銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に (集英社文庫)

  • 集英社 (2024年9月20日発売)
4.08
  • (66)
  • (95)
  • (38)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 1585
感想 : 65
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087446944

作品紹介・あらすじ

「こんなホテル、あったらいいな」が詰まってます!

銀河ホテルの一角にある手紙室。
好きな色のインクで、思い思いの言葉を綴る。
その瞬間、あなたはほんとうの自分と出会う。

南軽井沢の銀河ホテル。
イギリス風の瀟洒な洋館の一角に、「手紙室」がある。
室長の苅部文彦は、このホテルに居候する風変わりな男。
彼の手紙ワークショップを受けると、なぜか心の奥のほんとうの気持ちが見えてくる。
娘家族と最後の思い出作りにやってきた老婦人、秘密を抱えたまま仲良し三人組で卒業旅行にきた女子大生――銀河ホテルを訪れたお客さんが、手紙を書くことで人生と向き合う感動作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • この本の帯の
    「銀河ホテルの一角にある手紙室
    好きな色のインクで思い思いの言葉を綴る。
    その瞬間、あなたはほんとうの自分と出会う。」
    という言葉に惹かれて購入。

    軽井沢にある老舗ホテルの銀河ホテル。
    素敵な佇まいや、行き届いたサービス。美しい調度品に美味しい紅茶。
    そして、様々なアクティビティ。
    そのアクティビティの1つに手紙室で手紙を書くことというのがある。

    誰に宛てても良い。出せなくても良い。
    千色もあるインクの中から選んだ色で手紙を書いてみる。手助けをしてくれるのはこのホテルに居候する風変わりな男。

    そして、参加するのは仕事に疲れた男性。
    子育てや介護を終えて、施設に入り静かに暮らす女性。
    人生の岐路に立ち、漠然としたモヤモヤを抱える女性。

    それぞれが「手紙を書くこと」に向き合うことで
    自分と対話し、素直になることが出来る。
    そんな優しい3つのお話。

    2つ目の「ラクダと小鳥と犬とネズミと」は
    人生の終末を見据え、じっと生きていた女性の気持ちがジワジワと確かに湧き出てくるようで静かに泣いてしまった。

    3つ目の「また虹がかかる日に」も3人の女子大学生がそれぞれのこれからを語る場面で
    「納得はしていないだろう。それでも前に進もうとしている」という誰もが経験する気持ちに久しぶりに触れることが出来た。

    少しの間、余韻に浸っていたくなるような1冊だった。

  • 気になっていた作家さん+優しい色合いの表紙に惹かれて、一目惚れ買い。

    軽井沢行った事はないが憧れる。銀河ホテル自体が素敵、そして手紙室が魅力的で堪らない。
    主人公たちの迷い・葛藤に共感し、共に手紙室を訪れている気持ちで読む。室長の苅部が心を表すのにピッタリなインクを探す手伝いをしてくれ、「書く」ことで向き合い、心の奥にある本当の気持ちに気づかせてくれる。
    旬平の父の言葉が心に響いて大切にしたいと思った。そして苅部の謎めいた雰囲気に引き込まれる。

    温かく包み、そっと背中を押してもらえる本。シリーズ化されるよね?追いかけよう。

  • ほしおさなえさんの本を読むのは『言葉の園のお菓子番』シリーズ以外では初めて。
    同シリーズと主人公も設定も異なるが、言葉(同シリーズでは連句、本作では手紙)を扱う点と、温かい読後感では共通していた。
    本作の舞台は南軽井沢にある瀟洒な洋館ホテルの「手紙室」。自然豊かな軽井沢に佇むホテルを想像しただけでわくわくするが、手紙室というユニークなアクティビティも素敵だった。よく、気持ちの整理がつかないときには書き出してみるのが良いと言うが、ホテルの利用者たちが各々手紙を書きたい人へ自由に書く作業を通じて人生と向き合い、自分なりに納得していく様子が良かった。思い通りの色を選べるように用意されている1000色インク瓶も圧巻。気に入ったインクは購入できるのも良い。
    旅に出て非日常の空間に身を置きながら書く手紙は、感情を素直に出せる気がする。手紙室というプランを考えたホテル従業員の苅部さんは一体何者なのだろう。次作も読みたい。

  • ほしおさなえさんの文庫。
    銀河ホテルの手紙室とインクのおはなし。

    千種類のインクを見てみたい。

    手紙のワークショップを体験する人のおはなしだが
    タイトルからすれば、手紙室室長の苅部さんこそが主人公。
    これから苅部さんの素性が明かされて行くのかと思うとまだまだ先は長そうだ。
    楽しみにしておこう。

    ほしおさなえさんの文房具愛も期待して。

  • 久しぶりのほしおさんの小説。
    柔らかくて温かくて少し寂しい感じのする、この感じ…ほしおさんの小説だなぁ。
    軽井沢にあるイギリス風のおしゃれな洋館「銀河ホテル」を訪れたお客様が、ホテルで人気の手紙室のワークショップにて手紙を書く事で自分の人生と向き合い、一歩を踏み出す勇気と決意を胸に秘める。
    読んでいると主人公と共に少し気持ちがスッキリする。
    なんだか上田健次さんの「四宝堂文房具店」を思い出した。
    やっぱり「書く」って大切。
    今はこうして携帯やパソコンで簡単に文字を打ち込むことが出来る…絵も描けてしまう。
    でも、私だけでしょうか?便利に打ち込む事が出来ても実際に筆記具片手に紙に文字を書くほど頭と心に印象が残らない…やっぱり自分で書いた方が覚えていられるし確かな感じがしてしまう。
    達成感も?^^;
    だからやっぱり今でも…いや、今だからこそ敢えて自分で書くようにしている。
    文字にするうちに自分の気持ちが見えてくる事も多々。
    整理もつきます。
    個人的には2話目の「ラクダと小鳥と犬とネズミと」が好きだったな。
    お婆ちゃんの書いた絵手紙が見たかった。
    歳を重ね自分の行く先にだんだん希望を持ちづらくなる。そんな中で絵手紙という小さな楽しみを得て旅を終える。
    銀河ホテルに来て、手紙ワークショップを受けて
    苅部さんに出会い、自分と向き合い、これからのささやかな…でもとても温かな希望と出逢えた。
    ささやかな幸せを見逃さず大切に楽しめる…そんな歳の重ね方をしていきたいと思えた。

    続編、楽しみにしておこう。

  • 老舗ホテルにある手紙室。こんな場所があったら行ってみたい!
    千色のインク棚、ワクワクするだろうな
    時間を忘れて自分と向き合えそう

  • 優しい雰囲気の装丁が好みの予感。
    想像してたよりも良かったです。

    作品に漂う雰囲気と“手紙”という共通点から、小川糸さんの「ツバキ文具店」が頭に思い浮かびました。

    特に好きだったのは、
    第2話「ラクダと小鳥と犬とネズミと」
    娘家族と最後の思い出作りにやってきた老婦人の物語

    思いやりに満ちていて、希望を感じるストーリーが良かった。
    そして、手紙のワークショップがすごく魅力的で素敵!
    私も手紙を書きたくなりました。

    銀河ホテルで過ごす穏やかな時間
    ホテル従業員とのやり取り
    手紙のワークショップ
    自分の気持ちと向き合う時間

    物語に流れる空気のすべてが心地よく、不思議とリラックスした気分になりました。
    読む人の心に優しく寄り添い、癒され、前向きになれるストーリー。

    図書館で借りたけど、シリーズで手元に揃えたい。続編も楽しみです。

    『なにもかも思い通りになるわけじゃない。人生にはいろいろなことが起こる。でも、いつだって自分らしく生きることはできる。』

  • 軽井沢にある銀河ホテル。
    そこには手紙室があり、人気の手紙のワークショップが行われている。
    過去や未来の自分、連絡が取れなくなってしまった人、亡くなってしまった人。もちろん家族や友人、恋人に向けてもいい。
    千色を超える様々なインクの中から合う色を選び思うままに手紙を綴る。
    このワークショップを受けた人達が、後ろ向きだった未来を見つめ直して再生の一歩を踏み出す姿にすごく感動しました。自分自身の気持ちに向き合うって難しいけれどとっても大事なことなんだよね。
    私もこんな素敵な手紙室行ってみたいなぁ✉️

  • 銀河ホテル泊まってみたい。
    手紙室に行ってみたい。
    たくさんのインクにも囲まれたい。

    自分はどんな色で誰に手紙を書くんだろう〜

    そんな風に思ってしまうお話。
    続きが読みたい。

  • 【収録作品】
    第1話 夜の沼の深い色 Baltic Memories
    第2話 ラクダと小鳥と犬とネズミと Joy Sepia
    第3話 また虹がかかる日に Sea of Illusion

    第1話 ホテルの跡取り息子・旬平の話。
    第2話 娘家族と最後の思い出作りに来た老婦人の話。
    第3話 卒業旅行に来た女子大生3人の話。

    手紙室の室長・苅部文彦は、ふらりと現れて「居候」のようにホテルに居着いた風変わりな男。人当たりが良く有能な苅部だが、旬平はどことなく胡散臭さを感じている。タイトルになっている割に苅部は中心にいない。各話の語り手たちにワークショップの間そっと寄り添うだけなのだが、彼らはそれぞれに書くことを通して自分と向き合っていく。

    手書きが面倒になっている昨今だが、なんとなくペンとインクで何かを書きたくなった。

全65件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ほしおさなえの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×