共喰い (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450231

作品紹介・あらすじ

一つ年上の幼馴染、千種と付き合う十七歳の遠馬は、父と父の女の琴子と暮らしていた。セックスのときに琴子を殴る父と自分は違うと自らに言い聞かせる遠馬だったが、やがて内から沸きあがる衝動に戸惑いつつも、次第にそれを抑えきれなくなって-。川辺の田舎町を舞台に起こる、逃げ場のない血と性の物語。大きな話題を呼んだ第146回芥川賞受賞作。文庫化にあたり瀬戸内寂聴氏との対談を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 共喰いと第三紀層の魚の2編が入っており他のレビュアーも書かれていたが、私も第三紀層の魚の方が好みであった。
    第三紀層の魚
    田舎町で、祖母や曾祖父などと共に生きた少年の成長譚であるが、じいちゃんや、ばあちゃんがいた人ならわかる気持ちが非常に共感を得る。身近な人の死、そしてそれが悲しいことなのかどうかすら、わからない少年時代。鬱屈とした昭和の空気感は
    逆に読んでいて新鮮であった。

  • わたしは、読書が嫌いになったのだろうか?というほど、読むペースがぐっと落ちてしまった作品。
    最近ずっと、芥川賞受賞作を読み続けていて、どれもサクサクと読んでいたのに。



    どこまでも、グレイな世界。閉塞感。方言がそれに追い打ちをかける。
    絶望の中から、少しだけ顔を出す、希望。けれど、その希望を希望と受け取れないくらいの、暗い、世界。

    対談で、田中さんは、男目線で作品を読んでしまうということを話されていて、わたしはどうだろうかと思ったけれど、『共喰い』で読み進められなくなるほどの苦しみを感じたということは、やっぱり女目線で読んでいるのかな、なんて。いやでも、男の人だって、そんな人だっているかもしれない。
    わからない。

    わたしは瀬戸内寂聴が好きではない。芥川賞受賞作品の対談で、芥川を批判するところが、疑問。他も、疑問だらけ。田中さんへの単独インタビューがよかったなあ、と対談の一部を読んで思いました。

    今までわたしは、この手の作品を賞賛していたはず。それなのになんで今回は、こんなにもやもやしてるんだろう。
    わからない。
    もう一度、この世界に没入したら、理解できるのかな。

  • 瀬戸内寂聴さんとの、対談が、最後の方にありました。
    興味深かった。

  • 第146回芥川賞受賞作。

    やっぱり得意ではないです^^;

    「共喰い」と「第三紀層の魚」の2作品に加えて、瀬戸内寂聴さんとの対談もおさめられています。

    先ず表題作の「共喰い」ですが、主人公は17歳の遠馬。

    昭和を彷彿させる時代設定の中、父親と父親の女である琴子と共に川辺の田舎町で暮らす遠馬。

    そんな遠馬には1歳年上の幼馴染である千種という彼女がいます。

    暮らす家の近くには実母が暮らす魚屋がありますが、そこに描かれるのは灰色の世界。

    父親は多感な年頃の息子がいる中で、琴子とのセックスを楽しむ。

    それは事の最中に琴子を殴り、その事で一層の快楽を得るという暴力と一種の性癖であり、自分はそんな父親とは違うと思っていた。

    しかし、抑えられない性欲で千種を求め、千種に拒まれた時に無意識に遠馬は琴子の首を絞めてしまう。

    自分にも父親と同じ血が流れていることに気づき、その中でも抑えられない性欲。

    逃げ場のない世界の中で誰も救われることはありませんでした。

    「第三紀層の魚」で描かれるのもやはり色の無い世界でした。

    主人公は下関の海の近くで暮らす信道少年。

    「共喰い」との共通点として釣りをする姿が描かれていますが、子供の頃に自分が楽しんだ釣りとは違い、そこに楽しそうな雰囲気は描かれていません。


    説明
    内容紹介
    話題の芥川賞受賞作、文庫化!
    セックスのときに女を殴る父と右手が義手の母。自分は父とは違うと思えば思うほど、遠馬は血のしがらみに翻弄されて──。映画化が決定した、第146回芥川賞受賞作。瀬戸内寂聴氏との対談を新たに収録。


    内容(「BOOK」データベースより)
    一つ年上の幼馴染、千種と付き合う十七歳の遠馬は、父と父の女の琴子と暮らしていた。セックスのときに琴子を殴る父と自分は違うと自らに言い聞かせる遠馬だったが、やがて内から沸きあがる衝動に戸惑いつつも、次第にそれを抑えきれなくなって―。川辺の田舎町を舞台に起こる、逃げ場のない血と性の物語。大きな話題を呼んだ第146回芥川賞受賞作。文庫化にあたり瀬戸内寂聴氏との対談を収録。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    田中/慎弥
    1972年山口県生まれ。山口県立下関中央工業高校卒業。2005年「冷たい水の羊」で第37回新潮新人賞受賞。08年「蛹」で第34回川端康成賞受賞。同年「蛹」を収録した作品集『切れた鎖』で第21回三島由紀夫賞受賞。12年『共喰い』で第146回芥川龍之介賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 全く興味がない小説家なのですが、ひとえに集英社ナツイチ特性ブックカバーのために買いました。しかも押しメンの大島優子が感想文を書く対象というので、イヤイヤながら読みました。一応芥川賞受賞作です。

    作品ごとにキャラを変えるタイプの小説家らしく、「共喰い」だけでイメージを持つと困ると思われているようですが、この文庫の中の二つの作品に共通するのは、「家族の血筋」みたいなのものみたいです。

    「共喰い」は、セックスと暴力が表のテーマです。描写は具体的ですが、話の構造は単純であり、父親殺しと母親の愛が裏のテーマです。全く単純です。

    大島優子がこの作品を選んだことの方が私には事件です。多分他のメンバーは手に余るという思いやりが半分以上、あっちゃんが主演した「苦役列車」の向こうをはる衝撃的な作品に主演した場合のシュミレーションを行ったというのが三割ぐらい。あとは残り物で仕方なく、といったところでしょうか。

    ともかく優子の感想文を早く読みたい(^-^)/。
    2013年8月9日読了

  • 暴力的な描写や、情景の描写が映像を見ているかのように強烈にイメージできた。作者の強烈なインパクトの受賞会見が今も記憶に残っているが、この作品もずっと鮮明に私の記憶に残ると思う。瀬戸内寂聴との対談も源氏物語に触れられており、とても面白かった。

  • 人間の根底にある性や暴力、血。田舎の閉塞感がより一層不穏な雰囲気を出している。自分の読解力がもう少し高ければ、もっと違う角度からも楽しめるんだろうなーと思った。

  • 父親と同じように女性に手を上げてしまうことを恐れている思春期の少年の話

    田舎の閉塞感がありありと描かれています
    風景、人物、食べ物などの描写は細かなところが詳細に書かれていて匂ってきそうなほどリアルです
    あまり風景描写などしげしげと読むタイプではありませんが一文字一文字味わいながら読みました

    巻末の対談にもありましたが登場する女性は真面目で人を騙したりしない人なのだろうな、と感じます

    ストーリーはハラハラするところもありましたが読者に色々考えさせるところで終わらせてあります

    田中先生のもっと長文が読みたいです

  • 全体的に夜の営みの話がメイン。文体や描写、表現自体はとても好きだ。

    ただ、何が言いたいのか分からない。
    本書の中で、川や鰻がいったい何を象徴しているのか、解釈しようとはするもののさっぱり読み取れない。

    なので、ラストも意味不明だ。血=穢れという神道的視点から、人を殺めたので鳥居をくぐらなかったというなら意味はまだわかる。しかしそうではないところを見ると、あくまで一貫して性だけがテーマということらしい。

    まるで全編を通して白昼夢みたいな、変に生々しいけれども抽象的という、独特の世界観だった。嫌いじゃない。(好きでもない。)

  • 血は争えないよなって
    色んなものが川に流れていく表現が良かった
    ずっとずっと雨だなって感じ

    第三紀層の魚の方が好き
    気づいたらぼろぼろ泣いてた

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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