美ら海、血の海 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450347

作品紹介・あらすじ

東日本大震災発生から3日後、石巻に入った老人・真栄原幸甚は眼前の惨状に、60数年前、戦時下の光景を思い出す。1945年、日本は敗色濃厚。14歳、沖縄一中の生徒だった幸甚は、鉄血勤皇隊として強制的に徴用される。ついに米軍は沖縄へ上陸。激しい砲撃・爆撃に本島南部への撤退を余儀なくされた日本軍の道案内を命じられ、あまりに苛酷な地獄を見る。慟哭の沖縄線が胸に迫る著者初のオリジナル文庫。

感想・レビュー・書評

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  • 吉村昭の「殉国」は軍国主義を中心として描かれていたが、この「美ら海、血の海」は反軍思想が中心だ。しかし、題材は同じなので、悲惨な沖縄県民の末路に心を打たれる。

  • 私自身幾度となく沖縄を訪れ多くの戦争遺構を見聞きして回ることで当時そこで行われていた異常な世界を人並み以上には認識していると思うのだが。
    しかしそんな知識の端くれがあったとしてもたった14歳の鉄血勤皇隊の少年の目を通して見る地獄絵図にはやはり驚きは隠せず戦争の持つ狂気に忿怒の言葉さえ見失ってしまう。
    特に仲間の命の為と言え同胞の老人子供に拳銃を突き付け食糧を強奪するシーンは生々しくここまで追い詰められながらも本土の防波堤となり犠牲になられた沖縄の人々には感謝と共に哀悼の意を捧げるしかない…合掌

  • 戦争の中で青春をすり減らした子どもたち。おとずれるはずの希望や未来は、グラマンが根こそぎ奪って行く。戦後はまだ終わっていない。沖縄の悲劇も忘れてはいけない。

  • 真夏に読んだけれど、クーラーの効いた快適な環境で読んじゃいかんなと思った。終戦記念日前後のTVの街頭インタビューで高校生か大学生ぐらいの子が「(かつてアメリカと戦争をしたと聞かされて)アメリカと戦争なんてするわけないじゃないですかあ!」なんて明るく答えているのを見ると、沖縄のことなんて観光地ぐらいにしか思ってないんだろうなあ、米軍基地が多くある理由も理解してないんだろうなあ、小学校で英語やらプログラミングやら教えるよりも現代史をきちんと教えるべきなんじゃないのかなあ、と思ってしまう。

  • 死と腐臭と飢え。戦火の恋と悲劇的結末。何も言えない。

  • 日本で唯一地上戦を経験した地、沖縄。
    惨い。本当に惨いです。

    今年で戦後七十年という事ですが、まだまだ戦争の傷を癒せない方が沢山いると思います。
    自分の大切な人が、人を殺さなければいけない立場に立つという想像なんてしたくない。
    自分の大切な人が誰かの手によって殺されるなんて考えたくもない。

    怖くて辛くて悲しくて、ページを捲る手が何度も止まりました。

    これからの日本が、自分の大切な思いを、ちゃんと大切に思い続ける事が出来る国で
    あって欲しい。

    娘がおばあちゃんになって、孫が出来て
    そのまた孫が幸せでいられる、そんな国であります様に。

    ひたすらそんな事を祈りながら読みました。

  • 東日本大震災発生から3日後、石巻に入った老人・真栄原幸甚は眼前の惨状に、60数年前、戦時下の光景を思い出す。1945年、日本は敗色濃厚。14歳、沖縄一中の生徒だった幸甚は、鉄血勤皇隊として強制的に徴用される。ついに米軍は沖縄へ上陸。激しい砲撃・爆撃に本島南部への撤退を余儀なくされた日本軍の道案内を命じられ、あまりに苛酷な地獄を見る。慟哭の沖縄線が胸に迫る著者初のオリジナル文庫。

  • 日本で唯一地上戦となった沖縄。
    沖縄線では兵士、島人関係なく銃撃を受け、多くの人が命を落とした。
    また日本兵は島人より食料や壕を奪った。
    そして生き残った島人たちもお互いにそうするしかなくなっていく。
    みんな生きることに必死だった。
    戦争は人の命だけでなく、心までも大きく蝕んでしまった。
    憎しみを生み、残酷さを露にさせた。
    沖縄には深い哀しみがあることを、私たちももっと知るべきだ。

    2014.6.29

  • 震災後大きく変化された氏の著作。その新作風がもっとも顕著に現れた一冊と言えるのではないか。Noirさはない。

  • 馳星周の戦争小説は、新たな世界のようで、実は暴力や血という共通点からすれば馳星周ど真ん中のジャンルであることに気づきました。

    ノワール作家と言われる馳星周が戦争を描けば、現代における複雑な暴力を超え、戦争による圧倒的な絶望や悲しみが深く描写され、何故今までこのジャンルが出なかったのかとも感じました。

    馳星周の沖縄への思い入れはどれほどのものかはわかりませんが、本書を踏まえてさらに『弥勒世』が活きるという沖縄の歴史の積み重ねを感じました。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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