光 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 3649
レビュー : 384
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451214

作品紹介・あらすじ

天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花のため、彼はある行動をとる。それから二十年後、信之の前に、秘密を知るもう一人の生き残り・輔が現れ──。(解説/吉田篤弘)

感想・レビュー・書評

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  • 田舎町にある閉塞感
    その閉塞感の中で渦巻く、暴力性
    田舎町を離れても、工場が連なる街並みと劣等感は、暴力と親和する。

    先日、amazarashiのオンラインライブを拝見して、
    その中でコロナのことが嘆かれているのはもちろん、東日本大震災のことも強く訴えられていた。
    こうした理不尽さを想い、選んだ一冊。
    大災害という理不尽に、もう一度目を向けようと思った。

    大災害の描写、繰り返される暴力、人間が孕む暴力性
    その中で人間がコントロールできるものってなんだ。
    最近「自分の力ではどうにもならないもの」に触れることが多く、それに関心が向いている。
    もっと日常的なレベルのものだけれど、その「理不尽」が人に与える苦痛は、人を暗転させる。
    その中で向き合いながら、時に見ないふりをしながら生きることの重み。

    輔(たすく)が受ける、繰り返される暴力。周りはみんな知っていて、心配してるよと声をかける。でもそんなもの。輔はこう思ってる。
    P205「中途半端な心配も助言もクソだ。いらねえんだよ。死んじまえ。毎日毎日何十年も同じおかずが入った弁当食って、しょぼくれた工場としょぼくれた家族のいる家を往復し続けて、クソして死ね」
    いくら心配してたって、物理的に救い出してくれるやつなんて誰もいない。みんな結局自分の安定した生活は変えたくない。だから言葉をかけることしかしない。心配してるなんて言葉は、輔にとっては新たな暴力とおんなじだ。理不尽な暴力が渦巻く世界に、毎日毎日、同じおかずが入った弁当を食べる生活なんて、存在しない。

    信之が見た景色。大災害という理不尽が奪い去るものの重さ。それは人の心から何を奪い、何を植え付けていくのか。
    P250「おまえみたいにどこにでもいる、退屈な女がえらそうに。美花は昔もいまもほかの女とはちがう。30を過ぎても蠱惑と翳りを暗黒の光のように放っている」
    妻子から見れば真面目で誠実な夫の姿は、夫の目線から見るとこんなにも暴力性を孕んでいる。妻子に対する優しさを体現しながらも、心の中では相手をディスり、嗤っている。けれど、暴力性はそれだけで簡単にコントロールできるものじゃない。
    P265「暴力で傷つけられたものは、暴力によってしか恢復しない」
    P282「同情や愛情では恢復しない傷がある限り、刑罰はひとを救わない」
    闇の中で、暴力が闇を照らす光と化す。

    輔P209「俺がすがれるもの、俺を求めるのも、結局この女しかいないのかと思えば、情けないような気も少し満たされるような気もした」
    闇の中に注がれる光に、辛うじて希望を見出すことができた輔、
    信之P295「求めたものに求められず、求めてもいないものに求められる。よくある、だけど時として取り返しのつかない、不幸だ」
    信之の中に残るのは、理不尽への大きな諦観と、希望や幸せと言う名の光へのディス。

    闇の中にいながらも光を探そうと足掻く輔と、光の中にいるように振る舞いながらも、闇の中で暴力を光として先を照らす信之。
    日常的な暴力にさらされていた輔よりも、非日常的な大きな暴力によってはく奪を受けた信之の方に、暴力性がじっとりとつきまとっていることが、強く心に残っている。

    タイトルの「光」の意味
    それは読者の経験によって異なる意味合いを与える。
    解説で吉田篤弘さんがおっしゃっているように、誰かと感想を共有したくなるような、そんな作品でした。

    • naonaonao16gさん
      kuma0504さん

      あけましておめでとうございます!
      ことしもよろしくお願いします^^

      コメントが遅くなり申し訳ございませ...
      kuma0504さん

      あけましておめでとうございます!
      ことしもよろしくお願いします^^

      コメントが遅くなり申し訳ございませんm(__)m
      コメントだと少しお久しぶりですね^^

      瑛太と井浦新、本当に豪華なキャスト!!
      原作の世界観をすごく丁寧に上手に演技にしてくれそうなキャストです!
      「邦画っぽさ」を感じます、いい意味でも悪い意味でも(笑)

      原作者の意図、きちんとくみ取っていたのかどうか。どうしても自分がその時興味のある部分だったりに引っ張られがちなので、かなり偏った読み方をしてしまっているかもしれません…お許しを。

      映画って、「そこ描かないのか!」ってこと、よくありますよね。わたしも映画には興味あるのですが、ちょっとそう思ってしまいそうな感じもしています。
      無理に原作読まなくてもいいと思いますよ(笑)もし読まれたら…レビュー楽しみにしています!!
      2021/01/01
    • 5552さん
      naonaonao16gさん。
      あけましておめでとうございます!
      お返事ありがとうございます。

      amazarashiはテレビ番組で...
      naonaonao16gさん。
      あけましておめでとうございます!
      お返事ありがとうございます。

      amazarashiはテレビ番組ではじめて『僕が死のうと思ったのは』のアコギバージョンを聞き、ネットで見た『未来になれなかったあの夜に』のMV(出演者が豪華!)でアーティスト名を認識し、今現在は『リビングデッド』が頭の中でリピートしてます。
      『あんたへ』もいい曲ですね!
      よく聴くようになってまだ日が浅いですし、ディープなファンでもないのですが、キラキラ眩しい前向きソングが辛いときに、いいですね。
      でも、amazarashiも決して後ろ向きじゃないですよね。

      それでは、今年もよろしくお願いします。



      2021/01/02
    • naonaonao16gさん
      5552さん

      こんにちは^^
      こちらこそ、お返事ありがとうございます!

      「僕が死のうと思ったのは」あれも名曲ですね!一時めちゃ...
      5552さん

      こんにちは^^
      こちらこそ、お返事ありがとうございます!

      「僕が死のうと思ったのは」あれも名曲ですね!一時めちゃ聴いてました。
      「未来に~」、出演者が豪華なの知らなかったです!チェックしてみます!!
      「リビングデッド」いいですよね。フェスだと盛り上がります。

      確かに、決して明るくはないですが、どっぷりと辛さに寄り添った上で前を向かせてくれるような、そんな曲が多いですよね。それは後ろ向きとは違います。

      amazarashiのお話できてうれしかったです^^
      2021/01/03
  • 『暴力で傷つけられたものは、暴力によってしか恢復(かいふく)しない』

    この世に溢れる『暴力』。『光がすべての暴力を露わにした』、と誰の目にも容易に明らかになる『暴力』がある一方で、『「親」という存在が暴力を振るう事実を、ひとはなかなか受け入れない』、と当事者以外には理解されづらい『暴力』もあります。この後者の場合『暴力も愛の一種なんじゃないかと、なんとか理屈をこねて納得しよう』としてしまい、それは闇に潜りがちです。また、そんな『暴力』はさまざま形をとります。身体的、性的、そして精神的に相手を追い詰めていくものも立派な『暴力』です。そして、そんな『暴力』がエスカレートすると『殺すのなんて、やってみればたいしたことじゃない。なにも殺さず生を全うする動物なんかいない』、とある種開き直ったかのような立ち位置も生まれてしまいかねません。そんな『暴力』というものに『光』を当てるこの作品。そんな作品の登場人物には果たしてどんな『光』が見えるのでしょうか。

    『海へ至る道は白く輝いている。美浜島ほどうつくしい場所はほかにない』という美浜島に暮らす中学生の信之。『昼も夜も、夏も冬も、島は完全な調和のただなかで海に浮かぶ』島、そして『島の調和を乱すものがいるとしたら、それは輔(たすく)だ』と感じています。灯台へと向かう信之の後を勝手についてきた輔は『手の甲の赤黒いかさぶたを剥いて』いました。『それ、おじさんにやられたのか』と聞く信之に『こんなの全然平気だよ』と答える輔。『父親の躾が厳しいことは、島のだれもが知っている。卑屈と卑怯を、島の子どもはみんな知っている』という輔。そんな二人は『灯台守のじいさんはお手製の丸太のベンチに座り、今日も仕事をするでもなく煙草をふかしていた』、という目的地に到着します。『はいよ、お待たせ』、と灯台から出てきたじいさん。『差し出されたコンドームの包みを、信之は小銭と引き替えに受け取った』という展開。『だれかに言ったら、ぶんなぐるからな』と輔に凄む信之。『灯台守のじいさんが、子どもを相手に煙草やエロ本やコンドームで小遣い稼ぎをしていることは、島の住民ならたいがいが気づいている』という島の暗部。そんな二人が元来た道を戻ると『山一商店の軒先では、美花と琴実がペンキの剥げかかった青いベンチに腰かけ、スナック菓子を食べているところだった』という偶然。そして、信之に『買えた?』と聞くのは島で唯一の同級生・美花。頷く信之に『でも今夜は、お客さんがいるからだめ。明日の便で帰ると思うから』と答える美花。『一月まえには芸能プロダクションの社員が、わざわざ島までスカウトに来た』という『とてもきれい』な美花。信之は『なんとなく山へ椿を見に行った』時のことを思い出します。『信之は美花を誘い、だれもいない冬のバンガローにもぐりこんだ』、そして『自分がなにをしたいのか、なにをするべきなのか、皮膚の裏を這う熱が教えてくれた』という初めての時間。それ以来『森のなかの無人のバンガローで美花とセックスすることしか考えていない』信之。そんな信之に『ねえ、信之。六時ごろ、うちに来てくれない』とお願いする美花。『バンガローに泊まっている客に夕飯を運んでるんだけど、なんだかいやな感じだから。一緒に来て』と言う頼みを聞き入れてバンガローに赴く二人。そんな二人の未来に影を落とすことになる人物との出会い、そして運命の天災が全てを変えることになる夜がやってきます。

    五つの章ごとに登場人物の視点を変えながら描かれていくこの作品。作品冒頭『暗い海から届く潮騒や、夜の森で降り積む椿の花。色とりどりの大漁旗をひるがえす漁船と、港に集うひとのざわめき。陽光にきらめく幾重もの澄んだ波頭』という島の美しい情景を信之は『完全な調和』と表現します。そして、この調和を乱す存在として毛嫌いする輔。そんな輔は、父親からの激しい暴力を受け、本来であれば、いわば哀れむ対照であるはずの存在であり『生まれてからずっと、それこそ本当の弟のように思い、気をつけて面倒を見てきた』という近い関係にありました。しかし、『小心なくせにずうずうしい性格を垣間見せる輔に、しょっちゅう苛つかされる』、と『視界に入れるのさえいや』な存在になっていきます。そんな思いは当然相手にも伝わるもの。そんな二人の関係の不安定さは、読者の心の内まで伝わってきます。そして、『お互いオムツをしているときからの友だち』という美花。『美花に微笑まれると、信之はなんだか頬が熱くなる』、という美少女として描かれる中学生の美花。でもそんな美花の初登場シーンのセリフは、信之にコンドームを入手できたかを確認するものでした。ここから暗示される『男に媚び、男の魂を吸って生きてる』という美花から感じる嫌悪感。さらには、見栄と自尊心、そして自身にはとことん甘く、娘を見下す南海子という存在。登場人物の誰にも感情移入できない寄る辺のなさが一貫するこの作品。そんな読者を拒絶するかのような作品像は、ストーリー展開というよりは、これら登場人物の性格づけによるものだと思いました。でも一方で、特に南海子のような人間は、どこにでも普通にいそうに感じる、そのリアルさが、余計にこの作品世界を認めたくないと思わせる原動力なのかもしれない、そのようにも感じました。

    この作品の書名は「光」です。でも、作品ではさまざまな『暴力』、性描写、そして人の心の闇がじっとりと描かれており、明確に『光』を感じられるような場面は出てきません。そんな我々が『光』というものに抱くのは希望や光明、未来といったこの作品からは最も遠い前向きな感情です。さまざまな『暴力』が描かれ、結末に向かってどんどん暗く沈鬱な空気に包まれていくこの作品。そんな作品の中で、一見、感情移入を拒むような存在の彼ら、登場人物にとって『光』はどう見えたのでしょうか。『ひとつだけある窓から朝日が射しこんでいる。わずかな時間だけこの部屋を照らす光』という輔の部屋に差し込む『光』。『早朝の透明な光に満ちて、薄青く晴れわたっている』という信之と美花が二人で目にした『光』。そして、『輪郭の定かでない黄緑色の光が、二つ三つ水辺に漂っている』という信之たち親子三人が見たはかない蛍の『光』。そんな『光』が導く未来は、我々が一般的に抱く希望へと続くものではありませんでした。それは、人を闇へと導く『光』。しかし、それも『光』には違いありません。『「光があるから闇がある」といったような二分法が、いまいちピンと来ない』とおっしゃる三浦さん。光と闇は単純に対極に考えるようなものではなく、ある意味相対的なものとも言える世界なのかもしれません。そして、人によっては闇に導く『光』もある。そんな風に考えると、この作品の書名が発する『光』が全く異なる輝きを帯びて見えてくるようにも感じられました。

    この作品はミステリーではないので、”イヤミス”という言葉は当てはまらないのかもしれません。でも読後に読者を襲う不快感はまさしく”イヤミス”と言っても過言ではありません。『私はふだんなるべく、人の善良な部分、希望や明るい面について、小説にしたいと心がけている』という三浦さん。でも一方で『人の心って、そんなにいい面ばかりではない』とおっしゃる三浦さんが問うのは、人の心の闇を照らし、闇に導く『光』の物語でした。『美花を暴力から救ったのは、信之の暴力だ。信之の振るった暴力が、そのあとの信之を救いつづけ、行く道を示しつづける』という『暴力』を導く『光』。

    嫌な感情を突き動かされ続ける読書。持って行き場のない感情が襲うその結末。間違いなく賛否両論さもありなんという三浦しをんさん渾身の問題作。

    湊かなえさん、もしくは辻村深月さんの”黒辻村”の作品群を想起させる人間のドロドロとした闇を彷徨う物語。そして、そんな闇に『光』差す結末に蠢くもの。人間の本質にぐりぐりと迫る三浦しをんさんのあまりの凄みに、読後しばらく放心してしまった、そんな強烈な印象が残った異色な作品でした。

    • さてさてさん
      改めてこの作品に「光」という書名をつけられた三浦さんの感覚、そして『光が全ての暴力を露わにした』という表現に秘められたものを考えてしまいまし...
      改めてこの作品に「光」という書名をつけられた三浦さんの感覚、そして『光が全ての暴力を露わにした』という表現に秘められたものを考えてしまいました。
      一度の読書では読み切れなかった気がしています。これは、読み返さなくっちゃ…と、思いました。
      どうもありがとうございました。
      2020/12/30
    • naonaonao16gさん
      さてさてさん

      明けましておめでとうございます!
      今年もよろしくお願い致します!

      これまでの自分なら、南海子から椿への暴力に真っ先に目が向...
      さてさてさん

      明けましておめでとうございます!
      今年もよろしくお願い致します!

      これまでの自分なら、南海子から椿への暴力に真っ先に目が向いていたように思うのですが、やはり今の自分の関心とずれていたのか、別のところに目と感情がいっていたようです。

      「光が全ての暴力を露わにした」
      これ、改めてすごい言葉ですね。作品を読む前と後では全く違って響いてきますね。そして、本当にその響き方が読者によって異なってくるだろうなっていう。わたしは、ちょっと怖いです、自分の全てに光が当てられたら。見られてはいけないこと、見られたら嫌なこと、たくさん抱えすぎていて。光も、暴力の一つかもしれないなと、今ふと思いました。
      2021/01/01
    • さてさてさん
      naonaonao16gさん、ありがとうございます。

      あけましておめでとうございます。
      こちらこそ、本年もどうぞよろしくお願いします。

      ...
      naonaonao16gさん、ありがとうございます。

      あけましておめでとうございます。
      こちらこそ、本年もどうぞよろしくお願いします。

      三浦さんの作品も響く言葉が幾つもありますが、この「光」のこの言葉はインパクト大ですね。光は誰をも照らすもの。誰も光からは逃げられない。だからこそ、そんな光に照らされた瞬間に、全てが露わになる分、おっしゃる通り、ある意味で最強の暴力と言えるかもしれませんね。

      三浦さんとしては、異端の作品で嫌う方も多いようですが読んで良かったと思います。
      2021/01/01
  • 表紙絵のアッシュな背景に「光」。楽しい話しの訳がないのは覚悟した。突然、島を襲った大津波。300人弱の島民で生き残ったのは5人。主人公の信之、付き合ている美花、幼馴染の輔。信之は美花を凌辱した1名の生き残りを殺害する。20年後、それぞれ暮らしていたが、その殺害を巡り「負の連鎖」が起こる。3人がそれぞれの生活に嘱目する。3人に共通するのは「暗い共感」「無情」「ものの哀れ」で、最終的にはお互いを排除する。3人に降り注ぐ「光=神」は存在しなかった。3人の微妙な距離感が、違和感を抱かせた結果が最後の結末だった。

  • 大きな暴力と小さな暴力に苛まされる人間之話。
    人は生きるためには光を見つけなければならない。
    これが東日本大震災の前に書かれたと知って驚かされた。
    三浦しをんの中では異質のサスペンス。

  • 『光』読了
    容赦無い暴力描写がすごかった。登場してくる人物誰もが自分の正当性を押し通そうとし、その手段として暴力を平然とやってしまうところがすごい。その正当性は生き残りをかけてだったり人を守ろうとしたりと人それぞれ様々な理由で
    なんだか背中がゾクゾクしたな。もう堪らなく快感だった
    快感だったっていうのは登場人物全員が心のうちで罵り合ってそれを読んでいる読者側からすれば「何やってるんだこの人ら罵り合って」って薄ら笑いが起こってしまった感じかな
    罵り合い、正当化、それをみてみぬふりできない神様が人間に天災を引き起こしたかのような…これは読んでるとしんどくなるわ
    救いのない内容で、結局のところ、解決することって一生ないということが思い知らせたな
    たかだか二十数年しか生きてないわたくしでも暴力ではないけど危機に瀕する出来事は何度もあって。ああ、またかみたいなことが何度もあった
    それを罵倒するのではなく受け入れるしかないのかなと考えさせられたな
    2018.4.14

  • フィクション小説。

    昭和62年5月の夜中、美浜島を大津波が襲い、271名だった島民のうち266名が亡くなり、5人の人間だけが生き残った。
    灯台守りの爺さんと、信之、美花、輔の3人の少年少女、そしていつも輔を殴る蹴るする父親。

    灯台守の爺さんを除き、四人はそれぞれに分かれて川崎などで暮らす事になる。

    美しい美花は有名女優になり、信之は市役所の職員となって平穏な家庭を持ち、みそっかすの輔はプレス工場の工員に。

    大津波の直前、信之は美香のために罪を犯していた。それは津波の後離れ離れになっても、二人だけの大事な秘密だと、少なくとも信之は思っていた。
    家族を持っても、いざという時には美花は必ず自分を頼り、自分は美花を守るのだとずっと思っていた。

    ほんの一瞬で家族も家も失った信之と美花、そして死んでくれればいいと祈り続けた父親が生き残ってしまった輔は、住むところも生活も違って大人になっても、幼い時の関係は歪んだ形で、心の奥底で切れる事なく繋がっていく物語。歪んだ心、ダークサイドの人の気持ちばかりが描かれているけれど、そのどれもが愛情を求めて、同時に愛の永遠なんて無いことや、簡単に暴力にすり替えられることを知っているのが切ない。

    タイトルの『光』は、希望の光などではなく、描かれているのは『影』の思い。

    『舟を編む』で三浦しをんさんが好きになった読者には、意外なストーリーだと感じた。このストーリー自体が好きでも好きでなくても、やはり文章のうまさに引っ張り込まれ、途中で止まるのが難しい。

    最後まで気持ちの奥底を描かれなかったのは女優になった美花だけ。最後に美花のストーリーも入れて欲しかったなぁ。
    美花は信之をどう思っていたんだろう。

  • 一つの島が地震で沈む書き出しだったので奥付けを見直す。東日本大震災の2年後に上梓。
    最近映画化もされていて再びびっくり。たぶん東日本大震災を経験してのことだろう。
    登場する女性たち3人がたくましさ以上に計算高く生きているように思えた。女は怖くて強いのか!

  •  美浜島はとても美しい島だった。その島を津波が覆い尽くし、島民のほとんどは死んでしまった。

     時は過ぎて、その津波で生き残った、信之、輔、美花は、それぞれ東京と川崎で暮らしていた。
     また信之の妻、南海子もどこかに陰のある夫には気づきつつも、深くは知らずにいた……。

     三浦しをんさんにしては珍しく、暗い陰のある小説でした。読みごたえはありましたが、やるせない思いにもなりました。

     後で、三浦しをんさんのエッセイ読んでこの重さを中和します。

  • 自然。調和。閉鎖的。性欲。天災。破壊。殺意。抑圧。執着。再会。裏切り。暴力。

  • 島で暮らす中学生の信之は、同級生の美花と付き合っている。ある日、島を大災害が襲い、信之と美花、幼なじみの輔、そして数人の大人だけが生き残る。島での最後の夜、信之は美花を守るため、ある罪を犯し、それは二人だけの秘密になった。それから二十年。妻子とともに暮している信之の前に輔が現れ、過去の事件の真相を仄めかす。信之は、美花を再び守ろうとするが…。渾身の長編小説。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。小説家。2000年『格闘する者に○』でデビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、12年『舟を編む』で本屋大賞、15年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞受賞。

「2020年 『自転車に乗って アウトドアと文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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