- 集英社 (2025年2月20日発売)
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感想 : 7件
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784087447415
作品紹介・あらすじ
1941年、日本占領下の福建省廈門。
大阪松島遊廓から逃走して、上海、広州、香港と渡り歩き、廈門に辿り着いたリリーは、抗日活動家の楊に従い、カフェーで女給として働きながら諜報活動をしていた。あるとき、楊から日本軍諜報員の暗殺を指示され、その実行者として、琥珀色の瞳と蛇の刺青が印象的なヤンファという女性を紹介される。
中秋節の晩をきっかけに強くヤンファに惹かれていくリリーにとって、彼女と過ごす時間だけが生への実感を持てるひとときになっていた。
しかし、楊から秘密裏に出されていた指令は、暗殺に失敗した場合はヤンファを殺せというものだった……。
戦時下の中国・廈門を舞台に流転する女性たちの愛と葛藤を描く、圧巻の熱量を放つ第35回小説すばる新人賞受賞作。
【著者略歴】
青波 杏(あおなみ・あん)
1976年、東京都国立市出身。近代の遊廓の女性たちによる労働問題を専門とする女性史研究者。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
戦時下の中国を舞台に、女性たちの愛と葛藤を描いた物語は、緊迫したエスピオナージと深い人間関係が交錯する作品です。主人公リリーは、抗日活動家の指導のもと、日本人諜報員の暗殺計画に巻き込まれ、台湾出身のヤ...
感想・レビュー・書評
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日中戦争下の厦門、抗日運動家の下で日本人諜報員の暗殺計画に巻き込まれた二人の女性、擬装してカフェ朝日倶楽部で働く日本人リリーと、豆花屋台で敵を見張る台湾少数民族出身のヤンファとの愛を絡めたエスピオナージ。
リリーの複雑な遍歴と共に舞台は厦門、上海、大阪、台湾の少数民族の村、台湾の港町、基隆、金瓜石と時空を行き来しながら暗転を繰り返す。日本人ナツカと台湾人リーファ、朝鮮人ミツエや台湾人ミヨとリリーの交流と葛藤、登場人物間の複雑に絡み合う関係性は終盤にようやく解きほぐされ、家族や友人さえ気付かない展開に解せなさを感じながらも二人の再会に安堵する。
国を奪われ支配された台湾人や朝鮮人の心に潜む怒りや痛みも随所に描かれる。日本の官憲の策略による原住民を利用したリーファの住む台湾の村での虐殺(サラマオ事件)、朝鮮人ミツエのリリーへの非難「あなたの国の起こした戦争でどれだけのひとが意味もなく殺されていくの。わたしの国や名前を奪っていって、兄さんを監獄に閉じ込めてるのは、あなたの国の友人たちや家族、そしてあなたなのよ。この戦争で生まれた憎しみ、差別はきっと何十年も続くわ。」 「斧は忘れるが、木は忘れない」ように斧で傷つけられた人々の心の奥底には、決して消えない燠火が燻り続ける。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うっわー。
読み終わった後、まず出た言葉がこれだった。
色鮮やかな描写、おいしいものがほんとにおいしそうに感じられる。すごいすき。
初読の作者さんなのに、するっと入ってきた。
あらすじだけだと、手に汗握るアクション的な話かと思ってたのに、女給仲間や活動家の人とのつながり、リリーとヤンファの日常が細やかに積み重ねられていて、感情がもっていかれる。
読後の満足感、ハンパない。いい本に出会えた。 -
途中でヤンファが誰なのか1ミリも気付かないのも都合が良い気もするけど、映像にしたら良さそう。史実が混ぜられていて勉強にもなった。
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戦時下の中国、主人公女性が出会ったヤンファという女性、彼女らはスパイ活動を行なっていたのだが、、というお話(?)。
それぞれの出自や過去、途中挟まれるエピソードも何かしらあるのだろうと思っていたら、やはりラストで収束した。美しさある物語だった。
これはこちらの問題なのだけど、読むのに時間がかかってしまったために、最後の展開で誰が誰だったっけ?が曖昧になってもう一度読み返さなければならなかったのよぅ。人物関係把握間違ってたら申し訳ないです。 -
1941年、日本が占領していた中国の南の方、厦門が舞台。主人公リリーは日本人向けのカフェーで働いている日本人。実は日本人諜報員の暗殺を命じられたスパイ…という設定。一緒に作戦に関わることになるヤンファとともにすごすうちに、リリーはヤンファに強く惹かれていくことになります。しかしヤンファが任務に失敗した場合は、リリーが自らの手でヤンファを殺さなければならない…という緊張感が漂う状況です。そういったサスペンスフルな面だけでなく、読み終えたあとには深い感動が残っており、生涯の大切な作品の1つになるだろうな、と強く予感しました。再読しましたが、改めて同じように噛み締めています。
リリーの複雑な感情や危ない橋を渡っている緊張感、亜熱帯の空気や食べ物の匂い、戦時中の日本と他国の関係、そしてヤンファ。最後に全てが繋がったときには深い感動が胸に広がった。
主人公リリーは常に奪われてきた、と思っており、当時の女性がどういう立場だったのかが描かれます。また同時に、リリーはどこへ行っても日本人で、日本がどんなことをしてきたのか、ということを目にすることになります。忘れてはいけないことがある。忘れられないことがある。そして、忘れたくないことがある。彼女たちの人生は常に何かを奪われてきた。激動の人生にもかかわらず、読み終えた今なぜか優しい気持ちが心に残っている。 -
日本とは違う多湿の大陸で生きる少女達
心情表現も物凄く良かったけれど、ジメジメした時期のコンクリートの感触だったり肌に触れる服がくっつく気色悪さがとてもリアルで良かった
後半の全てが繋がって丸くなっていく感覚はジメジメした土地に涼しい風が吹いてくるようだった
青波杏の作品
