ばけもの好む中将 平安不思議めぐり (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450620

作品紹介・あらすじ

ときは平安。左近衛中将宣能は、家柄もよく容姿端麗で完璧な貴公子だが、怪異を愛する変わり者。中級貴族の青年・宗孝は、なぜか彼と共に都で起きる怪異の謎を追うはめになり……。書き下ろし文庫。

感想・レビュー・書評

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  • 化け物を愛でたくて探し回る貴公子の宣能と生真面目な中流貴族の子息の宗孝の組み合わせがなかなかいい。宗孝に姉が12人もいて今回は3人出てくるが、その存在が物語の展開に上手く生かされている。十の姉が破天荒で凄いよ。宣能の妹の初草の君も特異な能力を持っていて面白い。

  • ライトノベル風平安怪異シリーズ第一作。

    タイトル通り、怪談に目がなく、聞くと現場を確かめずにいられない佐近衛中将宣能(のぶよし)と、彼に振り回されるヘタレな右兵衛佐宗孝(むねたか)コンビが様々な怪異譚の謎解きに挑む。

    おびただしい血痕が残る建物、三本の角を生やした鬼女、四つ目の集団の行列。
    怪異と書いたが、実はいずれも物理的な解決が出来る。つまり怪異でも妖怪でも鬼の仕業でもなく、人によるもの。
    これは裏表紙の内容紹介にも書かれているのでネタバレにはならないと思うのでご安心を。
    しかしそこにはとある陰謀が見えてくる。げに恐ろしきは人の業なり、ということか。

    ライトノベルっぽくスルスルと読める。平安時代ならではの衣装や役職名の難しさもあるが、そこに躓くことなく現代風な会話のやり取りを楽しめる。

    主人公の宗孝は異母姉が何と十二人もいて、男は宗孝一人。大切に育てられたのか姉たちに何かと世話をされたのか、怖がりで押しに弱いヘタレだ。これといった才はないが、舞と武芸は少し出来るようだし、いざというときには頑張りを見せる。
    一方の宣能は容姿端麗で頭脳明晰、穏やかで人間関係もそつなくこなし、女性たちからの熱い眼差しもさらりとかわす非の打ち所のない男だ。ただ何と言っても唯一の欠点(?)は怪談話に目がないこと。
    この凸凹コンビのやり取り含め、面白い。

    ただ宗孝の名誉のために書き添えると、当時は鬼や妖怪や霊の存在が当たり前にあるものと信じられていて、肝試し程度ならいざ知らず、自ら進んで怪異に近付くなど狂気の沙汰、つまり宣能の方が変人なのだ。
    宗孝は迷惑だと思いつつ宣能に気後れして強くは抵抗出来ないが、宣能はそんな宗孝を上手く利用しつつきちんと評価もしている。

    また宗孝の姉たちも個性的。
    帝の更衣(妃の一人)である八番目の姉だけは帝に見初められるだけの容姿も中身も女性らしい人だが、その八の姉に仕える十一の姉を始め他の姉たちは押しが強い。
    中でも第三話に登場する姉は独特で、まだまだ何らかの絡みがありそうだ。
    登場していない他の姉たちも続編で出てくるのか、楽しみにしたい。

    宣能の方にも個性的な妹がいる。彼女のある才を発揮した活躍は今後も楽しめそうだ。そして宣能が何故『ばけものを好む』のか、宗孝なりの解釈は当たっているのか。

    読み終えればとても狭い世界で起きた事件だった印象だが、これは狙いがあるのか。
    今のところ9作まで出ているようで先は長い。宣能がいつか本物の怪異に出会えるのか、どんな展開や物語が待っているのか、楽しみになってきた。

  • 左近衛中将宣能と右兵衛佐宗孝が、不可解なできごとを追い求める、連作短編集。

    シリーズ第1作。

    眉目秀麗、申し分ない家柄。
    完璧な貴公子でありながら、怪異を愛でるという〈ばけもの好む中将〉。

    12人の異母姉をもち、普段はどこか気弱さのある、宗孝。

    二人のキャラクターがよかった。

    怪奇現象は、見たがる人は見られず、見たくない人ほど見てしまうのが、お約束。
    物の怪には絶対に会いたくないタイプなのに、宣能に振りまわされ、いつも奇妙な目にあうのは宗孝ばかり。

    ふたりのコミカルなやり取りがたのしい。

    腹黒い貴族社会で、裏表のない真っすぐな宗孝は、すがすがしかった。

    現東宮の生母である女御が、頻繁に里帰りした上、人前に顔も姿も堂々さらすのには、違和感。

  • 家柄も容姿も申し分ない上流貴族でありながら、何故か怪異を好む変人・宣能。
    姉が十二人もいることを除けば、とりたてて特技もない中流貴族の宗孝は、そんな宣能になぜか気に入られてしまったようで…


    フォローしているfukuさんのレビューを読んで、手に取った本。
    瀬川貴次さん、初読。
    平安時代を舞台にしたラノベのようなシリーズということで、期待通りの楽しい読み物でした。

    まさに解説にあったように、四半世紀前(!)に『なんて素敵にジャパネスク』を読んだ時のよう。
    コレをきゃあきゃあ言って回し読みしてる今の若い子たちも、「あなや」とか言って笑ってるのかな。

  • 平安時代の推理小説な感じ。シリーズをゆっくり追ってみよかな。

    イケメンなのに"ばけもの好む中将"といわれる宣能と、12人も姉がいる末っ子長男の宗孝のやりとりがおもしろい。
    わりとなんでも物の怪の仕業だと考えられてる時代に宣能は相当な変わりもの。イケメンなのに…ね、と残念扱いされても何も気にせず飄々としてる。こういうひと今もたまにいるよねって思える。

    たまにこういう時代物小説を読むの好き。漢字の知識にもなるし。

  • 超美形でエリートなのに「ばけもの好む」という肩書がつく宣能。そして、その宣能になぜか好かれる小心者の宗孝には12人もの姉がいる。。 4つの奇怪な物語。 宗孝は、宣能に巻き込まれたって言うけど、実は宗孝の姉様方たちに深い関係があったという(笑) 平安時代、やっぱ愛だわね。。。 そして、恐ろしくは物の怪より人の性。 源氏物語とか、伊勢物語の筒井筒とか、数十年前に教科書で習ったことを思い出す。。 大好きだったあさきゆめみしや、なんて素敵にジャパネスクも。。。 妹君の初草や十の姉上の活躍も、これからもっと楽しみ♪

  • タイトルを見て、平安時代の妖怪物とは思ったが、それにしてはストレート過ぎない?とは薄々感じてはいました。

    読後、やっぱりね。妖怪よりも人のほうが怪奇かもしれませんね。

  • 仁寿殿で発見された大量の鮮血。
    洛外の稲荷神社に深夜現れる三本角の鬼の正体は。
    葵祭の場所取りの集団が出逢った四つ目の物の怪たち。
    歌も楽器も苦手で恋人もなかなか出来ない、右兵衛佐宗孝は、「ばけもの好む中将」と噂の貴公子、左近衛中将宣能に引きづられて奇怪な事件に巻き込まれるが。

    最近、あやかしの本が多い中、ホームズのような宣能の洞察力にワクワクして、不器用な宗孝もワトソンみたいだし、このコンビのこれからに期待。
    平安時代の後宮のドロドロやきな臭い闇で起こる怪異をこれからも二人でひっそりと解決するのかな。
    宗孝の12人の異母姉、今回は5人?しか紹介されなかったけど、それぞれ個性的でニヤニヤしてしまう。こちらも楽しみ。

  • タイトル通りに妖が出るかと思いましたが、出たのは個性的な人物ばかりでした( ̄▽ ̄)
    平安時代が舞台の小説はなんにしても、登場人物の名前や物の読み方が慣れないですねぇ。
    12人の姉がいる末っ子設定が、少し頼りなげだけど優しく、なんとなく損な役回りをする青年のイメージになりますが、概ねその通りでした(笑)
    中将の宣能と宗孝のコンビはなかなか魅力的。宣能の美形は役職もがなですが、宗孝もなかなか美丈夫らしく、なのに平安時代の貴族男性に必須の歌や楽の才がないためにモテないのも好ましいですね。
    そもそも平安時代の男性の場合、モテまくる=誘いがうまい女たらしのイメージ強いですし(笑)
    妖の噂を聞きつけてはやってくる中将宣能と巻き込まれる宗孝。実際は人の仕業で、人の悪意ばかりが正体なので、どちらかというとつまらないオチになっちゃうかなぁと思ってましたが、とにかくまぁ、よくお姉さまが出てくるもんで(。・ω・。)なんやかやほのぼのとしてしまうのが面白い。
    宣能が宗孝をどのようの立ち位置にしたいのかは、1冊目ではまだまだ謎ですが、このままそこはかとなく右大臣に気に入られるように計らって、自分の右腕にしていくような気がしてならない。
    割と好きな展開なので、続編も読んでみたいと思います。

  • ブクログで覗かせてもらっている本棚に登録されている方が多くて気になって読みました。

    平安でばけものといえはま陰陽師的なことを考えましたが<ばけもの>を生むのは人間でした。
    怪異に遭遇したい中将と12人の姉を持つ振り回され役の宗孝のコンビが楽しく、モヤっとした終わり方も最後にはきちんと回収されていて読みやすかったです。
    平安時代の風俗や役職など知識不足でわかりにくい所もありますが、文章は現代に繋がるように書かれているのでついていけました。「牛車、爆発しろ」って。
    まだまだお姉さんがいるので続きも楽しみです。

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著者プロフィール

1964年生まれ。91年『闇に歌えば』でデビュー。
「ばけもの好む中将」、「暗夜鬼譚」シリーズ(ともに集英社文庫)、『怪奇編集部「トワイライト」』(集英社オレンジ文庫)など著作多数。

「2019年 『百鬼一歌 菊と怨霊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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