国道沿いのファミレス (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 531
レビュー : 75
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450699

作品紹介・あらすじ

勤め先で左遷され、6年ぶりに故郷に戻った25歳の善幸。職場、家族、友達、恋人……様々なしがらみが彼に降りかかる。現代の若者をリアルに描いた第23回小説すばる新人賞受賞作。(解説/北上次郎)

感想・レビュー・書評

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  • 身に覚えのない噂から左遷され、自分の故郷のファミレスで働く事になった主人公。
    全体的に淡々と話は進み、細かい人間関係のトラブルはあるが、大きな展開はなく無事ハッピーエンドで終わったという印象。幼なじみのシンゴとの関係が読んでいて癒された。主人公は父親が女にだらしなく、シンゴは父親が誰か分からない…そんな生い立ちでも二人は周りの人に愛されて育ってきたし、二人の周りの人々もファミレスの従業員達も一人を除き良い人ばかりで殺伐としていないのがいい。
    帯に「全世代、共感間違いなし」とあった割には、私は共感できる登場人物はいなかったかな(^_^;)

  • ようやく読み終えた。
    中途半端な田舎の、寂れたシャッター商店街を、人けのない白昼にとぼとぼ歩いているかのような、けだるい、茫漠とした気分になる作品。
    登場人物の背景は、けっこうドラマチックなのだが、筆致が淡白なので、ひどくどうでもいいことに思えてくる。
    泣くことも、怒ることも、恋愛感情すらも、平板で熱のないものに見える。
    それが作者の持ち味なのだろうか。
    いちばん最初に読んだ「南部芸能事務所」では、もう少し人が立体的に描かれているように思ったのだが。

    読んでいるうちに、あらゆることが相対化されて、たいしたことではないように思えてくる。父親が許せないことも、恋人のあらそいも、ストーカーも、出生の秘密も、なにもかもが、灰色の日常に飲み込まれていく。昨日も今日も明日も、ちょっとした凸凹はありながらも同じようにただ過ぎていくだけなのだろうな、という、しらけた気持ちになる作品だった。

  • 私が父のことをあまり良く思わないのは、きっと自分と似てるからなんだろうな、特に自分の嫌なところが。
    歳を取って、鏡に映る顔の形やちょっとした仕草や口調が似てくるのを自覚すると、益々そう思うようようになった。
    だけども、ほんとは自分の嫌なところは、多少の遺伝はあったとしても、自分の人生の、自分の責任なんだよね。
    息子を持って、二人とも独立した今となって、もっとこう接してあげていたら良かったとか、こう育てていれば良かったとか思うけど、彼らの人生には、私はまた間接的にしか関与できなくて、彼らの人生は自分で作り上げるものなんだよ。今度の次男の就活でつくづく思った。
    ずっと長い、父と私、私と息子たちとの生活を経て、そういうことが漸く分かって来たのも今更なのだけど、この小説の、主人公と父の関係を見ていて、そういうことを改めて思った。
    前置きが長くなったけど、この小説、ファミレスのチェーン店に勤める主人公・佐藤善幸がネットに書かれた良からぬ噂によって、都心の店から、遠く離れた故郷の町の店に飛ばされてきたところから始まる。
    幼馴染みのシンゴ、その母の茜さん、高校の同級生でシンゴの恋人の吉田さん、行きずりから恋仲になった綾さん、女にだらしない父、それを赦してこの日まで来た母と祖父、店の上司・同僚とアルバイトの面々…、これらの人との交わりの日々がグダグダと描かれる。
    それにしても、このグダグダ感がリアル過ぎ。
    したいことが何もない、将来の確たる希望もない、ただ生きるために生きている、欲望に任せて彼女と交わる、執着もなく、愛情も薄く、若者だけでなく、多分人間誰しもが持つ怠惰な欲望がこれでもかというように描かれて、自分の怠惰な心にグサッと来る。
    だけども、それでも「立派な社会人になる」程度のささやかな望みの中で、恋を実らせ、仕事に生きることも、ちゃんとしたひとつの人生と思わせて、エンディングのささやかな幸福感が余韻あり。

  • どんだけ狭い街なんだと頭の中で突っ込み苦笑い。でもそれは些細なこと。内容は若者らしさ全開でとても面白かった。性描写に少し違和感を覚えたけど、なるほど女性作家さんということで納得。男性が女性に対して誤った固定概念があるように、逆も然りなのかもしれない。
    あらすじ(背表紙より)
    佐藤善幸、外食チェーンの正社員。身に覚えのない女性問題が原因で左遷された先は、6年半一度も帰っていなかった故郷の町にある店舗だった。淡々と過ごそうとする善幸だが、癖のある同僚たち、女にだらしない父親、恋人の過去、親友の結婚問題など、面倒な人間関係とトラブルが次々に降りかかり…。ちょっとひねくれた25歳男子の日常と人生を書いた、第23回小説すばる新人賞受賞作。

  • 畑野作品には女にだらしない男がよくでてくる、ような気がする。女関係や主人公のろくでもなさが遠慮ない。
    親友カップルはとても素敵なだけに、主人公の女周りはどれも後味悪く(ハッピーエンドだった相手もあまり好きにはなれない……)、印象としてはあんまり良くはないのだけれど、それでも最後まで読んでしまったのは、やっぱり面白かったからだ。
    この作品がデビュー作で、既に独特の毒があり、最近の作品の方がよりこなれていて読みやすい感じはするけれど、青春群像劇が得意な作家さんだな、と感じる。

  •  外食チェーン店の社員である善幸は故郷にある店舗に移動となった。恋人、親友、同僚、両親との人間関係と巻き起こる様々な問題を描いた小説。

     女性にモテる優しい系のダメ男、として善幸は描かれているのですが、正直彼の描写というものは「女性が好きそうなダメ男」という雰囲気がものすごく漂っていて、男である自分としてはなんとなく共感しにくいものでした。彼の女性関係に対する考え方も自分と似ていないからかイマイチ入り込めませんでした。

     話としても大きな起伏もなく、中盤まではイマイチかなあ、と思っていたのですが、終盤の親友やバイトのために必死になる彼の姿は、なんとなく好感を持てるものがあってよかったと思います。

     ある登場人物のその後についてなど、モヤモヤするところもあるにはあったのですが、話の筋や人間関係が織り成すトラブルの描き方が大げさではなく、日常にありそうなものを上手く描いていて、作品や著者の畑野さん評価が高いのには納得できました。

     個人的な好き嫌いの部分があると思うので、もうちょっと畑野さんの作品を読んでみたいです。

    第23回小説すばる新人賞

  • たしかにスラスラ読めたけど、感情移入も出来なかったし、ラストも“あーこうやって終わっちゃうのか…”と期待外れだった。綾ちゃんに対して救いの何かがあるのを期待してたのにな。綾ちゃんの陰をユキには救って欲しかった。

  • 女の人が書くとこうなるんだと。
    優しい話と残酷な話。

  • 都内のファミレスで働いていた主人公は、
    年上の彼女もいて平凡な日々を過ごしていたが、
    見に覚えのない恋愛トラブルで実家近くの店舗に左遷される。

    新しい恋人との関係、
    愛人のところへ行ったきり帰ってこない父親と、それを許している母、結婚を悩む幼馴染など家族回りのいざこざ、
    職場での人間関係など、
    6年ぶりの故郷で過ごす日常の風景を淡々と描いている。
    今流行の、ままならない日々を送る悶々とした若者が主人公のお仕事小説系。
    デビュー作ということで粗があるのは気にならないけどむしろあまりの熱量の無さに肩透かし。

    この系統で売れている津村記久子とか中脇初枝とか窪美澄とかを読んで感じる「これを書かなきゃ死んじゃう」感がまったくない。
    デビュー作なのにこんな手触りあっさりでいいのだろうか。

    売れ線の物語は好きではない。
    実に普通。平凡で緩慢だった。

    http://www.horizon-t.net/?p=1016

  • 読ませるなあ。
    クライマックスの少し前から、ぐっと来た。

    おそらく山梨あたりの田舎町だろう、その町にある今は廃れつつあるファミレスが舞台。都内の店舗から左遷させられた20代の男子、佐藤善幸を中心とした青春・家族・恋愛物語だ。

    このファミレスは、もしかすると私が以前バイトしていたレストランチェーンがヒントなのかとも思う。元はアメリカからやって来たとか、バイト仲間同士でファーストネームで呼び合うとか。著者はファミレスでバイトをしていた経験もあるようなので、もし推測が当たっているなら、どこかで会ってたりして。

    狭い田舎街での窮屈な人間関係、主人公のいびつな家庭環境、親友の出生の秘密、恋人の黒い噂……
    次々と障害が現れて、そのたびに苦しむ善幸とともに心の中では泣いたり怒ったり。

    登場人物みんなが幸せになってほしいと思える物語だった。

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年『国道沿いのファミレス』で第23回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。13年に『海の見える街』が、14年に『南部芸能事務所』がそれぞれ吉川英治文学新人賞候補となる。ほかの著書に『夏のバスプール』『感情8号線』『罪のあとさき』『タイムマシンでは、行けない明日』『家と庭』『消えない月』『シネマコンプレックス』『大人になったら、』などがある。

「2018年 『水槽の中』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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