終わらざる夏 (中) (集英社文庫)

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  • 集英社 (2013年6月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784087450798

作品紹介・あらすじ

運命の糸に操られるように、北千島の戦地へ向かった3人の男。信州の疎開先から逃げ出した少年と少女。過酷な状況下、何を信じ、何を守るのか。人間の本質を照射する戦争文学の巨編。

みんなの感想まとめ

運命に翻弄されながらも、個々の苦悩と葛藤を描くことで戦争の不条理を浮き彫りにする物語が展開されます。北千島や占守島を舞台に、疎開先から脱走した少年少女や動員された女子、さらには敵兵であるソ連兵など、多...

感想・レビュー・書評

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  • 終戦の直前で終了。複数の場面が設定され「不条理」を描ききった。昭和20年夏の敗戦に向かう日本、国民は何も知らされず耐えるのみである。①占守島に向った翻訳要因の片岡、菊池医師、富永軍曹が敗戦濃厚を知らされる場面/②片岡の息子・譲が疎開先で静代と出会い東京に向け歩き出す/③片岡の妻・久子が息子・譲、夫、義弟を思い奔走する/④占守島から追い出されたアイヌ族。戦争に巻き込まれた彼らの悲哀が身につまされる。広島・長崎の全滅とポツダム宣言受諾の報、ラストの下巻で昭和20年の夏はどのように過ぎていくのかを追っていく。

  • シュムシュ島に動員された女子400名。終戦に向けた動き。学童疎開からの脱走。同時に起こる1日1日に、早く15日を迎えないかと祈るばかり。

  • シュムシュはクリルアイヌ語の「シーモシリ」が訛ったもの、「美しき島」「親なる島」とのこと。定住に適さぬ火山灰地で出来上がっている、北千島唯一の丘隆地と草原に被われた島。一年のうち七か月は雪と氷にとざされるという。
    片岡のひとり息子譲と同じ学校の上級生静代が疎開先の信州から抜け出し父母のいる東京へ向けて歩いている状況、疎開経験のある我が両親の子供の頃と重ね合わせてしまう。
    「この星明りの線路が、戦争のない世界に続いていると信じた」

    ロシアは軍事上の必要性、太平洋への進出路を失うから樺太よりも千島国境を重要視していた。明治八年「樺太千島交換条約」により樺太の全土と交換に全千島列島を日本の領土としたのは世界外交上の大成果、日露戦争賠償で樺太獲得、石炭石油採掘権えるなど北辺の主導権握ることとなった。
    日本の領土になったところには陛下のご名代として勅使が差遣という魂入れ、欧化政策による天皇の神格化、国家的求心力に利用されたという説明あり。
    缶詰工場に働く女子挺身隊員の石橋キクが学年総代として卒業式には全員セーラー服をきさせてほしいと交渉に敗れた様子は切なすぎる。
    譲と静代が歩き疲れた夜に身を寄せた、鴨居に夫や息子と思われる写真が並ぶ白髪のおばあさんちでのお芋とお米を炊いたお粥は体を芯から温めてくれそう。子ども同士の言葉少ない互いの立場を思いやるやりとり。
    通訳を必要とする理由が語られ、長い夏が終わる予感。

  •  疎開先の小学生たちや教師、島で働く女子学生たち、そして敵兵であるソ連兵たちなど、自国の兵士だけでなく、それぞれの立場の苦悩と葛藤、戸惑いを描くことで浮かび上がる、戦争の不条理と非情さ。

     こうした様々な立ち位置からの悲劇を描けるだけでも、すごいと思うのですが、さらに浅田さんは物語の舞台となる占守島すらも、不条理と非情から生まれたことを描きます。

     国家の思惑に踊らされ、故郷を追い出された先住民たちの悲劇。単に物語の舞台でしかなかったと思っていた島すらも、不条理と非情から生まれていたということが、明らかにされるのです。

     個人と土地、それぞれの物語をあますことなく描ききり、小説は最終刊に向かいます。

  • 終戦後の任務を担った片岡と菊池医師、鬼熊軍曹の運命、そして疎開先から抜け出した片岡の息子。刻々と近づく終戦の日とその後の終わらない夏。中篇はじりじりとして進まない時と進んでほしくない時が交錯しているようだ。

  • 中巻はあっという間に読み終えました。

    なんなんだ、もう。
    幸せな思いをしてる人が一人もいないじゃないか。
    戦争ってそういうもんなんだけど、やっぱり悲しい。

    片岡さんはようやく占守島に着きました。
    本当に悲惨になりそうなのは下巻のよう。
    どうか、片岡さんも菊池さんも鬼熊さんも死なないで…と
    祈りながら読まなければなりません。

  • 片岡直哉(かたおか なおや)の息子で小学四年生の譲(じょう)は信州に学童疎開していた。
    もう一年近くになる。
    食べるものが乏しく、子供たちは来た頃よりも皆、一貫目(約3.75kg)ほども痩せた。
    24時間、子供達を守らなくてはいけない先生たちの苦労も大変なもの。
    自分では否と思うことを子供達に吹き込まなくてはいけない事が一番の苦しみだろうか。
    「あなたたちの本分は勉強です」と、言外にさまざまな思いを込めて言い聞かせることしかできない。
    ホームシックの限界に来ている子らを見守るのも辛い。
    実家に出す手紙も、実家から来る手紙も検閲することになっている。
    良心ある教師はそれもつらい。
    片岡譲の担任の小山雄一、六年生の吉岡静代を担任する浅井マキ子は、二人の子供がしっかりしているからと信じて手紙を読ませるが・・・

    片岡直哉たちが配置される、北の最果ての島、占守(シュムシュ)島には、なんと民間の缶詰工場があった。
    民間といっても、軍の命令で動いている。
    撤退したいのに許されず、函館の女学校を出た女子挺身隊も働いている。
    工場の責任者である森本健一は、なんとしても彼女たちを守ろうと思っている。

    そういえば、この本には「悪い人」が出てこない。
    強いて言えば、小山や浅井の上司に当たる教師かな。まあ、体がデカいだけで、器は小さいけどな。
    戦争が悪いのであって、人は悪くない、という事なのだろうけど、戦争は自然災害とは違う。
    いつまでも戦争を終わらせたがらず、国民を苦しめている奴らが確かに存在しているはずなのだ。

    片岡たちは皆、岩手の出身だから、地元が描かれる時は岩手弁の会話だし、鬼熊こと富永軍曹は常に岩手弁だ。
    なんとなく宮沢賢治を思い出すなあと思っていたら、「星めぐりの歌」と「雨ニモマケズ」が出てきた。
    満天の星と、東北の自然と、素朴な心の美しさが、非情な現実との対比になっている。

    片岡二等兵、菊池軍医、富永軍曹の三人はいよいよ占守島に着任する。
    片岡の役目は最初から書かれていたけれど、後の二人の役目は・・・う〜ん・・・そんなのありか。

    スーパーで「マルハニチロ」の商品を見つけ(ゼリーだった)なんだか胸がせまる。

  • 2020年3月21日読了。

    片岡、富永、菊池の三人はついに占守島に到着する。
    新兵の3人が到着後に参謀の吉江少佐から伝えられたこととは。

    また、疎開先を脱走した譲と静代の行方は?

    終戦の日まで残り3日、満州にはソ連軍が条約を破棄して国境を超えてきている。

  • 暗い内容で気が滅入り、読む終えるまでに何ヶ月もかかってしまった。
    入れ替わり立ち代わりそれぞれの立場の人間が語り手となっていく手法だったが、読みづらいと感じたときもあった。
    占守島の戦いのことは全く知らず、たまたま聞いていたラジオ番組のゲストが著者で本書の紹介をしていたため、手に取った。
    日本でこの戦いの知名度は低いが、教科書に載せても良いのではないだろうか。

    結末は救いがなく、心が重くなった。
    生き残った人々はシベリアに送られ、無事に帰国できたかどうか胸が痛い。
    娯楽のための読書はすばらしいが、ときどき本書のようなジャンルを読むことは大事なことなのかもしれない。

  • 「戦争とは、生と死との、ありうべからざる親和だった。ただ生きるか死ぬかではなく、本来は死と対峙しなければならぬ生が、あろうことか握手を交わしてしまう異常な事態が戦争というものだった。」

  • 上巻より濃い内容の中巻。驚くほど過激な浅田次郎節炸裂の、登場人物の言葉選び。
    凄まじい戦時中の普通に生きている一般人と軍人の
    なんちゅーかもどかしいというか、どうにも出来ない現実の描写。
    引き込まれていくように読むにつれ、眉間にシワが寄っていくような。
    一億総玉砕というより全滅という言葉が何ともリアル。
    やっとバラバラだった登場人物がパズルの様に繋がったかなぁーと。

  • 登場人物達それぞれの戦争に対して向き合う戦いを描く中巻。

    戦争が終局に向かう中、片岡が召集された真実も明らかになっていく。
    狙った通りの結果をもたらすのか?それとも?

    戦争の凄惨さを感じながらも、ページを捲る手は止まらない。
    戦争自体ハッピーエンドでないが、登場人物達のハッピーエンドを願って、
    そして、この物語の結末に向けて、いよいよ下巻。

  • 終戦間近の北の涯の島で起こったこと、初めて知った。戦争についてまだまだ知らないことが沢山あると気付く。
    是非ではなく、少なくとも祖国の歴史を知ることが、未来に続く事だと思いたい。

  • 登場人物の動きがパラレルに語られる、中巻。
    下巻の完結に向け、ハッピーエンドに向けての予感は感じられない。

  • 北千島の孤島に渡る片岡、そこには移動手段を無くした北の守りに着く精鋭部隊、食料確保の缶詰工場で働く戦時動員された女子高生らが居る。長野に疎開した低学年の子、東京で夫を戦地へ送りの残された妻に生き様を綴る。其々が本土決戦への備えながら戦争の矛盾を感じ生きる姿がその時代の不幸を痛感する。

  • 上巻ご参照ください

  • 戦争に巻き込まれた人たちの哀しい物語。
    たくさんの登場人物の視点から、戦争の悲惨さ、理不尽さをあらわした物語です。

    中巻では、集団疎開していた片岡の息子が同じく疎開していた年上の女の子と二人で、疎開先から脱走し、東京目指して歩いていくところが語られています。
    その旅でのいくつかの出会いが語られています。
    このトピックスを通して、疎開先での子供たちの苦悩が感じられます。

    また、占守島の缶詰工場で働く女学生たちの話も出てきます。
    当時の女学生達も含めて、当時の若者がある意味こんなにもしっかりした考え方をもっていたのかと感じさせられます。

    いよいよ終戦に向けて、片岡が通訳者であること、菊池と鬼熊はそれを隠すためのダミーであること、終戦に向けて片岡を守る必要がることが段列長に明かされます。
    また、ここでは、上巻の中でも語られていましたが、鬼熊の考え方がある意味ストレートで腹にしみます。
    歴戦の勲章をもつ鬼軍曹でありながら、実はとても温かい人物であることが明かされます。

    片岡、菊池、鬼熊、段列長、少年兵、女学生達がどうなるのか..

    下巻に続くです..

  • 終戦間近、不気味に物語は続いています。
    兵隊として戦うのも勿論凄まじいものがあるけれと、終わりへと運ばなければいけない人たちもまた大変そうだ。
    兵隊と一括りにして言ってしまったけれど、
    その一人一人は親であり、子であり、夫であり、兄であり弟であるのだなと改めて実感。

    戦争は知れば知るほどわからなくなる。

    下巻へ続きます。

  • 片岡、菊池、富永の三名は、なんとか占守島にたどり着き、そこで自分達に与えられた極秘のミッションを告げられる。中編では、三名の占守島派遣道中と並行して、東京に残された片岡の妻久子と、学童疎開中の息子譲の織りなすドラマもリアルに描かれている。焼け野原となった東京での人々の営みや、学童疎開先での子供たちの暮らしぶりが目に浮かぶようだ。

  • 【ナツイチ】戦中、終戦間際の生活や時代背景などが色濃く描写されていて、戦争を知らない世代であるが、TVや学校の歴史等で習った内容を含め当時の過酷な状況が想像できた。当時の千島列島の様子が歴史的背景や人物等の視点から事細かく語られ、ドキュメンタリーさながらの展開を読み進めていった。学童疎開、若者(男性)は戦地へ送り込まれ、家族はバラバラになってしまい…国のためにそうせざるを得ない状況だったということ、今の時代からは想像できないと感じた。当時は国民皆苦しい時代だったのが伝わって来て辛くなる。「下」へ。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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