黄金旅程 (集英社文庫(日本))

  • 集英社 (2024年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784087446906

作品紹介・あらすじ

直木賞受賞第一作。

装蹄師の平野敬は北海道の浦河で養老牧場を営んでいる。牧場は幼馴染の和泉亮介の両親が所有していたものだったが、騎手だった亮介が覚せい剤所持で刑務所に入ったこともあり譲り受けた。敬が注目するのは栗木牧場生産の尾花栗毛馬・エゴンウレア。以前装蹄したことがあり、その筋肉に触れた瞬間、超一流の資質を秘めた馬だと確信していた。だが気性が荒く、プライドも高い馬で調教に手を焼いていて、今まで勝ち鞍がない。その馬主と競馬場で会った際、レースで突然馬が興奮するという不自然な現象に遭遇する。また、敬は出所して無職だった亮介に、本来の力を取り戻すべくエゴンの乗り役になるよう勧める。その後、レースでの不自然な現象は厩務員の一人が犬笛を使って八百長に加担していたことが判明。敬は裏で糸を引くヤクザの尾行を始めるが気付かれ、拉致され殺されそうになるも、一命を取り留める。様々なトラブルが起こる中、エゴンが出馬するレースの日も近づき、亮介による最後の調教も終わった。エゴンに人生を託した人々の想いは、二勝馬脱却への奇跡を呼び起こせるのか――。

【著者プロフィール】
馳星周 (はせ・せいしゅう)
1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。96年デビュー作『不夜城』で第18回吉川英治文学新人賞、98年『鎮魂歌』で第51回日本推理作家協会賞、99年『漂流街』で第1回大藪春彦賞、2020年『少年と犬』で第163回直木賞を受賞。他の著書に『約束の地で』『雪炎』『ソウルメイト』『神奈備』『雨降る森の犬』ほか多数。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

競馬の舞台裏と人々の夢が交錯する物語で、装蹄師の平野敬が主人公。北海道の浦河で、幼馴染の亮介と共に、勝ちに恵まれないが超一流の資質を秘めた馬・エゴンウレアを育てる姿が描かれています。物語にはミステリー...

感想・レビュー・書評

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  • 2001年12月17日に発売された週刊Gallopの真ん中見開き頁の写真についたキャプションは“黄金旅程、完!”
    前日に香港ヴァーズを勝って遂にGⅠのタイトルを手にしたステイゴールド。その名に「黄金旅程」と漢字を当てる香港ジョッキークラブのセンスの良さと、それを使ってその競走馬人生と昨日の偉業を讃える編集部の発想にとても感じ入ったのを今でも鮮明に覚えている。(実際には、彼の旅路は種牡馬としても続き、この時点では“第一部、完”が正しかったのだが)

    そのステイゴールドをモデルにしたエゴンウレアというサラブレッドと日高で馬産や競馬に関わる人々の物語。
    ステイゴールドの猛々しさを表すエピソードも交えながら語られる話には、現役時代の走りとレースを知るだけに、殊更面白く読むことができた。

    語りの中心は、装蹄師の傍ら養老牧場を営む平野敬。それに、彼の幼馴染で騎手として将来を嘱望されながら道を踏み外し故郷に戻って来た和泉亮介、門別競馬場の獣医・藤澤敬子が絡む。加えて、師匠である装蹄師の夫妻、馬主、調教師、騎手、厩務員、生産牧場の親子、育成牧場の社長・スタッフ…。
    地方競馬を支えたり、胆振のグループを相手に日高からGⅠ馬を送り出そうと夢見て、日々を積み重ねる人々に胸がキュンとする。
    狙うレースが定まり、まして鞍上にリーディングジョッキーを迎えるとなれば、レースはずっと先なのに今から胸がドキドキしてくる気持ちは、零細な一口会員でしかない私でもよく分かる。

    こうした話には珍しく、人の都合で馬を走らせる競馬の在り様について再三に亘って触れられる。
    とねっこに事故で死なれた牧場の子に『競馬なんて、なくなればいいのに』と語らせる場面もあるが、私のように土日に馬が走ることを見て心の安寧を保ってきた者からすると、競馬がなくなるととても困る。
    サラブレッドが競馬のために生み出される経済動物であるという側面を持つ以上、その台詞はいささか感傷的に過ぎるという気はするが、ここまでお世話になっては、一部を除けば哀れな引退後の馬の行く末について、これもまた作中にあった『自分の責任を果たし、競馬と共に生きていく』という言葉は身に沁みた。
    なので『月に千円でいいから引退馬協会かどこかに寄付をすればいい。それで、一頭の馬が救われる』とか言われると、馬券に回すお金から少しは工面しようと思ったのだった。

    後半、八百長を巡ってハードボイルド調の話になってどうなることかと思ったが、その後にくる敬子との絡みも含めて蛇足気味。
    確かに八百長があったことが発覚すれば競馬のイメージが悪くなるので『永遠に口をつぐむ』という気持ちは分かるが、あの解決法ではちょっと残念。もっとスキッと落とし前をつけて欲しかった。
    描かれた八百長の方法も、本命馬がコケたからといって勝つ馬が分かるわけでもないので、割に合わないのではないかな。

    終章、エゴンウレアがスタッドインした描写には、24年前に日高の牧場巡りの時に見た、ガスに覆われたイーストスタッドの景色を思い出した。(ステイゴールドは交渉決裂して日高には来なかったけどね)

  • 馳星周『黄金旅程』集英社文庫。

    馬の装蹄師を主人公にした競馬小説。ミステリー・サスペンス要素もあり、ディック・フランシスの競馬ミステリーのような趣きもある。しかし、あくまでもミステリー・サスペンスの要素は味付け程度で、気性が荒いが故に勝ちに恵まれない超一流の資質を持つサラブレッドをGIレースで勝たせようとする人びとの夢を描いた物語なのである。

    感動の結末。まさか競馬小説で感涙するとは予想もしなかった。


    かつて騎手を目指しながら挫折し、装蹄師の道に進んだ平野敬は北海道の浦河で養老牧場を営んでいた。その牧場は幼馴染の和泉亮介の両親が所有していたが、浦河出身の天才騎手だった亮介が覚醒剤所持で刑務所に収監されたこともあり、敬が譲り受けることになった。

    過去から多くのサラブレッドを育て来た浦河の牧場には、GIレースで勝てる馬が居なかったのだが、敬は以前、装蹄した栗木牧場生産の尾花栗毛馬のエゴンウレアにその可能性を見出していた。敬がエゴンウレアの筋肉に触れた瞬間に超一流の資質を秘めた馬であることを確信したのだが、余りにも気性が荒い上にプライドも高く、調教に手を焼き、これまで勝ち鞍が無かったのだ。

    敬は、刑務所から出所したばかりで、借金を抱える幼馴染の亮介にエゴンウレアの調教を任せるよう馬主に薦める。

    そんな中、敬がその馬主と競馬場で会った際、レースで馬が突然興奮し、暴れ出すという不思議な出来事に遭遇する。敬と付き合い始めたばかりの獣医師の藤澤敬子がその馬の血液検査をしたが、薬物などは検出されなかった。その後、敬子は、1人の厩務員のが犬笛で馬を操り、興奮させていたことを知る。その厩務員は八百長に加担し、ヤクザからの借金を帳消しにしようとしていたのだ。敬子からその事実を聞いた敬は裏で糸を引くヤクザの尾行を始めるが、逆に気付かれて拉致され、殺されそうになる。

    様々なトラブルが起きる中、エゴンウレアが出馬するレースの日も近付き、亮介による最後の調教も終わる。エゴンウレアに人生を託した浦河の人々の想いで奇跡を呼び起こすことが出来るのか……

    本体価格1,050円
    ★★★★★

  • 終盤にエゴンウレア黄金旅程とこで声が出てあーなるほど。馳星周さんの地元なんだ お店とか距離感が詳しくてって、競馬知らなくてものめり込める。ナイスネイチャかと思ったらステイゴールドかい。登場した亮介がヘタレ過ぎてなんだかなあーだったのが成長する姿が良過ぎた、なんかいい奴じゃんかって。後半暴力団に拉致されたのが自分には出来ない無理だ、あそこで天変地異が起きて暴力団が死ぬのは無情かな 馳星周さんバイオレンスは避けてるが今回のは守備範囲。

  • サラブレッドの産地、関係者たちの夢を描いた感動長編。競馬の難しさ、牧場経営の大変さを、一般の人や後世に語ってくれる、貴重な北海道本でもある。馳さん初めての馬の本。後味も良い。明日からまた頑張ろう。

  • 競馬好きな私にとってとても興味深くよませてもらった。
    印象にに残った言葉
    競馬はただの博打ではないのだ。多くのファンが投じるお金で、人間が作り出したサラブレッドという生きものを生かし続けるという側面がある。

    G1レースもはじまり、これから盛り上がっていく競馬、しばらくはステイゴールド系の馬券を買ってみよう。血統好きなので!

  • ひさしぶりの馳星周。

    牧場を譲り受け、養老牧場を営む装蹄師の平野敬。
    敬の幼馴染でかつて優秀なジョッキーだったものの、薬物問題を起こし服役していた亮介。
    実力はありながらも、G1では勝てない、シルバーコレクター『エゴンウレア』。

    敬の助けを得て、『エゴンウレア』の乗り役として、再起していく亮介。
    『エゴンウレア』は…

    『エゴンウレア』が勝つ。
    『エゴンウレア』の子どもたちが勝つ。
    想像はできた。
    おもしろかったんだが…

    敬の養老牧場はどうなったんだろうか…
    勝てない『エゴンウレア』と勝てない牡馬のいく末の養老牧場がセットだと…
    『エゴンウレア』はG I馬となり、種牡馬になりえたのだが。

    何か物足りない終わり方。
    ちょっと残念。おもしろかっただけに。



  •  2026年の最初の一冊は、馳星周さんの『黄金旅程』でした。
     過去のブクログのレビューで「私の趣味は読書と将棋です」と書いたことがありますが、競馬も大切な趣味の一つです。きっかけは30年以上前、函館旅行の際に何気なく立ち寄った函館競馬場のパドックで、間近に見た競走馬の美しさとカッコ良さに強く心を奪われたことでした。
     本作は、馳星周さんが愛した名馬「ステイゴールド」をモデルにした物語です。気性が荒く、誇り高く、卓越した能力を持ちながらもなかなか結果に恵まれなかったステイゴールドが、引退レースとなった香港の国際G1で劇的な逆転勝利を収めた姿は、今も多くのファンの心に残っています。
     香港での出走時に使われた漢字表記「黄金旅程」が、本書のタイトルです。物語の中では、同じ意味を持つバスク語の名前「エゴンウレア」として描かれています。
     そして驚いたことに、明後日中山競馬場で行われるフェアリーステークスに「エゴンウレア」という馬が出走します。血統を見ると、母馬の父がステイゴールド。あまりの偶然に思わず声が出ました。これは応援せずにはいられません。
     エゴンウレアをはじめ、サラブレッドとそれを愛する人々の熱い想いがひしひしと伝わってくる一冊で、読んでいる時間はとても楽しかったです。これからは、今までとは少し違った視点で競馬を楽しめそうです。

  • 一頭のサラブレッドにかける思い。
    競走馬への深い愛情溢れる物語。

  • 今回は人間ドラマ的要素多め

  • 趣味で競馬をやっているが、このような裏方にスポットを当てた世界を覗き見るのは初めて。エゴンウレアもそうだが、一頭の競走馬にこれほどまでに多くの人とその想いがかかっているのかと思うと、熱くなるものがあった。

  • 久々に、またしばらくして再読したいと思う、面白い小説に出会えた。

    人間サイドからの身勝手な話ではあるが、競走馬は色んな人の思いや願いを乗せて走る。その罪深さについては、筆者も作中で何度も言及している。

    その走りで人は喜んだり、胸を熱くしたり、明日への活力を得たり、また、人生を変えるきっかけを得ることもある。もちろん、逆もまた然り。

    馬の走りに思いを乗せる人間の熱さ、ピュアさ、そうした、どうして競馬が面白いのか、どうしてファンたちが競馬に魅了されるのか、というひとつの答えのようなものが本書には描かれており、たいへん面白い作品でした。

    主人公に「主人公感」を与えるためにヤクザとの絡みがあったり、美人とのセックスがあったりと、そこは蛇足かなとは思いました。

    しかし全体的にはすごく良かったので星5つです。

  • 競馬のことは全然知らないけど、凄く面白かった。
    エゴン、面白すぎる。

    「普通の人だけど、悪いヤツらとも渡り合ってなんとかなっちゃうカッコいい人だからエロイ女がほっとかない」っていう感じはこの話には要らなかったな…
    他は凄く良かった。

    「黄金の旅路はまだはじまったばかりだ」

  • やー、面白かった。

    年末から競馬ブームが来てるのもあり、題材が興味ありありなのもあり。興奮冷めやらぬというところ。するすると流れるような展開で。有明なれど初めて氏の著作を読んだけどさすがの一言。

    勝ちきれない馬と煮え切らない人との対比が本当に上手く流れを作っていて、クライマックスは読んでいて鼻息荒く盛り上がった。

    ちと強引すぎる展開もあるにはあったが、気にせず没頭できる物語だった。

    ハードボイルド作家の印象なので、得意の分野のも読んでみようかなぁ。

  • 北海道の日高地方から出た気性が超荒くて、2着ホルダーのサラブレッドとらその馬に翻弄される人たちの物語。
    感動的なおもしろさ。

  • ロイヤルファミリーよりは、ファンタジー感の強いエピソードがあり、また家族と言うよりは、仲間たちの物語と言う感じでした。
    1頭の馬を中心とした物語と言う感じで、競馬が好きな方は楽しめると思います。

  • 競走馬ステイゴールドを題材にした小説。競馬のロマンやそれに関わる人々の熱意で胸が熱くなる。名作

  • 実に面白い。
    読むほどにのめり込む。
    勝負の結果が気になり、じっくりと読まれへん。思わず飛ばし読みや。
    流石の筆致やねえ。

  • 競馬の存在意義とは?
    ストーリーじたいオーソドックスだが色々考えさせられる

  • 北海道浦河で装蹄師をしながら種牡馬としても引退した馬が余生を過ごす養老牧場を営む平野敬は幼馴染の元中央騎手和泉亮介と共に超一流の競走馬であるが気性が荒く一着になれない競走馬エゴンウレアを重賞に勝たせる夢を見る。地元の夢を載乗せたエゴンウレアは中日新聞杯からG1、世界の舞台へ。名前の通り黄金旅程を進む。
    スピード感、展開力、臨場感に結末は鳥肌が止まりませんでした。実在の競走馬ステイゴールドがモデル。

  • 昔競馬のテレビゲームをやっていたこともあり、購入。

    面白くて一気に読んでしまった。

    気性が荒くなかなか本気を出さないエゴンウレア。
    だけども、刑務所から出所した亮介、主人公の敬、そして「地元からG1馬を」と他の牧場や競馬場関係者達の熱い想いや努力によって、エゴンウレアが再び輝く姿は胸を打たれるものがあった。

    敬はもともと騎手の夢があったが、装蹄師になり、亮介はトップジョッキーから、トレーニングセンターで調教師の調教をする際の馬乗りに。2人とも夢を諦めざるを得ない立場になって、第二の夢を見つけて、それを実現させる姿も、「自分も今後新しい目標ができて、それに向かって突き進んでいくことがあるかも知れない」ということを感じさせた。

    あとは、北海道の地域性とか、のどかな風景が自然と浮かぶような文章で、来年の夏に北海道にいって、牧場を巡ろうと思った。良い本だった。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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