心の裏側をさらけ出しつつも、グロくなりすぎない。どんどんページを捲りたくなり、(そして時々は伏線を確認するため後ろに戻ったり)、読み終えたときは軽く脱力。すっかり作家・松井玲奈の虜になってしまった。連作短編としても出色の出来だと思う。
    解説が、ファンであるくどうれいんだというのも購入の理由だったが、これまた作品の魅力を十二分に引き出す内容で、バッチリな人選であった。
    作家としてのポテンシャルに末恐ろしさを感じます(褒め言葉!!)。これからが本当に楽しみ。

  • 前作の「カモフラージュ」が好みだったので!プロポーズを受けた女性、パパ活をしている女性など、色んな顔を持つ女性が「生きている」のを感じる小説でした。帯には「恋愛小説集」とありましたが、恋愛という枠には当てはまらない感情と関係性と向き合う物語でした。

    全体を通してずっとどこか薄暗くて、でも温かさはきちんとあって、不思議な気持ちになりつつ読み進めました。中盤で、なるほど!となる展開もあり、人間って色んな面があるよなぁと多角的な視点で見られるお話でした。ただ、最後がちょっとドラマチック過ぎるというか、今までの流れを踏まえると綺麗過ぎたなと感じましたが、今作も面白かったです…!

  • 【書誌情報】
    『累々』
    著者:松井玲奈
    出版社:集英社
    発売日:2023年5月19日
    定価:594円(税込)
    版型:文庫判/224ページ
    ISBN:978-4-08-744524-4

     デビュー作『カモフラージュ』を超える衝撃。たくらみに満ちた、著者の新境地。
     本当の私は誰。結婚、セフレ、パパ活、トラウマ……。不穏さで繋がる全5編。
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents_amp.html?isbn=978-4-08-744524-4

    【メモ】
    ・短いインタビュー(2021.03.22)
    https://book.asahi.com/article/14279112 

  • 松井玲奈ちゃん。
    アイドル時代のことはよく知らないんですが、女優さんとして何度かお見かけしていて、好きなんですよねー。あの感じ。
    内に秘めたものがあるあの感じが好きなんです。

    そんな松井玲奈ちゃんの作品。
    小説書かれるとは知らなかった。
    (余談ですが、子どもを連れて本屋に行き手に取ったとき、帯にセフレやらパパ活やら書いてあって、ちょっとコソコソしちゃったのは内緒)

    あまり芸能人が書いた作品ってものは読まないんです。
    ちょっと穿った見方しちゃったりして。

    今回はただ松井玲奈ちゃんの雰囲気が好きで購入に至ったんですが…
    面白かったよー!よかったよー!

    あの本の薄さに、幸せ感と薄ら恐ろしい感がみっしり詰まってる!

    最初の一編目を読んだときは、なんてことない、ただ結婚に二の足ふんでる女性の話として読んだんですがね。
    なんてこと無いどこにでもいる女性。
    二編目から、ですよ!本番は!
    …………ん?石川…?あれ?からはじまり、もしやこれ…と思い出してからの、三編目でうわーーー!!ですよ!
    そこからはどこがどう繋がるのか楽しみになり。
    美大時代の話で、あれ?別人になった?って一瞬思わせてからの、やっぱり小夜ちゃんじゃんー!
    最後の結婚式が新郎側の目線ってのが秀逸。怖い怖い。幸せのほほんとしてる新郎の裏に流れてる周りの人と小夜ちゃんの空気感がすげぇ!
    こうなるともう一編目の二の足が別の意味を持ってきますよね。
    もっかい読んじゃったもの!

    すげぇ物書くな!松井玲奈!

    最後の『小夜』は深読み上等、どんだけでも掘り下げまくることができるなぁ。
    よくある短編集かと思ってたので、意表つかれて面白かったです。

    ああ、怖い怖い。




    @手持ち本

  • ある日、たまたまNHKの大河ドラマを見た。
    『どうする家康』という番組。

    元嵐の松本潤さんが演じる徳川家康が、正室とは別の女性との間に子どもができたらしい、そんな場面だった。
    その別の女性役が、元SKE48の松井玲奈さんだった。

    その演技を観て、気になった。
    あれ?この人、確かアイドルグループにいた人。
    松井さんて確か2人いて…と思いながら、
    ググって、辿りついたのがこの作品でした。

    読んでいく中で、確か3章くらいで、、
    あれ?コレって?もしかして?って思った。
    小説は、5章立てになっており、1〜4章までそれぞれ違う女性の名前の題名が付けられている。時間軸も違う。
    4章までの女性と関わる人々が5章で収斂されている。
    数少ない小説体験ではあるが、今までこんな形で書かれた小説に出会ったことがなかった。


    ちなみに、
    著者紹介には、役者、作家。と書かれていた。



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著者プロフィール

役者。1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市出身。著書に小説『カモフラージュ』『累々』(ともに集英社)がある。


「2021年 『ひみつのたべもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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