世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 386
レビュー : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450279

作品紹介・あらすじ

子供の頃、芋虫と話がしたかった著者。おまえどこにいくの、と話しかけた。芋虫は答えず、葉っぱを食べはじめる。言葉の代わりに見ていて気がつくことで、気持ちがわかると思った。昆虫、猫や犬など動物とおしゃべりするには、観察が一番だとわかった。これが、いきものを見つめる原点。不思議と驚きにみちた世界を「なぜ?」と問い続けた動物行動学者がやさしい言葉で綴る自然の魅力発見エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 生き物や環境の世界に物語を感じ、生き物の目から世界を見てみて、驚き、不思議に思う感性をお持ちのところが日高敏隆さんを好きな理由。

    ダニの世界、ちょうちょの世界、それぞれが知覚している世界は人間のそれとは違っていて、ダニやちょうちょになって観ることはできない。
    違った世界が人間がみえていないところで、いくつもいくつもあると思うと、今みえている世界もあやふやなものになっていくような気がする。

    絶対なんてことはない。囚われていた心とか、あれこれ不安になっていることとか、どうでもいいねと思えます。

  •  この本の著者は,動物行動学の日本での創始者であり,京都大学理学部教授,滋賀県立大学学長,地球研(総合地球環境学研究所)所長などを歴任されたのち,2009年逝去された.

     私が学生だった頃,私の周りで「京大理学部に教授として日高さんというすごい人が来るらしい」という評判が飛び交った記憶がある(WIKIによると京大教授就任は1975年).それからずっと気にはなっていたのだが,著書を読んだのはこの本が最初である.むしろ,『生物から見た世界』ヤーコプ・フォン・ユクスキュル、ゲオルク・クリサート 野田保之共訳 思索社 1973,の訳者として,あるいは『ちいさないきもの―くらしとかいかた』 ひかりのくに; 改訂版 (1997/04),の監修者としてのほうが私には近しい.

     著者は,科学エッセイの名手である.そのことはこの本を読んでもよくわかる.この本は若い人にむけてかかれた,科学者からの具体的で個性的な科学のすすめである.

     著者は以下のように考えているようだ.いろんな生物の中で(他者の)「死」を知っているのはどうも人間だけらしい(この「らしい」については後述する).とすればそこから人間の特性が見えるのではないか.また,人間はある種のまぼろしを真実だと思い込むくせがあるらしい.とくに,筋が通ると真実だと思い込みやすい.この思い込みをイリュージョンと名付けると,人間にはイリュージョンしかなくて,とても唯一の真実などを考えることはできない.とすれば,人間の持つ「死」という知識がいろんなイリュージョンを生み出しているのではないか.

     先に挙げたユクスキュルの本に出てくる環世界という考え方を,人間に適用したものである.また,著者の結論に多用される「らしい」「ようだ」という用語自体も「イリュージョンしかない人間がなにかを主張をするときにふさわしい,大上段に構えない用語である」という意味で意図的に使われている.

     「ゆらぎながら,引き裂かれながら,大いにイリュージョンの世界を楽しめばいい」(本書,35頁)は著者の人生の結論であろうが,実行するのはなかなかむつかしそうだ.


    2016.08

  • 『世界をこんなふうに見てごらん』

    柔らかい口調で書かれた本。
    世界の見え方が変わっていく感じ!

    自然とたわむれよう

  • 最後の日高節。

    ”ダニにとっての「世界」は光と酪酸のにおい、そして温度感覚、触覚のみで構成されている。・・・森があり、風が吹いたり、鳥がさえずったりしているかもしれないが、その環境のほとんどはダニにとって意味を持たない。”

    人間の五感を通してみた世界と他のいきものの見ている世界には根本的に異なる。ダニからすると「え、人間ってこの素晴らしい酪酸のにおいや動物の皮膚の温かさが分からないの!?なんて不便な…」ってなるんかな。

    有名な「モンシロチョウのオスがどのようにメスを見つけるか」を研究した、めちゃくちゃ面白い話をしたあとで
    ”結局それが何の役に立つかと聞かれますと、何の役に立つんですかね”

    最後の一節は本当によく噛みしめなければならない。知性の欠片もない言説があふれかえる中で:
    ”イマジネーションのなさが幽霊を生んでいたわけで、・・・何かとんでもないものを作ってきたような気がする。こういうことを、われわれはやってはいけないんだ
    ・・・幽霊ではなくイマジネーションを求めることをやらなくちゃいけない”

  • 日高さんと言えば、昔国語の教科書に文章が載っていた。それまで読んだ国語の文章の中で、1番楽しく読めたものだったなあ。
    読んでいて、この方の頭の中と、わたしの頭の中は似ているな、って感じた。なぜ?って思って考えて、そして調べて……対象が生物と化学(もしくは医学)という差はあれども、やっていることはほとんど同じ。そして、こだわりすぎないあまりに、変わり者と思われそうなのも同じ…(笑)
    でも、こだわりすぎない、って言葉は、ほんとに何にでも通じる箴言だと思う。わたしもこのことを、今まで以上に心に刻もう。今年度1番の読書をしました。20150220

  • 視野が狭い凝り固まった頭の私にはとても広げてくれる言葉がたくさん詰まった本でした。もう少し日々を何となくではなく、よく見て考えるように目を向けていきたいと思いました。

  • こんな風に見れたら、きっともっと人生を美しく感じられる。わたしがみている世界は、わたしの目を通すことで、イリュージョンになっているわけです。すんなり入ってくる、新しい視点の本。

  • わたしの好きな言葉に、ちょうどいい がある。
    日高さんは、「ちょうどいい」を体現しているような人だなと思う。

    論理を重ねられると、それを真実と思い込むのが人間だという
    。それは学問でも宗教でも仕事でも伝統でもそうだ。
    日高さんは学者としては変人扱いされていたようだけど、それでは学者としてマトモな人はどんな人だったんだろう?

    様々な命がこの地球や宇宙で生きている。
    それぞれが各々の形で一生懸命にその命を生きている。
    そこに答えも法則も何もない。

    人生や価値観も同じで、
    何かキラリと光るようなひとつの答えなどなく、
    ただそこにはざわめく音とまだらな色があるだけだ。

    では、何のために生きているの?と思うけど、
    それに対して日高さんは、楽しい・面白いイリュージョンを更新していくことだ、と言っている。
    そのいきいきした瞬間にこそ、命を生きる輝きが写り込むんだろうとわたしは思う。

    なんでだろう、どうしてだろう、と思うことを大切にしよう。
    誰かに説明されて分かったつもりになるのでなく、
    せっかくなら自分自身が、自分の観る世界のイリュージョンを発見していくほうが面白い。

    人の意見は「いいかげん」に聴くというのは、
    日高さんの、イリュージョン発見のコツなのかな。

  • 動物行動学者 日高敏隆さんによる軽い語り口のエッセイ。
    ゆるい感じのエッセイだが、最後の講演録を読んだあと読み返すと
    ピリっと大切なことが伝わってくる。
    「思い込みから解放されよう」
     
    著者の意図したこととは全く違うのだろうが、今の私に必要なこと。
    思い込みを捨てて想像力を働かせなさい。
    でも、本当のことは、それでも分からないものだけど、どうしてだろう?という
    疑問を追究することは、毎日を楽しくする。
     
    思い込みを捨てて想像力を働かせることは、他人にも自分にも優しくなることだ。
    正直、昆虫についてはあまり興味はなく、「ふ~ん」って部分もあるんだけど
    この先生の興味の対象が昆虫なだけで、置き換えれば全ての人に響いてくる内容だと思う。
     
    そして、なにより、熊田千佳慕さんの表紙絵が最高に素敵。
    文庫版のテントウムシは、見ているだけで和んで、優しい気持ちになれる。

  • 蝶はわけもわからず飛んでいるわけでなく、自分のほしいものを探しながら飛んでいる。

    おまえはどこへいくの。何を探しているの。
    どうやって生きているのかを知りたいんだ。

    虫を通じてみる世界。

    なぜを大切にすることの大切さ。
    小さい頃に一生懸命になったものを今一度考えさせてくれる作品。面白いです。

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著者プロフィール

【訳者】 日高敏隆 (ひだか・としたか)
1930年生まれ。京都大学名誉教授。2009年歿。

「2018年 『利己的な遺伝子 40周年記念版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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