銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に (集英社文庫(日本))

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  • 集英社 (2024年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784087446944

作品紹介・あらすじ

「こんなホテル、あったらいいな」が詰まってます!

銀河ホテルの一角にある手紙室。
好きな色のインクで、思い思いの言葉を綴る。
その瞬間、あなたはほんとうの自分と出会う。

南軽井沢の銀河ホテル。
イギリス風の瀟洒な洋館の一角に、「手紙室」がある。
室長の苅部文彦は、このホテルに居候する風変わりな男。
彼の手紙ワークショップを受けると、なぜか心の奥のほんとうの気持ちが見えてくる。
娘家族と最後の思い出作りにやってきた老婦人、秘密を抱えたまま仲良し三人組で卒業旅行にきた女子大生――銀河ホテルを訪れたお客さんが、手紙を書くことで人生と向き合う感動作。

みんなの感想まとめ

心の奥にある本当の気持ちに向き合うことがテーマの作品で、軽井沢の銀河ホテルにある「手紙室」を舞台にした三つの物語が描かれています。登場人物たちはそれぞれ異なる背景を持ち、手紙を書くことで自分自身と対話...

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、最後に『手紙』を書いたのがいつのことだったか覚えているでしょうか?

    2003年に44億6,000万枚発行されてピークを作った年賀状。2025年には10億7,000万枚と大きく減少したことがニュースになりました。メール、SNSの普及という中で、『紙』を前提にしたさまざまな文化が消えつつあるのが現代社会です。

    とは言え年賀状は、書き続けている方もいらっしゃるでしょうし、やめた方もいつが最後ということはハッキリしていると思います。一方で、『手紙』はどうでしょうか?手書きで便箋に文を綴って、封筒に入れ切手を貼って投函する…。残念ながら私には『手紙』を書いた記憶はあってもそれがいつかを特定することは困難です。では、そんな私たちが敢えて『手紙』を書く場合、そこにはどのような思いが湧き上がるのでしょうか?

    さてここに、宿泊したホテルの『手紙室』を訪れた人たちを描く物語があります。『すごい数のインクと、便箋が用意』されているのに思わず興奮してしまう主人公を描くこの作品。『発送しない手紙を書いても良い』と説明される主人公たちを描くこの作品。そしてそれは、『書いているうちに、書く人の気持ちも変わる』という『手紙』を書くことの意味を思う物語です。

    『終わった…身体がゆらりと揺れ、落ちる、と思った』と『夜の新宿駅のホーム』で思う中に『目の前が真っ白にな』ったのは主人公の上原旬平(うえはら しゅんぺい)。
    『ああ、目が覚めましたね』と『部屋にはいってきた看護師らしき女性』に『ええと、僕は…。何があったんでしょうか?』と訊く上原に『新宿駅で倒れられたんですよ。それで、線路に落ちたんです』と語りはじめた看護師は上原が運び込まれるまでの経緯を説明します。やがて看護師が部屋を出て行き、一人になった上原は『大学を卒業し、いまの会社に就職して一年数ヶ月。建築資材を扱うメーカーの営業職で、入社したときから激務が続き、同期はひとり、ふたりと抜けていった』という今までを思います。『疲労困憊』で『眠れないし、食欲もない。顔色はいつも悪く、体重も減った』という上原は『若くして死んだ父のことを思い出』します。『もともと身体が弱く』、上原が『五歳のときに死んだ』という父親は、一族が『軽井沢で』経営している『小さなホテル』で働いていました。そんな父親のことを考えていると『意識が戻ったみたいですね』と入ってきた医師はこれまでの状況を訊いてきます。『週の半分は深夜まで会社にいて…』と説明する上原に『しかし、良かった。まあ、今回はちがうだろうとは思ってたんですけど…』と、『電車が来ていないときに落ちて』いることで『飛びこみ自殺』ではないと判断していたことを説明します。そんな中、ふと会社のことを思い出した上原。『会社』の話をするとあきれた顔をする医師は『その状態でお仕事に行ってもねえ』と哀れむように話す一方で家族には連絡した旨説明します。そして、医師が出て行った後、課長に『事情を説明し、明日は休みますと打って、スマホを閉じ』た上原。
    場面は変わり、翌朝目覚めると『目が覚めたのね、良かった』とそこに母親の姿があり驚く上原。就活がうまくいかないなか、『うちのホテルで働けば』と言ってくれたのを振り切って『いまの会社に就職した』という上原。母親は上原が勤める会社が『かなりブラック』であることを調べたことを伝えると、『倒れるまで体調が悪くなるような会社はどうなの?』と聞いてきます。そんな時『枕元のスマホが鳴』り、それは課長からでした。『大きなため息と、明日は来られるんだよね』と言い、検査の話をすると『いい加減にしろ』と怒鳴る課長。電話を終えた後、話が聞こえていた母親に『もう辞めた方がいいんじやないの、その会社』と言われた上原…。
    再度場面は変わり、さらに休む必要がでた上原は課長にメールし『まんじりともしないまま朝に』なります。しかし、『会社からのメールも、電話も』入りません。再び目を開けた時、そこには『同僚の筧』の姿がありました。そんな筧は、『会社、潰れました』と、全員が『解雇』された事実を説明します。『転職活動をするしかない』と言う筧ですが『もうあの会社に行かなくていい』と『晴れ晴れとした顔』で語ります。
    三度場面は変わり、『検査がすべて終わり』退院した上原が会社に赴くと、筧に手伝ってもらって『荷物の整理』をします。これからどうするかという話になる中で『実は僕、軽井沢出身なんです。実家がホテルを経営してて…』と話題にした上原は、『古い小さなホテルなんですが…。もし良かったらいつか行ってみてください。銀河ホテルっていうんです』と説明します。そして、数日後、抜糸を終えた上原は『母に連絡し、会社が潰れたのでとりあえず軽井沢に帰る、と告げ』ます。『いったん休憩し、人生を見直すべきかもしれない』と思う上原。そんな上原が実家の『銀河ホテル』で働き始める先の物語が描かれていきます…という冒頭の短編〈第一話 夜の沼の深い色〉。『銀河ホテル』で働く側の視点からスタートし、シリーズの起点を見事に形作る好編でした。

    唐突ですが、さてさてのレビューは、ご紹介する作品の冒頭導入部をダイジェストにしてお送りするのが定番です。その後に、本の内容紹介を載せるのも定番です。取り敢えずいつも通り内容紹介を続けます。

     “南軽井沢の銀河ホテル。イギリス風の瀟洒な洋館の一角に、「手紙室」がある。室長の苅部文彦は、このホテルに居候する風変わりな男。彼の手紙ワークショップを受けると、なぜか心の奥のほんとうの気持ちが見えてくる。娘家族と最後の思い出作りにやってきた老婦人、秘密を抱えたまま仲良し三人組で卒業旅行にきた女子大生 ー 銀河ホテルを訪れたお客さんが、好きな色のインクで、思い思いの言葉を綴る。手紙を書くことで己の人生を見つめ直し、人生と向き合う感動のシリーズ第1作!”

    この作品を未読の方にはあれ?という思いが沸かれたかと思います。冒頭のダイジェストの主人公は上原旬平であり、彼がブラックな会社を辞めたところまでを記しています。それに対して内容紹介では、苅部文彦(かるべ ふみひこ)という人物の名前が登場しますが、一方で上原という名前は一度も登場しません。これは奇妙です。基本パターンを崩さずにレビューを書いてきた私にとってこれは初めての体験です。今回わざわざ補足を入れることにしたのは、この奇妙な不一致の気持ち悪さに自分でも耐えられなくなったからですが考え方としてはこのようになります。

     ① この作品は『銀河ホテル』を舞台にした物語です

     ② 各短編には苅部文彦が担当する『手紙室』が登場し、それぞれの短編主人公たちはその場を訪れます

     ③〈第一話〉の上原は『銀河ホテル』で働く側に回りますが、一方で、主人公として他の短編の主人公同様に『手紙室』を訪れます

    おわかりいただけたでしょうか?内容紹介には何故か〈第一話〉がスルーされているためにこのような不一致が生じたことがおわかりいただけたかと思います。物語の起点となる〈第一話〉にも少しぐらい触れていただいてもいいように思います。いずれにしてもこの補足で整理ができたと思いますので、改めて内容を見ていきたいと思います。せっかくなので、上記で記した三つの点に沿って進めていきましょう。

    まず一つ目として、この作品の書名にもなっている『銀河ホテル』についてまとめておきましょう。

     ● 『銀河ホテル』ってどんなホテル?
      ・『南軽井沢と呼ばれるエリアにある』
      ・『部屋数は三十と小さいが、建物は凝っている。レンガと木材を組み合わせた洋館で、もとは昭和初期に富豪が別荘として建てたもの』
      ・『戦後、空き家になっていたのを』上原の『曽祖父にあたる上原周造が買い取り、小さなホテルに改装した』
      ・『一階に広いラウンジ、パブ、ダイニングルームを設置』
      ・『中庭ももとの造りを生かしてイングリッシュガーデン風の植栽が施された』
      ・『部屋ごとに壁がカラフルな色に塗られている』

    いかがでしょうか?上記で上原が同僚の筧に自分の実家が『古くて小さなホテル』を経営していると説明した通りの印象だと思いますが、一方で雰囲気感にあふれた建物の光景が強く思い浮かびます。場所が『軽井沢』ということもあってとても魅力的なホテルという気がします。冒頭の短編のはじまりこそ、上原が働く東京が舞台となりますが、上原がホテルで働くようになって以降、他の二編含めて物語の舞台は『銀河ホテル』に移ります。

    次に二つ目は、『手紙室』です。物語の中で、クライマックス的な場所として登場するのが『銀河ホテル』の中にある『手紙室』であり、苅部文彦の存在です。これを一発でわかりやすく説明すると、ほしおさなえさんの他の作品と対比、こんな感じでしょうか?

     ・主人公に”起点・きっかけ”を与える場所
       「活版印刷三日月堂」→ “三日月堂”
       「銀河ホテル」→ “手紙室”

     ・”起点・きっかけ”を演出する役割の人物
       「活版印刷三日月堂」→ “弓子”
       「銀河ホテル」→ “苅部文彦”

    わかりやすいですね(笑)。もちろん、「活版印刷三日月堂」を既読であることが条件ですが、これでこの「銀河ホテル」の物語がスーッと入ってくる整理ができたと思います。自画自賛(笑)。そんな中で大切なのはこの作品が、”起点・きっかけもの”であるという点です。青山美智子さん「お探しものは図書室まで」に代表されるこの系列の作品は、何かに思い悩む主人公が、何かしら”起点・きっかけ”を得た先に再び顔を上げ前を向いて歩き出すという清々しさに満ち溢れた結末が特徴です。この作品で、そんな大切な場所となるのが『手紙室』です。もう少し触れておきましょう。

     ● 『手紙室』ってどんな場所?
      ・『ダイニングルームとは反対側。蔵書室のとなりにある』
      ・『すごい数のインクと、便箋が用意』されている
      ・『予約制で「手紙ワークショップ」というものが開催されている』
      ・『発送しない手紙を書いても良い』=『もう会うことのできない人、過去や未来の自分などに手紙を書くということ』
      ・『手紙は封をした状態で預かって、銀河ホテルがあるかぎり、ここで保管される』
      ・『申し出があれば後日訪れたときに手紙を受け取ることができる』

    はい、おおよそのイメージが掴めたかと思います。そして、この『手紙室』の担当が『アクティビティ部門の長』でもある苅部文彦という人物なのです。はい、これで内容紹介のイメージが掴めたかと思います。物語のクライマックスは、苅部文彦の”手紙ワークショップを受けると、なぜか心の奥のほんとうの気持ちが見えてくる”という点にあり、そこにはそれぞれの短編で主人公となる人物の人生の物語がたっぷりと描かれていくのです。

    では、最後に三つ目です。この作品は三つの短編が連作短編を構成しています。三つの短編を貫くのが『銀河ホテル』であり『手紙室』であることは上記した通りですが、それぞれの短編には、それぞれ主人公となる人物が別に登場します。〈第一話〉は上記した通り、上原旬平がその役を務めます。他の二編も簡単に見ておきましょう。

     ・〈第二話 ラクダと小鳥と犬とネズミと〉
      → 『今度うちの家族といっしょに銀河ホテルに泊まらない?』と『娘の涼香』に誘われた『施設にはいって一年』という『わたし』が主人公

     ・〈第三話 また虹がかかる日に〉
      → 『大学でいちばん親しかった三人組』、『卒論が終わったらここに泊まる、とずっと楽しみにしてきた』という大石穂乃香が主人公

    〈第一話〉のみ男性、他の二編は女性が主人公となりますが、年齢、境遇はそれぞれに異なります。そんな主人公たちはさまざまな悩みの中に今を生きています。〈第一話〉の上原は『ブラック企業』に勤める中に身体を壊し、結果として逃げるように故郷の実家へと戻りました。五歳で死別した父親が残した『大事なものを見つけるんだ』という言葉を噛み締める上原。〈第二話〉の『わたし』は、『施設にはいって一年』という中に『別れは悲しい。これからは別れていくばかりなのだから、もうあたらしい人と知り合わなくていい』という思いに囚われる日々の中、家族との『銀河ホテル』への旅に同行します。そして、〈第三話〉の穂乃香は『卒論が終わったらここに泊まる』と『大学でいちばん親しかった三人組』と『銀河ホテル』へと赴きます。しかし、そんな穂乃香は他の二人には言いづらい秘密を抱えています。そうです。三人はそれぞれに何かしらの悩みを抱えながら生きているのです。性別も年齢も境遇も異なる三人の悩みは当然に三者三様です。そんな彼らが行き着いた先である『手紙室』。『すごい数のインクと、便箋が用意』されているという『手紙室』に赴いた彼らは、苅部文彦の魅力的なリードによって自分自身と見つめる時間を持ちます。そんな彼らが行き着く先に見るもの、感じるもの、そして書き留めるものがしっとりと描かれていくこの作品には、”起点・きっかけ”を得た先に再び前を向いて歩き出していく人たちの心の機微を優しく綴りあげる印象深い物語が描かれていました。

     『なにもかも思い通りになるわけじゃない。人生にはいろいろなことが起こる。でも、いつだって自分らしく生きることはできる』。

    そんな思いに気づいていく主人公たちの心の動きを具に描いていくこの作品。そこには、まるでファンタジーのような雰囲気感の中に、主人公たちのリアルな心の内が描き出されていました。『銀河ホテル』の雰囲気感豊かな描写に行ってみたくなるこの作品。『手紙室』という”起点・きっかけ”を与える舞台の上手さを思うこの作品。

    『手紙』を書くということの意味を改めて考えさせてもくれる素晴らしい作品でした。

  • この作者さんは「言葉の園のお菓子番」を追っている途中だが、またまた別の本に行ってみる。

    軽井沢にある古くて小さいが趣きのある「銀河ホテル」を舞台にした3つのお話。
    第一話は、親の庇護から抜け出したくて就職したものの、ブラック企業で体を壊し会社も倒産、実家のホテルに戻りそこで働き出す青年の話。こういう金持ちのボンボンのいじいじした話は好きでない。
    第二話は、夫を亡くし介護付き施設で暮らすおばあちゃんの話。かつての思い出がある銀河ホテルに娘の家族と出掛けることになった老婆の、久し振りの旅行に華やぐ気持ちと体力的に皆の足を引っ張ってはいけないという遠慮が綯い交ぜになった心情が、自分の親だけでなく自らもそういう年齢に近づいた境遇にはなかなか沁みる話。この話が一番良かった。
    第三話は、それぞれ秘密を抱えたまま卒業旅行にやってきた女子大生3人組の話。最後はうまいこと収まって良かったが、そこまでは思わせ振りでちょっと煮え切らず。

    ホテルの手紙室で行われるワークショップとそれを運営する苅部氏が良いアクセント。1,000色あるというインクの描写がなかなか壮観。
    『するする~って書けて全然疲れないし、書いていて気持ちいい』ということだが、我が身を思うと、悪筆が邪魔をして、やってみたいという気にならないのが残念。

  • この本の帯の
    「銀河ホテルの一角にある手紙室
    好きな色のインクで思い思いの言葉を綴る。
    その瞬間、あなたはほんとうの自分と出会う。」
    という言葉に惹かれて購入。

    軽井沢にある老舗ホテルの銀河ホテル。
    素敵な佇まいや、行き届いたサービス。美しい調度品に美味しい紅茶。
    そして、様々なアクティビティ。
    そのアクティビティの1つに手紙室で手紙を書くことというのがある。

    誰に宛てても良い。出せなくても良い。
    千色もあるインクの中から選んだ色で手紙を書いてみる。手助けをしてくれるのはこのホテルに居候する風変わりな男。

    そして、参加するのは仕事に疲れた男性。
    子育てや介護を終えて、施設に入り静かに暮らす女性。
    人生の岐路に立ち、漠然としたモヤモヤを抱える女性。

    それぞれが「手紙を書くこと」に向き合うことで
    自分と対話し、素直になることが出来る。
    そんな優しい3つのお話。

    2つ目の「ラクダと小鳥と犬とネズミと」は
    人生の終末を見据え、じっと生きていた女性の気持ちがジワジワと確かに湧き出てくるようで静かに泣いてしまった。

    3つ目の「また虹がかかる日に」も3人の女子大学生がそれぞれのこれからを語る場面で
    「納得はしていないだろう。それでも前に進もうとしている」という誰もが経験する気持ちに久しぶりに触れることが出来た。

    少しの間、余韻に浸っていたくなるような1冊だった。

  • ジャケ買いならぬ“表紙買い”で手に取りました。
    本屋さんで平積みされているのを見て気になっていた一冊。タイトルからしてホテルが舞台らしい。非日常空間を舞台にした物語って、それだけで惹かれてしまいます。

    誰しも人生の転機を迎える時はありますよね。
    そんな時、非日常の場を訪れてエネルギーをチャージし、次のステージに備える――そんなイメージが浮かびました。
    観光目的ではなく「このホテルに泊まりに行こう」と目的になるような宿、定宿って憧れます。「おひとりさまホテル」なんて、まさにそういう発想ですよね。

    非日常の空間は、人を開放的に、そして前向きにしてくれます。だからこそ、普段ならやらないことにも挑戦したくなる。
    「銀河ホテル」で開かれている“手紙ワークショップ”もその一つ。
    日常生活の中では「誰かに手紙を書こう」なんてなかなか思いつきませんが、場所を変えると不思議とやってみたくなる。そして、実際に書こうとすると自分と向き合わざるを得ない。想いを文字にするって、きっとそういうことなのだと思います。

    登場人物たちの思いには共通して、こんなメッセージを感じました。

    “なにもかも思い通りになるわけじゃない。人生にはいろいろなことが起こる。でも、いつだって自分らしく生きることはできる。”

    手紙に思いを託した彼らは、それぞれの決断を胸に日常へ戻っていく。前へ進むためには、こうした「小さな儀式」って必要なのかもしれません。

    表紙もタイトルも好みで、期待して読んだ一冊。
    個人的には、登場人物がホテルにたどり着くまでの一人語りが少し長く感じられました。もう少し動きがある展開だと、飽きずに読めたかなとも思います。
    (あくまで私個人の感想ですので、悪しからず!)

  • 気になっていた作家さん+優しい色合いの表紙に惹かれて、一目惚れ買い。

    軽井沢行った事はないが憧れる。銀河ホテル自体が素敵、そして手紙室が魅力的で堪らない。
    主人公たちの迷い・葛藤に共感し、共に手紙室を訪れている気持ちで読む。室長の苅部が心を表すのにピッタリなインクを探す手伝いをしてくれ、「書く」ことで向き合い、心の奥にある本当の気持ちに気づかせてくれる。
    旬平の父の言葉が心に響いて大切にしたいと思った。そして苅部の謎めいた雰囲気に引き込まれる。

    温かく包み、そっと背中を押してもらえる本。シリーズ化されるよね?追いかけよう。

  • 文房具好きだが唯一手を出していないジャンル、それがインクだ。きっと集めだしたらきりがなくなるだろうと確信している。それほどにインクの沼は深いのだ。しかし全く携わらないということでもない。日頃万年筆で日記をつけているので書き心地など読んでいて共感することも多かった。
    比較的安いPILOTで5本入りのカートリッジ。色は1本ごとに使いきったら交換していて、今はライトブルー。まだ先月のグリーンがほんのり残っている瞬間の文章は少し特別感がする。
    去年はガラスペンを購入した。インクはセットで付いてきた以外買っていない。今はまだ。

    収まりつつあった好奇心を呼び戻すようなストーリーで作中に出てくるインクを調べたりした。
    軽井沢はスノボで行くくらいなので次はショッピングやホテルでゆっくり過ごす目的で訪れてみたい。
    この銀河ホテルは理想的。アクティビティもあり物語の根幹の手紙室は私も参加したい。
    月に一度送っている手紙友達宛に特別なインクで書いてみたいな。
    謎多き苅部さんの過去も気になる。
    物語が進むにつれて上原さんの成長もみれた。

    「ラクダと小鳥と犬とネズミと」の話が一番好きだった。小さかった娘が立派になり孫もできた現在に幸せを噛み締める一方、高齢になり思うように動かない体と娘の気遣いに本音を言えないジレンマ。立場が逆転して昔を懐かしむ光景がちょっと辛かった。
    しかし手紙室でまた絵を描く喜びを思い出してみんなに絵手紙をプレゼントしていて素敵だなと思った。
    次回作もあるようなので読んでみよう。

  • ほしおさなえさんの本を読むのは『言葉の園のお菓子番』シリーズ以外では初めて。
    同シリーズと主人公も設定も異なるが、言葉(同シリーズでは連句、本作では手紙)を扱う点と、温かい読後感では共通していた。
    本作の舞台は南軽井沢にある瀟洒な洋館ホテルの「手紙室」。自然豊かな軽井沢に佇むホテルを想像しただけでわくわくするが、手紙室というユニークなアクティビティも素敵だった。よく、気持ちの整理がつかないときには書き出してみるのが良いと言うが、ホテルの利用者たちが各々手紙を書きたい人へ自由に書く作業を通じて人生と向き合い、自分なりに納得していく様子が良かった。思い通りの色を選べるように用意されている1000色インク瓶も圧巻。気に入ったインクは購入できるのも良い。
    旅に出て非日常の空間に身を置きながら書く手紙は、感情を素直に出せる気がする。手紙室というプランを考えたホテル従業員の苅部さんは一体何者なのだろう。次作も読みたい。

  • ほしおさなえさんの文庫。
    銀河ホテルの手紙室とインクのおはなし。

    千種類のインクを見てみたい。

    手紙のワークショップを体験する人のおはなしだが
    タイトルからすれば、手紙室室長の苅部さんこそが主人公。
    これから苅部さんの素性が明かされて行くのかと思うとまだまだ先は長そうだ。
    楽しみにしておこう。

    ほしおさなえさんの文房具愛も期待して。

  • 久しぶりのほしおさんの小説。
    柔らかくて温かくて少し寂しい感じのする、この感じ…ほしおさんの小説だなぁ。
    軽井沢にあるイギリス風のおしゃれな洋館「銀河ホテル」を訪れたお客様が、ホテルで人気の手紙室のワークショップにて手紙を書く事で自分の人生と向き合い、一歩を踏み出す勇気と決意を胸に秘める。
    読んでいると主人公と共に少し気持ちがスッキリする。
    なんだか上田健次さんの「四宝堂文房具店」を思い出した。
    やっぱり「書く」って大切。
    今はこうして携帯やパソコンで簡単に文字を打ち込むことが出来る…絵も描けてしまう。
    でも、私だけでしょうか?便利に打ち込む事が出来ても実際に筆記具片手に紙に文字を書くほど頭と心に印象が残らない…やっぱり自分で書いた方が覚えていられるし確かな感じがしてしまう。
    達成感も?^^;
    だからやっぱり今でも…いや、今だからこそ敢えて自分で書くようにしている。
    文字にするうちに自分の気持ちが見えてくる事も多々。
    整理もつきます。
    個人的には2話目の「ラクダと小鳥と犬とネズミと」が好きだったな。
    お婆ちゃんの書いた絵手紙が見たかった。
    歳を重ね自分の行く先にだんだん希望を持ちづらくなる。そんな中で絵手紙という小さな楽しみを得て旅を終える。
    銀河ホテルに来て、手紙ワークショップを受けて
    苅部さんに出会い、自分と向き合い、これからのささやかな…でもとても温かな希望と出逢えた。
    ささやかな幸せを見逃さず大切に楽しめる…そんな歳の重ね方をしていきたいと思えた。

    続編、楽しみにしておこう。

  • すごく読みやすく、寝る前の読書タイム、朝の読書タイムで読み切りました。
    ホテルのスタッフになった方のエピソード、娘家族と思い出づくりに来た老婦人、学生の仲良し3人組、みんな色々なものをかかえていて、それが手紙室のワークショップでそれぞれ前向きに歩き出せた姿を読んで勇気づけられ、感動する作品でした。
    手紙室のスタッフさんの過去が気になります。続編も読みたいです。

  • 初めての作家さん。手紙ワークショップを通して自分に気づく登場人物たち。沢山のインクにも意味がある。ここに行ってみたい。

  • 「銀河ホテルの居候」シリーズは3巻が既刊。
    『また虹がかかる日』はシリーズ第1巻。
    この本を手にしたのは、2025年の集英社文庫<ナツイチ対象文庫ラインナップ>に入っていたから。
    ラインナップは5つに分類されていて『銀河ホテルの居候』は、”心ふるえる本”の一冊に入っていた。

    内容紹介では手紙室室長の苅部文彦が中心となっているような印象を受けるが…
    手紙室と苅部室長が物語の”要”であるのは間違いない。
    しかし主人公は手紙室を利用する一人一人だ。

    物語は3話で構成され、性別も年齢も立場も違う3人が登場する。
    私は第2話の「ラクダと小鳥と犬とネズミと」に登場する主人公が一番近く感じられた。
    多分これから私が行く道だろうと思えたから。
    歳を重ねることで憂うこともあるだろう。
    でも、その時の自分を受け入れることができるのはやっぱり自分なんだと思った。
    自分を受けいれたその先に、穏やかな時間が待っているんだろう、と安堵の気持ちが芽生えた。

    個人的には”心ふるえる本”というよりも…、”心に沁み込んでくる本”という感じだろうか。
    そう、銀河ホテル・手紙室にある1000色のインクのように。



    集英社文庫の公式YouTubeチャンネル「よまにゃチャンネル」で豪華声優陣による朗読ムービーが公開中。
    『銀河ホテルの居候』も前編部分が約9分の動画で公開されている。
    後編は文庫の帯の二次元コードを読み取ること視聴できる。

    朗読は白井悠介さんと戸谷菊之介さん。
    声優さんの声…、やっぱり沁みる。
    それにしても視聴回数の少なさに驚き…

    https://www.youtube.com/watch?v=P6N0qIv7iWI

  • 登場人物がみんな、素直で心が綺麗すぎるので、物語感が強く感じられた。10代の人に読んでもらいたい。私も子供の頃から本に親しめていたら、人生変わっていた気がする。

  • 軽井沢にある英国風の歴史あるホテルにある手紙ワークショップを訪れる人達のお話。
    •夜の沼の深い色
    •ラクダと小鳥と犬とネズミと
    •また虹がかかる日に
    東京での生活に疲れ、このホテルに戻って、ホテルで働く事になった旬平の話が良かった。手紙室の苅部さんの不思議な奥深い感じが良いなあ。

    静かな優しい気持ちになれる本。
    僕も万年筆が好き。綺麗なインクを見つけるとウキウキします。手紙室のインク棚見てみたいなあ。

  • 老舗ホテルにある手紙室。こんな場所があったら行ってみたい!
    千色のインク棚、ワクワクするだろうな
    時間を忘れて自分と向き合えそう

  • 全てのお話が素敵でした。

    銀河ホテルにある「手紙室」のお話。
    でも、今の時代に手紙?と、はじめは思った。

    銀河ホテルの手紙室では、好きな色のインクを選び手紙を書く。
    発送しない手紙でもいい。それは過去の自分、まだあっていない未来の恋人や子供、離れ離れになって居場所がわからないだれか。それから、亡くなった人とか・・・
    書いた手紙は保管室で預かっておく。保管してある手紙は自分で受け取ることもできるし、ほかの人を指定することもできる。

    私のお気に入りは第三章の『また虹がかかる日に』。
    心にささった素敵なフレーズは『生きるというのは、たまたま命を与えられたということだ。世界全体からしたら命なんて小さなものだ。だがわたしたちにとってはそれがすべて。自分に与えれれた命を精一杯感じること。それがどんなにしあわせなことか。森を歩くたびにそう思う。』

    手紙って素敵ですね。

    『銀河ホテルの居候』シリーズ他の二巻もぜひ読みたい。

  • 短編連作。こんなホテルに滞在出来たらいいなあ
    手紙室にいったら、私は誰にどんなことを書くのだろう?いつか映像化されそうな良いお話。



  • 3つの話が収録されている。

    1つ目
    ホテルのオーナーの息子さんが、実家に戻りホテルで働くようになるまでの経過の話。

    2つ目
    夫に先立たれて介護施設で暮らしている主人公が、銀河ホテルに宿泊し、手紙室で手紙を書くことをきっかけに、自分自身と向き合い、人生に前向きになっていく。

    3つ目
    大学生の3人の女の子達が、人生の岐路に迷いながら、銀河ホテルの手紙室で手紙を書くことで、迷いを振り切り自分の人生を切り開いて行く様子。

    銀河ホテルの佇まいから中のインテリアの様子、荘厳な雰囲気さえある手紙室、そして謎めいた雰囲気のあるホテルスタッフの苅部さん。
    どの様子も完璧に絡み合って、想像以上に面白く読めた。

    次作では雁部さんの秘密?が明らかになるのかな?
    次作も楽しみです!

  • 優しい雰囲気の装丁が好みの予感。
    想像してたよりも良かったです。

    作品に漂う雰囲気と“手紙”という共通点から、小川糸さんの「ツバキ文具店」が頭に思い浮かびました。

    特に好きだったのは、
    第2話「ラクダと小鳥と犬とネズミと」
    娘家族と最後の思い出作りにやってきた老婦人の物語

    思いやりに満ちていて、希望を感じるストーリーが良かった。
    そして、手紙のワークショップがすごく魅力的で素敵!
    私も手紙を書きたくなりました。

    銀河ホテルで過ごす穏やかな時間
    ホテル従業員とのやり取り
    手紙のワークショップ
    自分の気持ちと向き合う時間

    物語に流れる空気のすべてが心地よく、不思議とリラックスした気分になりました。
    読む人の心に優しく寄り添い、癒され、前向きになれるストーリー。

    図書館で借りたけど、シリーズで手元に揃えたい。続編も楽しみです。

    『なにもかも思い通りになるわけじゃない。人生にはいろいろなことが起こる。でも、いつだって自分らしく生きることはできる。』

  • 銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に
    著者:ほしお さなえ
    ナレーター:小室 まゆ美

    最初はホテルの息子が立ち直る話かと思いきや、「手紙室」がメインのお話。

    老婦人の手紙ではなく絵でお手紙を書く話が好きだった。手紙って綺麗に書こうと思わなくても良いんだなと思えた。

    ワークショップ受けてみたいな。

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    サマリー(あらすじ)・コンテンツ:

    南軽井沢の銀河ホテル。イギリス風の瀟洒な洋館の一角に、「手紙室」がある。室長の苅部文彦は、このホテルに居候する風変わりな男。彼の手紙ワークショップを受けると、なぜか心の奥のほんとうの気持ちが見えてくる。娘家族と最後の思い出作りにやってきた老婦人、秘密を抱えたまま仲良し三人組で卒業旅行にきた女子大生――銀河ホテルを訪れたお客さんが、好きな色のインクで、思い思いの言葉を綴る。手紙を書くことで己の人生を見つめ直し、人生と向き合う感動のシリーズ第1作!

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    読了日:2026/02/01

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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